I'm home, welcome back   作:佐藤_ライパク勢

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case 4 Li Bros.

「ビルフォードがクエスターを殴ったのか」

「大騒ぎになっているな」

「ああ」

 

 

「王煉」

「何だ」

「正直に言えば、迷っている」

「何をだ」

「ここにいていいのかどうか」

「そうか」

 

 

「貴様はどう思う」

「使命を全うするのみだ」

「アヴァロンの戦士となる、か」

「義父に救われたこの命、返さねばならん」

「義理堅いことだ」

 

 

「光鈴」

「何だ」

「何があった」

「何も」

 

「いや、嘘だな」

 

 

「おかえりなさい、とスフィーダに言われた」

「そうか」

 

 

「おかしな話だ」

 

「我々は元々グラールの人間」

 

「だが、スフィーダはそう言った」

 

 

「貴様はどうだった」

「似たようなものだ」

「プラタリッサか」

「……」

「都合が悪くなると、すぐに黙り込むな」

「答える必要はないだろう」

「どうかな」

「何故そう思う」

「あの姉妹は、似ている」

「似ていないだろう」

「貴様の目は節穴だな」

 

 

「我々は、何をしてきたのだろうな」

「任務を果たしてきた」

「それだけか」

「それだけだ」

「キャメロットにいた間、心は動かなかったか」

「覚えていないな」

「ならば、何故貴様の目はプラタリッサを追う」

「……」

 

 

「王煉」

「何だ」

「先ほど使命を全うする、と言ったな」

「それがどうかしたか」

「使命とは、何を指して言うのだ」

 

 

「義父のためだけに動いてきた」

 

「全てがその為で、アヴァロンには何もない」

 

「それがゆえの使命だ、王煉」

 

「我々に何が出来る」

「このアヴァロンのために、か」

「そういうことだ」

 

 

「いい風だな」

 

 

「幼い頃李家に引き取られ、その後義父の子となった」

「すべては、義父の力となるため」

「いま、義父の想いはアヴァロンという形を成した」

「そうだ王煉、ならば我らは」

 

「アヴァロンの子」

 

 

「アヴァロンより授かった力を、次なる子へと引き継ぐのだ」

「では、選ぶ道はー―」

「選手、というわけには行くまいな」

 

 

「それにしても、王煉」

「何だ」

「プラタリッサに惚れていたのだろう」

「――馬鹿な」

「今更隠してみてどうする」

「あれはかりそめの元同窓、それだけだ」

「では、そういうことにしておこうか」

 

 

「何がおかしい」

「いや、何も」

 

 

「嫌いではないぞ、貴様のそういうところは」

「――何の事だ」

 

 ○   ○   ○

 

「光鈴! 探したのよ」

 二人の元にスフィーダが駆け寄ってきた。後ろにはプラタリッサ。

 コースにほど近い、小高い丘の上である。そこからはアヴァロン学院の校舎が一望できる。ふとスフィーダが振り返り「いい眺めね」と呟いた。

「探しに来てくれたのか。済まないな」

「済まないって、光鈴。あなたそんなこと言う人だったかしら?」

「色々変わったのさ」

 プラタリッサと王煉の目が合う。とっさに微笑を投げかけるプラタリッサに対し、王煉は思わず視線を外してしまった。

「臆病者め」光鈴が姉妹から見えないところで王煉を小突く。

「ち、ちょっと王煉! あなた無愛想だと思っていたけれど、もうちょっとお姉さまを見習うとか、そういう気持ちはないの?」

「――済まない」

「遅いのよ、今更!」

「済まない」

「オウムじゃないんだから、もう!」

 くっ、と光鈴が声を出して笑った。

「その辺りで勘弁してやってくれ、プラタリッサ。知っての通り無愛想で不器用だからな。うまい言葉が思いつかんのだ」

「で、でも――」

「この不肖の弟には、私からも後で言っておく」

 そう言って王煉の肩を叩き、歩き出すよう促す。

「あなたがそういうんなら、この場は引き下がるけど」

 言いながらもプラタリッサの叱責の眼差しは王煉から離れない。その様子を見たスフィーダが微笑み「私たちも戻りましょう」とプラタリッサの肩に手を置いた。

「でも光鈴、驚いたわ」

「何がだ」

「あなたの笑顔らしい笑顔、初めて見た気がする」

「そうか」

 歩みは止めないままでしばし黙考する。

「そうだな。考えてもみればあまり笑おう、などとは思ってもいなかった」

「どうして?」

「がんじがらめになっていたのさ。キャメロットのこと、グラールのこと。だがアヴァロンとして一緒くたにまとまってしまえば、何のことはない。私が一人ここにいただけだ」

「弟さんはそういう風にも行かないみたいだけど?」

 いたずらっぽい笑みをしてみせるスフィーダの顔をまじまじと覗き込んでから「そういう笑い方もあるのだな、面白い」と光鈴が一人ごちた。

「これは四角四面だからな。まぁ、その内分かってくるだろう」

「――貴様が変わりすぎなだけだ、光鈴」

「楽しめよ、せっかくの機会だ」

 返事の代わりに鼻を鳴らす。一人歩みが加速する。

 その背中に、プラタリッサが声を投げかけた。

「王煉って――意外とシャイだったの?」

 光鈴が小さく吹き出した。

 王煉の歩みが、更に加速する。

 

「ここからの貴様は、見ていて退屈しそうにないな」

 誰に言うでもなく、光鈴は呟いた。

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