俺は/私は死にたくない!~死亡√は断固拒否です~   作:黒三葉サンダー

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評価つき始めてる!?良いぞこの作品を盛り上げるためどんどんつけるんだ!


銀の腕と呼ばれてしまうもの

起きたら俺の右腕が銀色だった件。

 

いやぁラムから事前に聞いておかなかったら驚き過ぎて気絶してたね。小心者には心臓に悪いプレゼントだよほんとに。

 

俺が起きてから間もなくお姉さまが看病に来て、目を覚ました俺を見て大泣きし始めた時はマジで焦ったぜ。

そこから声を聞きつけたお父様とお母様も俺を見て泣き始めたのは本当に悪いと思ってる。でも不謹慎ながらそこまで心配してもらえて嬉しいって思いもある。

 

なんというか、改めて心配してくれる相手がいるってのは幸せなことなんだなって再認識出来た感じだ。

だから俺も思わず貰い泣きしちまったぜ……。

 

因みに、俺が氷から解放されて三日はたったらしい。俺の体感では一時間にも満たない時間だった為、それを知ったときは唖然としてしまった。それと俺の右腕の変化は倒れた時には無かったみたいだ。つまり銀腕化したのはどう考えてもあの契約の後だろう。

 

……まさか前世含めてのファーストキスが奪われると思ってもみなかったが。

女の子の唇って予想以上に柔らかくて瑞々しい──ってなに考えてんだ俺!?確かに相手は文句無しの美少女だったが、性格はあれだぞ!?絶対に他人を足蹴にして喜ぶタイプの人間だぞ!?俺は踏まれて喜ぶマゾではないのだ!

 

ふぅ……落ち着け俺。何時もクールなナイスガイが俺の取り柄ではないか。いや今は女だけども。

 

何はともあれ。無事?アーティファクトを手に入れたと思われる俺は無理をしないことを条件に両親から外出許可をもらい、外で試運転してみることにした。

 

あ、右腕はそのままだと目立つので取り敢えず長袖と手袋着用で肌を見せないように出てきた。流石に村の皆にも心配させる訳にはいかないし。

 

「さて、ここら辺かな。……おーい、ラムさんや。これってどう使うんかね?」

 

周りに誰もいないことを確認し、小声で白銀化した右腕に話し掛けてみるが反応はない。

今更ながら自分の右腕に話し掛けるってヤベー奴だな。

それから五分ほど呼び掛けてみたが、うんともすんとも言わない。

 

はて。これは困った。ラムに話を聞くにはまた心想世界とやらに行けばいいんだろうか。でも行き方わからんしなぁ。死にかけて行けるとしてもそれはそれで契約違反起こしそうだし、向こうからアクションを起こしてくれない限りは接触出来なそうだ。

 

兎に角今は俺が契約したアーティファクトの特徴を理解しなきゃ話にならない。

何か変わった事から考えてみよう。

 

先ずは見た目が変わった。右腕がシルバーになった。指先から肩まで綺麗な白銀だ。感覚はしっかり残っている。指の関節等に異常無し。至って健康だ。

次に体温。これもハッキリと異常が出ている。

身体が冷たすぎるのだ。銀腕になってから急激に体温が低下している。自分では何も違和感を感じられなかったが、お姉さまが熱を計るために俺のおでこを触ったら冷たすぎて手を引っ込めたくらいだ。キンッキンに冷えてやがる!

今後は長袖手袋着用が義務付けされそうだな。

 

さて、ここで大まかに推測出来ることは二つ。

一つ目は俺が契約したアーティファクトは〈アガートラーム〉と呼ばれるものではないかという点。

二つ目は付与されてる属性は氷属性ではないかという点だ。

 

一つ目については、アガートラーム(ヌアザの腕)は銀腕であったということだ。詳しくは知らないが、ヌアザと呼ばれる神様の片腕をディアンケヒトが治したとか何とかだった気がする。おじさん神話マニアじゃないからよく覚えてないな。まぁそういうのがあったということだ!うん!……ん?なんかのアニメでそんなもん使ってた歌姫がいたような……?

 

二つ目については、俺が陥った状況と心想世界の光景。及び体温低下による判断だ。

俺が気絶する原因となった氷像事件と心想世界が雪山だったことを考えても属性は氷まで絞れるし、止めに体温低下だ。これでほぼ氷属性で決まりだろう。

いやまぁ、もしかしたら水属性の可能性もない訳じゃないんだけど。

 

なに?安直?こまけぇこたぁいいんだよ!

 

んで、ふと気付いたラムの名前のこと。これってアガートラームの略じゃね?そうだよね?これはもう特定しましたな。やったぜ、アリシアちゃん大勝利!

 

んじゃあとは名前を呼べば出てくるのでは!?

 

「こい、アガートラーム!」

 

 

………………………ん?おや?

 

 

「……あれ?あれれ!?なんで!?なんで出ないの!?呼び方が違うとか!?おいで!来て!来なさい!来てください!お願いします!」

 

様々な呼び方で呼び掛けてみるが、アーティファクトは何も答えてくれない。

え?いやマジで予想が違ってたってこと?アガートラームさんじゃないの君?

だとすれば俺の乏しい知識じゃもう予想つかんよ?

 

ゲームでは名前を呼べば具現化してたけど、具現化してないってことは間違ってるってことになるよな。

うーん、あとでお姉さまに聞いてみるか。

でもなぁ……お姉さまは説明が苦手というか……感覚派というか……天才肌だから、ね?可愛らしく擬音とか身振り手振りで表現してくるから俺が萌え死ぬ。

 

ちなみに、自制効かぬ幼き日にお姉さまの身振り手振りを真似して遊んだことがあったが、その日はお姉さまとお父様が失血死しそうになっていたことをここに記す。

 

可愛い天使な妹の手遊びに愛が洩れ出ちゃったんだろう。心中お察ししますお姉さま。お父様は……うん。

 

 

結局この日はアーティファクトをお目にかかることは出来ず、帰ってきたお姉さまに連れて帰られるまで腕をブンブンしてました。

 

……腕が疲労でピクピクしてるぅ……

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

━━━━ユーストラス宅

 

 

アリシアがシグムッドとレリィに無理をしないことを約束し、元気良く家を飛び出した後。

シグムッドは走っていくアリシアを少々困ったような顔で見送り、レリィのすぐ隣へと腰かけた。

 

「ふぅ、一時はどうなるかと思ったが…また元気な姿を見せてくれて本当に良かったよ」

「大変だったそうですね…。私もあなた達に着いていけば良かったと今では後悔してます」

「いや、レリィ。俺が側にいたにも関わらず何も出来なかったんだ。残念だがレリィがいても結果は恐らく変わらなかっただろう。何せ教会中のアーティファクトが我々の干渉を拒んだのだからな」

 

シグムッドはレリィが淹れたお茶で喉を潤すと、重々しく息を吐いた。彼の頭に過るのは恐怖で泣きそうになりながらも、最後に心配させまいと笑顔で凍りついたアリシアの姿。必死に助けようともがきながらも伸ばした手が届かず絶望したルクシアの姿。

そしてその愛娘二人に何もしてやれなかった己の不甲斐なさ。

 

シグムッドは堪らなく怖くなった。

今はアーティファクトと無事契約を果たしたと言っているアリシアが、再びアーティファクトの力で凍りつけにされたら?

そうなれば何の力も持たず、ただ剣を振るうことしか出来ない己に何が出来るというのか。

 

それは一重にアーティファクトに対して無力な自分が、いつか愛娘を助けられずに失ってしまうのでは無いかという恐怖心だった。

 

ルクシアは生まれた時から天才であった。物を覚えることも、学ぶことも、ありとあらゆる知識をスポンジの如く吸収していく姿に自分の父の姿を垣間見た事さえある。ルクシアは正しくユーストラス家を導く存在になれるだろう。そんな確信さえシグムッドは持てていた。

 

だがしかしアリシアは違う。アリシアは何の変哲も無い女の子だ。ルクシアが天才だとすれば、アリシアは至って平凡。それこそ騎士になる必要も無いくらいの可愛い娘なのだ。出来ればアリシアには普通の人生を歩んで欲しかったのがシグムッドの偽らざる本心だ。

 

けれどアリシアは騎士の道を選んだ。

姉と同じ道に進むと、自分も誇りあるユーストラス家の騎士になるのだと。そんな決意を込められた瞳を見てしまっては、もう彼には止める術はなかった。

 

「レリィ。俺は間違ってしまったのだろうか。やはりあの時、キツく叱ってでも止めるべきだったのだろうか」

「あなた……。確かに無理にでも止めれば、あんなことにはならなかったかもしれません」

「やはり……」

「でも、アリシアは自分で自分の道を選びました。まだ六歳だというのに、ワガママを一切言わなかったあの娘がハッキリと自分の意思で決めたんです。私はそんな娘の選択を、あなたの悩みを間違いだなんて言いたくありません」

 

レリィは項垂れるシグムッドの手を取り、そっと両手で包み込むとほんわかとした微笑みでシグムッドに笑いかけた。

 

「私たちには私たちの出来る限りの事を、ルクシアとアリシアにしてあげましょう?親が子を応援せずに、誰が応援してくれるのですか。大丈夫。アリシアにはルクシアもいます。アリシアは賢い子ですよ。だから私たちはあの子たちを支えてあげましょう」

「あぁ……あぁ。そうだな。それが俺たちが娘たちにやってあげられることだもんな。ありがとう、レリィ」

 

こうして二人は寄り添い合いながら、自分たちが二人になにをしてあげられるのかを語り合うのだった。

 

 

 

 

 

早めに学園編を書くべき?

  • ササッとゲーム本編にいこう
  • ゆっくり幼少編やってこう
  • お前の信じたシナリオを行け!
  • アリシアちゃんのイチャイチャはよ!

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