I'm home, welcome back 作:佐藤_ライパク勢
「ビルフォードがクエスターを殴ったのか」
「大騒ぎになっているな」
「ああ」
「王煉」
「何だ」
「正直に言えば、迷っている」
「何をだ」
「ここにいていいのかどうか」
「そうか」
「貴様はどう思う」
「使命を全うするのみだ」
「アヴァロンの戦士となる、か」
「義父に救われたこの命、返さねばならん」
「義理堅いことだ」
「光鈴」
「何だ」
「何があった」
「何も」
「いや、嘘だな」
「おかえりなさい、とスフィーダに言われた」
「そうか」
「おかしな話だ」
「我々は元々グラールの人間」
「だが、スフィーダはそう言った」
「貴様はどうだった」
「似たようなものだ」
「プラタリッサか」
「……」
「都合が悪くなると、すぐに黙り込むな」
「答える必要はないだろう」
「どうかな」
「何故そう思う」
「あの姉妹は、似ている」
「似ていないだろう」
「貴様の目は節穴だな」
「我々は、何をしてきたのだろうな」
「任務を果たしてきた」
「それだけか」
「それだけだ」
「キャメロットにいた間、心は動かなかったか」
「覚えていないな」
「ならば、何故貴様の目はプラタリッサを追う」
「……」
「王煉」
「何だ」
「先ほど使命を全うする、と言ったな」
「それがどうかしたか」
「使命とは、何を指して言うのだ」
「義父のためだけに動いてきた」
「全てがその為で、アヴァロンには何もない」
「それがゆえの使命だ、王煉」
「我々に何が出来る」
「このアヴァロンのために、か」
「そういうことだ」
「いい風だな」
「幼い頃李家に引き取られ、その後義父の子となった」
「すべては、義父の力となるため」
「いま、義父の想いはアヴァロンという形を成した」
「そうだ王煉、ならば我らは」
「アヴァロンの子」
「アヴァロンより授かった力を、次なる子へと引き継ぐのだ」
「では、選ぶ道はー―」
「選手、というわけには行くまいな」
「それにしても、王煉」
「何だ」
「プラタリッサに惚れていたのだろう」
「――馬鹿な」
「今更隠してみてどうする」
「あれはかりそめの元同窓、それだけだ」
「では、そういうことにしておこうか」
「何がおかしい」
「いや、何も」
「嫌いではないぞ、貴様のそういうところは」
「――何の事だ」
○ ○ ○
「光鈴! 探したのよ」
二人の元にスフィーダが駆け寄ってきた。後ろにはプラタリッサ。
コースにほど近い、小高い丘の上である。そこからはアヴァロン学院の校舎が一望できる。ふとスフィーダが振り返り「いい眺めね」と呟いた。
「探しに来てくれたのか。済まないな」
「済まないって、光鈴。あなたそんなこと言う人だったかしら?」
「色々変わったのさ」
プラタリッサと王煉の目が合う。とっさに微笑を投げかけるプラタリッサに対し、王煉は思わず視線を外してしまった。
「臆病者め」光鈴が姉妹から見えないところで王煉を小突く。
「ち、ちょっと王煉! あなた無愛想だと思っていたけれど、もうちょっとお姉さまを見習うとか、そういう気持ちはないの?」
「――済まない」
「遅いのよ、今更!」
「済まない」
「オウムじゃないんだから、もう!」
くっ、と光鈴が声を出して笑った。
「その辺りで勘弁してやってくれ、プラタリッサ。知っての通り無愛想で不器用だからな。うまい言葉が思いつかんのだ」
「で、でも――」
「この不肖の弟には、私からも後で言っておく」
そう言って王煉の肩を叩き、歩き出すよう促す。
「あなたがそういうんなら、この場は引き下がるけど」
言いながらもプラタリッサの叱責の眼差しは王煉から離れない。その様子を見たスフィーダが微笑み「私たちも戻りましょう」とプラタリッサの肩に手を置いた。
「でも光鈴、驚いたわ」
「何がだ」
「あなたの笑顔らしい笑顔、初めて見た気がする」
「そうか」
歩みは止めないままでしばし黙考する。
「そうだな。考えてもみればあまり笑おう、などとは思ってもいなかった」
「どうして?」
「がんじがらめになっていたのさ。キャメロットのこと、グラールのこと。だがアヴァロンとして一緒くたにまとまってしまえば、何のことはない。私が一人ここにいただけだ」
「弟さんはそういう風にも行かないみたいだけど?」
いたずらっぽい笑みをしてみせるスフィーダの顔をまじまじと覗き込んでから「そういう笑い方もあるのだな、面白い」と光鈴が一人ごちた。
「これは四角四面だからな。まぁ、その内分かってくるだろう」
「――貴様が変わりすぎなだけだ、光鈴」
「楽しめよ、せっかくの機会だ」
返事の代わりに鼻を鳴らす。一人歩みが加速する。
その背中に、プラタリッサが声を投げかけた。
「王煉って――意外とシャイだったの?」
光鈴が小さく吹き出した。
王煉の歩みが、更に加速する。
「ここからの貴様は、見ていて退屈しそうにないな」
誰に言うでもなく、光鈴は呟いた。