失われし時を求めし者は.......   作:バーバラすこすこ侍

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 お疲れ様です。書店に入った瞬間レジにいた若い女性店員に三度見されたババすこでございます。特におかしな恰好もしてなかったですし何があったんですかね? そんなに私不細工だったのかな() まぁ、わかんないことを考えてても仕方ないですよね笑

 早いもので、もう10話です。
 では、本編をどうぞ!


ロトゼタシアの大地
第10話:旅の始まり


 

 

 

 

 

 

 

 聖地ラムダで一夜を明かし、朝のうちにクレイモラン王国に戻った俺たちは、シャールとリーズレットに、サマディーであったこととファナードと話し合ったこと、それからマヤと俺がカミュとセーニャに同行することを伝えた。マヤに関してはすぐに納得したようだが、俺も同行することに最初は驚いていた。まさか俺まで旅に出たいと思っているなどとは思っていなかったのだろう。2人に同行したいと思った理由を伝えると、すぐに合点が行ったような表情をした。

 

 好奇心の塊であるシャールは、世界を自分の目で見てみたいという俺の気持ちをとてもよく理解してくれた。リーズレットの方には道具屋のことについて何か言われるかと思ったが、特に何もお咎めはなく、絶対に無事で帰ってきてまた働いてくれといった感じで応援してくれた。せっかく斡旋してくれた仕事を放棄して旅に行くといっているにもかかわらず快く見送ってくれたことが嬉しかったが、やはり申し訳なさも感じてしまった。代わりの人員が早く見つかってほしいものである。

 

 道具屋の店長も俺が旅に出ることにすぐに賛成してくれて、手向け代わりと言っていろいろと旅に役立ちそうなものを、以前町の中で買い物したときにカミュとセーニャが使っていた、多く物が入る袋と同じものにそれらを入れて持たせてくれた。その中には薬草系や聖水といった物以外に、鎧や兜、盾や装飾品といった防具が入っていた。武器は短剣が一つだけあった以外には入っていなかったが、正直武器は扱える自信がないのであってもなくても変わらないだろう。もしかしたら店長もそれがわかってあえて武器を入れなかったのかもしれない。短剣はもしもの時の護身用にと入れてくれたのだろう。何から何まで、本当にありがたい限りである。戦闘になった際にはそれらを装備することになるだろう。

 

「とりあえず最初は事情を知ってるシルビアさんの所に行ったほうがいいよね」

 

 各自が住んでいる家で旅支度を整え、クレイモランの城門の目の前で集合した。いよいよ出発だということで最初の行き先を決めねばならないと思ったので提案してみた。

 

「そうだな。まずはまだサマディーに残ってるはずのシルビアのとこに行って話をしたほうがいいだろうな」

「シルビア様はどこで宿を取ったのかご存じなのですか?」

「そういえば知らないかも……」

「それならオレが別れ際に聞いといたから問題ないぜ」

「マヤ。お前いつの間にそんなこと……」

 

 大人3人組が失念していたシルビアの居場所をいつの間にやら知っていたマヤに驚きながらも、とりあえずの行き先は決まった。シルビアを仲間にした後はどこに行くべきなのかはまたその時に話し合えばいいだろう。

 

「それじゃあ、仲間を集めに旅に出よう!」

「ああ!」

「おう!」

「行きましょう!」

 

 

 決意を新たに、4人で歩き出した。

 この目で世界を見ることができる旅が始まろうとしている。これまで経験したこととはまた違った大変さがあるのは間違いないだろう。それでも、楽しみなのには変わりない。マヤもそうであるが、俺もかなりワクワクしている。世界に脅威が訪れようとしている中でこのように考えるのは些か不謹慎なのかもしれないが、心は正直なのだ。

 

 

 

「……いってきます」

 

 誰に聞かせるでもなく小さな声で、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 △

 

 

 

 

 

 

 

「それで、マヤ。シルビアさんってどこの宿に泊まってるの?」

 

 サマディーの城下町に着いた。旅といってもキメラのつばさを使って飛んでくるだけなのでここまでは一瞬だった。旅には変わりない上にしばらくはクレイモランに帰ることもないので、先ほど固めた決意は崩すつもりはない。旅らしい移動手段ではないのは間違いないが。些か気が抜けそうになるのをぐっとこらえた。

 

「シルビアさんはサマディーの王宮にある要人が泊まる時用の部屋に宿泊してるらしいぜ」

「え、そうだったの?」

 

 シルビアクラスになればかなり高い宿を抑えているかと思っていたが、まさか王宮内の部屋だとは思わなかった。勇者エルバがまだこの世界にいたころの旅では何度か王族を助けているので、この待遇も納得ではある。今回は国で運営しているウマレースのゲストということもある。最初に驚きはしたが、事実を並べていくと至極当然のVIP扱いであった。

 

「まぁ、シルビア様ですから相応の待遇でしょう」

「シルビアのオッサンならいろんなマナーもしっかりしてるし問題ないしな」

 

 俺はバイキングのとこ出身だからそういうのはあんま分かんねぇんだけどな、と笑いながら付け足すカミュにセーニャは苦笑いしている。どことなくカミュもセーニャも嬉しそうなのはやはり久しぶりに旅ができるからだろうか。カミュはもちろんのこと、セーニャも見た目によらずかなり冒険じみたことが好きだというので、親しんでいた日常を離れて旅に出られる楽しさが抑えきれないのだろう。

 

「そういうわけだし、とりあえず王宮の方に行こうぜ。兄貴たちがいれば簡単に王宮に入れるだろ?」

「おそらくそうですわね」

「まぁ、いろいろと手を焼いてやったからな」

 

 方針が決まったので、王宮に向けて歩く。城下町に入ったところの目の前にある階段から登り、四角形を描く歩道橋のような道を歩く。この町はゲーム内のマップと基本的には変わらないが、やはり規模が大きく、歩道橋の幅や長さ、城下町の住宅数や店の数、広さも桁違いである。おかげで、ゲームでは簡単にたどり着けていた王宮への道のりもそこそこ遠い。暑いのもあって以外としんどい。先ほどまで寒い地方にいたのもあって余計に暑く感じてしまう。

 現実として体感してみて常々思っていたが、キメラのつばさで一瞬で気候の差異が大きい地域にまで移動したとき、慣れるまでに時間がかかってしまって大変だ。俺はもちろんそうだが、言わないだけでほかの三人もそのような様子を見せている。

 

 こまめに水分を摂って汗を拭き、体調を崩さないように気を付けながら歩いていると、王宮の入り口の前に着いた。護衛の兵士にカミュが話しかけると簡単に通行の許可が下りた。これはマヤの予想通りである。

 

 扉を開けてもらって中に入ると、外の茹だるような暑さが嘘のように涼しく感じられた。しかし、涼しくはあるものの王宮の規模もまた広大で、王座の間に続く階段までの広間の距離が長い。

 ゲームでやっていた時も、王宮に入ってすぐにある広間が無駄に広いと思っていたが、いざ現実として見てみると本当に無駄に感じる。さすがに現実では王族用の2つの部屋に繋がる扉以外にも、厨房やシルビアが宿泊していた部屋に続くと思われる通路があったが。

 

 ずっと疑問に思っていたが、この広間の大きさがあってどうして兵士の訓練場は端の方に小さくあるだけなのだろうか。外に大規模な訓練場があるから王宮内にあるものは小さくしていると言われてしまえばそれまでだが、この広間の大きさならもっと訓練場を広くしてあげてもいいと思った。猫が多く住んでいるだけというなんとも無駄な構図が生まれてしまっていているからである。生類憐みの令が制定されているわけでもないはずなのに猫が優遇されすぎではないかと思ってしまうのは仕方のないことなのかもしれない。

 

「あら、カミュちゃんたちじゃない」

 

 王宮に来たならまずは王に挨拶はしないといけないと判断して、4人で軽く雑談しながら王座の間に続く階段に向けて歩いていると、宿泊部屋に続いていると思われた通路からシルビアが現れた。見立て通りそちらはVIP待遇ルームだったようだ。

 

「お、シルビアじゃねぇか」

「シルビア様、おはようございます」

「おはようございます」

「おはよう」

 

 最初に王に挨拶してからシルビアの下に行こうとしていたのだが、手間が省けたようだ。あらかじめ4人で話し合って、何が起きているのか、そもそも何も起きていないのか。それさえもはっきりしていない今、余計な不安を与えないように王には何も深いことは言わないことにした。昨日ウマレースを観戦しに来ていて、シルビアが出ていたから会いに来た、という嘘ではない要件を伝えようということになった。かつての仲間の活躍があったり、以前から親交のある存在である王に会いに行こうと考えるのは至極当然なので、怪しまれることはないと思ったからだ。これを考え付いたのは俺であるが、なかなか悪知恵が働くな、とカミュから嬉しくないお褒めの言葉を頂いた。

 

 昨日ファナードと話し合って決めたことと王に話す内容を、シルビアと共有した。シルビアは昨日、サーカスの方にいたが特に何もなかったようで、ただの旅芸人としてサーカスに参加していただけだったようだ。シルビアの方も、余計な不安を与えるのは得策ではないということに納得したらしいので、とりあえず5人で王に会いに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 △

 

 

 

 

 

 

 

 

 王座の間で王に謁見し、軽く話をしてきた。メインはシルビアとカミュとセーニャだった。途中マヤの方に話が向いたのでカミュの妹だということを紹介した。俺にももちろん話の矛先が向いたが、異世界から来ていることは秘密にしておいた。俺の素性を知っている人間は安易に増やすべきではない上に、勇者エルバが"悪魔の子"と呼ばれていた時のように、異世界から人間がやってきたということは何かの前触れなのではないかといった突飛な憶測がなされる恐れもあったからだ。俺はクレイモランの王宮の見習い兵士で、教官をすることもあるカミュに付き従ってサマディーに来たという設定にした。ただの付き人程度と認識されればそれ以降は何も聞かれる心配がないとの予想からだった。実際それが功を奏し、特に何もなかった。

 

 現在はサマディー城下町から外に出てすぐの所にいる。せっかくだから未踏の大地を少しくらいは歩いてみてもいいんじゃないかしら、とシルビアが言ったこともあり、そのようにした。

 

「こうして周りを見ると、本当に砂漠地帯って感じだねぇ」

「まぁそりゃあな。ここからもっと北のにあるバクラバ砂丘に行けばもっと砂漠らしい景色が見られるぜ」

「さすがにそれは遠慮しときたいかな」

 

 暑いのは基本的に苦手である。ラーメンや鍋を暑い夏に食べることは好きだが、それとこれとは違う。

 

「さすがに冗談だからそんな露骨に嫌そうな顔するなよ」

 

 苦笑いしながらカミュが言う。

 

「そういえばレイちゃん。アナタって魔物と戦った経験ってあるの?」

 

 突然シルビアがそんなことを聞いてきた。ゲームでなら何千何万もの魔物を倒してきているが、そんなことを言っても仕方がない。

 

「ないですね。カミュとセーニャと出会った時にキラーマシンに襲われたくらいです。何もできずに縮こまってるくらいしかできませんでしたが」

「そうだったのね。それじゃあ、せっかく外に来たついでに、軽くこの辺の魔物と少し戦ってみましょうか」

「……は?」

「怖くないわよ。この辺の魔物は比較的弱いのが多いから」

「いやいや、そんな……」

 

 急に何を言い出しているのだろうかこの人は。武器を振るったこともなく魔法も使えない俺が魔物と戦うのなんて、中学生に難関大学の入試問題を解かせるようなものだ。つまり、無理である。

 

「ふふっ、そんな怖がらなくて大丈夫よ。戦うって言ってもアタシたちが前線で魔物の相手をしてるからそれを見てるだけでいいわ。元々アナタに武器を持って戦わせるつもりはないわよ。絶対これから魔物と戦うのが避けられない場面があるから慣れてもらわないと」

「あ、なんだ。それなら……。でも、それでもやっぱりちょっと怖いですね……」

 

 少し安心している俺を見て悪戯っ子のような笑みを浮かべているシルビア。どうやら少し遊ばれたらしい。俺はいじられ役属性はないはずだが、シルビアからするといい遊び道具のようだ。いつか何かしらで意趣返ししてやろうと心に決めた。

 

「弱いって言っても俺たちからしたらって話だし、ウルノーガの影響で弱いモンスターも割と凶暴化してたりするから気を付けろよ」

「マヤ様も、一応お気を付けくださいませ。何かあれば私がすぐに回復いたします」

「ああ、ありがとう!」

「あんまり戦闘慣れしてないんだから無理すんなよ?」

「分かってるって」

 

 後ろの方から戦闘を見ているだけであるとしても何があるかわからないので、店長に持たせてもらった防具類を装備して、短剣を腰に提げた。初めて着る鎧はやはり重く感じたが、軽い素材を使いながらも防御力がかなり高いというとても質のいいものだった。軽い素材で重く感じているのだから、普通のものだったなら動くことさえできないのではないか。これは本当に、店長には感謝しかない。この仰々しくも感じる姿で動き回ることに慣れなければこの世界で無事に生き抜くなどできはしないので気を引き締めなければ。

 

 全員の意識が先頭に向いたところで、荒野にいる近くの魔物に向けて、カミュを先頭にして一斉に走り出した。

 

 主に俺が戦闘に慣れるためのちょっとした戦いであるが、シケスビア雪原で襲われたことが軽くトラウマなので少し怖い。それでも、これは乗り越えなければならない壁である。

 

 

 

 俺が静かに決意を固めると同時に、サボテンのような姿をしたモンスターであるサボテンボールに、カミュが切りかかって先制攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 





 ありがとうございました! 10話にしてやっと旅立ちですってよ汗
 まぁ旅に出てしまえばあとはこっちのものなので(意味不明)

 なんとか2,3日に1話ずつ投稿していけているので、これからも続けていきたいなぁと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。また次回お会いいたしましょう!

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