バビル・イン・ザ・ブラッド   作:橡樹一

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2話 選択肢は1つだけ

 バビル2世と女吸血鬼が向かい合い、女吸血鬼が鞭を構えた。

 

「その鞭で攻撃するつもりか。そんな武器に当たるとでも思っているのか?」

「あら、だれも鞭であなたを打つとは言ってないわよ?」

 

 見せつけるように女吸血鬼が鞭で地面を叩く。突然、バビル2世を弾丸が襲った。咄嗟に回避するバビル2世だが、次々と弾丸は発射される。

 

「なんで、特区警備隊(アイランド・ガード)が!?」

 

 バビル2世と協力するべき特区警備隊の隊員が、全員でバビル2世へ射撃を続けている。浅葱の驚愕も当然のものだろう。

 

「くっ、アスタルテ! 藍羽浅葱を保護するんだ!」

命令受諾(アクセプト)実行せよ(エクスキュート)、〝薔薇の指先(ロドダクテュロス)〟」

 

 バビル2世の援護に回ろうと跳び出しかけたアスタルテだったが、当のバビル2世から出された指示に即座に反応、現状最も危険である浅葱とサナの元へと眷獣を纏って移動した。そのまま2人を抱えて離脱しようとするも、動きに反応した特区警備隊(アイランド・ガード)隊員に捕捉され銃弾が放たれる。迂闊に動いた結果の跳弾を警戒し、アスタルテは動きを封じられる形となる。

 一方のバビル2世は念動力(テレキネシス)を利用しアスファルトを破壊。即席の壁として弾丸を防いでいた。

 だが、特区警備隊(アイランド・ガード)に配備されている小銃は対魔族用。アスファルト程度であれば容易に削り取り、数秒もしない内に貫通を許してしまっている。次々とアスファルトがめくれあがり、その破片が銃弾によって粉と化していく。

 

『痴女めいた服装、鞭の眷獣、能力は多分だが精神支配。

 嬢ちゃん、一件ヒットしたぜ』

 

 〝薔薇の指先(ロドダクテュロス)〟の腕の中で、さらにサナを抱きしめる浅葱の耳に、モグワイの声が響いた。激しい銃撃の中、吸血鬼の基準としても高い聴覚を持つ女吸血鬼の耳がその合成音声を捕らえる。

 

「あら、せっかくなのだから自己紹介はワタシからさせてもらうわよ。

 お嬢さん、ジリオラ・ギラルティという名に心当たりはあって?」

「……クァルタス劇場の歌姫!

 なんで……どうして絃神島に!?」

 

 告げられた名に、浅葱は聞き覚えがあった。幼い頃に繰り返しニュースで流されていた事件、当時の浅葱に恐怖を植え付けた惨劇の実行犯だ。事件の後、捜査によって数々の猟奇殺人を行っていたことが発覚し逮捕されていたはずの犯罪者が、何故か今浅葱の眼前にいる。

 

「あら嬉しいわ。まだワタシの事を覚えていてくれていた子がいるなんて!」

 

 ジリオラが無邪気に手を叩く。背後で鳴り続けている射撃音との差が、言い表せない不快感を生んでいる。

 

「ヒスパニアの魔族収容所でちょっとやりすぎちゃったのよ」

「やりすぎた……?」

「そう。監獄全体を支配して好きに暮らしてたら、派遣されてきた空隙の魔女に監獄結界に閉じ込められちゃったのよね。

 そういうこともあって、ワタシが恨んでるのは空隙の魔女だけよ。この島に来たっていうか、監獄結界に閉じ込められて、出たらこの島にいただけ。くり返すようだけど、その子を大人しく渡してくれれば、あなたたちは見逃してあげるし、なんならこの島から出て行ってあげてもいいわよ?」

 

 ヒスパニアの魔族収容所と言えば、生きて出た者がいないとまで言われる欧州の監獄だ。魔族にとって恐怖の代名詞ともいえる監獄を支配したと豪語するジリオラだが、特区警備隊(アイランド・ガード)の主力部隊をいともたやすく操る光景から、その言葉に嘘は無いと確信できる。

 血の色をした目をサナへと向け、ジリオラが裂けたような笑みを浮かべた。もしも引き渡された場合、サナがどのような目に合うのか。容易に想像できる光景に、浅葱がサナを強く抱きしめる。

 

「そんなこと言われても、はいそうですかって渡せるわけないじゃない!」

「同意。もうしばらく耐えてください、ミス藍羽。彼がもう少しで事態を収束できます」

 

 浅葱の叫びに、冷静なアスタルテの声が重なる。いつのまにか嵐のような銃撃は止み、〝薔薇の指先(ロドダクテュロス)〟はその腕の中から浅葱を開放していた。

 

「へえ……やるじゃない、名前も知らないお兄さん」

 

 ジリオラと向かい合うバビル2世の足元には、金属が溶け落ちた後が残っている。そしてジリオラに付き従うよう並んだ特区警備隊(アイランド・ガード)たちからは、主武装のはずの射撃武器の類が全て失われていた。

 

『いや、流石は過適応能力者(ハイパーアダプター)だな。念動力(テレキネシス)であっという間に全員から銃を奪いやがった。

 回避に専念してたのは、特区警備隊(アイランド・ガード)の位置を把握するためだったみたいだな』

「そんなことができるの? 特区警備隊(アイランド・ガード)には遠距離の魔術に対する保護策が何重にも掛けられてるはずじゃない」

『実際目の前で実行されてるだろ?

 それに警備隊の連中が施してるのはあくまでも対魔術の類だ。過適応能力者(ハイパーアダプター)対策なんてしてないし、第一そういった対策が無いからこその過適応能力者(ハイパーアダプター)だからな』

 

 浅葱とモグワイが話している間にも、バビル2世とアスタルテ、そしてジリオラと背後に控える特区警備隊(アイランド・ガード)の睨み合いは続いている。明らかな強敵2人に挟撃される形になっているにも関わらず、ジリオラの余裕は崩れない。

 

「あら、そっちの眷獣付き人工生命体(ホムンクルス)も動いちゃうのね。

 でもいいの? こいつらはワタシに操られているだけなのよ?」

 

 そう、ジリオラの自信の根拠はそこだ。いかにバビル2世とアスタルテが強かろうと、彼女は現在大勢の人質を取っている状態なのだ。洗脳下にある隊員たちは、ジリオラの指示1つでバビル2世やアスタルテを襲い、最悪の場合自らの命を絶つだろう。

 

「さあ、これだけの命とそこの小娘1人の命、どっちを優先するかなんで決まっているでしょう? はやく渡してくれないかしら?」

 

 優越感に染まったジリオラが、最後通告とばかりに浅葱を見る。背後に居並ぶ特区警備隊(アイランド・ガード)が、互いの首に手をかけ始めた。

 

「いい加減にしろジリオラ。今ならまだ投降を受け入れるぞ?

 最後の警告だ、大人しく投降し、監獄結界へ戻れ。従わない場合、実力を行使する」

 

 バビル2世の警告に、足を止めたジリオラは不機嫌そうに振り向いた。完全に優位に立っている状況下で、まさかこうも上からの物言いをされるとは思っていなかったのだろう。

 

「あらあら、そこの男は状況がわかってないみたいね。

 こう見えてもワタシは旧き世代の吸血鬼なのよ。眷獣をもう1体従えていても不思議はないと思わない? 来なさい〝毒針たち(アグホイン)〟よ!」

 

 苛立ちに表情を歪ませて、ジリオラは新たな眷獣を召喚した。深紅の蜂の群れが顕現し、上空に展開する。一匹が五、六十㎝にも達するであろう巨大な蜂十数匹がゆっくりと降下してくる悍ましい光景は、本能的な嫌悪感を刺激する。

 

「さて、最後の警告ですって? この眷獣を見て、まだそんな口を利けるのなら大したものね!」

 

 嘲るような口調のジリオラに対し、バビル2世はつまらなそうに溜息を吐いた。

 

「ならば実力を行使する。ロデム、死なない程度にな」

「ロデム? あなたまさか!」

 

 呟かれたしもべの名に、ジリオラが初めて焦りを露にする。咄嗟に眷獣へと指示を出そうとするが、すでに遅きに失していた。

 地面がまるでアメーバのように盛り上がり、瞬きの間にジリオラを包み込んだのだ。完全に無抵抗のまま飲み込まれたジリオラは、黒い波にその姿を完全に覆い隠されている。数秒もしない内に、蜂の眷獣が消失し、特区警備隊(アイランド・ガード)がその場に崩れ落ちた。肉体の負荷から、眷獣を維持的できなくなったのだ。微かに波打つばかりのロデムの表面からは、内部を窺い知ることはできない。浅葱にとって、それは幸運だった。

 内部からの悲鳴すら漏れない黒の牢獄は、数十秒後に内部から広がった魔法陣で終わりを告げた。突然展開した魔法陣は、同じく突然収縮し消失。そして魔法陣の消失と同時に、黒い不定形存在は黒豹の姿をとる。

 

「バビル2世様、ジリオラ・ギラルティは鎖によって魔法陣内部に引きずり込まれました。状況から見て、監獄結界に再収容されたものと思われます」

「よくやったぞロデム。眷獣のコントロールをさせない速度が重要だった今、迅速な行動のおかげで被害はほとんどない。理想的だ」

「ありがとうございます、ご主人様」

 

 報告を受け、バビル2世は満足そうにロデムを労った。突然始まった黒豹と青年の会話に、浅葱はあっけにとられている。

 

「あの、その黒豹って」

「ああ、そういえばきちんと紹介はしていなかったな。

 ぼくのしもべの1体、ロデムだ。こう見えて気が利くから、そう怖がらないでくれ」

「よろしくお願いします。藍羽さん」

 

 紹介を受けたロデムは、浅葱へと一礼する。人が乗れるほどに大きい黒豹の姿を取っているが、大人しく頭を下げる姿にサナの目が輝く。

 

「あ、ちょっとサナちゃん!」

 

 浅葱の制止が送れ、サナはロデムへと飛び付いた。突然のことにバビル2世もあっけにとられ、誰の妨害を受けることなく、サナはロデムの毛並みに突っ込んだ。

 

「すごい! 豹さんふわふわ!」

 

 全身で毛並みを堪能するサナの様子に、バビル2世と浅葱は毒気を抜かれる。

 

「あの……バビル2世様?」

「すまないロデム、保護の観点から見ても今の状態は有効だ。しばらくその状態で護衛を続けてくれ」

「か、かしこまりました」

 

 豹の顔のまま、ロデムは困惑の表情を浮かべる。主の命に従いサナにされるがままになっている様子は、少女にじゃれつかれるぬいぐるみそのものだ。

 そんな2人に背を向け、バビル2世はアスタルテへ視線を向ける。すでに眷獣の召喚を止めている彼女からは、どこか疲労の色が窺える。

 

「アスタルテ、動けるか?」

「肯定。しかし眷獣を利用した戦闘は難しいと判断します。仮に召喚し戦闘に入った場合、召喚持続時間は1分を切ると予測できます」

「えっ、アスタルテさん、大丈夫なの!?」

「肯定。現在のままであれば、生命維持に支障はありません」

「な、ならいいんだけど……」

 

 慌てる浅葱に、アスタルテは冷静に回答した。安心する浅葱だったが、バビル2世は眉間に深い皺を刻んでいる。

 はっきり言って現状はあまりよろしくない状況なのだ。助けになると思っていた特区警備隊(アイランド・ガード)の主力部隊はジリオラの精神支配で壊滅し、眷獣の性質上護衛としてあてにしていたアスタルテも限界が近い。バビル2世自身も、迎撃としては力を発揮できるものの護衛としてはあまり向いていないのだ。

 悩ましい現状に頭を回転させるバビル2世は、接近する気配に顔を上げた。人通りのない道を、ゆっくりと人影が接近してくる。

 

「おや、お悩みかな? 憧れの過適応能力者(ハイパーアダプター)よ」

「何故ここにいる? ディミトリエ・ヴァトラー」

「いや、島の中で吸血鬼が暴れているようだったらネ。善意から、協力できることが無いかと思ったんだけど……どうやら遅かったようだ」

 

 ヴァトラーは戦闘の後を見て、残念そうに首を振る。

 

「魔力の感覚からしてただの吸血鬼じゃない、旧き世代級の力はあったと思ったんだけどネ。流石に君じゃあ相手が悪かったか。勝てないとは思ってたけど、もう少しばかり粘ってくれると嬉しかったな。

 それにしても、どうしてロプロスを使わなかったんだい? ロデムよりも迅速に敵を排除できたと思うんだけど?」

「勝手なことを。ロプロスは周辺への被害が大きすぎる。単体の吸血鬼を仕留めるなら、ロデムの方が適任だ。

 それにお前のような乱入者が来る前に勝負を決める必要があった。お前が来た時に敵が健在なら、援護と称して何をされるのかわからない」

 

 バビル2世の言及を、ヴァトラーは否定せずに笑みで返した。2人の間で緊張が膨らみ、危険を感じ取った浅葱はロデムにしがみついているサナを庇うよう駆け寄る。その緊迫した空気を破るように、自転車に跨った人影が飛び込んできた。

 

「ヴァトラ――ッ! って、バビル2世!?」

 

 勢いよく乱入してきたのは、第四真祖である暁古城だった。膨れ上がった魔力からヴァトラーの存在は予期していたものの、相手がバビル2世だとは予想外だったらしく、空中でバランスを崩し着地に失敗。少々不格好な登場となってしまった。

 

「やあ、古城。中々良い夜だとは思わないかい?」

「いや、なんでお前バビル2世と睨み合ってるんだよ!」

「別に戦おうとは思ってないさ。僕はね」

 

 飄々とした態度で古城の気迫を受けながし、ヴァトラーは満足そうな笑みを浮かべる。その様子を見たバビル2世は、ため息をついて説明を始めた。

 

「やあ暁古城。監獄結界の件は概要ながら把握している。

 藍羽浅葱を保護して特区警備隊(アイランド・ガード)の詰所であるここに避難したんだが、脱獄囚の1人と遭遇してね。囚人を監獄結界へ送り返した後にアルデアル公が来たんだ。君が来る少し前だから、君の懸念しているような事態は起きていない」

「そうだったのか。ありがとう」

 

 浅葱に心配そうな視線を送る古城へと、バビル2世は簡潔に説明を済ませる。友人を守ってくれたことに礼を言いつつ、古城は浅葱へと駆け寄った。

 

「浅葱、大丈夫だったか?」

「大丈夫なわけないでしょ!

 ……来てくれてありがと」

 

 どこか照れくさそうに礼を言う浅葱を、古城は苦笑しながら引き起こした。突然現れた古城を不思議そうな顔で見上げるサナを確認し、古城は安堵の息を漏らす。

 

「那月ちゃんも無事か。

 浅葱、なんで那月ちゃんと一緒だったんだ?」

「那月ちゃんって……サナちゃんのこと?」

「サナちゃん?」

「そうよ。幼い那月ちゃんだから、おサナちゃん」

「あー……」

 

 謎の呼称に古城は納得した。記憶を失っている以上、別の名をつけるというのは理に叶っていると言える。

 

「南宮那月……なるほど、脱獄囚の狙いは〝空隙の魔女〟の抹殺か。

 それにしても、その少女が〝空隙の魔女〟だったとはね」

 

 古城と浅葱の会話を聞いていたヴァトラーが、納得したように呟いた。その言葉に、古城は危機感を抱く。同時に、バビル2世とロデムも古城の同じ考えを抱いたらしい。自然とサナと浅葱を庇うように、3つの影がヴァトラーの前に並ぶことになった。

 

「はっ、ははははは、あっははははははははははははははは!」

 

 緊迫する空気の中、ヴァトラーが突然噴出した。そのまま実に愉快そうに、大声で笑い始める。

 

「なんて姿だ〝空隙の魔女〟! まるで見る影もないじゃないか! あっははははははははは!」

 

 よほど予想外だったのだろう。戦王領域の恐るべき吸血鬼とは思えない様子で、ヴァトラーは笑い続けている。

 

「ヴァ、ヴァトラー?」

 

 古城は困惑の表情で呼びかける。この戦闘狂(バトルジャンキー)から、敵意以外の反応を向けられるとは思っていなかったのだ。バビル2世に至っては、あっけにとられたまま声も出せていない。

 

「いや失礼、流石に笑い過ぎた。

 古城、見たところ君も手負いのようだし、彼女を連れて僕の船へ来るといい。狙いが彼女である以上、脱獄囚たちは必ず襲ってくる。市街地で一般人を巻き込むよりは安全だろうし、迎撃もしやすいだろう?」

「襲って来れば、お前は大義名分を得て戦えるってか?」

 

 古城の問いに、ヴァトラーは笑みを返した。

 確かに悪くない申し出だろう。ディミトリエ・ヴァトラーの実力は世界的にも有名であり、脱獄囚たちと言えどもそう簡単に襲撃できる相手ではない。時間を稼げば、那月の現状をどうにかする方法も見つかるかもしれないのだ。

 

「もちろん、バビル2世も一緒に来るといいさ。古城が望むなら後から人を乗せてもいい。どうだい?」

 

 更なる条件を付けるヴァトラーだったが、意外なことにバビル2世が賛成に回った。

 

「暁古城、アルデアル公の申し出は悪くないと思うぞ。拠点で身を休めることは重要だし、敵の接近を察知できるのは大きい。この男のことだから、食事に細工をされる心配もない」

 

 バビル2世の説得が、最後の一押しとなった。そもそも現状選べる選択肢は無い。あくまで感情的な問題で行きたくないだけであり、理由ができれば即座に決断ができた。

 

「……わかった。お前に借りを作るのは癪だが、頼むぜ」

「はぁ!? ちょっと待ちなさいよ!」

 

 古城の決定に異を唱えたのは、完全に蚊帳の外だった浅葱だった。

 

「なんで私を無視して勝手に決めてるのよ! だいたい、なんであんたが〝戦王領域〟の貴族と知り合いなのよ! バビル2世とも顔見知りみたいだし!」

「いろいろ事情があるんだよ。後で全部説明するから」

「あんたね、それで私が納得するとでも思ってるの?」

「……無理だよな」

 

 古城が力なく肩を落とす。現状誤魔化すことが不可能である以上、古城は自分が吸血鬼であることを話すべきなのだろうと腹を括った。

 災厄の化身と恐れられる第四真祖が自分の正体であり、これ以上は一般人である浅葱が介入できる話ではないと突き放せばいいのだ。古城にとってかけがえのない友人を失う代わりに、その友人は安全を得ることができる。

 覚悟を決めた古城が口を開く前に、浅葱が人差し指を古城へと突きつけた。

 

「いいわ。条件として、私を一緒に連れて行くならサナちゃんを任せてあげる。さっきアルデアル公が、古城が望むなら人を乗せてもいいって言ってたしね」

「……なんだって?」

 

 いきなりの条件に、古城は言葉を失った。自分が決めた覚悟を正面から否定されたようなものだ。

 感情のままに口を開こうとした古城の肩に、バビル2世が手を置いた。

 

「暁古城、彼女はこのまま同行させた方がいい。

 2人の囚人に襲撃されている以上、相手に情報が共有されていない保証が無い。共に行動して護ることが、今は一番安全だ。アスタルテが万全なら同行させて守らせるという手もあったが、疲弊している今は一緒にヴァトラーの船で休憩させたい」

 

 古城は、浅葱とサナが共に行動していることをテレビのライブ報道で知った。ここで解散したとして、それを見ていた脱獄囚が浅葱を襲わない保証は無いのだ。

 振り向けば、浅葱は我が意を得たりと笑みを浮かべ、ヴァトラーが意味深な笑みを浮かべている。

 自らに選択肢が無いことを悟り、古城は思わず天を仰いだ。




 ストライク・ザ・ブラッド 用語集

 人物

 暁古城 あかつき-こじょう
 ストライク・ザ・ブラッド主人公。
 自分の正体が第四真祖であることを隠して性格しているが、それは生まれつきではなく突然吸血鬼と化してしまった事が理由。
 人間であったころからの友人たちに離れられ、魔族恐怖症の妹から拒絶されることを恐れているからこそ人間としての生活を望んでいる。

 ジリオラ・ギラルティ
 旧き世代に分類される女吸血鬼。
 残忍な性格であり、元高級娼婦の肩書からは想像できない猟奇殺人を大量に犯した過去を持つ。
 第三真祖の系列であるため意思を持つ武器の眷属を宿しており、本文で紹介できなかった鞭の眷獣の名はロサ・ゾンビメイカー。能力である精神支配を使って監獄であろうとも支配下に置いてしまうため、支配される心配のない監獄結界へと収監されていた。

 ディミトリエ・ヴァトラー
 戦王領域アルデアル公国の主。
 自らの快楽のためならば、意外と地味な作業も楽しんで行うまめな面がある。
 一部からは男色との噂も出ているが、真相は闇の中である。

 種族・分類

 毒針たち アグホイン
 ジリオラ・ギラルティの眷獣の一体。
 巨大な蜂が群れをなした眷獣であり、群全体で一体とカウントされる。
 能力を発揮する前に本体が倒されてしまったが、名前からして毒を操る能力であったと予想される。

 過適応能力者 ハイパーアダプター
 現代の科学魔術では再現不可能、又は再現が難しい能力を操る人間の総称。
 バビル2世もこの名で呼ばれているが、本質的には別物であるため過適応能力者対策をかけられた場合でもその対策が正常に作動しない場合が多い。

 薔薇の指先 ロドダクテュロス
 アスタルテに植えつけられた眷獣。
 眷獣の特性である物理攻撃の遮断に加え、その身に刻まれた神格振動波駆動術式により魔術的攻撃を無効化するため防御に関しては鉄壁の性能を誇る。
 しかし、宿主であるアスタルテが人工生命体故に脆弱であるため、長時間の召喚が不可能という致命的な弱点を持つ。

 バビル2世 用語集

 人物

 ロデム
 バビル2世の誇るしもべが1体。
 意外と茶目っ気のある性格をしており、人間に近い精神構造から会話を楽しむことが可能。
 護衛としての適性は極めて高く、擬態して潜伏している場合生物ゆえの体温や呼吸のガス以外での判別は不可能。

 ロプロス
 バビル2世の誇るしもべが1体
 本文でも言及されていたが、大抵の吸血鬼は瞬時にひねりつぶす力を持つものの、破壊が大きいために人質を取られた場合運用がほぼ不可能となる。
 この弱点はポセイドンも同様であり、そういった状況を打破できるロデムの重要性を高める要因ともなっている。
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