俺は/私は死にたくない!~死亡√は断固拒否です~   作:黒三葉サンダー

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久しぶりだな諸君!
この黒三葉サンダーが帰ってきたゾ!


魔王と呼ばれてしまうもの

神がシグムッドの祈りを聞き届けた訳ではないだろう。

だがそれはやはり神が遣わせて来たのではないだろうかとさえシグムッドは考えてしまう。

 

自分の死を覚悟したシグムッドはバアルによって首を斬られる事はなかった。それは何かがぶつかり合う音で理解出来たからだ。

ならば誰が自分を救ったのか。

 

彼が目を開くと、そこにいたのは白い羽の天使であった。

なるほど確かに天使であれば神の遣いというのも間違いではない。

しかし神からの遣いとしてはその存在は彼にとってあまりにも残酷であった。

それこそ神という存在に、否、魔族に負けた自分自身に途方もない怒りを覚えてしまうくらいには目の前の事実は衝撃的であった。

 

まさか彼の命を救った存在が────

 

 

 

 

 

 

 

 

「控えなさい。お前が手を出した相手は私の大切な存在なの。それに手をかけようとするなら万死に値するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────彼の溺愛する娘だとは。

 

 

 

 

 

 

─────

───

 

 

 

 

お父様が魔狼討伐に出てから結構時間が経った。

我が家でティオと一緒に魔法の練習をしているが、どうにもさっきからジトッとした嫌な感覚が付きまとって離れない。

明らかに調子がおかしい。今まではこんなことは一度もなかったのに。

 

「アリシア?さっきからソワソワしてるけどどうしたの?」

「…いえ、何でもありませんわ。ちょっとだけ調子が悪いだけよ」

「大丈夫?少し休む?」

 

ティオが心配そうに俺の様子を伺っているので何とか笑顔を作って返答する。

早くこの感覚を何とかしてしまいたいものだが、いかんせん対応策はさっぱり分からない。

 

しかもお父様がいなくなってからずっとだ。

これはもしかするとお父様がいなくなった事が原因なのだろうか。

……これは少し原作を思い出さねばならないかもしれない。

 

まずはヒロインの一人である我が姉、ルクシア。

才色兼備かつ戦闘力ナンバーワンを誇るルクシアのルートは入るだけでも困難だったりする。

 

第一に主人公の戦闘力を極限にまで高めなければならないこと。

それこそルクシア相手にタイマンで勝つか引き分けるほどに上げなければならない。

青春イベントをほぼ全て戦闘イベントに変えていかないとスタートラインにすら立たせてもらえない。

 

第二にルクシアと一緒に魔王復活を企む四天王バアルを撃退すること。

これがとても難しい。そもそもこのバアル戦自体がほぼ無理ゲーに近く、ターン制バトルにおいて強力な二回行動を常に行ってくるのだ。

 

これをクリアするには攻撃コマンドを極力選ばず、防御やカウンターに特化させることで時間経過を狙い撃退するという方法しかない。

勇敢なる実験プレイ兄貴姉貴が様々な方法を試したものの、結局はこの方法以外でクリア出来ないという証明をしてしまった時は戦慄したものだ。

 

さて。この上記二つをクリアすることでようやくルクシアルートに入れるのだが、更にここから先が地獄の始まりである。

その理由は圧倒的戦闘イベントの多さにある。

普段は冷静かつイケメン可愛いお姉さまだが、何故か魔族相手だと殺意マシマシで戦闘が始まる。

そう、魔族絶対殺すウーマンに変化するのだ。

 

え?何でそんな変わるん?(困惑)という人もいるだろうが、それこそがルクシアルートの本質である。

つまりルクシアルートはぶっちゃけ復讐ルートなのだ。

 

実はルクシアルートで初めて彼女の父親が小さい頃に魔族に殺されたという過去が明らかになる。

もちろんそれは俺も忘れてはいないし、滅茶苦茶警戒したこともあった。だけどその話で父親が殺されたのはルクシアが六歳の頃だ。

だが現在ルクシアの年齢は八歳。

もうお分かりだろう。とっくに二年も過ぎてるのだ。

この時点でルクシアの復讐ルートは潰えたといっても良いのではないだろうか。

 

……もっとも、この世界はゲームではないし皆しっかりと生きている。

俺個人としてはお父様が殺されるなんて胸くそ悪いイベントが過ぎたことで心底ほっとしていた。

 

そうだ。もうそんなイベントは過ぎたんだ。だから何も心配することはない。

 

 

 

『不味いわね……よく聞きなさい、アリシア。バアルが来てるわ。このままじゃあんたの父親が死ぬわよ』

「……は?」

「みんなぁぁぁ!今すぐ逃げる準備をしろぉ!魔狼が!魔狼が来るぞぉぉぉ!!」

 

 

 

唐突に頭の中に聞こえてきた声と必死に叫んでいる声を聞いて理解した瞬間に、俺の体は反射的に驚いていたティオを置き去りにして駆け出していた。

 

「………ッ!!!」

「…えっ?アリシア!?待って!!どこにいくの!!?」

「何事だ!ってアリシア!!?待て!!行くな!!」

 

ごめん、お姉さま。でも行かなきゃ。

父を、お父様を助けなければならない。

その思いだけを強く滾らせて。

 

 

 

 

 

▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽

 

 

 

 

 

飛び出して駆けていく俺の姿を見た大人たちが慌てて俺を捕まえようとするが、そんなことはお構い無く避け続けて森の中を走る。

ワンピース姿で走っているせいで枝や葉っぱが肌を傷付けていくが、どうでもよかった。

お父様から走り込みの特訓を受けていた甲斐はあったが、明らかに間に合うとは思えない。

 

お父様は素人の俺が見ても分かるほど強い。剣を振った時なんて軌道は全く見えないし、気迫なんて直接当てられただけでへっぴり腰になってしまう。

お父様は王都でも最強格の騎士だったという話もある。

 

それでも俺の嫌な予感は強くなっていくばかりなのだ。

急がねばと思うものの、この幼い体では限界が訪れるのも早い。

森に入ってから少し経つと、疲労によって足取りはフラフラとおぼつかなくなっていた。

 

「もっと!もっと速く動ければ……!!」

『ねぇ。あんたさ、何の準備もなくバアル相手にどうにか出来ると思ってるの?』

「分かってるさ……相手はあの、四天王だ。今の俺なんかじゃ……相手にもならない、だろうさ」

 

頭に直接響くラムの声に呼吸を整えながら答える。

我ながら咄嗟の行動が馬鹿過ぎると思う。でも今すぐにでも出なければ間に合わない気がしたのだ。

俺の力なんてちっぽけなものだ。そこらの子供と何ら変わりない。

俺にはお姉さまのような天賦の才なんて無いし、お母様のような魔法使いの才能なんかもない。ましてやお父様のような強さなんて夢のまた夢だ。

 

どこまでいっても俺は凡才。アーティファクトが手に入ったからといって才能が開花したわけではない。

むしろそのアーティファクトすらロクに扱えず、能力すら判明出来ていない。

 

このまま戦ったって俺は死ぬ。きっとお父様も死んでしまう。お父様ですら勝てない相手に俺が勝てる道理なんかないだろう。

でも俺は死にたくない。お父様も死なせたくない。

俺が死んでも、お父様が死んでも絶対にお母様やお姉さまの心は死んでしまう。そんなことは容認出来ない。

絶対に俺はその死を否定する。

 

「俺だけじゃどうにもならないなんてそんなことは百も承知なんだよ。俺みたいな凡才に英雄みたいな能力はないしさ」

『なら諦めなさい。残念だけど今回は諦めて──』

「でも俺にはラムがいる。俺のアーティファクトが、アガートラームがある」

『……』

 

あぁそうだな。これが運命の強制力というならお父様が死んでしまうことも仕方ないのかもしれない。

でもそんなこと知ったことか。

俺はお父様を助けたいのだ。お父様だけじゃない。

この先に幾つも待ち構えているであろう、お姉さまの死の運命すらも蹴散らしたい。

 

俺は俺の大切なものを守りたい。

 

「だから力を貸してくれ。俺の体なら何を差し出したっていい。寿命だって持っていって構わない。だから、お願いだラム」

『……はぁ。あんたって本当に馬鹿よね』

 

本気でお願いしたのにため息を吐いた挙げ句流れるように罵倒は酷い。

 

『今回だけよ。今回だけは助けてあげるわ。代償はあんたの体の支配権。今後はあんたの体をあたしも使えるようになるわけ。つまりあたしが表層に出ている間はあんたの意識が表層に出ることは叶わない。それでも覚悟があるのなら───』

「分かった。それでいい。それで、俺はどうすればいい?」

『いや、あんたさ。ちょっとは考えなさいよ!どう考えたってヤバイでしょ!自分の体を勝手に使われるのよ!?怖くないわけ!?』

「そりゃ怖いよ。でも死ぬことに比べれば何倍もマシだ。それにラムなら信頼出来る。だって俺たちは契約者同士なんだから」

『~~っ!!もうっ!なんなのあんた!?もう良いから!さっさと終わらせて筋肉痛にでも悩ませられればいいわ!!』

 

え?それは止めてくれよ(絶望)

 

 

 

 

 

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数百年ぶりの生身の体にあたしは思わず口許を緩めてしまう。驚くべきことに体の感覚は生前のあたしの体に近いものを感じる。

アイツの意識は今は深層で眠っている。だがこのまま無駄に眠っているだけなのも癪なので、非常に仕方なく、全く持って不本意だがあたしのアーティファクトについての知識をほんの少しだけ植え付けておく。

 

まぁアイツがこのアーティファクトを使えないのもある意味仕方はない。

そもそもこのアーティファクト自体が凡才にしか適合出来ないという欠陥を抱えているのだし、発動条件すら癖が強いのだから分からなくともおかしくはない。

 

「…ほんと、なんでこんな馬鹿ばっかり引っ掛かるのかしらねぇ」

 

つまらない堅物が来るよりも断然いいけどね。

さぁ!久しぶりの肉体だし盛大にやらせてもらいますか!

 

「想起せよ、天駆けし凍てつく翼、フロストウィング!」

 

昔からよく使っていた愛着の飛行魔法の詠唱を完了させると、背中からバサッと半透明な氷で出来た翼が現れる。何回か翼をはためかせ、使い心地を確かめるが何も問題無し。

そしてあたしはアイツの父親を助けるべく動き出した。

 

この力を誰かを助ける為に使うだなんてどれほど懐かしいことか。

それこそあたしが魔王と呼ばれるもっと前の話だ。

生き残ることに使ってきた力をこんなことに使うという今に、心なしか気が昂っているような。

 

森の中を飛ぶのは非効率なので、一度上空に上がってから魔力感知で探す。探す対象はアイツの父親ではなくバアル。どうせあの狂信者の事だからあたしに会う前にアイツの父親の首をお土産にとでも考えているのだろうけど、割りと純粋に気持ち悪いから止めてほしい。

いやそれよりも前から気持ち悪い感情を向けてくるから殺したくなるけど。

 

「……見つけた!やっぱ気持ち悪いけど見つけやすいわね!」

 

徐々に生命反応が小さくなっている存在も側にいる。きっとアイツの父親だろう。

急がなきゃ手遅れになるほどの弱い反応だ。

 

「ふん。あたしの契約者の親に喧嘩を売るなんてね。二、三回くらい殺してあげようかしら」

 

バアルの元へと急降下する中、あたしはなんでか無性にイライラしているのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、あなたの首を手土産に魔王様の元に向かいましょうか。ふふ、あぁ見えて魔王様はこういったものが大好きでしてねぇ。可愛らしい御方ですよね?」

「…あ……りし……」

「それではさようなら、シグムッド。せめてこのワタシに傷をつけた人間として、グリフレッド同様名前だけは覚えておいてあげましょう。クハ!クハハハハ!」

 

 

バアルがキモい笑い声を上げながら剣を振り下ろす。

 

 

 

 

しかしそれは叶うことはない。

 

 

 

 

 

 

 

「控えなさい。お前が手を出した相手は私の大切な存在なの。それに手をかけようとするなら万死に値するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしはそれをギリギリのところで滑り込み、氷の剣でバアルの剣を弾き飛ばした。

 

 

 




いつからシグムッドが死んだと錯覚していた?

早めに学園編を書くべき?

  • ササッとゲーム本編にいこう
  • ゆっくり幼少編やってこう
  • お前の信じたシナリオを行け!
  • アリシアちゃんのイチャイチャはよ!
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