ゾンビランドミカ 作:裏方さん
すみません、ほんと更新遅くて。
今話は嬉野温泉編。
この駄作の第一章最終話です。
生きている時から嬉野温泉に行きたかったミカ(べ、別の駄作での話ですが)
さて無事温泉に入ることが・・・
また一路、佐賀へと向かう八幡。
二人は出会うことが・・・
ではよろしくお願いします。
”スタスタスタ”
「ん!」
”ダー”
「まさか」
”ジャラジャラ”
「ち、逃げやがった!
くそ、折角特注のケージ準備したのに。
えーい!」
”ガチャン”
「だが、どうやってどうやってこの首輪を。
とてもあの化け物には外せねえと思ったんだが。
・・・もしかして仲間いるのか?
どっちでもいい!
絶対探し出してやる!」
ーーーーーーーー
”のしのしのし”
まったく!
絶対二度寝してんだ巽さん。
今日は何か大事な用事があるって言うからちゃんと起こしたのに。
これじゃなんにもならないじゃん。
”トントン”
「お~い巽さん。
ご飯冷めちゃうから早く起きて。
それになんか大事な用事あるんでしょ?」
「・・・・・・」
「開けるよ」
”ガチャ”
「ぐぅお~、ぐぅお~」
はぁ~、やっぱりまだ寝てた。
「巽さ・・・・・・」
「ぐぅお~」
・・・よく寝てるや。
これだけ気持ちよさそうに寝てたら、なんか起こすのかわいそうになってきた。
それとさ。
”なでなで”
いつもありがとね巽さん。
ほんとすごくすごく感謝してるんだ。
こんなわたしのこと心配してくれて。
「ぐぁ~」
へへへ、ほんとよく寝てる。
もうちょっと寝かせておいてあげたいけど、
マジそろそろ起こさないとね。
”ゆさゆさ”
「お~い、巽さん。
はやく起きて朝ご飯食べちゃって。
ね、ねぇ、たつみ 」
「う、う~ん」
「あ、やっと起きた。
巽さん、お・は・よ♡」
”にこ♡”
「う、うぎゃー!」
「へ?」
「・・・・・・な、なんじゃいこのボケ!
寝起きになんてもの見せてんじゃい。
がばい怖いじゃろうが!
この馬鹿ゾンビィが」
く、くそ、こ、こいつ!
”べし!”
「ぐはぁ~、い、いた!
な、なにすんじゃい」
「ふん!
いいから、さっさと朝ごはん食べてきて。
それに今日はなんか大事な用事あったんでしょ」
「大事な用事?
お、おお、そうじゃった、そうじゃった。
ところで今何時に・・・・・・
げ、もうこんな時間。
このボケー、もっと早く起こさんかい!」
”バタン!”
ぐぐぐぐぐぐぐぐ。
お、お、おのれー
「ちゃんと起こしただろうが!」
う~、まったくあの男は。
それにしても。
”キョロキョロ”
はぁ~ぁ、部屋散らかってるな~
ほんと足の踏み場もない。
雑誌とかDVDとか観たらちゃんと片付けておけって、もう。
「うんしょ、うんしょっと」
”ぱさっ”
ん、なんだこれ?
なんかのデザイン集?
”パラパラ”
もしかして新しい衣装のデザイン?
でも・・・・・・・・・・・・ださ! めっちゃださ!
・
・
・
「・・・というわけで、活動資金が無くなりました~」
「はぁ! どやんするとや!」
「無くなったら稼ぐしかないじゃろうがい。
そこでだ」
”バタン”
「営業?」
「でも佐賀にアイドル呼ぶ企業なんてあるの?」
「はいあるんですー
さすが俺。
営業先は佐賀の大手製薬会社久中製薬。
上手くいけばタイアップのチャンス!」
「タイアップ」
「まあわからんけど
営業ってやつはいつやると」
「今からだ」
「はぁ!」
「慰安旅行に出演予定の芸人が来られなくなったらしい」
「だからなんでそうやって無茶なことさせるの」
「少な~いチャンスを逃さんためじゃい。
このご時世、アイドルの需要は限られている。
そしてお前らゾンビィは無茶しても死なん!
となればやらん手はない」
「ん~」
「とりあえずいつも通りやって、チョチョチョっと実力みせてやれい。
ちなみに場所は嬉野温泉だ」
「温泉!」
・
・
・
ぬりぬり、ペタペタっと。
これでよし。
「はい、リリィちゃん終わったよ」
「ミカちゃんありがとう」
「どういたしまして」
さてっと後はわたしだけだね。
それじゃヌギヌギっと。
へへ、リリィちゃん、ほんと可愛いかったなぁ~
でもやっぱまだ小学生だね。
胸なんかもぺったんこで。
”ちら”
ふふふふ、勝った。
見よこのそびえ立つ双璧、さすが大人の女!
・・・・・・って小学生相手に何やってんだか。
さ、さっさと身体のメイクやっちゃおうっと。
”ぬりぬり、ペタペタ”
・
・
・
「ふんふんふんふん、ふ~ん♬」
”ぬりぬり”
よしっ完成っと。
へへ、今日はちょっと日焼け気味にやってみました。
だってもうすぐ夏だもんね。
上手くできてたら、今度みんなにもしてあげようっと。
どれどれ鏡、鏡はっと。
”じ~”
「ふむ、ふむふむ」
よし完璧だ。
健康的な小麦色のボディの完成。
我ながらメイクの腕上がったんじゃない?
そんじゃあとは巽さんに。
”スタスタスタ”
「るんるんるん♬」
へへ、温泉か~
ちょ~楽しみだなぁ~
確かネットに嬉野温泉は日本三大美肌の湯って書いてあったから、
きっとお肌とかすべすべに。
それにみんなで一緒に入ったら楽しいだろうなぁ~
あ~早く温泉入りたい。
「へへ、温泉、温泉♬」
さっさと巽さんに顔メイクしてもらわなくちゃ。
えっと巽さんのほうはどうかな?
”ひょい”
あ、巽さんの方も今やってるさくらちゃんで終わりだね。
んじゃ、終わるまでここで待ってよっと。
うんしょっと。
”すとん”
はぁ~、それにしてもさくらちゃんやっぱかわいいなぁ~
リボンとかもよく似合って。
それにあのどやんすボディ!
”ごくっ”
あれ、絶対F、Fカップぐらいあるよね。
う~、うらやましい。
・・・・・・・・・・・・重たいのかなぁ。
・
・
・
”イライラ、イライラ”
・・・・・・遅い。
くそ、巽さんさくらちゃんだけ特別に時間かけてない?
なんかすごく念入りのような。
気、気のせいかなぁ。
「よし、これでよか」
あ、終わった!
よ、よし、じゃ次はわたしっと。
「さてっと。
おい、お前らメイク終わったらすぐ出発だ。
さっさと準備しろ」
「た・つ・みさん」
「なんだ」
「なんだって、ほら、もう一人お忘れ」
「もう一人?
いや全員のメイク終わったが」
「へ?
あ~ん、もう相変わらずイケズなんだから~
はい、次はわたしの番」
「・・・ミカ、お前は留守番だ」
「そうそう、わたしは留守番・・・・・・は?
はぁー、な、なんで!
留守番なんてやだ!
わたしも温泉行きたい!」
「お前は留守番」
な、なんだと。
こいつ真顔でなんてこと言うんだ。
い、いや、き、きっとなんかの聞き間違いだ、うん最近耳遠くなったかも。
「たつ 」
「留守番!」
「ぬおおおおおー!
わ、わ、わたしも連れて行け」
「駄目だ」
「ぜ、絶対にか!」
「絶対にだ」
「ま、ま、マジでか!!」
「マジだ」
「げ、げ、げ、厳密にか!!!」
「絶対、マジで、厳密にだ!」
”ぶるぶるぶるぶる”
「うおー て、てめぇ!」
”ベシベシベシ”
「い、いた。
や、やめんか。
そのチョップ、マジで痛いんじゃい」
「お、おいミカ、落ち着けって。
ほ、ほら、どうどうどう」
「ウー、ガルルルル」
「・・・なぁ、いいじゃねえかグラサン。
ミカも連れて行ってやれよ」
「スポンサーから宿泊を提供されたのは、俺とお前らフランシュシュの8人分だけだ。
だから連れて行くわけにはいかん。
お前は留守番だミカ。
それにどうせお前らは温泉には 」
”べし”
「ぐはぁ~」
「た、巽のばぁーか!
大、大、大嫌い」
”ダー”
「あ、み、ミカさん待って」
「いててて。
さくら、いいから放っておけ」
「そげなわけには」
”ダー”
「なぁ、一人ぐらい増えたって黙っていればわからねえだろう」
「そうはいかないわ」
「愛」
「いい、もしミカを連れて行って、そのことがホテルにバレたら、
わたし達だけじゃないスポンサーさんにも迷惑がかかる。
一人分の宿泊代を騙したことになるのだから。
タイアップを考えているのなら、そんなリスクを負うものじゃない」
「・・・だけどよ。
なぁグラサン、なんでミカはフランシュシュのメンバーに入れてやらないんだ?
初めからメンバーに入れてればなんも問題ねえのによ」
「そうだよ、ミカちゃんダンスもすごく上手だし」
「・・・地味だからじゃい」
「「はぁ?」」
「そんなもん決まっとる。
あんな地味な顔したアイドルなんてどこにもいないんじゃいボケー」
「はぁー!
なんだよそれ」
「巽ひど~い」
「え~い、うっさいんじゃい。
メイク終わったんならさっさと出発の準備せんかい」
・
・
・
「うううう」
「ミカさんもう泣かんと。
あ、そうだ、わたし温泉のお湯汲んで持って帰ってくるけん。
それで行水でも」
「いらない。
温泉の素、巽さんのがいっぱいある。
嬉野温泉のもあったから」
「・・・・・・
じゃ、じゃあ、わたしもう一回、幸太郎さんにお願いしてくるけん」
「もういいよ。
ありがと、さくらちゃん」
「ミカさん」
「・・・・・・あのさ、ほんとは温泉なんてどうでもいいんだ」
「え?
じゃなんで温泉って」
「・・・たださ、みんなと一緒にいたかっただけ。
だっていつも一人だから。
まぁ仕方ないけど、わたしはフランシュシュのメンバーじゃないし。
メンバーになりたくてダンスとかいっぱい練習したけど、
わたしはさくらちゃんや愛ちゃん達と違って可愛くないし、
ゆうぎりさんなんかすごく綺麗だし。
それに比べたらわたしなんか・・・・・・
だからアイドル無理ってわかってる」
「そ、そげなこと」
「いいのいいの、自分のことは自分がよくわかってる。
だからアイドルじゃなくてもいいんだ。
・・・ただみんなと一緒にいれたらそれだけで」
「・・・ミカさん。
あ、そ、そうだ!
お土産、なんかお土産買ってくるね。
お饅頭とかお菓子とか」
「ありがと。
でもいいよ。
お饅頭とかもらっても、わたし味覚ないから」
「じゃ、じゃあキーホルダーとかなにか」
やさしいなぁさくらちゃん。
でもさくらちゃん達、ただ働きでお給料なんてもらってないから
キーホルダーとか買えないはずじゃ。
「え~と、それとも他の何か・・・
あ、陶芸品とか」
どうしょう、さくらちゃん真剣に悩んでる。
とてもお金ないでしょなんて言える雰囲気じゃないし。
ん~と、ん~と、何か・・・・・・
あっ、そ、そうだ!
「じゃ、じゃあ、お土産入らないから、それより」
「それより?」
「お願い!
一回でいいから、そのどやんすおっぱいさわらせて!」
「へ、どやんすおっぱい?」
「お、お願い!」
「い、いやー
ミ、ミカさんやめて」
”ドタバタ、ドタバタ"
「ぐへへへへ」
「ミ、ミカさん、顔こわい。
あっ!」
”どた”
「ちゃ~んす」
”ずっしり”
「げ、お、重い」
・
・
・
「愛、ミカは唐津神社のこと何も憶えていないんだな」
「ええ。
千代田橋で転んで頭を打ったところまでは覚えていたみたいだけど、
その後のことは何も覚えていないみたい。
確かに土手のところに割れた眼鏡が落ちてたから、
そこで頭を打ったのは間違いないと思う」
「そうか。
いいか唐津神社でのことは 」
「わかってる。
・・・ね、ミカをメンバーに入れないのは、そのことがあったから?」
「ああ。
・・・・・・だがそれだけじゃない」
「他に理由があるの?」
「・・・・・・愛、あいつはお前らと違って死んでから
まだ一年ちょっとしかたってない。
もしかたら死んだことを知られていないかもしれない。
そんなあいつがアイドルになってネットとかで映像が広がったら、
必ずあいつを知っている人が現れる。
その時、一番辛い思いをするのはのはあいつだ。
俺はあいつにそんな辛い思いをさせたくないんじゃい。
それぐらいなら、俺が嫌われている方がいいに決まってる。
だからあいつをメンバーにするわけにはいかんのじゃい」
「・・・・・・そう。
意外とやさしいのね」
「意外は余計じゃい」
”タッタッタッ”
「ごめんなさい、遅くなりました」
「さくら!
なにしてたんじゃい、遅いんじゃいこのボケ。
さっさと車に乗らんかい」
「あ、はい」
「お前もだ、愛」
「ええ」
”スタスタスタ”
「・・・やさしいっか。
そんなわけないわい。
俺は、俺の都合であいつをあのまま死なせておいてやらなかったんじゃい。
だから、それぐらいは当たり前のことなんじゃい」
・
・
・
「ふぁ~、着いた。
電車、乗り過ごした時はどうなるかと思ったが、何とか佐賀に着いた」
“コキコキ”
「う~ん、さすがに千葉から佐賀までの電車移動はきつい。
身体中が悲鳴をあげてる。
それに 」
”ぐぅ~”
「腹減った。
仕事の前に腹ごしらえないとな。
なんといっても出張の醍醐味は、出張先の美味しいものを食べることにある。
そのため俺は駅弁も食べずに我慢したんだ。
しかも今日は一人。
美味いものは一人でじっくりと味わうのが一番。
味覚はもちろん、視覚、嗅覚、聴覚、触覚。
五感の全てを研ぎ澄まし美味しさを感じるのだ。
それを邪魔する会話など、美味しいものに対し礼を失する以外何物でもない。
わいわい賑やかに楽しく・・・もとい!
わいわい喧しく騒ぎながらしか食べることができないリア充共には、
本当の美味しさを感じることはできない。
すなわち、ボッチこそが真のグルメ家なのだ」
”ビシッ”
「・・・・・・」
”ガシガシ”
「・・・・・・メシ食べよう」
”スタスタスタ”
「佐賀の名物といえば、いかしゅうまいにシシリアンライス、わらすぼ。
そしてなんといっても佐賀牛。
黒毛和牛の最高ブランドだからな。
きっとすごく美味いに決まている。
だが!
すでに俺の気持ちは固まっている。
折角佐賀に来たんだ、なら行くところは決まっている。
昨日、しっかり店の場所とか確認したからな。
ふふふふ、さて早速 」
「ずいぶん楽しそうね」
「え?
は、はぁー、な、なんで」
・
・
・
「はぁー」
”きゅっ、きゅっ”
よしっ、窓拭き終了。
へへ、すごく綺麗になった。
ほら、まるで鏡見たいにピッカピカで・・・・・・
へっ!
「うぎゃ~、ば、ばけもの!」
”きょろきょっろ”
「・・・・・・」
なんにもいない。
そ、そっか、これわたしの顔っか。
いい加減この顔になれないと。
それにしても。
”ジー”
今日は眼鏡してないから、より一層ゾンビィ感が増してるや。
これなら寝起きの巽さんが驚いても仕方ないっか。
「・・・・・・はぁ~」
さてと、さっさと掃除終わらせちまおうっと。
”スタスタスタ”
あとはこのミーティングルームだけ。
それじゃ。
「失礼しやーす」
”ガチャ”
って、もうみんな嬉野温泉に行ったから誰もいないんだけど。
それにしてもこの部屋、相変わらず不気味。
部屋全体が薄暗いし、特にこれ。
”こんこん”
なんで牢屋かオリかわからんけど、こんなのあるんだろう?
もともと何の部屋だったん?
う~ん、よくわからん。
ま、いっか、お掃除お掃除っと。
まずは椅子を片付けて。
”ガタガタ”
・・・そっか、みんなこの椅子に座ってミーティングしてるんだよね。
きっと巽さんがあの黒板のところに立って。
へへ、なんか学校みたいで楽しそう。
わたしも参加したいなぁ。
アイドルは無理だとしても、せめてミーティングぐらい一緒に。
そ、そうだ!
わたしの分の椅子もここにおいてといて、なんかしな~と座ってよう。
わたしあんまり存在感ないから喋らなければ絶対気付かれない。
それにこの部屋の薄暗さなら。
んで、いつの間にかいるのが当たり前のようになって。
よ、よし早速椅子!
えっと~、他に椅子ないかなぁ。
”キョロキョロ”
この部屋には無いか。
仕方ない、食堂の椅子ひとつ持ってこよう。
ん!
あ、段ボールめっけ。
この段ボール使って椅子作っちゃおう。
この前、椅子の作り方ネットに載ってたんだ。
”スタスタ”
へへ、このくらいの大きさなら大丈夫だね。
よし、早速カッターと定規持ってきて作っちゃおう。
あ、でもこれ中に何入ってんだろう。
今までこの部屋にこんな段ボールなかったはずだし。
なんだ?
・
・
・
「ステージは18時開始だ」
「わかりました」
「俺が観光している間、きっちり練習して置け。
レッスン用に娯楽室借りておいたからな」
「はい。
・・・・・・え、幸太郎さんが何の間って」
「観光じゃい。
わしゃ観光じゃ~い」
”キュルルル、ブロロロ~ン”
「「・・・・・・」」
「さぁ~て、あたしらどやんする?」
「どやんするって?」
「はぁ?
お前マジですぐやる気じゃないよな」
「練習せんと」
「するさ後で!
なんでグラサンだけ好き勝手やりよってかって話だろ」
「いかんて」
「はぁ! お前ぶっ殺すぞ」
「え、ええ~」
「うちらほとんど屋敷の中でレッスンしよるとぞ。
そんで、今こうやって嬉野来とんだぞ」
「リリィも散歩したい」
「はい、ちんちく来たー」
「ちんちくじゃないもん、リリィだもん」
「う~ん」
「わずかでしたら、ええやありませんか?
わっちにもこの時代の町、見せてくださんし」
「メイクしてるし、みんな一緒だし。
リリィ達もゾンビィバレしないように気をつけるから」
「んだな、ちんちく」
「リリィだもん」
「う~ん。
・・・みんながいいのなら」
・
・
・
”パクパク、もぐもぐ”
「・・・サイゼ。
まさか佐賀に来てまでサイゼ」
「いや、折角佐賀に来たんだ。
ここはサイゼ一択だろう」
「はぁ~、言っている意味が分からないのだけど。
マニュアル通りに作っているのだから、どこで食べても同じじゃない」
「違うぞ雪ノ下。
まぁリア充のお前にはわからないだろうが、
サイゼのようにマニュアルを徹底しているところでも、調理前の準備や
加熱のタイミング、温度・時間の管理等で店毎に微妙に味の違いがあるんだ。
ましてや県が異なれば。
論より証拠、みろこのミラノ風ドリアの味」
”ぱく”
「うん、やはり何かが違う。
きっと加熱時間が・・・・・・
いや、それだけじゃないもっと何かが。
そ、そっか、何か隠し味を入れてるのに違いない
はっ、も、もしかしてこの味は、佐賀の名産、ピリ辛薬味醤油”雷様の隠し味”
を使ってるんじゃないのか」
「・・・頭が痛くなってきたのだけれど」
”パクパク”
「で、なんでお前佐賀に来たんだ?」
「飛行機で来たのよ」
「・・・・・・お前それぼけてるのか?
確か今週会議だから来れないって言ってたろ」
「はっ!
・・・ご、ごほん。
か、会議は明後日だから、今日の夕方の飛行機で帰る予定よ。
どうしても会議の前に確認したかったことがあったの」
「確認?」
(回想:あの日の雪ノ下のマンションで)
『聞こえたような気がしたの、彼女の声が』
『彼女?』
『ええ』
『ね、ねぇ、ゆきのん彼女って?』
『三ヶ木さんよ』
『美佳っち!』
『ええ。
はっきりとはわからない。
でもあの時、洋館の方から三ヶ木さんの声が聞こえたような気がしたの』
『そっか』
『あなたも憶えてるでしょう、三ヶ木さんが突然いなくなった時の比企谷君の姿 』
『う、うん』
『三ヶ木さんがなぜ突然いなくなったのかはわからない。
でも、もし比企谷君が洋館に行って、もしそこで三ヶ木さんと出会って。
もし、また同じように彼女がいなくなったら。
・・・きっと彼はあの頃、あのゾンビィのような状態に戻ってしまうと思う。
だから、わたしは比企谷君を洋館には・・・・・・行かせたくなかった』
『ゆきのん』
『・・・・・・』
『・・・ね、ゆきのん。
あたしは違うと思うの。
美佳っちのことだから、いなくなったのはきっと何か理由があるんだと思う。
それで美佳っちがまたヒッキーの前からいなくなったとしても、
でもあたしは、それでもあたしはヒッキーは美佳っちに会うべきだと思う』
『由比ヶ浜さん』
『美佳っちの理由、それが何か、ちゃんとはっきりしないといけないんだと思うんだ。
だってこのままじゃ、今のままじゃヒッキーはずっと引きずったまま。
そんなんじゃ、ヒッキーもゆきのんも・・・・・・あたしも始められない。
このままじゃ誰も先に進めない』
『・・・・・・』
『ゆきのん』
『わ、わたしは 』
”だき”
『行っておいで・・・佐賀に
うううん、行くべきだよゆきのん』
『・・・・・・ありがとう由比ヶ浜さん』
(回想終わり:サイゼリアの二人)
「お、おい雪ノ下?」
「洋館で確認したいことが残ってたの」
「だったら連絡してくれれば、俺が明日の予定終わってからでも 」
「それではだめ。
わたしがちゃんと確認しないといけない」
「そっか。
だったらそっちの方は頼むわ。
俺は吉野ヶ原の方に」
「いいえ。
あなたも一緒に行くのよ」
「いや、それは非効率的だろ。
折角二人いるんだ、ここは手分けしてだな」
「これは上司命令よ。
いいから一緒に来なさい」
「・・・・・・」
・
・
・
「あ、みんな、ほら足湯あったよ」
「おお、早速入ろうぜ」
「うわ~い、リリィが一番!」
”ちゃぽ~ん”
「あ、てめぇ、ちんちく!」
”ちゃぽ~ん”
「気持ちよか~、生き返る」
「もう生き返ってますけどね」
「「・・・・・・」」
「あ、ゆうぎりさん、わたし達も足湯に」
「さくらはん、こっちのこれはなんどすか?」
”こんこん”
「あ、これは足蒸し湯といって。
えっと 」
”カタン”
「ほらここの箱の中に足を入れると
ここの下の方から温泉の蒸気がでてきて」
「へぇ~、よくできてますな」
・
・
・
「結構雰囲気あるじゃねえかこの洋館」
「ええ」
「で、何を確認忘れたって言うんだ?」
「それは・・・・・・」
”スタスタスタ”
「お、おい、アポとってるのか」
「いいえ」
「だったら、いきなりはまずいんじゃ 」
”ピンポ~ン”
「すいません、どなたかいらっしゃいませんか?」
・
・
・
「ねぇ、愛ちゃん」
「・・・」
「わたし達、これからちゃんとアイドルとしてやっていけるかな?」
「さくらが思うちゃんとしたアイドルって?」
「えっと、歌って踊ってみんなに喜んでもらって、
元気になってもらって」
「そうなるには練習も意識もまだまだ足りない」
「・・・もっともっと練習すればなれるかな?」
”バシャ”
「・・・・・・」
”スタスタスタ”
”カタン"
「・・・・・・」
”スタスタスタ”
”カタン”
「わたし一生懸命頑張るけん。
ゲリラライブの後に言ったこと嘘じゃないけん」
”カタン”
「あたしもやるからには、半端なことはしたくねぇ」
「芸事にこの身を捧げる覚悟は当の昔に」
「リリィも業界の厳しさ知ってるよ」
「・・・」
「わたしは」
”カタン”
「ずっと一人でやってきました。
正直、今のグループでの活動に戸惑いを感じる部分はあります。
ですが、みなさんが本気で取り組むということであれば、
わたしも努力しないといけませんよね」
「純子ちゃん」
「但し、わたしは無理だと思ったらすぐに抜けるからね」
「絶対そうならんようにする」
「しゃっ! 今日もアッと驚くようなライブにしてやろうぜ」
「なになに、それどんなの?」
「わからんけど」
「どのように今宵のお相手をお慰めしたらいいのでありんしょ」
「ゆうぎりさん、言い方」
「ま、まずはその会社の商品を知らないとだめなんじゃないですか」
「そ、そうか、わたしたちまだサガンシップZを使っておらんで」
「よし、すぐもどってやってみんぞ」
「うん」
「あ、で、でもサガンシップZってどがんしたっけ」
「さくら、お前知らんのか?」
「あ、う、うん。
えっと~、誰か車に積んだと?」
「「・・・・・・」」
「マジか」
・
・
・
「はぁ、はぁ、はぁ」
”ギ~コ、ギ~コ”
や、やった、登り切った。
こっからはしばらく下り坂。
へへ、自転車の醍醐味って、やっぱ下り坂だよね。
さっきの坂もそうだったけど、下り坂を下りる時の風を切る感覚って最高。
ん~っと。
”キョロキョロ”
よし前方人影無し、視界クリアー!
それじゃ。
「ミカ、ママチャリ号、行きま~す!
どりゃ~」
”シャ~”
うひゃ~、風気持ちいい~。
いぇ~い。
あの上り坂を頑張った甲斐があった。
はぁ~爽快だなぁ~
”シャー”
あ、でもちょっとスピード出過ぎ。
少し減速減速。
ブレーキっと。
”ギュ”
・・・・・・あ、あれ?
”ビュー”
え、えっと~
ブレーキ!
”ギュ、ギュ”
・・・・・・う、うそ。
うぎゃー!
ブ、ブレーキが利かない。
うげ、ど、どうしょう。
あ、そ、そうだ足、足の裏の摩擦で。
はっ、だ、段差ー!
”ドン”
う、うげっ。
”ヨロヨロ、ガシャン!”
ふぇ~、し、し、死ぬかと思った。
”がばっ”
はぁ~、くそ、あんなとこに段差あるなんて気がつかなかったよ。
あ、そ、そうだサングラス!
今日、巽さんのサングラス借りてきたんだ。
壊れて無かったらいいんだけど。
”キョロキョロ”
あ、あった。
うんしょっと。
”ひょい”
う~ん、大丈夫だよね、壊れていない。
よかった~
結局、今日顔のメイクしてもらえなかったからなぁ。
一応、マスクして帽子も被ってきたけど、サングラスもしてないとバレるよね。
いくら佐賀の人口は少なめっていっても、そこそこ人とすれ違うし。
それにしてもここどこだ?
たしかさっき標識が。
えっと~、あ、あった。
んと武雄市、そっかここ武雄市か。
それにあそこに見えるのきっと佐世保線だから、うん嬉野温泉まであと少し。
よしそれじゃもうひと踏ん張りっと。
”ぐき”
げ、あ、足首が変な方向に。
やばいやばい直さないと。
”ぐぃ”
ふぅ~何とか向き戻った。
ゾンビィでなかったらやばかった、捻挫どころじゃなかったし。
ん、そういえばなんか膝もギシギシいってるし、腰もなんか変。
これはすこし休まないとかなぁ。
でも、確かステージは18時からって黒板に書いてあったから、
あんまし時間ない。
きっとこれ必要だと思うし。
それに・・・・・・へへへ、これ持っていけばきっとわたしも温泉に入れる。
ホテルまで行っちゃえば、巽さんもさすがに帰れとは言わないよね。
ふふふ、温泉温泉、みんなと一緒に♬
よし、それじゃ急ごうっと。
”ぐき”
ぐは~、膝が・・・・・・
ど、どうしょう、動けん。
やばいやばい、やっぱ自転車で嬉野温泉までって無理だったかなぁ。
身体中が悲鳴上げてる。
ど、どうしょう。
はぁ~、仕方ない、しばらくここで休んで様子を・・・・・・
あっ、そうだ!
”パカ”
これこれ、サガンシップZ。
ほら、これ筋肉疲労とかねんざ、関節痛によく効くって書いてある。
・・・でも、ゾンビィにも効くかなぁ。
ま、いっか、どうせこのままじゃ動けないし物は試しだ。
”びりびり”
それじゃこれをまずは腰に貼ってっと。
”ピタ”
は、は、はひ~
な、なにこれ、なんか腰がすごく楽になって。
はぁ~、気持ちいい、これゾンビィにも効くんだ~
よ、よし、じゃあ次は膝にっと。
・
・
・
”ピンポ~ン、ピンポ~ン”
「なぁ、やっぱり誰もいないんじゃねえのか」
「・・・そうね、お留守なのかしら」
「俺、ちょっと裏の方見てくるわ」
「え、ええ」
”スタスタ”
「あ、もし犬が出てきたらすぐに呼べ」
「え、ええ。
ありがとう、やさしいのね」
「そのためだろ、俺を連れてきたのは。
じゃあな」
”スタスタスタ”
「・・・・・・ばか」
”ピンポ~ン”
「やっぱり誰もいないのかしら」
”スタスタスタ”
「何か用か」
「え、あ、あの、すみません。
もしかしてこの洋館の方ですか?」
「いや、この家の知り合いのものだ。
それよりお前は?」
「あ、申し遅れました。
わたしは雪ノ下建設の雪ノ下といいます。
これはわたしの名刺です」
「ん、雪ノ下建設?
なんだ千葉の会社じゃねえか。
千葉の建設会社がなんのようだ?」
「あ、あの、今、佐賀のリゾート開発事業に取り組んでまして。
それでこの洋館の方にお話が」
「そうか。
で、誰もいないのか?」
「そうみたいですね」
「なんだ、いないのか。
なら帰るか」
「あ、あの」
「ん?」
「すみません、この写真の女性がこちらにお住まいではありませんか?」
「・・・・・・この人は?」
「あ、あの私の友人です。
ずっと連絡がつかなくて心配してたら、この辺で彼女を見たという情報が
あったもので。
もしご存じでしたら 」
「いや、この家にこんな女は住んでねぇな」
「そ、そうですか」
「ああ、間違いない。
まぁ、この家には同じような年頃の娘が何人か住んでるからな。
きっとその中の誰かと見間違ったんだろう」
「そうですか」
「すまないな、力になれなくて」
「いえ、ありがとうございます」
”ペコ”
「じゃあな」
”スタスタスタ”
「・・・・・・・・・・・・よかった」
「お~い雪ノ下。
裏の方にも誰もいないぞ」
「そう。
それじゃ帰りましょう」
「え、も、もういいのか」
「ええ、十分よ」
・
・
・
「さくら、どうだ車あったか?」
「うううん、こっちの方にはなかった」
「そっか」
「さくら」
「あ、愛ちゃん、純子ちゃん。
どう、幸太郎さんの車あったと?」
「いいえ、向こうの駐車場にも無かったわ」
「ち、やっぱりあいつ観光楽しんどるんやなかとか」
「仕方ないですね。
こうなったら戻ってくるまで練習していましょう」
「そうだな」
”ブロロロン、キキキー”
「お前らレッスンもしないでなにやってんじゃい」
「あー、巽!」
「グラサンやっと帰ってきたのか」
「幸太郎さん、車のドア開けて」
「ん、どうかしたのか」
「いいからさっさとドア開けろグラサン」
「なんじゃい」
・
・
・
「じゃ、俺はこのままこの電車で吉野ヶ里の方に行くから」
「ご苦労様。
あまり無理しないでね」
「え?」
「なにか?」
「い、いや、なんかお前さっきからすげぇー機嫌よくない?
ずっと鼻歌歌ってたし」
「べ、別に。
普通だけれども」
「そうか?
じゃあ、お前も気を付けてな」
「ええ。
それじゃまた会社で」
「ああ」
・
・
・
”ガサガサ”
「どうださくら、そっちあったと?」
「うううん。
純子ちゃん、助手席のほうはどう?」
「こちらにもありません。
観光ガイドならありましたけど」
「はぁー!
やっぱお前観光しちょったと」
「あたりまえじゃい。
で、お前らなに探してんじゃい?」
「サガンシップZの箱だ。
グラサンお前知らんとか?」
「そんなもん知らんわい。
そんなことよりさっさとレッスンを 」
”ブ~、ブ~”
「なんじゃい」
”カシャカシャ”
「どうしたミカ」
「あ、巽さん、ね、今どこ?」
「どこって、ホテルの駐車場だが」
「何て言うホテルだったけ?」
「華翠苑だが」
「んと華翠苑、華翠苑・・・
あ、あった!」
「はぁ?
お、おいミカ、お前今何て」
「いたー!
お~い、巽さ~ん」
”シャー”
「は、はぁ?
ミ、ミカ、なんでお前が」
”キキ―”
やっぱりブレーキの利き悪い。
やば! 自転車、と、止まらない。
このままだと巽さんに。
「た、巽さん、そこどいて~」
「へ?」
「ど、どいてー」
「お、おう」
”ひょい”
あ、でも!
巽さんよけたら、後ろの車に当たっちゃうじゃん。
え、えーい!
”ぐぃ”
「へ?」
”どごっ!”
「ぐはぁ~
な、なんで避けた方に」
”どたっ”
「た、た、巽さん大丈夫?」
「ミカさん」
「なんだミカ、お前何しに」
あ、そ、そうだ。
これ渡さなきゃ。
「サキちゃん、はいこれ忘れ物。
これ必要じゃなかった?」
「あ、サガンシップZ」
「掃除してたら見つけて。
きっといるものだと思ったから」
「マジか。
お前、これ持ってくるため、ここまで自転車で来たのか。
すごか根性あるよな」
「えへへへ、でももう足ガタガタ。
じゃ、わたしは早速温泉に 」
「まて~い。
いたたた」
「巽さん大丈夫?」
「ミカ、お前メイクも無しでここまで来たのか」
「え、う、うん。
あ、でもほらマスクしてるし、帽子も被ってきたし。
それに巽さんのサングラスも。
身体の方は一応メイクしてるし・・・・・・」
「このボケー
お前は危機意識が足りないんじゃい!」
「だ、だって」
「だってじゃないんじゃい。
ええ~い、ミカお前はこの車に乗ってろ。
いいか、絶対この車から出るんじゃないぞ!
わかったか、この馬鹿ゾンビィ!」
「え゛ー」
・
・
・
「・・・・・・暇」
今頃、みんなのステージ始まってるかなぁ。
見たかったなぁ。
それに温泉、入りたかったなぁ~
頑張ってサガンシップZ持ってきたのに、あれからずっと車の中。
そりゃメイク無しできたのは悪かったけどさ。
誰にも見つからなかったからいいじゃんか。
「はぁ~ぁ」
それにしても、あれからずっと車の中。
めっちゃ暇なんですけど~
んと、何か暇潰せるものないかなぁ。
巽さん、どっかにエッチな本隠してない?
”ガサガサ”
「・・・・・・ん、これなんだ?
嬉野温泉観光ガイド?」
”ペラペラ”
あ、足湯、この近くに足湯あるんだ。
行ってこようかなぁ。
ほ、ほらこの近くだし。
それにもう暗くなってきたから。
”キョロキョロ”
いいよね。
歩いてる人もいなそうだし。
万一、人と出会ってもマスクと帽子、それにこのサングラスがあるから
ゾンビィなんてバレない・・・はず。
よ、よし。
”ガチャ”
へへへ、足湯足湯足湯♬
”ダー”
・
”トボトボトボ”
えっと~、確かここら辺のはずだけど。
あ、あった。
ここだ、ほらあそこに足湯ある。
”キョロキョロ”
よし、誰もいないよね。
では早速。
「温泉温泉♬」
”ちゃぽ~ん”
ふぇ~、やっぱ気持ちいい~
サガンシップZもよかったけど、やっぱ温泉サイコーだよね。
入ってるの足だけだけど、それでもなんだか足元から体中がほっこりする感じで。
今日の疲れが全部とれるよう。
ほら膝もすごく楽になって。
”バシャバシャ”
へへ、へへへへ、やっぱ抜け出してきてよかった。
・
・
・
”バシャバシャ”
「ふんふんふ~ん♬
はぁ~生き返った」
はっ!
”キョロキョロ”
純子ちゃんいないよね。
へへ、いつもならここで純子ちゃんが決め顔で言うんだ。
「わたし達、もう生き返ってますけどね」
な~んつって、なんつって。
「・・・・・・」
みんなも今頃温泉入ってるのかなあ。
もうステージ終わってる時間だもんね。
温泉、みんなと一緒に入りたかったなぁ~
・・・・・・はぁ~
あ、そういえば、巽さんあとで食事持ってきてくれるって言ってたっけ。
抜け出したのバレたらやばいし、そろそろ帰ろ。
”ガタ”
へ、あ、やば、誰か来た。
か、顔見られないようにしないと。
とにかく、もちっと奥の方に。
”そー”
ここなら隅っこだし薄暗いから、気付かれないはず。
「はぁぁぁー」
”ちゃぽん”
な、なに?
今、なんかすごい溜息が聞こえたんだけど。
”ちら”
あの人、仕事帰りかなぁ、背広姿だし。
ずっとうつむいたままで、こっちに気付いていないみたい。
だったら今のうちに退散退散。
うんしょと。
「はぁぁぁぁー」
・・・・・・大分疲れてるんだあの人。
こっからはうす暗くてよく見えないけど、
なんか全身から黒いオーラーみたいなのが見えるような気がする。
お仕事うまくいってないのかなぁ。
ま、まぁ、わたしには関係のないことだから。
「はぁぁぁぁぁー」
・・・も、もう!
「あ、あの~、大丈夫ですか?」
「ひゃっ」
え、な、なに?
なんかすごく驚かれたんだけど。
は、もしかしてゾンビィってバレた?
でも、顔見られてないはず。
薄暗いし、こんだけ離れてるし。
それにマスクもサングラスもちゃんとしてるし、帽子だって。
う、うん、大丈夫なはず・・・
「あ、す、すみません。
他に人がいるなんて思っていなかったもので」
「あ、は、はい」
よかった、気付かれてなかった。
で、でもどうしょう、なんかわからんけどつい声かけちゃったから、
ちょっとこのままじゃ帰りづらい。
・・・少しだけなら。
「お仕事、大変そうですね?
お忙しいんですか?」
「え、あ、まぁ。
・・・仕事ってものはやめることはできても、終わることはできないものですから」
え、あ、あれ?
今のって
『はぁ~、仕事ってのはやめることはあっても、終わることはねえんだよな』
う、うん、どこかで聞いた気が。
「それに忙しいって漢字は心を亡くすって書くんですよね。
本当、こんなに忙しいと心がなくなりますよ。
今日だって本当は夕方には嬉野温泉に着いてるはずだったのに、
横暴な上司に振り回されて結局こんな時間に・・・
あっ、す、すみません。
何言ってんだ俺、いきなり初対面の人に」
”ガシガシ”
「あ、うううん。
わかるような気がします。
横暴な上司っていますもんね。
わたしだってほんとはゆっくり温泉に入りたかったのに、
横暴な上司の所為で足湯で我慢してるんですよ」
「そ、そうですか」
・
・
・
「雪ノ下建設・・・ですか」
「ああ、そうだ。
お前のところの家政婦ゾンビィの友人って言ってたぞ」
「・・・・・・」
「これで二人目だ。
気をつけろよ」
「わかりました」
「じゃあな」
”プー、プー”
「雪ノ下建設・・・あの時の女か」
”スタスタスタ”
「・・・さてと大人しくしているか、あのボケは?
お~い、飯じゃい。
飯持ってきてやったぞ。
いいか、なんと佐賀牛、佐賀牛じゃ~い。
がばい感謝せんか~い。
まぁ味のわからないお前には、正にゾンビィに真珠だがな」
”シ~ン”
「え、あ、あれ?
なんじゃい、まだ怒ってるのか?
いいか、温泉といってもお前もさくら達もメイクしてるから
温泉には入れないんじゃい」
”ガチャ”
「だからいい加減に機嫌を・・・・・・
い、いない。
ま、まさか」
”ダー”
・
・
・
「本当に魔王と氷の女王なんですよ俺の上司は」
「あははは。
で、でもさ、結構あなたのこと買っているからじゃない?
それに、ほんとはあなたもお二人のこと信頼してるって気がする」
「ま、まぁ、あの二人、人格以外は完璧ですから。
でも俺はどっちかというと、買われているというよりも飼われているって感じで」
「え?
あっ、あはははは」
「はははは」
「そうだ。
ね、お仕事で佐賀の観光名所回ってるって言ってたでしょ」
「え、あ、はい」
「それじゃ、宝当神社にはもういったの?」
「宝当神社?」
「あ、うん。
なんでも宝くじを買った地元の人が祈願してもらったら
すごい高額当選したんだって。
それから宝くじの祈願に来る人が絶えないんだって。
なんかすごいご利益があるって評判になっているんだよ」
「へ~
それはどこにあるんですか?」
「あ、あのね高島って島にあって、
そんで唐津城の近くに宝当桟橋って定期船の乗り場があるの」
「ありがとうございます。
早速、明日の予定が終わったら行ってみます」
「あ、よかったらわたしが案・・・」
「え?」
「あ、うううん、なんでもない」
な、何言ってんだわたし。
案内なんてできるわけないじゃん。
そんなの巽さん絶対許してくれないし。
でもなんだろう。
なんかこの人と話しているとすごく楽しくて、うれしい。
・・・・・・へ、うれしい?
うれしいの?
「そうですか。
あ、じゃ俺そろそろホテルに。
このままだと、飯にありつけなくなりそうなので」
「あ、う、うん」
「・・・・・あ、あの、よかったらホテルまで送りましょうか?
女性一人だと危ないといけないので」
「あ、大丈夫。
わたしの泊ってるホテルすぐそこだから。
それにもうちょっとここにいたいなぁって」
「そうですか。
それじゃ、暗いですからお気をつけて」
「あ、あの~」
「はい?」
「え、あ、あの・・・・・・な、なんでもないです」
「そうですか?
それでは」
”ぺこ”
「あ、そうだ。
よかったらこれどうぞ」
”ごそごそ”
「え?」
「あった。
えっと外観はなんか黄色と黒色で禍々しいけど、
これ、千葉の誇るソウルドリンクですので。
俺も大好物です。
ここ置いておきます」
”カタ”
「あ、ありがと」
「ま、また会えるといいですね」
「・・・はい」
「じゃあ」
”スタスタスタ”
行っちゃった。
”ぎゅっ”
はぁ、はぁ、はぁ。
あ、あれ、なんだろう、なんかすごく胸が苦しい。
な、なんで急にこんな・・・
と、とりあえず深呼吸して。
”スー、ハー、スー、ハー”
だ、だめだ、どんどんひどくなる。
どうしたんだろう、なんなんだこれ。
なんでこんなに苦しいんだ?
はぁ~
ん、あ、あれ、あの人がおいてった・・・
”ヨロ、スタ、スタスタ”
えっと、なんか千葉のソウルドリンクっていってたけど。
うわぁ~、なんかほんと禍々しい。
・・・でも、これを見てると、心なしか少し楽になってきた気が。
”ひょい”
マックスコーヒー?
このコーヒーが千葉のソウルドリンクなんだ。
美味しいのかなぁ。
さっきの人も大好物だって。
まぁ、でもわたしは・・・
ま、いっか。
ちょっと飲んでみっか。
”カチャ”
「頂きます」
”ゴクゴクゴク”
「えっ!
あ、あ、甘い、めっちゃ甘い」
な、なんで?
わ、わたし味覚なかったはず。
い、いままで何食べても、何飲んでも、全然味を感じなかったのに。
”ゴク”
甘い。
すごく甘い。
な、なんでだろう。
それに・・・・・・な、なんか懐かしい味。
”ポツ、ポツポツ”
あ、あれ、わたし泣いてる。
なんで泣いてんだ?
わからない!
なんかなんか、なんもわからない。
だけど!
「ううううううう」
「ミカ!」
「あっ、た、巽さん」
”ズカズカズカ”
「な、な、何してんじゃい!
車から出るなって言ったろうが、この大ボケー!」
「うううう、うわ~ん」
「へ?
あ、い、いや、な、泣かんでも。
わ、わかればいいんじゃい、わかれば。
まぁ無事でよか 」
「うわ~ん」
”タッタッタッ”
「お、おい、どうした?」
”ドン”
「ううううう、うわ~ん、うわ~ん」
「ど、どうしたんじゃい?」
「わからない、わからない、わからない!
わ、わからないけど、なんかわからないけど、うわ~ん」
「・・・・・・」
ーーーーーーーー
”ザザ~ン、ザ~、ザザ~ン、ザ~”
昨日のあれ、何だったんだろう。
なんか急に胸が苦しくなって。
そんでこのコーヒー飲んだらなんかすごく悲しくなって。
・・・マックスコーヒーっか。
なんだろうねこのコーヒー。
・・・・・・・・・・・・それとあの人。
「・・・・・・」
ん、あ、あれ高島からの定期船。
あの人、あの船に乗ってるのかなぁ。
昨日、予定が終わったら行ってみるって言ってたし。
『また会えるといいですね』
・・・・・・もう一度、会いたい。
・
・
・
”ザブン、ザブン”
「宝当神社っか。
マジご利益あるんだな、なんかすごい人だった。
これは今度のプロジェクトのいい目玉になるかもしれないな。
あの人にお礼言わないとな。
・・・・・・あっ、連絡先」
”ガシガシ”
「・・・・・・はぁ~」
”ザブン、ザブン”
「ん、海から見る唐津城もなかなかだな。
写真写真っと」
”カシャ”
「あ、あんなとこに綺麗な砂浜もあるじゃねえか。
洋館からもそんなに遠くねえし。
一応、写真撮っておくか」
”カシャ”
ーーーーーーーー
”カチャ、カチャ”
「これでよしっと。
ふぅ~、なんとか東地グループとの打ち合わせには間に合いそうだな」
「比企谷君、ご苦労様。
紅茶淹れたのだけどどうかしら」
「え、あ、すまん頂く」
”ゴク”
「はい、これもどう?
佐賀のお土産に白玉饅頭買ってみたのだけど」
「・・・なにが望みだ雪ノ下。
はっ、もしかしたらまた何か仕事を」
「べ、別に何もないわ。
お、お土産が余ったからよ。
いらないのなら無理にとは 」
「いや、ならいただく」
”パく”
「うまい」
「・・・そ、そう、よかった。
で、どう?
資料、間に合いそう?」
「あ、ああ。
あと何枚か写真を取り込んで終わりだ」
「そう、さすがね。
あら、この写真って?」
「ああ、これは宝当神社だ」
「宝当神社?
予定していた観光のリストにはなかったと思うけど」
「ああ。
ちょっと嬉野温泉で教えてもらってな。
何でもすごいご利益がある神社らしい。
取材に行った時も参拝の人で凄かったからな」
「そう」
「あ、あとこれ」
”カシャ”
「これは定期船からみた唐津城。
海の方から見るとまた一段とかっこいいよな。
それと」
”カシャ”
「これはあの洋館の近くの・・・・・・砂・・・浜」
「洋館ってあの洋館の近くの?」
「・・・・・・」
「比企谷君?
どうかしたのかしら?」
「・・・・・・美佳」
最後までありがとうございました。
今話にてとうとうミカ・・・美佳を見つけた八幡。
さて、次話からは第二章。
ミカの記憶は、八幡とは。
あ、あれ、これはゾンビランドサガの・・・・・・
す、すみません、また見に来ていただいたらありがたいです。
では、ではでは。