バビル・イン・ザ・ブラッド   作:橡樹一

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2020/6/20 用語集追加


9話 降臨

 白旗を振る揚陸艇は、古城が眷獣で荒地へと変えた砂浜へと接舷した。クレーターに海水が溜まり簡易的な入り江になっていたため、揚陸に適していたのだ。

 船からはまずベアトリスが下りてきた。続いて聖職者を思わせる男が上陸し、最後に白旗を担いだキリシマが砂浜へ足をつける。

 

「ようバカップル。人目を気にしないでいちゃついてたか?」

「てめえ……よくもぬけぬけと」

 

 古城はキリシマを睨みつけた。無人島に置き去りにした実行犯であり、個人的には飛行機から蹴り落とされた恨みもある。吸血鬼でなければ死んでいてもおかしくはなかったのだ。

 

「待て待て、恨むならあの女を恨めって言ったろう? 俺だって命令されてやったんだ」

 

 白旗を盾に上司を売ったキリシマを、ベアトリスは横目で睨みつける。気持ちを切り替えるように髪をかき上げるしぐさからは、どこか退廃的な色香が感じられる。思わず視線がつられた古城は、雪菜の肘打ちで小さく悶絶した。

 

「久しぶりですね、叶瀬賢生」

 

 コントじみたやり取りをする4人を放置し、ラ・フォリアが黒服の男を見つめる。男――叶瀬賢生は胸に手を当て、恭しく一礼を返した。

 

「殿下におかれましてはご機嫌麗しく……もう何年ぶりになるでしょうか、お美しくなられましたね」

「わたくしの血族をおのが儀式の供物としながら、よくもぬけぬけと言えたものですね」

「お言葉ながら殿下、私は夏音をただの供物として扱ったつもりはありません……むしろ実の娘も同然に思っています。あなたにはその理由もお判りでしょう」

「実の娘も同然の子を、人外のものへ仕上げようというのですか」

 

 ラ・フォリアの非難に、賢生は静かに首を振った。

 

「むしろ、実の娘も同然であるからと言えましょう」

「……叶瀬夏音はどこです」

 

 ラ・フォリアの質問に答えず、賢生は自らが行った実験の内容を語りだした。

 

「我々は模造天使(エンジェル・フォウ)の素体を7体用意しました。戦闘の結果、夏音は6体の霊的中枢を手に入れその合計は13、それらを繋ぐ小径(パス)は30。これは人間を霊的に一段階引き上げるのに十分な数です」

 

 宮廷魔導師らしい丁寧な口調で語られた内容に、雪菜は突然青ざめる。

 

「まさか、叶瀬さんはそのために自分の同類(なかま)を……!? なんて、ことを……!」

「姫柊?」

 

 見開かれた瞳に、恐怖と驚愕、そして賢生への怒りを湛える雪菜。普段他人に対して強い感情をぶつける事のない彼女の様子は、話の内容を理解できていない古城を動揺させるには十分だった。

 

模造天使(エンジェル・フォウ)はいわゆる蠱毒の応用です。候補者を殺し合わせ、霊的中枢を取り入れさせ続けることで、最良の一体を選別する」

 

 困惑する古城に、ラ・フォリアが説明する。

 

「霊的中枢とは、霊力によって奇跡を生み出す回路だ」

 

 ラ・フォリアの言葉を、賢生が引き継いだ。

 

「人間には等しく備わっているが、それを活用できている者はほとんどいない。一流と呼ばれる霊能力者も、その3割でも引き出せていれば上等だろう。全てを使いこなせれば、神仏にも等しい力を得られるはずだ。

 そこでだ……出力が足りないのならば継ぎ足せばいいという仮説を元に、模造天使(エンジェル・フォウ)の儀式を設計した。魔術的に限界まで強化した1つの中枢を持つ候補者を争わせ、それを奪って取り入れる。そうすることで人間の肉体が持つ霊的容量(キャパシティ)を超えることなく、霊的進化を可能とする。ヒトよりも神に近い存在、すなわち天使へ」

 

 思いのほかわかりやすい賢生の説明により、古城はようやく夏音の現状を理解した。あの殺し合いにも、倒した相手を喰らった事にも納得がいく。

 

「だけど、その儀式になんでメイガスクラフトが関わってくるんだ? 聞いた限りじゃ、掃除ロボットには何の関わりもないぞ」

 

 古城はキリシマを睨みつつ疑問をぶつける。儀式の内容を聞いたため、余計に疑問が深まった。ただの営利企業が、何故危険を冒してまでこのような非合法の実験に協力をしているのか。発覚すれば、並大抵の罰則では済まないだろう。

 

「いや、それがな……うちの企業の経営のためなんだわ」

「……は?」

 

 いきなり見当違いの回答をされ、古城はあっけにとられる。

 

「いや、あんたの所経営回復してるだろ。奇跡のV字回復とかってニュースで特集組まれてたぞ」

 

 古城の指摘通り、メイガスクラフトはここ数カ月で驚異的な経営の立て直しに成功していた。主力である掃除ロボだけではなく、自動人形(オートマタ)産業において革新的な技術を開発したと噂されている。その企業が、リスクの高い行為をしているという矛盾が、古城たちを悩ませているのだ。

 

「その回復を続けるためだよ。数か月前まではうちの企業は斜陽もいいとこだったんだ。掃除用ロボなんて、価格競争は激しいわ技術革新は速ェわで利幅が薄くてな……仕方なしに戦争用の自動人形(オートマタ)なんてのも開発したんだが、それがまた売れなくてよ。まあ、当時の性能じゃ仕方なかったけどな」

 

 雪菜は眉を顰めた。直接自動人形(オートマタ)と戦った彼女からすれば、その動作が決して油断ならないものだと理解している。キリシマの言を信じるならば、たった数ヶ月で自動人形(オートマタ)の性能が飛躍的に上昇したことになる。通常ではありえない技術革新の謎は、得意げなキリシマが明かした。

 

「それが獣人の伝手で俺が拾った技術者が持ち込んだ技術を流用したら、あっという間に世界有数の戦闘能力を誇る化け物に早変わりだ。情けは人のためならずってのは本当だな。自分じゃあの黒死皇派の残党とか言ってたが、案外吹かしじゃなかったのかもしれねえよ。やつの言ってた廃墟から発見したデータで、あの鉄球使いの自動人形(オートマタ)も開発できたことだしよ。

 で、この調子でメイガスクラフト製次世代兵器の目玉として天使を開発しようって話が持ち上がったわけだ」

「兵器って……どういう意味だ!?」

 

 古城の背に冷たい汗が流れる。那月の鎖、雪菜の槍、浩一の結界、そして古城の眷獣すら寄せ付けなかった〝仮面憑き〟――あれがもしも兵器として量産されたら。既存の軍事バランスなど容易く崩壊するだろう。買い手など幾らでも湧いてくるに違いない。

 

「ったく長いのよ話が。どうせガキにわからない話は置いておいて、こっちの要求を伝えるわ。

 まずアルディギアのお姫様、無駄な抵抗はやめて投降しな。大丈夫、大人しくしてれば命までは取らないからさ。

 で、残りのお2人にはチャンスを上げるわ。ちょっとこの子と本気で戦ってもらえる?」

 

 沈黙を続けていたベアトリスのふざけた物言いに、ラ・フォリアが冷たい視線を向ける。それを無視し、彼女はわざとらしい動きで小型の制御装置(リモコン)を取り出し賢生へと手渡した。キリシマがいつの間にか船から棺桶のようなコンテナを運び出し、丁度古城たちと自分たちを遮るように置く。

 蓋が開けられ、冷気を纏いながらゆっくりと小柄な人影が体を起こした。簡素な服装、剥き出しの手足、零れ落ちる銀髪、不揃いな醜い翼。

 

「――叶瀬!」

「叶瀬さん!?」

 

 古城と雪菜が同時に叫ぶ。ベアトリスはつまらなさそうに目を細める。

 

「世界最強の吸血鬼と、獅子王機関の剣巫の2人掛かりで敵わない最新の兵器。宣伝としては中々洒落た文句だと思わない?」

 

 古城と雪菜が弾かれたようにベアトリスを睨む。

 

「ふざけんな! そんなこと聞かされて、はいそうですかとでも言うと思ってんのか!」

「叶瀬さんを兵器として売り出すつもりですか!」

 

 2人の怒気を、ベアトリスは涼しい顔で受け流す。

 

「まあ、当たらずとも遠からずってところかしらね。

 戦う気が無いなら、そのまま死んでもらうだけだからいいんだけど……彼女はすっかりやる気みたいよ?」

「なに……?」

 

 夏音が発する瘴気に気が付き、古城は愕然とした。不揃いな翼を動かし、ゆっくりと浮上する夏音の目に光は無く、焦点も結ばれていない。

 

「賢生、あなたはそれでいいのですか?」

 

 制御装置(リモコン)を持つ賢生へとラ・フォリアが問いかけるが、彼はその視線から逃れるように背を向け、制御装置(リモコン)へと呼びかけた。

 

「起動しろ、XDA‐7.最後の儀式だ」

 

 その言葉を合図にしたかのように、古城のすぐそばを銀色の閃光が駆け抜けた。銀の残光を残しながら、雪菜がかまえる槍〝雪霞狼(せっかろう)〟の刃が夏音へと迫る。

 あらゆる魔力を無効化し、結界を切り裂く破魔の槍。夏音に刻まれた天使化の術式を断ち切ろうと、先手必勝とばかりに雪菜は槍を突き立てた。

 

「くうっ!?」

 

 しかし、その刃は届かなかった。肌に触れた瞬間、まるで磁石が反発するかのように槍ごと弾かれた雪菜は、驚愕の表情を浮かべたまま体制を立て直し着地する。

 

「これは、そんな!?」

 

 痺れる手の感触を誤魔化しつつ、雪菜は思考を巡らせる。そんな彼女をまるで認識していないかのように、夏音は空へと舞い上がった。

 

神格振動波駆動術式(DOE)……獅子王機関の秘奥兵器〝七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)〟か。

 無駄なことを。人の生み出した神の波動が、本物の神の加護を受けた模造天使(エンジェル・フォウ)に届くものか」

 

 賢生の独白に、雪菜はどうしようもない衝撃を受けた。彼女の主武装である〝雪霞狼(せっかろう)〟が、ここまで完全に無効化されたのは初めてのことだ。

 

「戦闘結果に影響が出ないってわかった所で、私の相手でもしてもらおうかしら?」

 

 唇を噛む雪菜と賢生の間に、深紅の槍を持ったベアトリスが割って入った。兵器を止めるため術者を仕留めるのは当然考えられる戦術であり、それを守りきることは兵器を使う側にとって前提条件だ。ベアトリスの背後で、賢生が船の搭乗口付近まで下がる。

 雪菜は一刻も早く賢生を無力化するため、長槍を構えるベアトリス目掛けて踏み込んだ。

 互いに槍を構えているとはいえ、雪菜とベアトリスには20センチ近い身長さがある。さらに、構える槍もベアトリスの方が1.5倍ほど長いだろう。まさしく大人と子供並みにリーチの差があるにもかかわらず、雪菜の目に恐れは無い。

 ベアトリスの構える槍からは、禍々しい魔力が放たれている。なんらかの魔力により生み出されている以上、雪菜の〝雪霞狼(せっかろう)〟が持つ降魔の力が一瞬で打ち砕くだろう。槍へと信頼と自らの技量への信頼を持って、雪菜は打ちかかる。

 そんな雪菜の思いを嘲笑うかのように、ベアトリスが叫ぶ。

 

「〝蛇紅羅(ジャグラ)〟! 串刺しにしてやんな!」

「――ッ!?」

 

 雪菜の槍がベアトリスの槍に触れる瞬間、深紅の槍が突如蠢き、蛇のような動きで雪菜目掛けて穂先を突き出した。咄嗟に回避できたのは、剣巫の持つ未来視の恩寵だ。

 ベアトリスがまともに腕を動かさない状態で、生き物のように槍は伸び、しなり、薙ぎ、突く。

 

「まさか、槍の姿をした眷獣……意志を持つ武器(インテリジェント・ウェポン)!」

「ご名答。そこまで珍しいものでもないし、そう驚くことないだろう?」

 

 そう言葉を交わす間にも、槍の猛攻は続く。いや、より激しさを増していっている。傍から見ている古城の目には、もう軌跡すら捉えられない。

 古城も、ベアトリスが吸血鬼であると薄々気がついてはいたのだ。おそらくヴァトラーとは違う血族、眷獣の特徴から〝第三真祖(ケイオスブライド)〟の末裔だろう。

 雪菜にとって、吸血鬼との戦闘が初めてというわけではない。古城の眷獣が暴走した際の鎮圧をはじめ、幾度かの戦闘経験を持っている。その中で、ベアトリスの眷獣は弱い部類と言えるだろう。

 だが、その弱い眷獣に雪菜は圧倒されていた。ただ破壊を撒き散らす眷獣と、意志を持ち自ら敵を襲う武器とでは、攻撃そのものは前者の方が上だ。だが、対人戦においてその破壊はほとんどが周囲に散り無意味となってしまう。弱くはあるが、その力の全てを一点にぶつけることができるベアトリスの眷獣は、対人戦と言う土俵においては前者を上回る脅威となるのだ。

 

「さて、こっちはこっちで仕事をしますかね」

 

 雪菜がベアトリスに苦戦していることを確認し、キリシマがラ・フォリアへ近づく。当初の予定に基づき、王女を確保するつもりなのだろう。

 

「離れなさい、獣人」

 

 腰から銃を引き抜き、ラ・フォリアは警告を発した。愛用の呪式銃ではない、通常の機関拳銃だ。

 警告の後ににやけながら一歩踏み込んだキリシマに対し、王女は一切の躊躇なく引き金を引いた。至近距離からのフルオート射撃により、一瞬で17発の弾丸がキリシマに降り注ぐ。常人ならば間違いなく即死の攻撃を受け、しかしキリシマは平然と立っていた。

 

琥珀金弾(エレクトラム・チップ)か。いい弾だが……こんな安物になんで頼る? ご自慢の呪式銃は弾切れか?」

 

 放たれた弾丸を獣人化した腕で掴み取り、嘲るように笑うキリシマの身体が徐々に黒毛の獣へと変わっていく。それを見るラ・フォリアは、王女とは思えない手際のよさで拳銃の再装填を終え、じりじりと間合いを取る。

 そして、彼女の視線がキリシマの背後に釘付けとなった。それに興味を持ったキリシマが背後を見上げる。

 視線の先では、叶瀬夏音が浮かんでいた。全身を魔術の紋様で輝かせ、口を大きく開いている。

 

Kryiiiiiiiiiiiiii(キリイイイイイイイイイイイイイイ)――!」

 

 開かれた口から、甲高い絶叫が迸った。人間の声帯では発音不可能な、苦痛と悲嘆と荘厳とを併せ持った悲鳴だ。それを呼び水にしたように、夏音を覆う光が強まり、変化が始まった。

 口内の牙は抜け落ち、幼さを残していた顔立ちは黄金比を湛える美貌へと変じていく。醜く不揃いだった翼は、美しく整った三対六枚の翼へと生え変わる。そして生え変わった翼の表面で、巨大な眼球が見開かれた。

 

「これが、模造天使(エンジェル・フォウ)……」

 

 眼前の変化に圧倒され、古城が絶えるように歯を食いしばる。精神的な圧だけではない、古城の吸血鬼としての肉体が、夏音の光に対し強い拒絶反応を起こしているのだ。焼かれるような痛みが、光の当たる部分から全身に広がる。彼女の発する光は、既に神気と呼ぶべき代物へと変化している。

 その場の誰もがその変貌から目を離せなかった結果、戦場は小康状態となっていた。そこで真っ先に雪菜が我に返ったのは、他の者と比べて神と係わりが深い巫女であったからなのだろう。その直感は神の使いの狙いを正確に捉えていた。

 

「先輩気を付けてください! 彼女の狙いは――!」

Kryiiiiiiiiiiiiii(キリイイイイイイイイイイイイイイ)――!」

 

 雪菜の言葉が終わる前に、再び夏音が咆哮を発した。同時に彼女の翼面に生じた眼球が輝きを発し、羽ばたきに連動して剣と化した光を次々と射出し始めた。

 

「やめろ、叶瀬!」

 

 咄嗟に回避した古城のすぐそばに、光剣が着弾する。凄まじい爆発が発生し、岩盤が砕かれ、紅蓮の炎が周囲を舐める。明らかに古城を狙って放たれたそれは、次々と舞い落ちるように降り注ぎ始めた。模造とはいえ神の御使いにとって、呪われし吸血鬼は滅ぼすべき仇敵なのだろう。

 回避を続ける古城だったが、意を決して夏音を見上げる。このままでは雪菜やラ・フォリアに流れ弾で被害が出かねず、島そのものが消滅してもおかしくないのだ。出し惜しみができる相手ではなく、古城は魔力を高ぶらせ叫ぶ。

 

疾く在れ(きやがれ)! 〝獅子の黄金(レグルス・アウルム)〟! 〝双角の深緋(アルナスル・ミニウム)〟!」

 

 雷の獅子と振動の双角獣が、先を争うようにして夏音へと迫る。天災に匹敵する破壊を秘めた眷獣は、しかし夏音に触れる事すらできなかった。まるで蜃気楼のように、夏音は眷獣をすり抜けたのだ。その肉体には傷一つ無い。

 

「無駄だ第四真祖よ。すでに夏音の身体は我々とは異なる次元に昇りつつある。いかに強力な眷獣であろうとも、この世界に無い者を破壊することなどできまい」

 

 淡々と紡がれる賢生の言葉に、古城は歯噛みする。

 そして、高音を伴う暴風が戦場全体を襲った。天使の発する絶叫ではない、どこか威嚇するような鋭さを持つ高周波だ。

 

「この音は……まさか!?」

 

 古城と雪菜が、反射的に空を見上げる。

 悠然と浮かぶ夏音よりも遥か上空から、巨大な鋼の怪鳥が姿を現した。夏音目掛けて咆哮と体当たりを敢行するも、それは古城の眷獣と同じ結果に終わる。しかし、異物の襲来に夏音の意識が僅かながら逸れる。その隙に、古城は比較的まともな足場へと移動した。

 数度跳躍し岩場へと陣取った古城すぐそばに、黒い詰襟の戦闘服を纏った人影が降り立った。赤い髪をたなびかせ、目は髪と同じ色に輝いている。

 

「バビル2世、なんでここに!?」

「よくよくトラブルに巻き込まれているな、暁古城。

 ラ・フォリア・リハヴァインを探してこの島に来たが、第四真祖とその監視役が何をやっている?」

 

 思わずと言った様子で古城が呼んだその名を聞き、メイガスクラフト所属の人間が表情を歪ませ、剣巫と王女は驚きを隠せずにいる。

 

「状況から見て、王女誘拐未遂の実行犯だな。無駄だろうから抵抗するなとは言わない。覚悟しろ」

 

 敵対者へ向けられたバビル2世の怒気に応えるように、ロプロスの咆哮が響き渡った。




 ストライク・ザ・ブラッド 用語集

 人物

 叶瀬賢生 かなせ-けんせい
 叶瀬夏音の保護者にして、元アルディギア王国宮廷魔導技師。
 研究者然とした見た目と相違なく、理知的な性格をしており高い魔導技術を誇っている。
 模造天使を実用化したことからもその技術の高さがうかがえるが、義理とはいえ娘を魔術改造するなど倫理観には問題点が見受けられる。

 種族・分類

 意志を持つ武器 インテリジェント・ウェポン
 武器の形をした眷獣の総称であり、主に第三真祖の血族に連なるものが多く所有する。
 武器としての性質に加え、武器そのものが攻撃することができるため多彩な攻撃が可能となっている。

 模造天使 エンジェル・フォウ
 仮面憑きと呼ばれていた存在の正式名称にして、完成形の呼び名。
 人間をその限界を超えずに霊的進化をさせることによって疑似的な天使状態にする術式であり、ひとたび完成すれば高次存在となるが故にこの次元の存在では干渉すら不可能になる。

 第三真祖 ケイオスブライド
 中央アメリカの夜の帝国「混沌界域」を支配する真祖。
 27体の眷獣を従え自在に自らの姿を変えることができ、血族には意志を持つ武器を宿す者が多い。
 血に連なるものはT種と呼ばれ、第三真祖は血族を娘たちと呼称する。

 蛇紅羅 ジャグラ
 ベアトリス・バスラーが宿す槍状の眷属。
 意思を持つ武器特有の、宿主と武器が別々の思考を持つが故の動きを読ませない連撃が強力であり、不意打ち気味とはいえ雪菜を撃退した。
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