ご召喚はテニスプレイヤーですか?   作:榎田 健也

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ごちうさ×fateのクロスオーバーです。

苦手な方はご注意ください。


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邂逅

深夜の公園で二本の”ラケット”と二本の”刀”がぶつかり合う。どちらかが欠ける、という事もなく、均衡を保っている……二本の”ラケット”と二本の”刀”が。

 

「ちぃッ!」

 

お互い体力を消耗する打ち合いに痺れを切らした剣士のサーヴァントが距離を取るために上空に跳び、斬撃を飛ばす。

 

「斬り返せるかッ!」

 

二本の刀を交差させて十字型の斬撃は片方のサーヴァントに飛んでいく。赤いジャージのような衣服を纏いテニスラケットを両手に持つサーヴァントが左手のラケットを手放すとそのラケットは消え、右手のラケットを両手でしっかり握ると――

 

その斬撃を打ち返した。

 

「ぐっ……」

 

渾身の斬撃を返され、受け止めようとしても斬撃の威力が倍近くまで増大している……剣士としてはかなりの屈辱だ。

 

「なんのっ!」

 

斬撃を打ち込んだ後に着地をして、動きを止め相手の様子を伺っていたためにこちらに斬撃を返せた……なら、斬撃を打ち込んだ直後両脇から迂回して近づけば、斬撃を防ぐもしくは跳ね返したとしても返された斬撃を避ければ近距離戦に持ち込み隙を突ける。いくら返されたとしても、先程打ち込んだ渾身の斬撃を返すのも少しの隙があった。その隙を突く方法があればかなりのアドバンテージになる。

 

「ふっ!」

 

再び地面を踏み込んで上空に跳び、斬撃を飛ばした剣士のサーヴァント。着地した瞬間その斬撃が通った場所を避けながら右側に回り――

 

真っすぐに飛んできた斬撃を慌てて受け止めた。一つだけわかるのは、先程の作戦は通用しないという事だけだ。

 

「それならッ!」

 

威力が倍近くになった自らの斬撃を二本の刀で霧散させながら距離を詰め斬り込む。

 

「ぐぬっ」

 

ラケットをいつの間にか二本に戻していたテニスプレイヤーのような風貌のサーヴァントから声が漏れた。どうやら跳ね返すのにも幾何か体力を消耗するらしい。

 

「そこォ!」「なんのッ!」

 

再び近距離でのぶつかり合いが始まった。

 

「「ウオォォォォォォ!!」」

 

 

一方その頃、公園付近の某所。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

結構な距離を走りある人物を探す男。彼はテニスプレイヤーのような風貌のサーヴァントのマスターであり、名を梅斗という。彼は記憶喪失で自身についての記憶がなく、住み込みで働いている喫茶店のマスターに名前は付けて貰った。

 

「リぃ……先ぱぁ……はぁ……考案のぉ……メニューを毎日ぃ……体力にはぁ……ぜぇ……(特別意訳:リゼ先輩考案のメニューを毎日やってるから体力には自信があったんだけどなぁ)」

 

疲れたのかその場で膝に手を突き地面に息を吐く男。誰かが見れば下を向いて息を荒くしているという警察案件ではあるが、残念ながらこの街は深夜に外出する人間はごく稀だ。残念ってなんだよ。

 

「ん……? あれ……?」

 

息を少しは整えて前を向くと、そこに知り合いがいた。人によって行動は異なるだろうが、彼は心配と好奇心に動かされ、話しかける事に決めた。

 

「どうしたんですか? こんな夜遅くに」

 

本当にこの街は、深夜に外出する人間は本当に稀だ、心配もする。……その知り合いが、女子高生だったのならなおさらだ。

 

「あ、梅斗くん」

 

彼は、てっきり彼女が「眠れないから夜の散歩してたの」とでも言い訳をするのかと思っていた。しかし、彼女は梅斗の肝を凍らせた。

 

「あのラケットのサーヴァント、君の?」「っ!」

 

思わず懐に忍ばせておいた折り畳み式ナイフを構える。その台詞は、彼が探していた――敵対していた人物が言うべき台詞だった。

 

「私、セイバーのマスターなの。とりあえず、お話しよ?」

 

バイトの先輩で、想い人でもある彼女の台詞であるべきでは無かったのだ。

 


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