涙を拭い、遺体を簡素ではあるが弔ってから部屋を後にする。外傷から察するに何者かに殺害されたのだろうか。白骨化していることからそれなり以上の時間放置されてたらしい。彼らを殺害した何者かがまだこの場所に潜んでいない事を祈ろう。
「……とりあえず一息つける場所を探そう」
あまりにも短い時間に様々な事柄が一気に押し寄せてきた為一旦安全に休めるところを探し始めた。
◆ ◆
どうやら私が居たのは鉄血工造と呼ばれる戦術人形という一種のサイボーグ? アンドロイド? の様なものを作っていた工場らしい。あの後三階の資料室を見つけて現在そこで身を休めている時に見つけた資料から分かった事だ。
「戦術人形? 聞いたことがないな……。リッパー、ダイナゲート、イェーガー……?」
英語で記載された情報をゆっくりと読み込んでいく。
その半分以上が専門用語で構成されており、少々読むのに苦労した。どうやら製造していた商品の概要説明表のようだ。他のページも流して見るが特にこれといったものもない為資料をキャビンに戻す。ふと、持ち物を未だ確認していないことを思い出した。一応見てみようか。
狭く埃っぽい資料室の机の上に、身につけていた装備品を丁寧に取り外し置いて中身を検分する。
レッグホルスターには銀色に塗装された肉厚な銃身を持つ自動拳銃、恐らくデザートイーグルだろうか? それと小型ポーチに予備マガジンが五本ほど、大きなポーチにはM4の物と思われる黒いマガジンが二十本、フルカスタマイズされたM4、後は数日分の水と食料と手榴弾が五つ程か。そして背中に背負っていたケースだが、これについては一切分からなかった。
押しても引いてもビクともせず、一体何に使うのか用途不明だ。盾にでもするのだろうか。
検分を終え、少し気分転換に資料室の窓に目を向ける。太陽はもう柿のような色になって一日の役目を終えようとしていた。気は乗らないが今日はここで一晩過ごすしかないだろう。
◆ ◆
『ごめんなさいM4。もう、こうするしかないの』
桃色の髪をした、見知らぬ少女が、いや見知った彼女が私に話しかける。
その声音は酷く穏やかで、それでいてどこか、二度と会えない所へ行ってしまうかの様な儚さを感じた。
『待って、AR-15! お願い待って!』
懇願するように叫び、夢の中の『私』は彼女を行かせてはならないと必死に手を伸ばす。しかしその手は、
『元気でね……。私の、友だち』
彼女に届くことはなかった。
AR-15が爆弾を起爆し、輸送機の中で崩落するビルをただ見つめることしか出来なかった。
『……A……R……1……5。……どう、して……?』
失意と大切なものを失った絶望が同時に去来すると、その光景を最後に視界が突如暗転した。
◆ ◆
……不思議な夢を見た、気がした。初めての様で一度経験したかの様な生々しく、酷く悲しい、そんな夢。
椅子に座り机に突っ伏して寝ていた私はゆっくりと顔を上げて、そして自らの頰に伝う水っぽいものに気付いた。
どうして、私は泣いているんだ?
思わず口に出したその疑問に答える者は誰もいなかった。
M4をすこれ