バビル・イン・ザ・ブラッド   作:橡樹一

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7話 魔女の領域

 時は僅かに巻き戻り、古城と雪菜はサナと共に倉庫街を逃走していた。

 

「なあ、やっぱり俺達も援護した方が」

「だめです! 私たちのために足止めしてくれている、紗矢華さんやバビル2世の覚悟を無駄にする気ですか!?

 それに、今私たちがいても何もできません。攻撃から私たちを守るために、2人の足を引っ張ってしまいます。今は、こうして逃げることが最大の援護なんです!」

 

 古城の言を、雪菜は一言で切り捨てた。言葉の端々からにじみ出る悔しさを感じ取り、古城も口をつぐむ。

 戦闘音が小さく聞こえる位置まで来たことで、どちらともなく足を止めた。

 

「一旦ここで待とう。あんまり離れても、向こうがこっちを見つけるのが大変になるだろうしな」

「そうですね。サナちゃんも休ませてあげないと」

 

 現在身体を動かしているのが仮想人格(バックアップ)とはいえ、サナの身体は幼い少女に過ぎない。当然体力もそれ相応のものでしかなく、あまり無理はさせられないのだ。先程まで好き勝手に騒いでいたとは思えないほど、仮想人格(バックアップ)は沈黙を続けている。現在別の脱獄囚に発見された場合の危険性を理解しているのだ。

 それに習って古城と雪菜も沈黙を続けるが、そのささやかな努力が実を結ぶことはなかった。

 

「ここにいたか。随分と探させてもらったぞ?」

 

 沈黙の中、悪意に満ちた禍々しい声が響く。咄嗟に身構える古城たちの視線の先で、夜の闇から滲み出るように火眼の魔女が姿を現した。黒と白の十二単を身に纏い、脱獄直後と比べて力を増しているようにも見える。

 

「仙都木阿夜!

 姫柊、サナちゃんを連れて逃げてくれ。時間は俺が稼ぐ!」

「だめです先輩! 不意打ちとはいえ南宮先生を倒すほどの魔女です、相手が悪すぎます!」

 

 魔力をたぎらせる古城の後ろで、槍を構えた雪菜が諌める。互いに警戒を切らさない2人を眺め、書記(ノタリア)の魔女は僅かに口角を持ち上げた。

 

「そういきり立つな、第四真祖。(ワタシ)は〝空隙の魔女〟を殺しに来たわけではない。むしろ感謝しているのだぞ?」

「じゃあなにか、感謝の印に那月ちゃんを元に戻してくれるとでも?」

 

 古城の皮肉に、阿夜は火眼を細めて嘲笑を返す。

 

「ずいぶんと面白いことを言うな第四真祖。

 感謝というのは、脱獄囚を引きつけ騒ぎの中心となり続けてくれたことについてだ。おかげで余計な邪魔が入ることなく、宴の仕度は整った。一度は私を裏切ったとはいえ、流石は我が盟友といったところか」

 

 暗い笑みを浮かべる阿夜に、雪菜が槍を突きつける。

 

「待ってください。まさか、脱獄囚をたきつけたのはそれが理由ですか? あなたが自由に動ける状況を造り上げるために、わざと凶悪な犯罪者達を街に解き放ったと?」

「それがどうかしたか?

 ああ、まさかあそこまで素直に信じるとは、(ワタシ)としても想定外だった。魔女の言葉を鵜呑みにするとは、度し難い愚か者たちだったよ」

 

 この場にいない脱獄囚たちに向け、蔑みの表情を隠そうともしない阿夜に向けて、雪菜は怒りを露わにする。

 

「あなたは、そのためにどれだけの人が危険にさらされたと思っているんですか! 今もまだ捕まっていない脱獄囚たちがいます。それを自分の行動のためだけに解き放って、いったい何が目的なんですか!?」

 

 涼やかな美貌が浮かべる憤怒の表情に、魔女は満足そうに頷いた。

 

「知りたいのならば教えてやろう。元々(オマエ)も招待する予定だった」

「待てよ、話を勝手に進めるんじゃねえ。お前をとっ捕まえて、那月ちゃんを元に戻せばこのバカげた騒ぎも終わるんだ。

 姫柊、力を貸してくれ」

 

 会話に割り込む古城に対し、つまらなさそうに阿夜は目を細める。

 

「ああ、そういえば(オマエ)はあの人形を助けようとしていたな。できもしないことをずいぶんと大げさに話すものだと感心するぞ」

「なんだと?」

 

 苛立ちを隠そうともしない古城に、阿夜はさらに言葉を重ねる。

 

「まあ、所詮は(オマエ)との思い出に囚われて製造理由を放棄しかけた欠陥品。その程度のものが執着する存在など、この程度か。

 あの欠陥品をきちんと制御し使命を果たさせてやったのだ、製造した(ワタシ)に感謝してもいいのだぞ?」

「てめえ、いい加減にしやがれ!」

 

 優麻を欠陥品と言い放ち、道具としか考えていない阿夜めがけて、古城が飛びかかった。雪菜が制止する暇もなく、吸血鬼の身体能力は古城の身体を弾丸のような速度にまで加速させる。

 

「愚かな。(ワタシ)が何の対策も無しに(オマエ)達の前に姿を現すとでも?」

 

 しかし、その突撃は突如古城を襲った虚脱感によって阻まれた。バランスを崩して倒れ込む古城を、阿夜は無感動な瞳で見下ろしている。

 

「だったらこっちだ! 疾く在れ(きやがれ)獅子の黄金(レグルス・アウルム)――!」

「先輩!?」

 

 驚愕する雪菜を無視し、古城は右腕を突きだす。痛みも無く噴霧された血液が一瞬で膨大な魔力へと変換され、雷光で構成された巨大な獅子の姿を形作った。

 異界より呼び出されし第四真祖の眷獣は、天災にも等しい破壊エネルギーの塊だ。その身を構成する雷光の速度で棒立ちの魔女へと突撃する獅子は、直撃すればその身を一瞬で灰燼と帰すだろう。

 迫り来る破滅を目の前にして、尚阿夜は余裕を崩さない。

 

「流石は第四真祖だな。身体強化に回すだけの魔力を失って尚これほどの力を残しているとは。

 だが、それもここまでだ」

 

 魔女の腕が閃き、空中に瞬時に文字を描き出す。その文字ごと敵対者を薙ぎ払おうとした雷光の獅子が、何の前触れもなく虚空に溶けた。風も、音も、一切の余波を残さず、まるで初めから存在しなかったかのように、獅子の黄金(レグルス・アウルム)はその姿を消失させたのだ。

 いや、獅子の黄金(レグルス・アウルム)だけではない。古城の身体に宿っていた膨大な魔力すらも、欠片も残さず失われていた。第四真祖の力を失った暁古城に残されたのは、多少鍛えられた男子高校生の肉体だけだ。

 

「これが闇誓書だ、第四真祖。すでに(ワタシ)の世界と化したこの島で、(ワタシ)以外の異能の力はすべて失われる。例え真祖の力とはいえ例外ではない」

 

 微笑すら浮かべて、絶望的な事実を事も無げに阿夜は告げる。いつの間にか出現した守護者が、無言で剣を突きだす。ただの高校生にその一撃が躱せるはずもなく、しかしその一撃は銀の閃光に阻まれた。

 

「先輩、下がってください!

 〝雪霞狼(せっかろう)〟!」

 

 呆然とする古城を庇い、雪菜が槍を構える。咄嗟に動くことができたのは、日ごろの訓練のたまものだろう。失われたはずの呪力で身体機能を底上げし、姫柊雪菜は魔女と守護者へと立ちはだかる。

 

「やはり、お前は我が世界の支配を拒むのか。獅子王機関の剣巫よ」

 

 結果を知る実験結果を見るような阿夜とは逆に、古城は動揺を隠すことができなかった。

 

「姫柊、なんで、魔力は消えたはずなのに」

 

 モグワイから聞かされた魔力消失現象。それを引き起こしているであろう阿夜がその影響を受けていないことに疑問は無いが、何故雪菜は影響を受けずにいられるのか。

 

「それでこそわが実験の客人(ゲスト)に相応しい。やれ、〝(ル・オンブル)〟」

 

 考える暇すら与えず、阿夜は守護者へと指示を下した。驚異的な速度で剣を操る守護者の動きに、雪菜は剣巫として鍛えた未来視で対抗する。ほんの一瞬未来を覗き、槍を先起きするようにして巨大な剣を弾き続けているのだ。

 

「やはり簡単にはいかぬか。それならば、だ」

 

 防ぐこと叶わぬ剛腕の一撃が繰り出され、雪菜は咄嗟にその場を飛び退く。それが失策だと気づかされたのは、すぐ後のことだった。

 

「っ、えっ!?」

 

 空中で身動きが取れないほんの数秒の間に、雪菜を閉じ込める鳥籠のような檻が実体化する。猛獣用の鉄格子は、1本の直径が雪菜の腕を超える太さはあるだろう。ただの鉄の塊ではあるが、それだけに魔力を無効化する雪霞狼(せっかろう)では破ることができない。鳥籠に囚われ睨みつける雪菜を無視し、阿夜は空間転移を発動した。

 

「さて、客人(ゲスト)と盟友を迎えたのだ。もうここに用はないが……〝(ル・オンブル)〟」

 

 背後から聞こえる魔女の声に、古城は反応することができなかった。湿った音と共に、激痛が全身に広がる。血を吐きながら体を見下ろせば、胸を貫通する巨大な件の切先が目に入った。第四真祖の力を失った古城にとって、間違いなく致命傷だ。

 

「先輩!?」

 

 悲痛な雪菜の声が空しく響く。剣を引き抜かれた古城は、支えを失い倒れ伏した。霞む視界に、サナを捕らえた阿夜の姿が映り込む。

 

「後々邪魔されては困るのでな……不安要素は取り除くに限る。

 さらばだ、第四真祖よ」

 

 顔のない漆黒の騎士が剣を振り上げ、容赦なく振り降ろす。防ぐ者のいない必殺の一撃は、しかし空中で突如軌道を変えた。

 驚愕に目を見開く雪菜の視界で、守護者の剣が主に襲い掛かる瓦礫を弾き落とす。その隙を突き、長身の女性が血まみれの古城を救出した。その奥では、赤い髪をなびかせる青年が瓦礫を周囲に浮かせては射出している。

 

「紗矢華さん、バビル2世!」

「シュトラ・Dの処理が遅くなった。すまなかったな」

「ごめん雪菜、まさか煌華麟が重りになるなんて!」

 

 囚われた雪菜を救うべく鳥籠へとバビル2世が意識を向けるが、それを阻むように石壁が出現した。

 

「全ての異能が失われるはずの(ワタシ)の世界で、(オマエ)の力が失われない理由はわからないままだった。

久しいな、バビル2世。10年前那月と共に私を裏切り、監獄結界へと押し込めた時以来か」

「10年もたてば少しは頭が冷えているかと思ったが、お前はまだ間違いに気がつかないのか。かつてのお前は聡明だったぞ」

「何を言う。(ワタシ)は盟友の盲を晴らそうとしているに過ぎない。純血の魔女どころか、魔術の深淵へまともに足すら踏み入れていない無知蒙昧の輩には、考えからしてずれているということがわからないか」

 

 突然始まったバビル2世と阿夜の舌戦に、雪菜はあっけにとられる。紗矢華は古城の応急処置を開始しており、阿夜の気がそれている間に手早く止血を済ませた。

 

「すでに(オマエ)と語る時は過ぎ去っている。追ってくるのは勝手だが、(ワタシ)の領域に(オマエ)は入ることすら叶わんぞ。魔術の才を持たぬものなど、搦め手を使えばどうとでもなろう。悲しいことだな」

 

 腕の一振りで、無数の光弾が周囲へと無差別に降り注ぐ。全ての光弾に悍ましいほどの呪力が込められおり、直撃を許せばたとえ獣人や巨人すら一撃で倒れ伏すだろう。その死の雨ともいえる攻撃を、未だ生死の境を彷徨う古城や、その治療を行う紗矢華に防ぐ手立てはない。

 

「考えたな、書記(ノタリア)の魔女」

「流石の(ワタシ)であっても、(オマエ)から離れるには手間だからな。使えるものは使えと教えが活きていたということだ」

 

 瓦礫を使い光弾を防ぐバビル2世が阿夜の言葉に動揺した一瞬の隙を突き、空間転移の魔術が発動した。術者が姿を消したためすぐに攻撃は終わるが、バビル2世はなにか思いつめたような表情を隠そうともしない。

 

「あの……バビル2世?」

 

 恐る恐る話しかけようとした紗矢華だったが、バビル2世は何事も無かったかのように指示を出し始めた。

 

「煌坂紗矢華、獅子王機関の舞威媛は救命にも技術を転用できたな。第四真祖の救命活動を続行してくれ」

「それは言われなくてもだけど、バビル2世はどうするの?」

「僕は仙都木阿夜を追う。第四真祖の容体が安定し長期間の不在に耐えうる状況になったら、どうにかして獅子王機関に救難信号を送れ」

 

 それだけ言い残し、バビル2世は夜の闇に溶け込むようにして消えた。止める間もなく姿を消された紗矢華は、溢れ出る不満を噛み殺す。不満を抑え、救命行為を出来る限り清潔に行うことができる場所を探し始めた。

 

 

 

 場面は僅かにずれ、オシアナズ・グレイヴⅡの甲板上では1つの闘争に決着がつこうとしていた。勝敗の行方はそれぞれの様子を見れば一目瞭然だろう。堅牢な鎧と不死身の肉体を誇った龍殺しは、砕けた鎧に傷だらけの身体を晒し見る影もない。一方、龍の眷属を操る吸血鬼は服こそボロボロであるものの、その体には傷一つ無い。

 

「どうしたんだい龍殺し(ゲオルギウス)の一族? ご自慢の肉体がずいぶんと傷だらけじゃないか」

「バカな……キサマがリュウのゾクセイをモつイジョウ、ワガチカラのマエにはムリョクであるはず……」

 

 からかうような態度のヴァトラー目掛け、ダンブルグラフは巨剣の一撃を振るった。直撃すれば魔族的には脆弱ですらある吸血鬼の身体程度易々と両断するであろう一撃は、ヴァトラーが背後に侍らせていた双頭の龍にあっさりと弾かれる。炎を纏った鋼の龍……炎と鋼の蛇を融合させた、ヴァトラーの合成眷獣だ。

 

「ありえん、ヘビならばまだしも、そこまでリュウのキをマトっておきながら!」

 

 合成により蛇から龍へと姿を変えた眷獣に、龍殺しの刃が通用しない。受け入れがたい現実を前にして、ダンブルグラフは動揺を隠そうともしていない。

 

「愚かな、龍殺しは無条件に龍を屠ることができる力じゃないだろう?」

「なんだと?」

 

 ヴァトラーの小馬鹿にするような物言いに、龍殺し(ゲオルギウス)の末裔は眉を顰める。

 

「龍殺しが英雄的行為とみなされるのは、たとえ龍殺しの力をもってしてもそれが難行であるからじゃないか。龍殺しの力だけで龍を確実に屠れるならば、それはもはや作業であり偉業ではない」

 

 ダンブルグラフは黙ってヴァトラーの語りを聞き続けている。余計な話をするほどの余力が残っていないのだ。

 

「ご先祖と同じ末路を辿ったね龍殺し(ゲオルギウス)。古今龍を殺した英雄の末路は多くが悲劇的なものだ。怪物を殺し人を超えたがために、人間最大の武器である知恵を失いあっさりと罠にはまる。強敵に向かうための準備を怠り、格上を屠るための狡猾さを捨てたキミは、すでに龍殺しの力を持つだけの怪物だ。怪物同士がぶつかれば、より強い方が勝つという自然の道理しか残らないさ」

 

 ダンブルグラフがはっきりと動揺を見せた。自らの力を過信するあまり、忘れ去っていた単純なルールを思い出したのだ。龍殺しは、龍に殺される危険が常に付きまとう行為なのだという事を。龍もまた、龍殺し(ゲオルギウス)を殺し得る脅威なのだと。

 

「まあ、中々楽しませてもらったよ。そろそろ……うん?」

 

 ヴァトラーの目が異変を捕らえた。ダンブルグラフの背後に広がる港には、眷獣を召喚した吸血鬼が戦いの余波を打ち落とすために展開していたはずだ。当然見えるはずの眷獣が、何故か1体も見当たらない。狼狽える配下の吸血鬼の様子から、決着と判断して召喚を止めたわけではなさそうだ。

 

「これはまた面白そうなことになっているじゃないか。試させてもらおう」

 

 ヴァトラーの合成眷獣が、正面からダンブルグラフへと突っ込んだ。剣を杖になんとか立っていたダンブルグラフが避けられるはずもなく、列車と正面衝突したかのような衝撃が不死身の肉体を襲う。船上から勢いよく飛び出した眷獣は、港に入った瞬間音も無く消失した。同時に、龍殺し(ゲオルギウス)の身につけていた鎧とこの状況になっても手放さなかった大剣が砕け散る。保護魔力の輝きは破片からすらも失せ、ただの鉄片が空しく宙を舞う。

 

「これは……バカな!?」

 

 驚愕に目を見開くダンブルグラフだったが、眷獣が消えてもその勢いが消えたわけではない。ほとんど生身のまま、勢いよくアスファルトに投げ出された。

 

「ふむ、やはり魔力の類が消失しているな。

 実験に協力してくれて感謝するよ。さあ、キミのいるべき場に戻るといい。その様子だと、監獄結界の主はまだ無事らしいね」

 

 壮絶な笑みを浮かべながら、ヴァトラーは敗者を見下ろす。ギリギリで意識を保っている男の腕で、手枷が発光し虚空から鎖が溢れ出した。

 

「ヴァトラー……そうか、キサマは、いずれアラワレるよりキョウダイなテキを……」

 

 呻くような言葉が、ダンブルグラフ最後の言葉だった。鎖によって虚空に引きずり込まれた龍殺し(ゲオルギウス)に対し、まるで興味を失った様子でヴァトラーは背を向ける。融合眷獣の召喚をやめ、つまらなさそうに火の小さくなった船を見る。

 

「トビアス、被害状況は?」

「はい。港は皆の尽力もあり、被害はほとんどありません。船もデッキの消火が終わり、航行に関しても問題はありません」

 

 ヴァトラーの問いに、いつのまにか待機していたトビアス・ジャガンが有能な秘書のように答えた。満足そうに頷いたヴァトラーは、船内へと戻りながら指示を出す。

 

「完全鎮火と船内のチェックが終わり次第、島から離れるぞ。このままだと魔力使用不能領域に捕まりかねない」

「ただちに取り掛からせます。

 差し出がましいようですが、第四真祖やバビル2世はこのまま放置してよろしいのですか?」

 

 何気ないジャガンの問いに、ヴァトラーは悠然と微笑んだ。

 

「このまま放っておいた方が、面白いものが見られそうだからね」

 

 その笑みを浮かべさせている同属に嫉妬の心を向けながら、トビアス・ジャガンは静かに一礼し、主の命を伝えるために船内へと走り出した。




 ストライク・ザ・ブラッド 用語集

 人物

 仙都木阿夜 とこよぎ-あや
〝書記の魔女〟の異名を持つ純血の魔女であり、かつての南宮那月の盟友。
 10年前に闇誓書事件と呼ばれる大規模魔導テロを引き起こし、監獄結界に収監されていた。
 脱獄のために自らのクローンである仙都木優麻を生み出し、その手引きによって監獄結界からの脱獄に成功する。
 性格は冷徹で残忍ながらも、盟友と認識している南宮那月には僅かに心を開いている。


 種族・分類

 守護者
 魔女が悪魔と契約することによって得る、特殊な使い魔。
 使い魔といっても悪魔が契約の代償に与える第三の腕のようなものであり、契約した悪魔の化身でもある。
 魔女の強大な力を支える一因であるが、契約を破棄した場合その命を奪う監視者でもある。

 影 ル・オンブル
 仙都木阿夜の守護者である、顔のない漆黒の鎧を纏った騎士。
 空間跳躍の魔術で奇襲を実行可能であり、眷獣の一撃もいなすことが可能な強力な守護者である。
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