ゾンビランドミカ   作:裏方さん

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す、すみません。
もう少し早く更新できたらといいながら・・・・・・

え、えっと前話にてフランシュシュのマネージャーになったミカ。
でも芸能界はそんなに甘くなくて。
またミカの周辺もいろいろとざわついて

では、ガタリンピック編よろしくお願いします。

あっ、すみません。 今回もほとんど会話形式です。

では。


ガタリンピック ープライドと決意と・・・すれ違いー

「ごめんね、もう今度のイベントの地元出演者枠決まっちゃっててね。

 ライブのタイムスケジュールとか出来ちゃってんだよね」

 

「あ、いえ、こちらこそご無理を言ってすみません。

 今日はお忙しいところ、お時間頂きありがとうございました。

 また次回よろしくお願いします」

 

”ぺこ”

 

「じゃあね」

 

「あ、はい」

 

”スタスタスタ”

 

「あの娘、誰っすか?

 なんか最近、局内でよく見かけますけど」

 

「え、あ~なんだっけ、フラ何とかってご当地アイドルの売り込み」

 

「へ~、ご当地アイドルってまだそんなのあったんすね」

 

「だな」

 

「あ、そんなことより会議の時間やばいっすよ」

 

「マジか」

 

”タッタッタッタ”

 

「・・・・・・ふぅ。

 帰ろっか」

 

”トボトボトボ”

 

はぁ~、また今日もお仕事もらえなかった。

何日もこのテレビ局通って、やっと話聞いてもらえたけどさ。

 

”ガシガシ”

 

そう甘くないってわかってたけど、さすがにこう毎日駄目だと正直凹む。

・・・・・・やっぱりわたし向いてないのかなぁマネージャー

 

「はぁ~」

 

     ・

     ・

     ・

 

”キュッ、キュッ”

 

「発砲騒ぎのあった寿通り商店街、生首騒動のあった嬉野温泉、そしてここ!」

 

”キュッ”

 

「俺があの化け物を見つけた千代田橋。

 この地図上の三点を結んだ範囲。

 きっとこの範囲のどこかに隠れているはずだ」

 

「でも結構広いですよ古怒田課長」

 

”ギロ”

 

「あっ、す、すみません所長、古怒田所長」

 

「まぁいい。

 いいか、金はかかってもいい。

 必ず探し出せ。

 俺のプロジェクトには絶対この化け物が必要だからな」

 

「プロジェクト・・・・・・ですか」

 

「ああ。

 みてろ、この佐賀に一大テーマパークをつくるんだ。

 ホラーとスリルのテーマパーク、ゾンビランドサガをな!

 既に心当たりの土地の調査も済んでいる。

 そして、この化け物はそのテーマパークの目玉になるんだ。

 この化け物さえ手に入れれば、ハウステンボス何て目じゃない。

 だからどんな手を使ってもいい。

 この化け物を探し出して捕まえろ」

 

「捕まえた暁には」

 

「ああ、わかってる。

 お前が今までに見たことのない大金、拝ませてやる。

 一生遊んで暮らせるほどのな。

 ・・・・・・俺はこんなくそ田舎でくすぶっていい人間じゃないんだ。

 必ずこのプロジェクトを成功させて、本社に戻ってやる」

 

”トントン”

 

「どうした」

 

”ガチャ”

 

「すみません、所長。

 雪ノ下建設の雪ノ下課長と比企谷さんがお見えになりましたが」

 

「ああ、わかった。

 今行くから、会議室に待たせておけ」

 

「はい」

 

”スタスタスタ”

 

「雪ノ下建設ですか。

 確か今回の件、雪ノ下建設との共同プロジェクトだとか」

 

「ああ。

 なんか既存の施設を有効利用するんだとか、

 しょっぼいプロジェクト案持ってきやがった。

 なぁ知ってるか、二十歳そこそこのガキが課長だとよ。

 何の実績もねえだろうに、血縁だけで課長なんだろうよ。

 まったくどこもかしこも血縁、血縁、血縁!

 やだね、血縁ってのは。

 気に食わねえが、下手に出て適当にいい思いさせておけばいいだろう。

 まぁ、大事な金鶴だからな、金引き出すまでそれなりに丁重に扱ってやる。

 さてっと、あんまり待たせてご機嫌を損ねてもいけねえ。

 じゃ化け物の件、頼んだぞ」

 

「はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

”トボトボトボ”

 

ふぅ~、疲れた。

さっさと水浴びして、今日は早く休みたい。

 

「「ぎゃ~、ぎゃ~」」

 

”ドタバタ、ドタバタ”

 

へ、なんだ?

みんな何騒いでんだ?

家の外まで、声響いているんだけど。

はっ!もしかして晩ご飯遅くなったから、

たえちゃんがお腹すかせてまた暴れてるんじゃ。

 

”ガチャ”

 

「ただいま~

 ごめんね、今晩ご飯つくる・・・から。

 へ?」

 

「てめぇぶっ殺す!」

 

「は、はぁー!」

 

”ビュン”

 

「ひ、ひぇ~

 ちょ、ちょっと待ってサキちゃん。

 なんでいきなりバット!

 ちょ、ちょっと危ないって」

 

”ビュン”

 

「ひゃっ、ご、ごめん今ご飯作るから許して!」

 

「うぉりゃー!」

 

”ビュン”

 

「ひぇっ」

 

”ズデン”

 

あわわわわ。

いくら晩ご飯が遅くなったからって、ちょ、ちょっとやり過ぎだ。

いま避けなかったったら、間違いなく頭吹っ飛んでた。

 

「サキちゃん!」

 

”カサカサカサ”

 

「ち、逃げやがった。

 愛、そっち行ったぞ」

 

「ひぃ」

 

「バカ、逃げてんじゃねえ。

 くそ、純子挟み撃ちだ」

 

「あ、は、はい」

 

”ドタバタ、ドタバタ”

 

「ミカさん大丈夫と?」

 

「あ~びっくりした。

 サキちゃん、いきなりバットもって向かってくるんだもん。

 で、どうしたのさくらちゃん?」

 

「Gが、Gが出たとよ」

 

「G? ああ、ゴキちゃんか。

 はぁ~、情けない。

 たかがゴキちゃんごときで、大のゾンビィが何を騒いでんだか」

 

「ミカさん、Gは平気なんだ」

 

「あったりまえじゃん、この家の台所を預かるわたしがGの一匹や2匹 」

 

「あ、くそ飛びやがった」

 

”パタタタタ、ピタ”

 

へ、なに?

何かが背中についたような。

 

”カサカサ、スポ!”

 

「へ、ぎゃー!

 G、G、Gが服、服の中にー

 い゛、い゛や゛ー」

 

”ビョン!”

 

「「おー」」

 

”ガツン”

 

「げふ、て、天井」

 

”ドタ”

 

「み、ミカさん!」

 

「お、おい、こいつ今天井に頭ぶつけたぞ。

 死んだんじゃねえのか?」

 

”カサカサカサ”

 

「ん、あ、てめぇこんなところにいやがった!

 ま、待ちやがれ」

 

”カサカサ”

 

「う゛ー」

 

”パシッ”

 

「あ、たえちゃんが手で」

 

「よし、でかしたたえ。

 今処分してやるから、あたしによこせ」

 

「あ゛ー」

 

”にぎ”

 

「ば、ばっかそんなもん食おうとすんじゃねえ。

 ほ、ほらこっちによこせ」

 

「う゛!」

 

「う゛じゃねえって、よこせ」

 

”ドタバタ、ドタバタ”

 

「ミカさん大丈夫と?」

 

「う~、はっ」

 

「あ、気がついた」

 

「ほらミカ、お水。

 しっかりしなさい」

 

”ゴクゴク”

 

「ぷはぁ~、生き返った。

 ありがと愛ちゃん。

 あ、さくらちゃん、G、Gは?」

 

「サキちゃんが処分してくれたけん、もう大丈夫」

 

「ふぅ~よかった」

 

「ふふ、やっぱりミカさんも怖かったけん」

 

「・・・・・・で、ミカ今日はどうだったの?」

 

「え、あ、うん、ごめん今日もお仕事駄目だった」

 

「はぁ、また今日も駄目だったのか!

 お前気合がたんねぇんじゃねえのか、気合が」

 

「気合、めいっぱい入れてるつもりだけどなぁ~」

 

「で、明日はどうしょると」

 

「あ、うん、明日は唐津商工会さんにアポとってあるから」

 

「よしわかった。

 明日はあたしも行く。

 お前に本物の気合ってもん見せてやる」

 

「気合だけでどうにかなるものじゃないでしょ。

 ただお仕事くださいだけじゃ通じないんだから。

 お仕事もらうにしてもいろいろ手順とかがあって」

 

「そっか。

 じゃ愛、お前も一緒に来てくれ。

 あ、それと純子お前もな。

 気合じゃぜってぇ負けねえけど、そういった芸能界のしきたりというか

 ルールっていうもの、あたしじゃわからねえからよ」

 

「はぁ~、まあ確かにね。

 芸能界の経験のないミカには難しいかも」

 

「サキちゃん、愛ちゃん♡」

 

「純子、お前もいいよな」

 

「お断りします」

 

「はぁ!」

 

「それはミカさんのお仕事かと。

 私達が安易に首を突っ込むものではありません。

 ミカさんにもマネージャーとしてのプライドがあるはずです」

 

「いや、だ、だがよ」

 

「お手伝いすることは簡単です。

 ですが、それはミカさんに失礼というものではありませんか?

 ミカさんがそのような甘えた考えを持っているはずがありません。

 ・・・ですよねミカさん」

 

”ジロ”

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・それとも、あなたのマネージャーになるという思いは、

 その程度のものだったのでしょうか」

 

「・・・・・・」

 

”ドン!”

 

「そんな中途半端な思いでマネージャーをやられてはこっちが迷惑です」

 

”スタスタスタ”

 

「お、おい純子」

 

”ガチャ”

 

「ちょ、ちょっと待てって」

 

”バタン!”

 

「お、おい」

 

「待ってサキちゃん!

 純子ちゃんの言う通りだよ。

 わたし、もう少し頑張ってみる」

 

「しかしよ」

 

「大丈夫大丈夫!

 明日は今まで以上に、もっとめいっぱい気合入れていくから」

 

「そ、そうか」

 

「うん。

 じゃ、明日に備えて先に水浴びしてくるね」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガチャ”

 

「ふぅ~、いい風呂じゃった」

 

「・・・・・・」

 

「うぉ!

 な、なんじゃい、いきなりドアの外に立ってるんじゃないわい。

 びっくりして心臓止まるとことだったじゃろうが、この馬鹿ゾンビィ」

 

「・・・・・・」

 

「で、なんだ、何か用か?」

 

「あ、あの」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「行ってきます」

 

”トボトボトボ”

 

「ミカさん」

 

「さくら、大丈夫かよあいつ。

 全然気合はいっちょらん」

 

「愛ちゃんやっぱりわたし達も 」

 

「いまはミカを信じましょう。

 さぁ、私達はレッスンを 」

 

”ガチャ”

 

「お前ら全員いるか」

 

「あ、幸太郎さんお早うございます」

 

「ミカ以外は全員いるけど」

 

「グラサン、何か用か?

 あたしら今からレッスンするところだ」

 

「お前らは今からプロモーションビデオの撮影を行う」

 

「プロモーションビデオ?」

 

「そうだ。

 今日から放送されるドラ鳥のCMに続く、知名度アップ作戦の第2弾じゃい。

 プロモーションビデオをとって、YouTubeやニコニコとか

 いろんな投稿サイトにアップするんじゃい。

 わかったらさっさと準備しろ」

 

「あ、幸太郎さん。

 準備って言っても、ミカさんお仕事行かれたけん、身体のメイクが」

 

「心配ない、俺がやる」

 

「え?」

 

「顔も身体のメイクも俺がやる」

 

「はぁっ!

 何言ってんだてめえ」

 

「巽やだ!」

 

「・・・・・・変態」

 

「え~い、うっさいんじゃ~い。

 お前らが目覚めるまでは、ずっとず~と俺がお前らの身体のケアしてきたんじゃい。

 包帯巻き直したり、身体拭いたり、他にもあんなこととかこんなこととかな。

 お前らの裸なんか、身体の隅から隅まで見飽きてんじゃいこのボケー

 いいからさっさと準備せんか~い」

 

「う、うそ」

 

「はぁー!

 て、てめぇあたし達が眠っていることをいいことに、

 変なことしてたんじゃねえだろうな」

 

「し、信じられない。

 最低、絶対嫌だからね」

 

「・・・・・・」

 

「え~いうっさいんじゃ~い!

 今更お前らのしょぼ~い包帯だらけの裸見たところで、

 な~んも感じるかこの馬鹿ゾンビィ~」

 

「て、てめぇ!」

 

”ギャーギャー、ワイワイ”

 

「・・・・・・隅から隅まで見られた」

 

「リリィはんどうかしたでありんすか?

 なんや顔色悪うおますけど」

 

「あ、ううん、なんでもないよ。

 それにゾンビィだもん、顔色は初めから」

 

「そうでありんすか?

 ん、純子はん?」

 

”ツカツカツカ”

 

「メイク、お願いします」

 

「お、おい純子」

 

「純子ちゃん」

 

「純子、あんた何言ってんの」

 

「私は、アイドルとして自分のやるべきことをやるだけです」

 

”ぬぎぬぎ”

 

「お、おい」

 

”バサッ”

 

「これでよろしいでしょうか」

 

「ああ」

 

「ちっ。

 グラサン、変なとこ触ったらぶっ殺すぞ!」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ツカツカツカ”

 

「すみません、お待たせしました」

 

「あ、いえ。

 お忙しいところお時間頂きありがとうございます。

 フランシュシュのマネージャーやってます、ローレ・・・・・・

 ただの!

 ただのミカです」

 

「多田野さん?

 よろしくお願いします」

 

「は、はい、宜しくお願いします」

 

「さ、どうぞ座ってください。

 お話、伺いましょうか」

 

     ・

     ・

     ・

 

「うううううう」

 

「なんでぇ、泣くぐらいだったらやめときゃよかったじゃねえか。

 まったく」

 

「サキちゃん!

 ほら、純子ちゃんもう泣かんと」

 

「す、すみません。

 でも、でも、ううううううう」

 

「お前らなにしてんじゃ~い。

 さっさと準備せんかい」

 

     ・

     ・

     ・

 

”トントントン”

 

「んー 」

 

「え、えっと、お願いします。

 絶対いいステージ見せてみせます」

 

「熱意はわかるんだけどね。

 ね、写真だけじゃなくて、なにか動画とかないの?

 ほらさっき言ってた佐賀城でのライブのやつとか、レッスンの風景でも

 いいんだけど」

 

「え、えっと・・・動画の方は・・・ちょっと」

 

「ふむ、写真だけじゃねえ」

 

「・・・・・・」

 

ゲリラライブの時の動画は撮ったけど、あれはとても見せられたものじゃない。

佐賀城や嬉野の時はステージ見られなかったし。

レッスン風景何て・・・・・・みんなゾンビィだもんな。

・・・・・・仕方ない。

土下座、もうここはやっぱり土下座しかない

今のわたしにできることはそれぐらいしか・・・・・・

よし! 見せてやる、一世一代の土下座ってやつを。

 

”ガタ”

 

「あ、あの 」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「ん、なにやってんだあんなところで」

 

「え?」

 

「ほらあれ、外の駐車場のところ」

 

駐車場?

 

「あっ!」

 

「えー、あたし達フランシュシュって言います。

 今日はめいっぱい頑張るんでよろしく」

 

「フラン・・・ね、あれ君のグループじゃない?」

 

「え、あ、はい」

 

「ミュージックスタート!」

 

「「目覚RETURNER、願えばいいんだ♬」」

 

「・・・・・・」

 

「あ、あの~」

 

「ね、あれ許可を得てやってるの?

 今日、駐車場でなんかやるって聞いてないんだけど」

 

「あ、いえ、多分許可は 」

 

「だよね。

 許可得てないのにあんなことやっていいと思ってるの?

 社会のルール、守ってないよね」

 

げ、や、やばい。

やっぱり怒られた。

これじゃ仕事もらえないじゃんか。

もう、何やってんだみんな!

 

”ガタン”

 

「す、すみません。

 あ、あの、すぐ止めさせてきます」

 

”にぎ”

 

「へ、あ、あの~、なんで手を 」

 

「もう少しこのままで」

 

「え?

 あ、はぁ」

 

「「刹那のソウルにCUT IN♬」」

 

「はぁ、はぁ、以上、フランシュシュでしたー」

 

“ダダダダ”

 

「こらー、お前ら駐車場で何撮影してんだー!」

 

「撤収、撤収じゃ~い」

 

”ダー”

 

「ま、待てー」

 

”バタン”

 

「出発じゃ~い」

 

”ブロロロロ~ン”

 

「・・・・・・」

 

「あ、あの~、ほんとにすみません、すみません」

 

”ぺこぺこ”

 

「・・・・・・ぷっ! あははははは。

 はぁ~、おもしろかった」

 

「え、おもしろ・・・かった?」

 

「あ、ごめんごめん。

 こんなに笑った久しぶりかな。

 ・・・・・・ふぅ~

 あのね、今全国の商店街はどこもピンチなんだ。

 この佐賀も例外ではない。

 客足が遠のき、いたるところシャッターが締まってる店がある。

 それが商店街の雰囲気をさらに悪くして、結果ますます客足が遠のいている。

 商店街は負のスパイラルに陥っているんだ。

 ・・・・・・もう、商店街なんていらないのかもしれない」

 

「そ、そんなことないです!

 わたし、商店街で買い物しますし、お店の人との会話も楽しいし。

 それに・・・・・・いつも負けてくれるし。

 わたしは商店街大好きです」

 

「ありがとう。

 この閉塞感に覆われている商店街を救えるのは、あの娘達のような

 パワーかもしれないな。

 ルールとか常識とか、今までと同じ型通りのやり方に拘っていたら救えないんじゃない

 だろうか。

 ・・・・・・もしかして、私はどこかでこういうのを探していたのかもしれない。

 ね、君、もう少し話聞かせてもらっていいかな」

 

「え、あ、はい。

 こちらこそお願いします

 あ、でもその前に」

 

「その前に?」

 

「あ、あの、そろそろ手を離してもらえると~

 さっきからギュって」

 

「え、あっ!

 ご、ごめん」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ピンポ~ン”

 

「チース、佐賀運送です。

 お届け物を 」

 

”バタン!”

 

「はい、お待ちしてました!」

 

「うわっ、びっくりしたー

 えっと、乾さんでよろしかったですね。

 すみません、この受け取りにサインをお願いします」

 

「あ、はい」

 

”カキカキ"

 

「え、巽?

 あ、あの~ここは乾さんのお宅じゃ」

 

「え、あ、す、すみません、間違えました」

 

”カキカキ”

 

「どうぞ」

 

「あ、はい。

 それじゃ荷物はこちらに置けばよろしいですか?」

 

「あ、はい」

 

”ドサ”

 

「ご苦労様でした」

 

「お~い、その荷物、全部こっちに持ってきてくれ」

 

「「うっす」」

 

”ドサ、ドサ、ドサ”

 

「え?

 あ、あの段ボールは一つじゃ」

 

”ドサ、ドサ”

 

「あ、あの~」

 

「何でしょう?」

 

「あ、いえ、なんでも・・・・・・」

 

     ・

     ・

     ・

 

”タッタッタッ”

 

やった、やった♬

初めてお仕事もらえた。

ギャラは少ないかもしれないけど、商店街の夏フェスすごく盛り上げて、

わたし達の力で商店街を救うんだ。

そんでそれをきっかけにフランシュシュも!

よ、よし頑張るぞ。

さ、早くみんなにこのことご報告ご報告っと

 

「ルンルンルン♬

 たっだいま~ロメロ~

 相変わらず、ぶ・さ・い・く♡」

 

「ウー、ワンワン!」

 

「へへ、ごめんごめん。

 あとでゲソ持ってきてあげるね」

 

さてっと。

ん?

あ、あの後ろ姿は巽さん?

倉庫の前で何やってんだ?

 

”テッテッテッ”

 

「巽さん?

 こんなところでなにを・・・・・・

 げ、何この段ボールの山!」

 

”ぎゅ”

 

「ん、ん~」

 

”ジタバタ、ジタバタ”

 

「し、静かにしろ。

 大声出すんじゃない。

 い、いいか騒ぐんじゃないぞ。

 わかったか」

 

”こくこく”

 

「・・・・・・ふぅ」

 

”ぱっ”

 

「ぷはぁー

 いきなりなにすんだ!

 口塞がれて死ぬかと思ったじゃんか。

 ・・・・・・で、どうしたのこの段ボールの山。

 なにが入ってるの?」

 

”パサ”

 

「このTシャツじゃい」

 

げ、な、なに巽さんの着てるTシャツ。

なんかスーツ広げて、自慢げに見せびらかせてるんだけどさ、

すごくダサ!

白地になんか虹が描かれていて、

んで、フランシュシュってロゴ・・・・・・

 

「ぷ、ぶはははぁ!

 なにこのクズみたいなデザイン。

 だっさ、ちょ~だっさ」

 

「・・・・・・」

 

「それと巽さん、Tシャツ似合わねぇ~

 お、おかしい、おかしくて死にそう、死んじゃう、死ぬ~」

 

「え~い、うっさいんじゃい!

 死ぬ死ぬって、お前はもう死んでるんじゃい。

 ふん! もうお前は絶対メイクしてやらんからな!

 一生そのままゾンビィ顔でいろ、このボケー」

 

「えっ!

 冗談だって冗談。

 や、やだなぁ~、真に受けちゃって。

 いや~そのTシャツ、よく見るとなんか味わいがあってすごくいい。

 うんいいなぁ~このデザイン。

 それに巽さん、Tシャツ似合ってる。

 かっこいい!

 うん、まさに馬子にも衣裳!」

 

「ん、そうじゃろそうじゃろ・・・・・・ってもう遅いんじゃい!

 それに馬子にも衣裳ってなんじゃい!」

 

”ぷぃ”

 

「ひぇ~、メイク、メイクだけはお願いします。

 ほ、ほらゾンビィの顔じゃマネージャーのお仕事でないから」

 

「ふん!

 ・・・・・・仕方ない。

 どうしてもメイクしてほしいと言うのなら」

 

「言うなら?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

”キキキキー”

 

「会場に着いたぞ。

 俺は車を停めてくるから、お前達はさっさとこのTシャツに着替えて

 受付してくるんだ」

 

「げ、やっぱりそのTシャツ着るのか」

 

「リリィやだ、そんなだっさいの」

 

「え~い、うっさいんじゃい!

 お前らここに何しに来たんじゃい。

 遊びに来たわけじゃない、知名度アップのお仕事のためじゃろがい!

 お前らプロじゃろ。

 ならばプロらしくさっさと仕事せんかい。

 ・・・・・・なぁ純子」

 

「・・・・・・わかりました」

 

”ガタン”

 

「さ、いきましょうお仕事です」

 

「あ、待って純子ちゃん」

 

”スタスタスタ”

 

「ちっ、お前ら行くぞ」

 

”ゾロゾロゾロ”

 

「ね、純子ちゃん。

 幸太郎さんと何かあったと?」

 

「いえなにも。

 巽さんの言う通り、これはお仕事です。

 私達はプロのアイドルとして私達のやるべきことをやるだけです」

 

「純子ちゃん」

 

「さ、行きましょう」

 

「う、うん」

 

”スタスタスタ”

 

「なぁさくら、そういえばミカどうしたんだ?」

 

「え、あー、車の中にはおらんやったような。

 確かメイクの時にはいたはずなんだけど」

 

「もしかして置いてきたんじゃねえのか?

 あいつだまっているといるのかいねえのかわからねえからな。

 この前もよ、突然暗闇から 」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「ね、さくら。

 私達の出場する種目って」

 

「あ、えっと確かガタチャリとガターザンやったとよ」

 

「ガタチャリって干潟の上に置かれた板の上を自転車で走り抜けるやつよね。

 昨日映像見たからわかるけど、ガターザンっていうのは?」

 

「えっとガターザンっていうのはクレーンから下がっているロープを使って、

 ターザンみたいに干潟にジャンプするとよ。

 そん時の距離とパフォーマンスの得点で順位を競うと」

 

「パフォーマンス?

 さくらはん、パフォーマンスってなんでありんすか?」

 

「あ、えっと演技というか芸というか」

 

「芸?

 芸ならわっちに任せておくんなんし」

 

     ・

     ・

     ・

 

う、うれねぇ~

はぁ~、どうすんだこれ。

それに巽さん、露店販売の許可とってあるって言ったけど、

指定された場所ってなんか他の露店からからすごく離れているんだけど。

そのせいでここまで人流れてこないし。

 

”ガヤガヤ”

 

あっちの方は賑やかだなぁ~

えっと、たこ焼きに唐揚げ、それに焼きそば?

は~いい匂い。

風に乗ってソースの焦げた美味しそうな匂いがここまで流れてくる。

 

”ぎゅるるるる”

 

は、腹減った~

今日は先乗りだったからご飯食べてないもんなぁ。

うううううう、でもお金持ってないし・・・・・・お金。

そっだ、頑張ってなんとしてもこのTシャツ売らないといけないんだ。

じゃないと、わたし達非常にまずい。

 

 

 

 

 

ーーーー昨晩 倉庫前ーーーー

 

 

 

 

 

『え、お金がない!』

 

『ああ、活動資金がとうとうマジやばくなった。

 どれくらいやばいかと言うと、明日の食費もないぐらいだ』

 

『で、でもドラ鳥のCMのギャラが確か入ったんじゃ』

 

『あれでこのTシャツ作ったんじゃい』

 

『え、えっと~、作ったってギャラ全部?』

 

『・・・・・・ぜ、全部じゃい』

 

『こ、こ、このおバカ!』

 

『発注数の入力間違ったんじゃい。

 し、仕方ないじゃろがい、単位の入力がわかりにくかったんじゃい。

 だからちょこっと間違えて』

 

『でもどうすんのさ。

 たえちゃんなんて食事与えないと、手に負えないくらい暴れるんだからね』

 

『し、心配するな、対策はある』

 

『対策?』

 

『明日のガタリンピックでこのTシャツを売るんじゃい。

 すでに販売の許可と露店の手配は済んでいる』

 

『・・・・・・誰が売るの?』

 

『お前じゃい』

 

『やっぱりー!

 無理、絶対無理だって、こんなゴミみたいな 』

 

『メイク』

 

『・・・・・・う~

 で、でも誰がこんなTシャツ買うのさ!』

 

『お前は本当にこのデザインの奥深い味わいがわからんのか―い。

 この馬鹿ゾンビィが。

 まぁいい、ガタリンピックの参加者は泥だらけになるんだ。

 絶対、着替え用に売れるはずだ。

 グダグダ言わずに売ってこい』

 

 

 

 

 

ーーーー現在ーーーー

 

 

 

 

 

・・・・・・って、昨日巽さん言ったけど、みんな着替え持ってきてるし。

そんなのあったりまえだよね。

はぁ~あ、でもどうしょう。

これ売らないと食費も無いんだよな~

 

「はぁ~」

 

え~い、くよくよ考えてても仕方ない。

ここは死んだ気になって・・・・・・ってもう死んでんだっけ。

え、え~い!

 

「さぁいらっしゃい、いらっしゃい!

 ドラ鳥のCMで有名なフランシュシュの公式Tシャツだよ。

 今からど~んとバズること間違いなし!

 そのTシャツが、今日限定でたったの1,000円!

 さぁ買った買った・・・・・・お願い買ってぇ~」

 

     ・

     ・

     ・

 

「なっ!

 こんなところを自転車で走るの?

 それに板の上まで泥が盛られてるじゃない」

 

「やっぱり映像で観るのと実際とは違いますね」

 

「なんだ愛、ビビったのか?

 まぁ、板から落ちたら泥の中にダイブだからな。

 ぐしゃーって」

 

「ビ、ビビッてなんかないわよ。

 やってやろうじゃない」

 

「上等!

 おい、お前らいいか、ここまできたら死ぬ気で頑張って、

 ぜってぇ表彰台に立ってフランシュシュアピールすっぞ!」

 

「「・・・・・・」」

 

「アピールすっぞ」

 

「「・・・・・・」」

 

「み、みんな頑張ろう、ね、ね」

 

「「・・・・・・」」

 

「さぁ始まりましたガタリンピック名物のガタチャリ。

 この細い板の道を自転車で走りきるというものです」 

 

「は~い、それではまずデモンストレーションとして

 佐賀警察の方に走ってもらおうと思いま~す。

 では意気込みを」

 

「じゃまぁ~今日は日頃の平和を 」

 

「はい、それでは早速スタートしてもらいましょう。

 位置についてよ~い」

 

「え、あ、あのまだ 」

 

”パ~ン”

 

「ふんふんふん♬」

 

”カタカタカタ”

 

「へっ、お、お、お、おおおおお、おわ、落ちる!」

 

”ぐしゃ~”

 

「は~い、こんな感じになりま~す。

 では皆さん頑張ってくださ~い」

 

「あははは、泥だらけじゃねえか」

 

「それでは協議を始めま~す。

 第一レースの出場者の方、スタート位置までお越しください」

 

「あ、サキちゃん頑張ってね」

 

「任しとけ、二輪じゃ負けんばい。

 見てろ、ぶっちぎって優勝して表彰台決めてきてやる」

 

”テッテッテッテッ”

 

     ・

 

「それでは第一レースいってみましょう」

 

「ぶっちぎってやる!」

 

「サキちゃ~ん頑張れ~」

 

「位置についてよ~い」

 

”パ~ン”

 

「しゃー!」

 

”シャー、シャー”

 

「このままぶっちぎって 」

 

”スルッ”

 

「お、おわぁー」

 

”ぐしゃー”

 

「・・・・・・サキちゃん」

 

「・・・・・・面目ねえ」

 

「それでは続いて第二レースいってみましょう」

 

「なによ、大口叩いておいて全然だめじゃない。

 見てなさい」

 

「愛ちゃん頑張って~」

 

「位置についてよ~い 」

 

”パ~ン”

 

「えい!」

 

”ギ~コ、ギ~コ”

 

「これならいけ 」

 

”グラ”

 

「え、う、うわぁ」

 

”ぐしゃ”

 

「・・・・・・愛ちゃん」

 

     ・

     ・

     ・

 

”キョロキョロ”

 

「あの唐揚げ、う、うまそ~

 あ、こっちのタコ焼きも」

 

やばいヨダレが止まらん。

どれ他にはどんな食べ物が。

 

”ビクッ!”

 

げ、な、なにこれ!

なんてグロテスクな顔してんだこの干物?

エイリアンみたいに歯なんか剥き出しにして、こっち睨んでんだけど。

んっと、わらすぼ?

わらすぼっていうのこの干物。

へぇ~佐賀の名物なんだ。

美味しいのかなぁ。

 

”ごく”

 

はっ!

わたしなにしてんだ。

つい匂いに誘われて来ちゃった。

やばいやばい、早くお店に戻ってTシャツ売らないと。

 

”ちら”

 

はぁ~、でも腹減った。

 

”トボトボトボ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「ガタチャリ、結局、純子ちゃんもゆうぎりさんもリリィちゃんも駄目やった。

 ここは残ったわたしががばい頑張ってどぎゃんかせんと」

 

「それでは次のレースにいきたいと思いま~す。

 位置について、よ~い 」

 

”パ~ン”

 

「うぉぉぉぉ」

 

”シャー”

 

「さくらちゃん、はや~い」

 

「お、これいけるんじゃねえか。

 さくら、そのまま行けー」

 

”シャー”

 

「よし、いける。

 あ、でも少し速すぎるかも。

 ちょっとブレーキ。

 へ、な、なんでこの自転車ブレーキついとらんとー」

 

”ぐら、ぐらぐら”

 

「う、うわー」

 

”ぐしゃ”

 

「「・・・・・・」」

 

「ま、まぁ予想してたけどな。

 あいつどんくさいから」

 

「そうね」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「結構、人来てんのなガタリンピック。

 お、あれ外人の参加者もいるじゃねえか」

 

「そ、そ、そうね」

 

”そわそわ”

 

「ん、どうした雪ノ下、さっきからなんか顔色悪いぞ」

 

「比企谷君、あ、あの私ちょっと」

 

”ちら”

 

「ん、あ、ああ花摘みか、花摘みだろ。

 ここで待ってるから遠慮なく花摘んできてくれ」

 

「馬鹿!」

 

”タッタッタッ”

 

「ふぅ~

 お、焼きそばっか。

 腹も減ったし、雪ノ下が花摘んでる間に一つ」

 

”スタ、スタスタ”

 

「へ?

 おわっ!

 な、なんだこのグロテスクなものは。

 び、びっくりした~

 えっとなになに? 

 佐賀名物わらすぼの干物?

 これって食い物なのか?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「切ないでありんすなぁ」

 

「「・・・・・・」」

 

「次の方お名前を」

 

「あ、巽幸太郎です」

 

「「えっ」」

 

「幸太郎さん。

 幸太郎さんもエントリーしてたんだ」

 

「なんであいつはTシャツ着てないわけ」

 

「それでは意気込みを」

 

「やったー、フランシュシュのアピールチャンス!」

 

「あ、頑張ります」

 

「他には」

 

「あ、あ、いえ」

 

「「・・・・・・」」

 

「なんかせ!

 あの野郎、ぜってぇ泥まみれになるけん笑ってやろうぜ」

 

「それでは、位置についてよ~い」

 

”ぱ~ん”

 

「「・・・・・・」」

 

”スイスイ、スイスイ”

 

「「・・・・・・」」

 

”ちりんちりん”

 

「ひゃっほー♬」

 

「「おぉー」」

 

”パチパチパチ”

 

「「・・・・・・」」

 

「落ちませんでしたね、巽さん」

 

「しかも一着」

 

「チッ!」

 

     ・

     ・

     ・

 

「さぁー続きまして、こちらの会場で皆さんに挑戦していただく競技はガターザンです。

 クレーンから下がっているロープを使って、干潟へジャンプする競技です」

 

「それでは、またまたデモンストレーションとして佐賀警察の方に飛んでいただきま~す。

 お願いしま~す」

 

「よしやるぞ~

 見てろよ有明か~い」

 

”ヒュ~ン”

 

「あ~ちゃ。

 落ちる~」

 

”びちゃ~ん”

 

「「わっはははは」」

 

「こういう風に距離+飛び込むときのパフォーマンスで競ってもらいま~す。

 それでは早速、最初の方お願いしま~す」

 

     ・

     ・

     ・

 

「では次の方お願いしま~す」

 

「サキちゃん頑張って」

 

「今度こそあたしに任せろ」

 

”スタスタスタ”

 

「それではどうぞ」

 

「よーし、ぜってぇテッペンとってやる。

 うりゃー!」

 

”ビューン”

 

「おお、これはすごく高く飛んだぞー

 さぁ、どこまで飛距離を延ばす・・・・・・・あれ?」

 

「う、うぇ、おわぁ~」

 

”びしゃ~ん”

 

「落ちたー、ほぼ真下に落ちましたー」

 

「・・・前に飛べよ」

 

「テッペンって高く飛んでどうするの」

 

「・・・・・・サキちゃん」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ぎゅるるる、ぐぅぅぅぅ”

 

は、腹へった~

でもお金ないしな~

・・・・・・Tシャツも売れたら、なんか買おうと思ったけど、

お客さん一人も来ないし。

はぁ~

 

”どさっ”

 

「もうやだ、なにか食いたい~」

 

”ちょんちょん”

 

「ん?」

 

「う゛ー」

 

「え、たえちゃん。

 なんでたえちゃんここに?

 確か今日はみんなと一緒に競技に参加してるはずじゃ?」

 

”ひょい”

 

「あ゛、あ゛~」

 

「え、たこ焼き?

 くれるの?

 ありがとたえちゃん」

 

”ぱく”

 

「ん~おいしい。

 表面がパリパリで、中はフワって感じで。

 それにこの青海苔の香りが。

 う~ん、最高!

 ・・・・・・って、でもたえちゃんこれどうしたの?」

 

「あの~」

 

「へ?」

 

「お代よろしいでしょうか?

 さっきこの人が食べた分も合わせて」

 

「へ? へぇー!

 た、た、たえちゃん!」

 

げ、い、いねぇ。

お、お代、お代っていったって、わたしお金なんて・・・・・・

ど、どうしょう。

 

「あ、あの~」

 

「・・・・・・は、働かせてください」

 

     ・

     ・

     ・

 

「面目ねぇ」

 

「・・・・・・」

 

「愛ちゃん、サキちゃん」

 

「二人とも全然だね」

 

「んだと、ちんちく!」

 

「まぁまぁ、二人とも喧嘩はおやめなんし。

 ここはわっちに任せておくんなんし」

 

「ゆうぎりさん。

 ・・・・・・でも、ゆうぎりさんこんなのやったことあると?」

 

「芸事なら、少しは自信があるでありんす。

 まぁ見てておくれなし」

 

「う、うん」

 

”スタスタスタ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「はい、それでは次の方お願いしま~す」

 

「あ、ほら次ゆうぎりさん」

 

「いっけぇーゆうぎり姉さんー」

 

「それではどうぞ」

 

”ヒュ~”

 

「はい!」

 

「「おおー!」」

 

”パチパチパチ”

 

「はい!」

 

「「お~」」

 

”パチパチパチ”

 

「はい!」

 

「「うぉー」」

 

”パチパチパチ”

 

「す、すごいゆうぎりさん。

 何かポーズをとる度に歓声が。

 これだけパフォーマンスがいいのなら、

 あとは普通に飛ぶだけでもきっと表彰台にいけるんじゃ。

 ゆうぎりさん頑張って!」

 

「はい!」

 

”ちょこん”

 

「え」

 

「え」

 

「「えー」」

 

”ズデーン”

 

「は、はいじゃない。

 ゆうぎりさん、どがんしてスタート台に戻ってくっと!

 ほ、ほら飛距離無しだから点数が」

 

「「・・・・・・はぁ~」」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ふぅ」

 

「ほらそこ!

 お前手が止まってんぞ!

 しっかり焼け」

 

「う、うっす」

 

くそ~あの親父め。

金持ってないってわかったら、いきなり態度変えてこき使いやがって。

・・・・・・で、でもこのたこ焼き。

 

”ゴク”

 

う、うまそ~

 

”キョロキョロ”

 

「・・・・・・」

 

”パク”

 

「あ、またつまみ食いしやがった!」

 

「ひゅ、ひゅいましぇん」

 

     ・

     ・

     ・

 

「それじゃ次の方どうぞ」

 

「は~い」

 

”ぐるぐる、ぐるぐる”

 

「えっと~リリィちゃん、ロープを身体に巻いてなにしとっかな?」

 

「なにやってんだあいつ」

 

「よしっと。

 いっくよ~、マジカルシューティングスター」

 

”ビュ~ン”

 

「え、あのまま飛んだ?」

 

”くるくるくる

 

「「お、おおー!」」

 

「すごか、駒みたいに身体を回転してっと!」

 

「これ、飛距離も結構いけるんじゃねえか。

 よし、いけー、ちんちく!」

 

”びっしゃ~ん”

 

「あへ、あへあへあへあへ」

 

「これは距離も稼いだぞー

 点数は!

 ・・・・・・暫定4位!

 惜しくも表彰台には届かなかった~」

 

「「あ、あ~」」

 

「4、4位かちくしょ~

 さくら、後はお前しかいねえ。

 頼むぞ」

 

「あ、う、うん」

 

”スタ、スタスタ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「へぇ~、姉ちゃんフランシュシュのマネージャーやっとるのか」

 

「はい。

 でもなかなかお仕事頂けなくて。

 だから活動資金稼ぐために、あの露店を」

 

「ふ~ん

 あ、そうだ、こんどショッピングセンターのイベントに呼べないか聞いてみてやる」

 

「ほんとですか」

 

「ああ、担当の奴とはちょっと知り合いだからな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「っで、フランシュシュって何?」

 

「えっ」

 

「ん?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「それでは、次の方どうぞ~」

 

”ヒュ~”

 

「いい風が吹いてる。

 この風に乗ればきっと・・・・・・

 うん、信じれば飛べる。

 絶対、絶対優勝すっとやけん」

 

「飛べ―さくらー!」

 

「えい!」

 

”ビュン”

 

「いける、このまま遠くに」

 

”スル”

 

「え、て、手がすべっ 」

 

”びしゃん!”

 

「ぐへぇ~」

 

「これは、は、腹からいった―」

 

「いたそ」

 

「得点は・・・・・・1点。

 今大会最低記録です」

 

「まぁ、やっぱどんくさそうやもんな」

 

「「・・・・・・」」

 

     ・

     ・

     ・

 

”わいわい、がやがや”

 

「あったまからいった―

 だがこれはかなり飛距離が出たぞ~」

 

「「おおー」」

 

”キョロキョロ”

 

「・・・・・・はぁ~」

 

「・・・・・・」

 

「はい、で次の方お願いしま~す」

 

”キョロキョロ、キョロキョロ”

 

「・・・・・・ふぅ~、そうあまくはないか」

 

「・・・・・・どうかしたかしら比企谷君。

 さっきからため息ばかりしているようだけれど」

 

「あ、い、いやなんでもない」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

”キョロキョロ”

 

「・・・・・・ね、比企谷君。

 少しのどが渇いたから飲み物買ってきてくれるかしら」

 

「飲み物?

 確か露店でなにか売ってたが、それでいいのなら・・・・・・

 って、いや待て!

 そんなの普通は上司が部下に奢るものだろう。

 なんで部下の俺が上司のお前に奢らなならん」

 

「いいから!」

 

「あ、い、いや、だが」

 

「いいからさっさと行きなさい」

 

「お、横暴だ」

 

”スクッ”

 

「ひ、比企谷君」

 

「ん?」

 

「・・・・・・でいいから」

 

「は?」

 

「ゆ、ゆっくりでいいから、さっさと行きなさい!」

 

「えっ、・・・・・・あ、ああ、そういう。

 すまない」

 

”スタ、スタスタ、スタタタタ”

 

「・・・・・・馬鹿」

 

     ・

     ・

     ・

 

「・・・・・・ガターザンでもフランシュシュのアピールできんやった。

 結局、泥だらけになっただけ」

 

「まて、まだ手がある」

 

「え、でもサキちゃん、エントリーしてた種目はもう 」

 

「25m自由ガタだ」

 

「25m自由ガタ?」

 

「ああ、この競技は確か当日の参加枠があったはずだ。

 今はそれに賭けるしかねえ。

 いくぞ」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ご苦労様、すごく助かったよ。

 たこ焼きを焼くの上手いんだな。

 おかげさまで、お客さんの評判もよくて助かったよ。

 これ持っていきな」

 

「え、いいんですかこんなにいっぱい。

 さっきから食べたいの我慢して焼いてたんです」

 

「嘘つけ。

 味見って、ちょいちょいつまみ食いしてたじゃねえか」

 

「えへへへ、ありがとうございます。

 それじゃ」

 

「おう、またな」

 

”スタスタスタ”

 

へへ、やったやった、たこ焼きもらった。

これタコが結構新鮮でさ、美味しかったんだよね

どれどれ早速っと。

 

”ぱく、もぐもぐ”

 

「うま~♡」

 

”スタスタ”

 

へへ、幸せ~

・・・・・・って、あ、そうだこんなことしている場合じゃない。

早くTシャツ売らないとお金が。

 

「あ゛~、あ゛~」

 

ん、この声どこかで。

 

「い゛ー!」

 

たえちゃん。

たえちゃん、またなにか食べ物狙ってる!

 

「た、たえちゃん!」

 

「うがー」

 

”ぐぃ”

 

「いいからちょっとこっち来て」

 

「うがうが」

 

”ジタバタ、ジタバタ”

 

「こ、これ、このたこ焼きあげるから暴れない。

 ほらこっち」

 

「うがうが」

 

”もぐもぐ”

 

ふぅ、何とか大人しくなった。

もう、みんな何でたえちゃん野放しにしてんだ。

これじゃTシャツ売るのに集中できないよ。

どうしょう、目を離すときっとまた何か食べようとするはずだし。

・・・・・・はぁ~仕方ない。

うううう、まだ一個しか食べてないのに。

 

「たえちゃん!」

 

「うが?」

 

「このたこ焼き全部上げるから、ここに座ってこのTシャツ見てて。

 いい、このTシャツが売れないと、ご飯食べられなくなるんだからね。

 わかった?」

 

「う゛がう゛が」

 

”こくこく”

 

よしっと、それじゃ。

 

”ダー”

 

     ・

     ・

     ・

 

「すみません、たこ焼き一つ頂けますか」

 

「あいよ、500円だよ」

 

「あ、はい。

 お代、ここ置いておきます」

 

「へいお待ち」

 

「あ、あのすみません、この写真の人見たことないですか?」

 

「ん、どれどれ。

 うん? これあのTシャツ売ってるねぇちゃんに似てるんじゃねえか?」

 

「ほ、本当ですか。

 えっとその人はどこに?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「いいか、これが最後のチャンスだ。

 ぜってぇ優勝して表彰台でフランシュシュアピールすっぞ」

 

「でもサキちゃん、表彰台に立ってもこのTシャツじゃ」

 

「泥だらけだもんね」

 

「仕方ねえだろう。

 汚れ落とそうと思って水浴びしたら、メイク全部とれちまったんだからよ。

 泥だらけのままでいねえと・・・・・・」

 

「「んー」」

 

「あー! みんなここにいた!

 ね、さくらちゃん、たえちゃんをしっかり管理してくれないと 」

 

「あ、ミカさんいた!

 しかも同じフランシュシュのTシャツ着てっと」

 

「おおー

 ミカ、お前いいところに来た」

 

「はい?」

 

「今からお前もこの25m自由ガタに出ろ」

 

「25m自由ガタ?」

 

「おう、この25mの干潟を突っ切るんだ。

 それでお前が1位になって表彰台でフランシュシュをアピールすんだ。

 幸い、お前のTシャツは汚れてねえからな。

 そのままTシャツを汚さずあの表彰台に立て」

 

「やだ!

 こんな泥の中突っ切たら絶対泥だらけになるじゃんか。

 泥だらけなんて、お・こ・と・わ・り」

 

「んだと!

 てめぇガタリンピックは誰もが泥だらけになるのがいいんじゃねえか。

 ・・・まぁそのことは今はいい。

 出ねえのなら、そのTシャツよこせ!」

 

”ぐぃ”

 

「あたしがこのTシャツ着て出る。

 ほらさっさと脱げ!」

 

「げ、や、やめ、こんなとこじゃやだ。

 それに包帯も一緒に引っ張ってるって。

 そんな引っ張ったらほどけて、ポロリ、ポロリしちゃうから」

 

「ポロリするほど胸ねえじゃねえか。

 いいからTシャツよこせ」

 

”ぐぃ~”

 

「や、やめて~

 それに胸、胸あるもん。

 す、すくなくとも愛ちゃんよりあるもんね!」

 

「はぁ!

 な、なんでそこに私を出すのよ

 それに・・・・・・私のほうがあるわよ」

 

「そんなことないもん、わたしの方があるもんね。

 いつも身体のメイクしてるからわかるもん」

 

「はぁ!」

 

”ギャー、ギャー”

 

「お、おいお前ら、みっともねえぞ。

 お前らの胸って似たり寄ったりだろうが。

 どっちもどっち、そんなにたいした胸じゃ 」

 

「「は、はぁー!

  あんたに言われたくないわよ」」

 

「んだと!」

 

”ざわざわ、ざわざわ”

 

「サキちゃんも愛ちゃんもミカさんも、そがん胸のことで喧嘩せんと。

 ほら周りの人見てっとよ」

 

”ぷるんぷるん”

 

「「うっ!

  さ、さくらは引っ込んでろ!! 」」

 

”ギロ”

 

「ひぃー」

 

「さくらちゃん大丈夫?」

 

”ぶるぶる、ぶるぶる”

 

「リ、リリィちゃん、みんな怖かったばい。

 なんかいつもよりがばい怖かったとよ~」

 

「ち、なに食べてたらそんな乳牛みたいな胸になるのよ」

 

「にゅ、乳牛。

 ひど!」

 

「あははは、ちげえねえ愛の言う通り乳牛だ乳牛。

 ・・・・・・ってそんなこと言ってる場合じゃねぇー!

 いいかミカ、これは仕事だ。

 このガタリンピックで、あたし達はまだなんもフランシュシュを

 アピールできていねえ。

 なんとしてもこの最後の競技で勝って、あの表彰台でフランシュシュを

 アピールすんだ。

 お前もあたし達のマネージャだろ、だったら協力しろ」

 

「・・・・・・マネージャー。

 う、うんわかった。

 で、でもさ 」

 

”わいわい、がやがや”

 

「こんなに参加者いるんだよ。

 無理だよわたしが表彰台なんて。

 それもこの干潟をTシャツ汚さずになんてさ」

 

「大丈夫だ。

 あたしに策がある」

 

「策?」

 

「この競技で一番厄介なのは干潟でも他の参加者でもねぇ。

 本当の敵は 」

 

”ビシッ!”

 

「あいつらだ。

 あのコースの両脇に控える奴ら、あれが一番の敵だ」

 

「あれなにしてるの」

 

「あの腕の腕章を見ろ。

 あいつらは、G・O・D・S」

 

「ゴ、ゴッズ?

 神々って、何その物騒なの」

 

「Gatalympic Ooze Decoration Seekers!

 ガタリンピックのスタッフの中でも、この25m自由ガタの出場者を泥で装飾する

 ことに、己の全てのプライドをかけているやつらだ。

 泥汚れのないままゴールさせるなんて、あいつらのプライドがぜってぇ許さねえ」

 

「迷惑!

 すっごい迷惑、そんなもんにプライドかけんなー!」

 

「実際、このミッションの最大の障壁かもしれねえ」

 

「だ、だったらTシャツ汚さずにゴールするなんて絶対無理じゃんか。

 ただでさえこの干潟だよ、足をとられて進みにくそうなのに」

 

「あたしらがあいつらの泥からミカのTシャツを守るんだ」

 

「で、でもどうやって」

 

「輪形陣でいく」

 

「り、りんけ・・・・・・じん?

 なにそれ?

 何かの新人類?

 さくらちゃん知ってる?」

 

「し、知らんけん」

 

「はぁー!

 お前ら、輪形陣もしらんとか。

 いいか、こうだ」

 

”カキカキ”

 

「こうやってミカを中心に他の者で周りを囲むんだ。

 そしてその身を盾にして、ミカを泥から守る」

 

「あ、あの~、守ってくれるのはありがたいんだけど、

 あの泥の中をTシャツを汚さずに突っ切るのは・・・・・・

 それも一位になって表彰台になんて、やっぱ無理!」

 

「心配するな。

 お前はあたしがおぶってやる。

 お前一人ぐらいなんでもねえ。

 こんな距離ぐらいぶっ飛ばしてやる」

 

「へ、お、おんぶ?」

 

「そろそろ25m自由形の女子の部を始めま~す。

 出場者の方はスタート地点にお集まりくださ~い」

 

「よし、みんな気合入れていくぞ」

 

「「おー」」

 

「・・・・・・おぉ」

 

     ・

     ・

     ・

 

”テッテッテッ”

 

「えっと、Tシャツ売ってる露店ってここだよな。

 でも、なんでこの露店だけ他の店からこんなに離れてるんだ。

 はっ、そ、そんなことより」

 

”キョロキョロ”

 

「い、いないか。

 だがあのたこ焼き屋の人、ここの露店にいるって言ってたよな。

 そうだ、さっきからずっとTシャツを凝視しているあの人に聞いてみるか」

 

”ジー”

 

「あ、あの~すみません」

 

”ジー”

 

「あ、あの」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・そ、そっだ、このTシャツを一つ頂けませんか?

 お代はここに。

 あの、それでこの写真の人を 」

 

「ウガッ!

 ウガガガガガガガ、ウガー!」

 

「ひ、ひぃー」

 

”ダー”

 

     ・

     ・

     ・

 

”ビシャ!”

 

「きゃっ」

 

”ドバッ!”

 

「ひゃ~」

 

あ、ほら、えっとGODSさんだっけ?

あの人達が泥かけしてくれてるおかげで前の人達が足止め食ってる。

これなら何とか追いつけそう。

 

「チャンス! チャンスだよサキちゃん。

 前の人たち足止め食って 」

 

「・・・・・・」

 

「サ、サキちゃん?」

 

「お、重い」

 

「重い言うな」

 

”ビシッ”

 

「ってなー、なにしやがんだおら!」

 

「ご、ごめん。

 だって重いって言うから、つい条件反射で。

 それより大丈夫?」

 

「くそ、思ったよりこの泥に足をとられて体力が削られる」

 

「サキちゃん」

 

「このままでは勝てねえ。

 ・・・・・・ミカ」

 

「うん?」

 

「あたしを踏み台にしていけ。

 ゴールはもう目の前だ。

 あたしを踏み台にすればお前ならゴールまで飛べるはずだ。

 あの時、天井まで飛んだお前のジャンプ力を見せてみろ。

 それで、なんとしても前にいるあいつらを抜いて表彰台に立つんだ」

 

「え、で、でもあの時は 」

 

「お、おい、あの姉ちゃんまだ泥かかってないぞ」

 

「あんなんでゴールされたら、俺達の恥だ」

 

ひぃ、見つかった。

GODSの人達、みんなこっち見てる。

 

「おりゃー、姉ちゃんこれでもくらえ~」

 

”びゅん”

 

「ひゃ」

 

”びしゃー”

 

「ぶはっ!」

 

「あ、さくらちゃん」

 

「構わんと行って。

 それできっと表彰台を 」

 

”ぶしゃー”

 

「うぷっ」

 

”バタ”

 

「今だ、そりゃ~この泥を食らえ!」

 

「はっ!」

 

”びしゃ”

 

「あ、愛ちゃん」

 

「なにしてるの!

 早く行きなさい」

 

「だ、だって」

 

「その通りです。

 ミカさん、私達がカバー出来ている間に早く!」

 

”びしゃー”

 

「ぶへ」

 

「じゅ、純子ちゃん!」

 

「何しているんですか。

 あなたは、あなたの今やるべきことをやりなさい!」

 

「う、うん、でも」

 

”びゅー”

 

「うぷっ」

 

”どさ”

 

「純子ちゃん」

 

「構うなミカ!

 あいつらの死を無駄にするんじゃねえ」

 

「いや死んでねえし・・・・・・ゾンビィだし」

 

でもサキちゃんの言う通りだ

純子ちゃん・・・・・・うううん、みんなの想いを無駄にはできない。

 

”キッ!”

 

ゴールまではあと少し。

いける、いける、いける。

あの時の、あのGの時のジャンプ力を思い出せば。

わたしなら絶対にいける。

よし!

 

「サキちゃん背中ごめん」

 

”ぐっ!”

 

「うぷ!」

 

”ぐしゃ”

 

「うあああああああー!」

 

”びょーん”

 

わたしは飛ぶ!

仲間の背を踏み台に、あのゴールを目指して!

 

「お、おおー、仲間の背中を踏み台にして飛んだー

 ・・・・・・えっ」

 

”びしゃん”

 

「落・ち・た」

 

あ、あれ?

 

「「・・・・・・・」」

 

「お、おい」

 

「あ、い、いや~、サキちゃんお久しぶり」

 

「お久しぶりじゃねえ!

 全然飛んでねえじゃねえか」

 

「あは、あはははは、お、おっかしいな~」

 

「おかしいなぁじゃねえ!」

 

「だ、だって、あんときはGが服の中に入ったからであって 」

 

”ぐぃ”

 

「あ、や、やめてサキちゃん。

 な、なにを」

 

「うっせ、てめぇも泥だらけになれ」

 

”ぐしゃ”

 

「ぐへぇ~」

 

     ・

     ・

     ・

 

”トボトボトボ”

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・いなかったのね」

 

「・・・・・・ああ。

 まぁ、佐賀に来た早々だ、そう簡単に見つけられるとは思っていない。

 そんな展開、安物のラノベでも読んだことないからな」

 

「・・・・・・そう」

 

「まぁ、時間はかかるかもしれんが 」

 

「あ、すみませ~ん。

 道、明けてもらっていいですか?

 段ボールで前が見えにくくて」

 

「あらごめんなさい。

 ほらもう少しこっちによりなさい」

 

「あ、ああ。

 すみません」

 

「いえ、こっちこそです」

 

”ヨロヨロヨロ”

 

「うんしょ、うんしょっ」

 

「・・・・・・」

 

「あの人、あんなに段ボール持って大丈夫かしら?」

 

「・・・あ、ああ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「えっとなんの話だったっけ」

 

「・・・・・・時間」

 

「そうだった。

 ・・・・・・まぁ時間はある。

 佐賀に来たんだ、地道に探してみるわ」

 

「そう」

 

”トボトボトボ”

 

「遅いんじゃい。

 なにやってんじゃ~い!」

 

「仕方ないじゃんか!

 段ボール3つも持ってるんだよ。

 前も見え難いし」

 

「ったくしゃ~ねえな、ほら貸してみろミカ」

 

「えっ、美佳?」

 

”キョロキョロ”

 

「ど、どこだ」

 

「比企谷君あそこ、あの黒いワゴンのところ」

 

「黒いワゴン」

 

「ありがとサキちゃん♡」

 

「なにしてんじゃい、さっさと乗らんかい」

 

「あ、あれか!」

 

”ダー”

 

「いいかお前ら、帰ったら絶対車の掃除手伝うんだ。

 わかったな。

 まったく、そんな泥だらけで乗り込みやがってからに」

 

「しっかたねえだろうが。

 水で泥汚れ落としてたら、メイク取れたんだからよ」

 

”ブロロロロ~ン”

 

「ま、待って・・・・・・

 はぁはぁはぁ、美、美佳」

 

     ・

     ・

     ・

 

まったく、あんなに怒らなくてもいいじゃんか巽さん。

そりゃさ、結局Tシャツ一枚しか売れなかったけど仕方ないじゃんか。

でも明日からどうしょう。

 

”トボトボトボ”

 

とりあえずリビングで紅茶でも飲んでゆっくり考えよう。

 

「はぁ~」

 

”ガチャ”

 

「あっ」

 

「・・・・・・」

 

じゅ、純子ちゃん。

 

”キョロキョロ”

 

ふぇ~、他に誰もいない。

ど、どうしょう。

 

『死んでるかもしれないけど、それでも生きてる。

 だからわたしも生きてるって感じたい!』

 

『純子ちゃんの馬鹿!』

 

あれ以来、純子ちゃんとまともに話しできてないしな~

なんか話し辛くて。

で、でもやっぱちゃんと言わないといけない。

じゃないと、ずっとこのまま・・・・・・

う、うん!

 

”スタスタスタ”

 

「あ、あのね、ありがと純子ちゃん!」

 

「何がでしょう」

 

「今日のこと。

 ほら泥から庇ってくれたし。

 あとそれと・・・・・・あのね巽さんから聞いた。

 あのプロモーションビデオの撮影のこと。

 純子ちゃんが巽さんにお願いしてくれたんだよね」

 

「・・・・・・ミカさん。

 ミカさんはこの前、生きてるって感じたいと言われましたね」

 

「あ、う、うん。

 あの時はごめん、わたしどうかしてた。

 折角、純子ちゃんがわたしのこと思って言ってくれたのに」

 

「私達は一度死んだ身。

 そんな私達が、それでも生きているって感じたいのなら、

 今この時この瞬間を、プライドを持って全力で生きることではないかと。

 生きてやったんだと胸を張ってと言えるぐらいに。

 死んだ身でこういうのもなんですが、それが私達の生きてるって

 証ではないでしょうか」

 

”だき”

 

「ミ、ミカさん?」

 

「・・・・・・ありがと純子ちゃん。

 ほんと感謝してる」

 

「・・・・・・ミカさん」

 

「あのね、今度はわたしの番。

 もし、わたしで何かできることがあったら言ってね」

 

「ミカさん。

 ・・・・・・では紅茶、お願いしていいですか?」

 

「あ、う、うん。

 とびっきり美味しいの淹れるね」

 

「いえ、そうではなく。

 また紅茶の淹れ方、教えてくれますか?」

 

「え、あ、うん♡

 そんなのお安いごよ・・・・・・

 あ、あの~、でも拘るのはほどほどに」

 

「いえ、きっちりと納得するまで教えて頂きます」

 

「きっちりと?」

 

「ええ、きっちりみっちりと」

 

「ふぇ~」

 

「うふふふふ」

 

「でへ、えへへへへへへ」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「えっと、確か連絡があったのはこの喫茶店だな。

 しっかしガセネタばっかりだからな。

 今度こそ何かいい情報だといいんだがな。

 古怒田の野郎、まだかまだかってうるせえからな」

 

”カランカラン”

 

「いらっしゃいませ」

 

”キョロキョロ”

 

「えっと、確か一番奥のテーブルだったな。

 ん、あれか」

 

”スタスタスタ”

 

「お待たせしました班目です。

 怪奇情報の連絡をくれたのはあなたですね」




最後までありがとうございます。

早く更新しないとと思いながら、なかなか・・・・・・
最終話まで必ず投稿する予定です。
もし、また気が向かれたら、見に来ていただけるとありがたいです。

では、次話サガロック編、またお会いできましたらです。
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