失われし時を求めし者は.......   作:バーバラすこすこ侍

11 / 12

 お疲れ様です。リアルの出来事が立て込んで執筆が滞ってしまい、2,3日更新の自分ルールを破る羽目になってしまったババすこでございます。

 お待たせしてしまって申し訳ございませんでした。これからもこのようなことが多々起きるかもしれませんが、絶対に完結はさせる所存ですので最後までお付き合いいただければ幸いです。

 では、本編へどうぞ!


第11話:ユグノア城跡

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間でいえば正午くらいだろうか。サマディー王国周辺のモンスターで戦闘に慣れるためにしばらく戦っていたおかげか、かなり魔物に対する恐怖が減ったように思う。とはいっても、このあたりの魔物では凶暴化していてもカミュ達の敵ではないので、効果があったのかは定かではない。しかし、かなり収穫はあった。というのも、戦闘慣れしていないと思っていたマヤは、そのままの姿でも俊敏に動き回ってて攪乱もできる上に、変身すれば素早さはそのままに攻撃力が格段に上昇するというハイスペックな存在だった。加えてピオリムやバイキルトといった補助呪文も使えるため、かなり万能である。呪文に関してはすっかり忘れていたが、ゲーム内でのキラゴルドとの戦闘でも使ってきていた。それ以外のことについては未知数だったので本当に驚いた。

 

 俺は戦闘に参加することはなかったが、後方から戦況を見ていることで仲間たちにどの方向から魔物の攻撃が来るかを伝えたりできることに気が付いた。始めは意図したわけではなかったが、マヤが右斜め後ろからの攻撃に気付いていなかったので大声で指摘したことをきっかけに、徐々にではあるが、指示係のような役割をこなせるようになっていった。剣も魔法も扱えない、頭を使うしかできない俺にとってこの役割は適しているように思う。事務処理仕事をしていたおかげで戦況を見て適切な判断を下す力があったのも大きい。

 

 カミュ曰く、エルバがいた時は基本的にエルバの指示で戦っていたそうなので、その役割を代わりに俺ができるようになれば魔物との戦いは十分にできる。今はまだエルバほどの適切な指示を下せないが、ここから慣れていくしかないだろう。作戦『めいれいさせろ』といってしまえば簡単だが、実情は極めて難しい。自らも戦いながら仲間に指示を与えていたエルバはどれだけすごかったのかを痛感した。

 

 現在は、ずっと戦いっぱなしでは体がもたないということで、近くにあったキャンプ跡地で休憩している。袋に入れていた食材類と鍋を取り出し、薪を組んでからセーニャがメラで火をつける。昼ご飯は野外で適当な野菜と肉で作った鍋である。夏の暑さは苦手だが暑いところで食べる鍋は最高である。理由は知らないが冬に食べる物とはまた違った美味さがある。シルビアとはそれで意見が一致したので固い握手を交わした。

 

「とりあえず、マヤもレイも戦闘に慣れてきてくれたみたいでよかったぜ。マヤはもう問題なさそうだな。ちょっと突っ込みすぎで余計にダメージを受けがちだからそこは気を付けろよ?」

「わかった。まぁ、魔物の攻撃に当たらなければ全部問題ないだろ」

「そういうことではないんだけどな……」

 

 実際マヤはとても素早い。もっと鍛錬を積めばカミュに並べるほど素早く行動できるようになるはずだ。職業でいえば盗賊に近い動きを兄妹揃ってしているが、攻撃のテイストが違うので上手くコンビネーションできればとても強力な武器になる。まずは深追いしすぎないことだが。被ダメージが多くなればその分回復要因の負担が増すのは当たり前のことであるからだ。

 

「レイちゃんは後ろからアタシたちに指示を飛ばす役割をしてくれると嬉しいけど、慣れないうちは大変よね。あと、もし魔物から攻撃されそうになったとして、その時の対処法を覚えておいてもらわないとね。対処法といっても武器や盾でいなしたり弾いたりするだけなんだけど、タイミングを間違えると大きくダメージを受けるからあとで練習しましょ。指示の正確さはこれから磨いていけばいいわ」

「ありがとうございます。頑張りますね!」

 

 ゲーム内であった武器ガードや盾ガードの事だろう。ゲームでは確率で起こることだが、現実であれば極めれば必ずやることができる。ゼロになるとは言えないがダメージを減らすことができるのは大きい。

 指示に関してはこれから仲間が増えればもっと大変になるのは間違いない。今は4人だけなのでギリギリ指示を与えられているが、ここからはどうなるかわからない。ミスをすれば戦況が大きく変化しかねないので、命を預かっていることを再認識してもっと頑張らねばならない。蘇生魔法があるからといって疎かにしてはいけない部分である。

 

 それから、軽く雑談をしつつ5人で鍋を囲んだ。このように野外で鍋を食べるといったバーベキューじみたことは前の世界でも全然やってこなかったので、とても新鮮だった。カミュとセーニャ、シルビアの3人は完全に手馴れていたので手際が良く、これが熟練の旅人なのかと実感させられた。

 

 

 

「さて、次はどの仲間の元へ行きましょうか?」

 

 後片付けが終わり一息ついたところでシルビアが皆に問いかける。

 

「そうだな。あとはロウのオッサンと、グレイグマルティナのデルカダールコンビだよな」

「グレイグ様とマルティナ様については分かりやすいですが、ロウ様はどこにいらっしゃるのでしょうか……」

「んー……、確かにそうだよな」

 

 デルカダールの2人は何か用事がない限り城にいるはずである。しかしロウは現在どこで何をしているのか分からないという。恐らく何か意図をもって世界を回っているのだろうが、それが逆になかなか会えない原因になっているようだ。

 

「可能性があるとすれば、やっぱユグノア城跡だよな」

「そうですわね。かなりの頻度でエレノア様とアーウィン様のお墓参りをしていらっしゃいましたし」

 

 確かにゲーム内でもそのような描写はあった。何も手掛かりがない以上、ユグノア城跡に何度か行く必要があるかもしれない。下手に世界中を動き回って行方を追うとしたらすれ違いになってしまう恐れもある。

 

「それじゃあ、今日はこれから一度ユグノア城跡に行ってみて、ロウさんに会えなかったらそのままデルカダールに行ってみようよ」

 

 かえってすれ違いになる可能性があることを考慮すれば、このようにするのが一番効率が良いのではないかという提案である。

 

「そうだな。やっぱりレイは頭がいいんだな」

「マヤもなんだかんだしっかりしてるじゃん」

 

 シルビアの宿泊先をしれっと聞いていたりなどだ。

 

「決まりね。それじゃ、ユグノア城跡に向けて、出発するわよ!」

 

 

 意気揚々、といった様子で次なる行き先へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 △

 

 

 

 

 

 

「これが、ユグノア城跡……」

 

 荒廃した城下町を見て、言葉を失ってしまった。しばらく呆然としてようやく絞り出せた言葉がこれである。

 

「ここは何度来ても胸が締め付けられるわね……」

「ええ……」

「マヤ、大丈夫か?」

「ああ……ちょっとショックだっただけだ……」

 

 初めて目の当たりにする光景にさすがのマヤも参ってしまっているようだ。俺は画面越しに何度も目にしているとはいっても、いざ現実として目の前にするとどうしても言葉が出なくなってしまう。前の世界で災害の被災地のボランティア活動を手伝った時にも、被害の甚大さを目の当たりにして同じような感覚に陥ってしまったことを思い出した。

 

「初めて来たので辛いのは分かるが、ここには強力な魔物が多い。気を引き締めていくぞ」

「アーウィン様たちのお墓は北の方にある井戸を経由していかねばなりません。そこまで駆け抜けましょう」

 

 カミュとセーニャが呼びかける。キングリザードなどといった強い魔物が多く生息しているので、少しでも気を抜いたら致命傷になりかねない攻撃を受けることになる。今はとにかくロウがいるであろう王家の墓を目指そう。

 

 

「くっ!」

「これでも喰らいなっ!」

「メラゾーマッ!」

「皆、頑張って! そ~れハッスルハッスル~!」

 

 魔物をかき分けながら進んでいく。前衛の4人が露払い役になってくれているので俺に危険が及ぶことはない。カミュは両手に持った片手剣で目にもとまらぬ速さの攻撃を仕掛け、マヤは小さい姿のまま円を描くように魔物を攪乱しつつヒット&アウェイ。セーニャは攻撃魔法を多用して遠くからひたすら攻撃しつつ魔物の動きをけん制。シルビアはハッスルダンスで全員の回復をしつつ余裕があるときはドラゴン斬り等でダメージを与えている。時折他の仲間をかばって代わりにダメージを受けているが、それはすかさずセーニャが回復魔法で傷を癒してあげている。

 

 見ていて思わず感嘆の声が漏れるほどに息の合った戦いである。勇者エルバの仲間としてずっと行動を共にしてきた存在であるからだろうか。仲間がどこにいて何をしようとしているのかを瞬時に理解し、動きを合わせている。俺がエルバの代わりに指示役になるまでもなく、しっかりと戦えていた。俺が声を上げるのは、誰かしらが死角からの魔物の攻撃に気づいていないときに危険を知らせるときくらいだった。

 

 皆が全力で戦えばこれほどまでに強く、自分の出る幕なんてないのではないか……と、自分の無力さを感じてしまうのも無理はないが、元々住んでいた世界が違うので割り切るしかない。サマディーの近くで戦っていた時に拙いながらも支持を与えられていたのは、単純に仲間が本気を出していなかったからのようだ。

 

 俺は、俺にできることをしようと心に決めた。少しずつでもいい。できることを増やしていこう。

 

 

「よし、ここだ」

 

 先ほど言っていた井戸に着いた。井戸の近くには『わるいスライムじゃないよ』と言いつつ井戸が奥に続いていることを教えてくれるスライムがいた。初めて『ドラゴンクエスト』の代名詞ともいえる魔物であるスライムを見たが、現実での姿は思ったよりもゼリー質でひんやりしていそうだった。暑い夏に抱きかかえて寝たらさぞ気持ちいいことだろう。

 

「この先にロウちゃんがいるかはわからないけど、少し探していなかったらそのままデルカダールに向かいましょ」

「そうだな」

 

 

 井戸の近くで話していたら話し声につられてじごくのつかいが寄ってきたが、カミュがそれに2本の剣で3度攻撃するはやぶさ斬りを食らわせて一瞬で倒した。容赦ねぇ、とマヤが小さく呟いていたのが聞こえた。俺も、同じことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 △

 

 

 

 

 

 

 

 井戸自体は何も特別なことはなかった。前の世界で井戸に入るなんてことがなかったのは当たり前なので少し心が躍ったが、暗くじめじめとしていて長居できそうにはないな、というのが第一印象だった。

 魔物もおらずただ単調な地下道だったので休憩の意味も込めて軽く雑談しながら歩いて抜けた。井戸の向こう側はユグノア城下町に入ってすぐの光景よりもずっとショッキングであった。崩壊した城壁に、ところどころ抉れてぼこぼこになってしまっている石畳。足元に散らばって歩きにくくしている瓦礫。それらすべてが『ユグノアの悲劇』の凄惨さを物語っていた。

 

 井戸の出口から少し歩いたところに、アーウィンとエレノアを悼んで作られた墓がある。王族の墓にしてはあまりしっかりした出来ではないが、ロウが2人を思って作ったものである。いつかユグノアが復興したときにはもっと立派な墓を作るとゲーム内で言っていた気がする。こうして現実にこの墓を見た今、そうなってほしいと切に願う。

 

「ロウさん、いねぇな」

「そうだな。やっぱりここじゃないどこかにいるって考えたほうがいいのか?」

「ロウちゃんならここにいると思ったんだけどねぇ。やっぱりダメだったか」

 

 都合よくロウが墓参りしているタイミングで会えるとは最初から思ってはいなかったが、やはりどこかで期待していたのは事実である。それは皆も同じだったようだ。

 

「それでも、せっかく来たのでお墓参りをしていきましょう」

「うん、セーニャの言う通りだね」

 

 故人に失礼のないようにするのは日本でもロトゼタシアでも変わらないようだ。

 袋の中からちょっとした食べ物を取り出してお供えする。似たようなお菓子が既に置かれていたので、その隣に置いた。そういえば亡くなった祖父のお墓参りにしばらく行っていなかったな、とここで考えるには場違いすぎることが頭によぎった。こっちの世界にやってくることなど予期できたはずがないので今更感しかないが。

 

 5人でしっかりと墓参りをした。次の行き先はマルティナとグレイグがいるデルカダールである。

 

「それじゃあ、行くか」

「そうだな。……って、ちょっと待った」

「どうしたの?」

 

 デルカダールに向けて出発する流れかと思われたが、それをマヤが遮った。一体、どうしたのだろうか。

 

「この墓に備えられてる花束、いっぱいあってほとんどが枯れてるけど、1つだけまだ新しいやつがある」

「……確かに、言われてみればそうね」

 

 人一倍目ざといマヤは気付いたことを述べた。何も気にしていなかったが、確かにマヤの言う通り明らかに1つだけ新しい花束ある。他が枯れて茶色くなってしまっているのにもかかわらず、だ。水がなければ花はすぐに枯れてしまうはずであるが、その花束はとても瑞々しく、自らの美しさを最大限に表現しようと、大きな花弁をこれでもかというくらいに広げていた。

 

「そういや、レイがお供えしたお菓子の前にすでにお菓子があったよな」

「そういえばそうでしたわ」

 

 何も考えずにお供えしたが、こちらもそうである。前の世界でやっていたお墓参りは、既に親戚の誰かが掃除をして花を綺麗に整え、お線香をあげてお供えの品も置かれていた状態ですることが多かったので、『墓参り=すでに何かが置かれているもの』という認識が無意識のうちにあったのだ。カミュ達の認識は分からないが、少なくとも俺はそうなってしまっていた。

 

「もしかして、さっきまでここにロウさんがいたんじゃないかな」

 

 頭の中でこの答えにたどり着いた。この仮説が事実なら、しばらくロウに会えることができなくなってしまいそうだ。次にロウがここに来るのをいつまでも待っているわけにもいかない上に、移動するとしても、この広大なロトゼタシアで偶然会えるなどと考えるのは無理がある。

 

「ってことは入れ違いだったってことかよ! くそっ、まじか!!」

 

 カミュが悔しそうに頭を抱える。先にマルティナとグレイグに会いに行くのは簡単だが、何度も言うように、2人と合流できたとしてもロウがいなければ話にならない。それに、ロウは博識で有名な人物なので、今回の出来事について何かしら情報を持っているかもしれない。

 

「焦っても仕方ありませんわ。とにかく今はデルカダール城へ向かいましょう!」

「ええ、そうしましょ!」

 

 皆の意見が一致したので、カミュがキメラのつばさを放り投げる態勢に入る。善は急げというくらいだ。すぐに行動に移すべきだろう。

 

 

「ちょっと待たんかー!!」

 

『えっ?』

 

 

 キメラのつばさの効果によって俺たちの体がふわりと浮いた瞬間、ユグノア城跡の裏山の方からとある声が聞こえてきた。思わずその場にいた全員の声が被る。

 

 

 しかし、その声に気が付いても、もう移動を止めることは誰にもできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ありがとうございました!

 中間テストの存在を講義の30分間前に知って急いで勉強したり(詰め込んだら八割取れました)、失恋した友人を慰めたり(酒の席で泣かれました)、野外でバカ騒ぎできるイベントに行ったり(全身筋肉痛になりました)していたら執筆が遅れてしまいました。

 作者も一人の人間ですので、ご理解いただければと思います。

 また、ご感想を頂いたり、とても励みになります。お気に入りや評価も本当にうれしいですが、読者の方々と直接やり取りできるので、感想を頂けるのが一番うれしいです。

 次回以降もよろしくお願いいたします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。