実は別の名前で過去に二次創作をしていた過去があるのですが、今回は心機一転オリジナルを作ることにしました!
至らぬ点が多いとは思いますが、なにとぞお願いいたします。
この世界が憎い。
無機質に流れる音楽も、時間を示す警報も、人々が行きかう足音も何もかもが虚しく頭の中をこだまする。
この世界は美しいと語る人がいる。
綺麗ごとだ、本気で語っているのであればその人はどうにかしている。
この世界は綺麗では無い、むしろ逆。
この世界は酷く汚れていて醜い。
誰かが得をする際、同じく得をする人よりも損をする人のほうが多い。
誰かが幸せになったときは、その倍以上の人が不幸を味わっている。
この世界はバランスを取りたがる。
プラスがあれば必ずマイナスがある。
だから私は、この世界にマイナスをもたらす。
人々が何気ない日常を歩く中、私は空を見上げ涙を流していた。
その手には掛け替えのないものを抱いて。
「はぁ…だるいぁ。」
心の底から気だるげな声をあげる少女が目の前にいた。
「そう幸薄な声を出さないの…私まで滅入っちゃうよ…」
私の意見を聞き入れたのか少しだけ黙ると、少女は崩していた姿勢を正した。
それから可愛いキャラを全面に張り付けたような笑顔と声で平謝りを見せたが、私はそれを片手であしらった。
不満そうに声を上げる彼女を無視してを私は開いたままのパソコンに目を向けた。
ニュースのトップを飾るのは一つの事件だった。
私が既に興味をなしてないのを察してか、彼女はパソコンの画面を覗いた。
「んーなになに?成人男性の焼死体を発見、連続愉快犯の仕業か、未だに明らかにならない犯人像…」
最近、ここら近辺で不審な死体が多いらしい。
若い人が多く死んでいるらしいが、今まで死亡した人たちに共通性が見られなく、捜査は難航しているらしい。
「ほんと、嫌になるね…このくらいの年齢だと自分たちも近いもんね…」
悲しそうに、そして心配そうに言う彼女に私は微笑む。
「大丈夫、優ちゃんは死なないよ。それより勉強はどうなの?」
向居優香、私の友人の名だ。
中学の頃に出会った彼女とは、高校でもクラスメイトとなり高校3年になった今でもしっかりと交友関係を続けている。
因みに今は既に年末を越え受験を目の前に迎えていた。私自身は学がないわけでは無く、むしろ既に推薦で県内の大学に合格は決まっている。
受験という意味では彼女のほうが困っていた。
「別に無理して同じ大学に行く必要はないんだよ?」
そう、優は私と同じ大学に受験しようとしていた。
優本人も別に学がないわけでは無い。
しかし私が受かっている学校は県内で一番名の知れた大学であるが故に倍率は非常に高く、一般で受ける場合は最後の最後まで気が抜けない程だ。
「いいの、私は亜紀と同じとこに行くんですー」
相変わらずこの調子だ。
亜紀は私の名前だ、八代亜紀。
彼女はずっと私を気遣ってくれている…3年前のあの日から…。
しかし、そこまで思考に落ちた私を頬を挟むような形で優が引き上げた。
「亜紀ちゃん、私は何も優しさや同情で一緒にいるわけじゃないよ。」
まったく彼女はいつも私を分かったかのような口ぶりで話す。
それが大体あっているから困ったものなんだけどね。
私の家で行われていた勉強会という名の気の紛らわしは、沈んだ夕日と共に終了を告げた。
優は両腕を天高く上げ伸びをすると、そそくさと身支度を始めた。
彼女の家は門限に厳しい。
一度だけ門限を過ぎたことがあるが、その時は一か月近く遊べなくなるほどお説教を受けたらしい。
まあ、いくら大きくなったとは言えまだ未成年の少女だ、親が心配するのは道理だろう。
それ以降は必ず早く帰るよう努めている。
私は彼女の身支度に合わせるように片付けを済ませ送り出す準備をする。
「今日もありがとうね。」
そう短い挨拶を済ませ、彼女は家を出て行った。
彼女が帰った後の私の日常はほとんど毎日変わらない。
一人ご飯を作り、お茶を済ませパソコンを付けなおす。
そして一通り必要な機材を整える、そして見慣れた赤いアイコンから流れた先に行き、もう一人の私が動き出す。
「おっはよーございまーす!みんなー早速ゲーム始めていくよー!」
私は巷で話題のVtuberという裏の顔を持っていた。
もちろん高校の友達には教えていない。
寧ろ優にも伝えていない。
始めはただの気まぐれだっただが意外にも支持してくれる人が多く、そのままだらだらと続いているのが現在という形である。
この時間は自分を忘れられる、というか不思議なことに初めて数分経った後は終わりの挨拶を過ぎるまで記憶が無い。
しかし、終わった後にSNSを覗くとかなり好評な意見が飛び交っているため、他人事のようだがかなり楽しんでいるが故だと私は思っている。
配信のを止めた後は湯船につかってゆっくりと息を吐く。
どうしてか私のふろ場には鏡がない。
鏡がかけられていたであろう金具はあるのだが、その鏡自体がない。
洗面台にも鏡がなく、私の部屋の全身鏡と化粧用の鏡しかない。
赤く鮮やかなお湯につかった私はそのまま今日を振り返る。
今回も私は記憶が飛んでいた、私は少しでも思い出そうとするが激しい頭痛に襲われる。
過去にも何度か試したが毎回頭痛に襲われるのだ。
逆に言えば記憶が飛んだ時に思い出そうとする以外にはこんなことは起きないので、あまり重くは見ていない。
しかしこういった時に必ず起こることがもう一つある。
それはSNSに必ず書き込まれる名前、白亜という名の少女。
どうやら私はこの白亜という少女とよく遊んでいるらしい、それも記憶が飛ぶときに限って。
前に検索をかけてみたがその正体は全くと言っていいほど見つからなかった。
白亜ちゃんに関する他者のコメントは山のように出てくるが、本人らしき発言は一切出てこなかった。
不思議なものだ、探せば探すほど目の前から消えていく存在、いったい彼女は誰なのだろうか。
まぁ、またゆっくりと考えればいいだろう、このまま長湯してしまってはのぼせてしまう。
そのあとは深く考えることはなく、時計の短針が天を指す頃には眠ってしまっていた。
翌朝、目を覚ました私は何気ない日常をまた始める。
朝食を食べ、紅茶をいれると書斎へと足を運び本を読む。
書斎には専門的な本がたくさん並べられている。
しかし私が読んでいる本はそんな難しいものではない。
この書斎は私の父のものだ。
自慢の父親だった。
しかし、ある日突然病気で亡くなったらしい。
らしい…そう、らしいのだ。
気が付いた時には父親は死んでいた。
それがどうしてだか思い出せない。
思い出そうとすると決まってあの頭痛が来る。
そういうことも含めて、私は父親のことをあまり考えないようにしていた。
しかし、かといって忘れたくはないのでこの部屋で本を読むことで保っていた。
ここで過ごす時間はとても落ち着く、こう何かに包まれているような感覚だ。
まぁ大方父親に関する記憶に包まれているだけなのだろうが。
それから何時かたった頃、家のチャイムが鳴る・
もうこんな時間になっていたのかと呆れつつも、彼女が今日も来たことにうれしさを覚えつつ玄関へ向かう。
さぁ今日も何気ない日々を始めよう。
玄関に向かう途中でも何度かチャイムをしつこく鳴らしてくる。
全く、あの子の悪い癖だ。
私は不満げな顔を見せながら玄関を開ける。
「全く、一回押せば私は出るんだからさぁ」
「いいじゃんべつにー、それだけ亜紀ちゃんい会いたいんだよー」
愛してるーなんて言っている優をいつも通りあしらうとそのまま家へ招き入れた。
それから、昨日と同じく彼女は勉強の体制になる。
しかし、彼女はそのまま勉強を始めるのではなく、そういえばと話を始めた。
「今朝のニュース見た?また出たらしいよリッパー」
また出たのか、そう思いつつパソコンを開いた。
検索をかけてみればたくさんのヒット件数をたたき出す。
最近何かと有名な人物だ。
無差別に人をナイフで殺害しているらしい。
出回っている情報によると、小柄で幼い女の子ではないかという話だ。
単なる妄想とかではないらしい。
少しだけある目撃情報や刺し傷の多さなどから、相当な愉快犯だと考えられるらしい。
やり方もひどいらしく、致命傷という傷は一つもなく弄ぶような傷が多いらしい。
そんな残酷な犯人なのだが何故か人気がある。
知名度もあるせいか、時代も手伝ってかキャラクター絵まであるらしい。
黒と白で構成された髪の毛に赤い目小柄で幼く、身丈よりもおおきなフード付きのロングカーディガンを身に着けていた。
近年まれにみる猟奇的な殺人犯にこんなキャラ絵が描かれるなんて、世も末というかなんとも言えない心境に陥る。
まあ自分がそういった可愛いキャラというものに自分も身を任せている一人なのですべてを否定するのもおかしい話か。
「今回は若い女の子がめった刺しか…」
今回もひどい状態だったらしい。
顔は無傷だが体はずたぼろ。
出血の量もすさまじく、目撃者によると辺り一面は花が散ったような感じだったようだ。
なんともむごたらしい話だ。とっつてもきれーだったんだよー
「全く、こわいよね安心して歩けなくなっちゃうよ…門限厳しくてよかったかも」
彼女の意見には至極同意だ。
もしも彼女に門限がなく遅くまでいようとするならば私は怒ってでも帰らせていただろうに。
「よかったね。」まぁ大丈夫だよ。優は襲わないから
「ほんとだよ、はぁあ今日も勉強始めますかね」
話すのも飽きたのか勉強を始めた。
私は書斎から本を持ってきていた。
内容は猟奇殺人を題材とする本だった。
最近の話題あってか少し興味が湧いたのだ。
内容は読み進めるにつれ、だんだん気持ち悪くなるものだった。
人の死にざまに酔いしれる犯人、血を浴びる喜び、泣き叫び必死に抵抗するが虚しく殺される被害者。
吐き気が止まらない。楽しいよね!あぁぁ気持ちいんだよなぁぁ
何がうれしいのかわからない、こんなことをする犯人には一生会いたくない。
やがて最後は自分の死こそが最高の悦だと思い、喉をナイフで切り死んでいった。
主人公は幸せそうな描写の中死んでいった。
なんとも言えないラストだ、誰も報われない終わり方だった。
わかっていることだが、こういうものにはハッピーエンドは存在しないのだろう。
犯人が最後に改心すれば多少は報われるだろうがね。
読み終えた私は不思議そうな目で見上げてきている優に気が付いた。
少し驚きつつも彼女にどうしたのかと尋ねた。
「なんか珍しいもの読んでるなーって思って」
あぁ、そういうことか。
「別に、最近話題になってるからね。ちょっと興味を持ってそういう本を読めば犯人の心境でもわかるんじゃないかと思って」
なるほどねぇ、なんていって納得したようなそぶりを見せる。
果たしてこの子は本当に理解してくれたのだろうか。
私がこの主人公みたいに猟奇的な思考をしていると思われたくないんだけど。
それからはいつも通り時間になったら優は帰り私は日常を過ごす。
そんな日が何日も過ぎていく。
しかしあの少女が死んで以降、リッパーは現れなかったようだ。
配信の方は順調に行われた。
視聴者数は日に日に増えていく、最近は結構なペースで上がっていく。
しかし増える視聴者に対して、評価はなぜか上がらなかった。
ならなぜ増えているのだろうか、何かを期待されているがそれに応えられていないのだろうか。
最近の記憶ははっきりしているため、どこまで気の乗り切った配信ができていないのか。
しかし、自分としてはそんなことはないと思っている。
寧ろ最近は割と楽しんでゲームができている気がするのだけどな。
配信者と視聴者の価値観の違いからきている者だろうか。
なかなかに悩ましい話である。
最近の傾向としてはグロテスクなゲームが評価されつつある。
やはり最近身を潜めているといわれているあの犯人が原因なのか。
人々は刺激に飢えている。
それは大きければ大きいほど喜びになる。
だがその刺激というものは自分に直接来ることを嫌う。
他人の不幸は蜜の味というかなんというか。
自分の身内が死ぬのは嫌だが、全くの赤の他人なら話題に軽々と上げてしまう。
全くどこまでも自己愛が強い生き物だ。
とにかく、犯人が身を潜めてくれているなら少しは安心できる気がする。
このまま何も起こらなければいいんだけどね。
私はそう思いつつコーヒーを啜った。
このまま、何事も起こらず犯人が動き出さなければよかった。
誰も死なずに、誰も悲しまずに済んだんだ。
私が壊れきることもなかった。
きっかけはそう、すごく簡単なことだったんだ。
簡単だが、ひどく残酷で運命が狂うには立派な導火線だった。
だが、私は先に言っておく。
私は……