うちの新人は色々うるさい   作:リリマル

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ちなみに作者はドラマ版もリブート版も割と好きです。

そんな訳で続きました。お読みくださっている皆様に絶大なる感謝を


うちの新人は、存在感がうるさい

ガシュン ガシュン ガシュン ウィン ガシュン ガシュン

 

「(後ろからの圧がすごい…)」

 

 ここは[D10-6地区]基地内の、居住棟と訓練施設をつなぐ廊下。そこを三人の戦術人形が歩いていた。

 

「ここから先が訓練棟だよ!」

 

「なるほど。興味深い。」

 

 満面の笑みで周囲の説明をしつつ、ちょこちょこと動き回っている Gr G41 。その隣で金属的な光を放ちながら、首だけはしっかりと彼女の指す方向を見つつ、整った姿勢のまま歩き続けているのは、マーフィこと オート9 。

 先程から施設内をまわり、ほぼ同じようなやり取りを繰り返しているのだが、G41も何が楽しいのかオート9の返答を聞くたびに耳を動かし喜んでいる。

 

「(一体何なのでしょう、彼は)」

 

 その二人の先頭を歩くのは、先程司令室の近くで出合い頭にバッタリとオート9に出くわしたばっかりに、こんな状況に巻き込まれている 92式 。

 先導しつつたまに後ろを振り向くと、姿勢よく前を見据え歩き続ける彼が目に入る為、その都度ため息をつきつつ前を向く。

 

 結局、先程の司令室での一件の後、兎に角ペルシカに連絡を取らないと何もわからないということで、指揮官とカリーナは待機しつつ、オート9に基地内を案内するよう居合わせた二人に白羽の矢が立ったという訳だ。

 

「新しい指示ですか? ごめんなさい、さっき聞こえなかったん「いやそういうのは良いですから、お願いしますよ」…了解しました」

 

 元気にオート9の腕を引き司令室を飛び出していったG41とは対象的に、いまいち乗り気でない92式。

 粘っていたが後を追うように退室したのを確認した指揮官とカリーナは、ふぅっと息をつく。

 

「やれやれ、兎に角わかりませんね。色々と」

 

「そうですわねぇ。でも92式さんは、なんであんなに彼の事を嫌がるのでしょうか? 確かに普通ではないですが…」

 

「う〜ん…出会い方が出会い方でしたしねぇ」

 

指揮官は腕を組んだまま、司令室の窓から外を見る。よく晴れた空が見えた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「(嫌…と言うわけではない筈なんですが)」

 

 外の天気とは打って変わって、92式の心は晴れない。後ろでキャイキャイと楽しそうに?話している二人の先導をしつつも、よくわからない感情に彼女はモヤモヤとしたまま歩き続ける。

 

「…はぁ…」

 

「92式。」

 

「ひゃいっ!?」

 

 唐突に自分の名前を呼ばれた92式は、飛び上がって振り返る。

 すると、目の前には黒い樹脂パーツ。見上げてみると、自分を見下ろしているオート9のバイザーと視線が交差する。小さいモーターの駆動音や電子音などが彼から聞こえてくる。歴戦の彼女ですら、威圧感に押しつぶされそうになる。

 

「…あ、あの…なな何か」

 

 

 

「サーチ完了。各部異常なし。メンタルモデル波形に多少の乱れあり。正常の範囲内と判断。」

 

「え?」

 

 そう言うとオート9は一歩体を引き、頭部を再び前方に向けた。

 

「先程から、ワタシの案内を行いつつ、ため息が71回。司令室でも、カリーナ後方幕僚に、ポイントバックを行われていた。どこか、身体機能に不備があるのでは?」

 

「え、92ちゃん具合悪いの!? ペーシャちゃん呼んでこようか!?」

 

 キョトンとする92式と、心配してアタフタし始めるG41。微動だにしないオート9という三者三様のリアクションだ。

 

「…え〜っと。いえ、大丈夫です。少し考え事をしていただけですわ。ご心配頂きありがとうございます」

 

「ほんと? 無理しちゃだめだよ?」

 

「ええ、ありがとうG41。本当に大丈夫よ」

 

 そう言うと、92式は心配しないようG41に微笑みかけると、彼女にもまたにこやかな笑みが戻った。

 そしてオート9を見上げる。未だ疑問は尽きないが、少なくとも彼が自分を心配してくれたことだけはわかる。そして、そういう相手に対し、どのような態度を取るべきかも。

 

「貴方もありがとう、オート9さん。さぁG41、こちらへ。ご案内を続けましょう」

 

「うん!行こう! マーフィ!」

 

「問題ない。」

 

 

 二人の足音と一人の うるさい足音は、この跡しばらく続いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『あの…そろそろ正座をやめてもよいのではないかと思うのだけど…』

 

 

 

「おシャラップ!!ですわ!!」

 

『ヒギイッ』

 

 

「ハハハ、まぁまぁカリン、もうその辺に」

 

 三人が施設内を見て回っている頃、ようやく通信が繋がったと思えば、ホログラムの向こうで寝ぼけ眼のまま応答したペルシカに、カリーナがいい笑顔でお説教を始めて早1時間。

 

「大体ペルシカリアさんはいつもそうですわ! S09地区の時もそうでしたが、毎度毎度急に無茶振りをして!一体何箇所の指揮官さまにご迷惑をおかけすれば!」

 

『あ、あのカリン? それ機密情報だからあの』

 

「(アーアー聞こえない聞いてない)カリーン。本当にもう大丈夫ですから〜。ステ〜イ」

 

「グルルルルル」

 

 なんだか不穏な単語がチラホラ聞こえていたが、ようやく ジャパニーズ正座 から開放されたペルシカはよろよろと立ち上がる。あ、コケてホログラムから消えた。

 

『…イタタタ、ふぅ参った参った。いやー助かったよライト指揮官』

 

「自業自得って言葉をですね…まぁ良いです。それで? 何なんですか、あれは」

 

『あれ。では無く彼と言って欲しいものだ。マーフィの事ならば、ね』

 

「…失礼しました、あまりに規格外だったものですから。それで何なのですか? 彼は」

 

 

足がプルプルとしていなければ良かったものの、ホログラムのむこう側では、椅子にもたれかかりながらペルシカが話し始める。

 

『そうだね、簡単に言えば、正義の味方。かな?』

 

「正義の味方?」

 

『その通り。最近は鉄血のハイエンドも殆ど修正され、残っているのはネットワークから外れた量産型が殆どと聞いているよ。そしてそれに伴って問題になって来ていることがあるね?』

 

「それはもう山程」

 

『正直で宜しい。それで色々と考えている時に、君の基地のことをクルーガーから聞いたんだ。街の治安維持について悩んでいるっていうね』

 

 曰く。もともと前線だったとはいえ、既に戦線も前進し今や実質、人間の街の最終防衛ラインとなっている[D10-6地区]。専らの任務は、近隣の街のパトロールや広報活動が主たるもの。戦術人形同士の戦闘など、支援任務以外では相当期間行われていない。そう

 

そこそこ平和

 

なのである。そうなると発生してくる問題、対人間ということにおいて発生してきてしまう問題がある。

 

「過剰戦力…なんですよねぇ治安維持には」

 

『そうなのよねぇ。だって強すぎるんだもの。君のとこの娘達』

 

「あ、あはは」

 

 カリーナが苦笑いしてしまうのも無理はない。広報活動や地域貢献という点では特に問題はないのだが、この基地に所属している戦術人形たち、彼女たちはあくまでも 戦術人形 なのだ。町中で警備をするための自動人形とはそもそも使用想定要素が違うのだ。

 

 戦闘となったときのリミッター等の調整がそこまで《優しく》出来ていない。

 

「見た目が愛らしいのが、まさかこんな悪影響とは…」

 

『それがまぁうちの強みなんだけども。この間のひったくりには少し同情するよ』

 

「PP-19-01は悪いことをしたわけではないんですがねぇ。周りの目というのに慣れて居ませんからね…彼女も気落ちしてしまって…」

 

「箸で豆腐を掴むのは難しいのですわ」ボソッ…

 

「『えっ?』」

 

「何か?」

 

カリーナが怖いことを言っているが、要は対人用の治安任務向きの人形がいないのだ。この基地には。

 

『そこで思いついたわけよ!!』

 

「うわびっくりした!」

 

『戦場に出るわけでないなら機動力も、そこまで高い火力もいらないし、治安維持がメインで町中で活動するなら、システムは射撃管制、ボディは防御に極振り、見た目もゴツくして威圧感をあえて出し、目立たせることで抑止効果を狙うのもいい。緊急対応用に他の人形とバディを組ませる前提で、まったく新しいコンセプトの人形を作れないかと!! そう、悪いことをしたら彼が来る、正義の味方の彼が!』

 

なにか熱に浮かされたように説明をし始めるペルシカ。完全にマッドサイエンティストのそれである。

 

「それで作られたのが」

 

『そう!マーフィ!というわけなのさ!』

 

 

晴れやかな、それでいて不健康そうな笑顔でそう言い放ったペルシカ。肩で息をしており、そのまま倒れてしまわないか心配な程である。

 

 

 

 だがカリーナ、そこでふと気づく。

 

 

「あれ? でも社長からそんなお話は聞いていないですよ? それにこの問題が目立ち始めて、上に報告したしたのって、確か先週末でしたわよね?」

 

「そういえば…たった一週間で彼を?」

 

『………』

 

 

 

 

「ペルシカリアさん?」

 

『…なんだろうかカリン?』

 

「目的と結果の順序、誤魔化しておられません? 元々何らかの理由で作られた彼を、いい機会だから表に出して、何かを有耶無耶にしようとしていませんか?」

 

『ハハハ顔が怖いわよカリン…』

 

「ペルシカ、改めて尋ねるが…」

 

『…はい』

 

 

 

 

「「なんで彼を作った(んですの)?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しゅみです』(意訳=最近少し暇だったので、余った予算を勝手に使って会社に無断で作ってました。)

 

「どこぞの秘密結社ですかあなたは…」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

〜室内射撃訓練場〜

 

 

オート9(Lv.10)「… 。」バババババン バババババン バババババン

 

92式(Lv.88)「見事なピンホールショットですわね」

 

スコーピオン(Lv.92)「クソー!私も負っけないぞー」ズ

ガガガナガガ

 

9A-91(Lv.91)「あの、外でやってくれませんか?音が…あの」

 

 

 

G41(Lv.100)「マーフィすご~い!!」

 

 

オート9(Lv.10)「ありがとう。」バババババン

 




ここまでお読みくださりありがとうございました。

次話からいよいよお話が動き…
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