失われし時を求めし者は.......   作:バーバラすこすこ侍

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 お疲れ様です。書きあがっていたのにポケモンをやっていたら投稿するのを忘れていたババすこでございます汗 楽しすぎですね! 現在8個目のバッジをゲットしたところです!

 自分ルール云々言っておいてもうガタガタになってしまっているのですが、今後ともよろしくお願いいたします!!

 では、本編をどうぞ!


第12話:ユグノアの老賢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよおっさん、いたんなら早く出て来いよな!」

 

 1度デルカダールに向けて飛び立ってしまった俺たちだったが、向こうに着いた瞬間とんぼ返りである。帰ってきても降り立ったのはユグノア城下町の入り口なので、また魔物を蹴散らしながら井戸を超えて墓の前にたどり着かなければならなくなったのは言うまでもない。

 

「いやあ、すまんのう。最近来られなかった分、今日墓参りをしておったら聞き覚えのある声がしたからちょっと驚かせようと思っての。裏山の祭壇の方に身を隠して驚かせる機会をうかがっておったのじゃ。じゃが、話がとんでもない早さでまとまっていきおって出ていくタイミングを見失ってしまってのう」

 

 どうやら俺たちは運がよかったようで、ロウは今日墓参りをしようと、偶然ここに来ていたらしかった。そんなことだったらもう1回戻ってくるんじゃなかったぜ、と小さく呟いて不貞腐れているカミュを宥めてから、会話を続ける。

 

 

 

「改めまして、お久しぶりですわ、ロウ様」

「セーニャよ、久しぶりじゃな。髪が少し伸びて雰囲気が大人っぽくなった気がするぞい」

「ありがとうございます」

「カミュもシルビアもげんきにしておったかの?」

「ああ、もちろんだぜ」

「アタシは元気いっぱいよ~ん!」

 

 この世界に来て何度か見ている旧友との再会のシーンである。やはり勇者の仲間として苦楽を共にした存在と久しぶりに会えるのは嬉しいのだろうというのが分かる。前の世界のようにどこにいても連絡が取れるスマートフォンのような端末は存在しないので、実際に会って話さないと近況が分からないのだ。どこかに定住しているのなら手紙でやり取りはできるが、ロウのような旅人相手ではそれもできない。

 

「それとおぬしは、カミュの妹の……」

「マヤだぜ。この旅はオレもついていくことにしたんだ」

「ほうほう、そうじゃったか。世界をよく見てこれからの人生の糧にするんじゃぞ」

 

 年齢的にはひ孫といっても過言ではないほどに離れているマヤ。ロウにとっては将来が楽しみな若者なのだろう。

 

「……それで、皆と行動を共にしているおぬしは、どなたかの? というより、何者じゃ?」

「えっ?」

 

 

 最後に俺に来るだろうなと思ってはいたが、予想の斜め上の話の振られ方をして少々驚いた。警戒している様子はないが、気を緩めているというわけでもない。

 

「身構えなくとも大丈夫じゃ。カミュ達が一緒にいるということは害のある人物ではないのは分かる。しかし、おぬしの発する空気が普通の人間とは少々違うと思ったのでな。失礼な問い方をした自覚はある。すまんのう」

 

 ロウもリーズレットと同様に、俺が他の人とは違うことを見抜いていたようだ。文にも武にも長けた存在であり、博識と名高いロウには分かってしまうらしい。経験の豊富さは伊達ではないようだ。

 ロウにも俺の素性を話した。もう何度も同じ話をいろいろな人にしているので、分かりやすく上手に説明するやり方が身についてきてしまっていた。これからデルカダールの2人にも話さなければならないが、きっと同じようにすれば問題ないだろう。

 

「……そうじゃったか。どうりでおぬしは人と違うと思ったわい」

 

 心底納得がいった様子でロウが頷いた。

 

「人と違う雰囲気を感じるっていうのは、どういうことなんでしょうか?」

 

 ふと疑問に思ったので聞いてみた。何がどう違うのかは自分ではわかるはずがないからである。他人から、〇〇の匂いは落ち着くなどと言われても、自分では自分の匂いなど分からないのと同様に、だ。

 

「上手く言葉にはできんがの、どこか神聖な感じがするんじゃよ。神聖といっても少し違う気がするが、概ねそのような感覚じゃ」

「神聖、ですか……」

 

 神聖といっても俺は聖職者ではない。前の世界ではただの一般社員であり、皇族だったとかそういうのもない。しかし、ロウが嘘を言っているようにも思えないので、黙って受け止めることにした。もしかすると、旅をしていれば何かが分かるかもしれない。

 

 

「ところで、どうして皆また世界を旅しておるのじゃ?」

 

 今更じゃがの、と見る者を安心させてくれそうな笑顔で付け加える。かつてユグノア王として民を統べていた時の面影を、その笑顔に見た。さぞかしユグノア王国は平和だったのだろう。

 

「それについてなのですが……」

 

 シルビアに説明したときと同様、事細かに世界に何かが訪れようとしていることを説明した。このような説明はセーニャが一番上手である。

 

「ほう……。そのようなことが……」

「なにかお心当たりはございませんか?」

 

 ロウであれば何か知っているかもしれない。それはここにいる人間が全員思っていることだろう。ダメ元ではあるが、わずかな期待を持つことくらいは許容してほしい。

 

「申し訳ないんじゃが、ワシにも分からぬ」

「そうですか……」

 

 こればっかりは仕方がないだろう。聖地ラムダの古い文献にさえ記されていないことなのだから。ロウに責任があることでもない。むしろしっていたら、それはそれで驚くべき事態であるのは間違いない。

 

「んじゃあ、今俺たちがやるべきことは、デルカダールに行ってあとの2人を仲間にすることだな」

 

 意識を切り替えるようにカミュが言う。しかし、ここで俺はとある疑問を持った。

 

「今更なんだけどさ、マルティナさんはデルカダールの王女で、グレイグさんは英雄であり騎士なんでしょ? 簡単に旅についてこられるのかなぁ」

「ん~。言われてみれば確かにそうねぇ」

 

 俺もそうだが、きっと皆も、エルバと旅をしていた時の感覚で簡単に"一緒にいられる"と思っていただろう。だが今はその時とは違う。それぞれが居場所を見つけ、日常を過ごしている。今ここにいる仲間はまだ問題ないが、一国を背負っている王女と騎士が簡単に国を空けることなどできるはずがないのは明らかだ。

 

「確かにそうかもしれないけど、行ってみないことにはわかんないとおもうぜ? 案外何とかなるかもしれないしな。いししっ」

「ええ、マヤ様の言う通りですわ」

「まぁ、それもそうだね!」

 

 こういう時、マヤのようにがむしゃらに突き進むことができる存在の一声はとても力になる。本当になんとかなる気がしてくるのだから不思議である。何とかならなかったときは、その時に考えればいい。

 

「そうと決まれば出発ね」

「ああ、そうだな」

 

 次の方向性は決まった。今度こそデルカダールに向けて出発である。

 

「ワシは、また皆とともに旅ができて嬉しいわい。よろしく頼むぞい」

「こちらこそ、足手まといになるかもしれませんがよろしくお願いします」

 

 実際、ロウが加入してくれるのはとても心強い。老いてもなお武術に長け、回復を攻撃もできる戦闘のエキスパートが加わったとなれば百人力である。

 

「よーし、では、新たなる旅立ちじゃ! ………………あっ」

 

 

 

 かっこよく決まったと思ったのも一瞬だけ。高々と右腕を掲げた衝撃で背中に背負っていたバックパックの隙間からとある本が落ちてきた。

 

「ロウちゃ~ん?」

「おい、おっさん。アンタまだこんなもん持ち歩いてたのかよ……」

「頼れるいいおじいちゃんだと思ってたのに、がっかりしたぜ」

「いやっ、これは違うんじゃ! その……さっきそこで拾って……!」

「こんな場所でそんなもん拾えるわけねぇだろ」

「うぐっ……」

 

 地面に落ちたのは、ロウと言えばこれ! とっても過言ではない本。"ムフフ本"だった。全身を使って隠したが時すでに遅し。セーニャ以外の3人から軽い軽蔑のまなざしを向けられていた。セーニャは相変わらず純粋らしい。セーニャは『以前もこのようなものを持ち歩いておりましたね。老いてもなお勉強熱心なのは尊敬ですわ』などと呟いている。そのままの純粋なセーニャでいてほしいものである。

 個人的には"鈍感側"のマヤがムフフ本に関して知っているのが意外だったが、バイキングの手下として生活していれば目にする機会もあったのだろう。バイキングに対してかなりの偏見を持った考え方であるのは許してほしい。

 

 ロウが何かを訴えるような涙目でこちらを見てくるが、ここはさすがに俺でも養護のしようがないので苦笑いで首を左右に振り、無言の返事をする。自業自得である。

 

 

 

「こ、これは……違うんじゃあああああ!!」

 

 

 ロウの大きな弁明の声が、ユグノア城跡に悲しく響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 △

 

 

 

 

 

 

 

 新たにロウを仲間に加え、6人となった俺たちは、デルカダール王国の城下町に来ていた。

 

 命の大樹が堕ち世界が闇に包まれた時、ウルノーガの手下である屍騎軍王ゾルデによりデルカダール城は占拠され、強力な魔物が闊歩する廃城となってしまっていた。今では完全に復興したというイシの村がまだ最後の砦と呼ばれていた時、デルカダールの英雄グレイグとかつて悪魔の子と呼ばれ憎まれていた勇者エルバの2人が力を合わせて城と、太陽を奪還した。

 

 奪還した後も城は魔物の巣となっていたが、世界が平和になってイシの村の復興が終わった後に、兵士や勇者の仲間の力により城内や城下町の魔物が殲滅された。それからは物事が順調に進み、イシの村の民と兵士が一丸となってデルカダール王国はもとの美しい町並みを取り戻そうと奮闘した。その甲斐もあり、今では以前にも負けず劣らず、多くの人々が行き来する場所になったそうだ。

 

 これまでに訪れたどの国よりも城下町の規模が大きく、少し路地裏に入ってしまったが最後、まともに目的地にたどり着ける気がしない。商人や観光客、旅人や兵士、住民や野良猫野良犬。多くの人や動物が街を歩き、喧騒を構成する音となっていた。

 

 

「これがデルカダール王国かぁ……」

 

 クレイモラン王国とサマディー王国しか知らないマヤが、感嘆の声を上げる。田舎者が初めて東京に来た時のような反応である。

 

「広くて迷子になったらまずいから、1人でどっかいったりするなよ?」

「わかってるって! 一々子供扱いすんな!」

 

 口ではそう言っているが、そこら中にある屋台に目を輝かせてうずうずしている様子は、どこからどう見ても子供らしく、年相応である。素直におねだりすればカミュが何か買ってくれそうなものであるが。

 

「実際、大人でも迷子になりかねん規模の城下町じゃ。ワシらも気を付けるとしよう」

「そういうロウちゃんは女性に釘付けになってるうちにはぐれないようにね?」

 

 ムフフ本のショックから先ほどようやく立ち直ったロウが注意喚起をするが、シルビアの一言によって完全に年長者の尊厳が無くなってしまった。重ね重ね言うが、自業自得である。もとからこの設定を知っていた俺からすると、本当にこういうおじいちゃんなんだ、くらいの反応であるが、マヤからしてみると幻滅するのには十分すぎたようだ。逆に、それによってマヤがロウに対して遠慮が無くなったようなので、怪我の功名というべきか。仲間の仲が良いのはいいことであると思っておこう。 

 

「仮にはぐれた場合の集合場所を決めておこうよ。城下町の入り口から城門まで一直線の通路だとしても、何かではぐれるかもしれないから」

「そうだな。そんじゃ、上流階級の奴らが住んでる地域の中心にある噴水なんてどうだ? 割と開けてるし、城門からもそんな遠くなくて分かりやすいと思うぜ」

 

 城下町のマップを開きながらカミュが言う。何度も訪れているのでほとんど覚えているが、復興作業をしたときに街並みが変わった点があるから、と新しく地図を買っていた。1枚当たりの値段はさほど高くないので、余計な出費ではあるが問題ないのだそうだ。

 

「いいと思いますわ。皆様もよろしいですか?」

 

 セーニャの問いかけに、皆が無言でうなずく。このように、もしもの時の集合場所をあらかじめ決めておくのは俺が昔から母親に教えられていたことだ。友人と遊園地に行ったときにもこれのおかげで合流できたりしている。この世界においても役に立つはずなので、母親の教育に感謝である。

 

「そういえば、1か所行きたいとこがあったんだけど、いいか?」

「どうしたの?」

 

 一刻も早くマルティナたちに会いに行かなくてはならないわけではないが、あまり時間をかけすぎるのも良くないとは思うが、どうしたのだろうか。

 

「俺がまだエルバに出会う前に、この国の下層で活動してたって話はしたことあったよな?」

「ええ。以前お話をお聞きいたしましたわ」

 

 それなら話が早い、といってから、カミュは続ける。

 

「今回デルカダールが復興したと同時に、城下町の規模を少し大きくして、下層を無くしたらしいんだ。デルカダール王がウルノーガにのっとられてたせいで下層の環境がどんどん悪化していったって話があって、元の王様に戻った時にその下層の状況を改善しようと動いたんだってさ」

「へぇ~。そんなことがあったのね」

 

 ゲームでやっていただけではわからない情報である。稀代の賢王と謳われたデルカダール王であれば、政治関連の手腕は相当のものだろう。

 

「それで、下層で宿屋を営んでた女将もこの城下町に引っ越して新しく宿屋を立てたっていう手紙がこの間クレイモランの俺とマヤが暮らしてる部屋に届いてさ。場所とかも書かれてたし1度挨拶でもしておこうかと思ってな。一応、お世話になった人だし」

「そういうことなら、さっそく向かうとしよう。そのような心掛けは大事じゃ」

 

 義理堅いカミュならではの用事である。それならば仕方ないので、城に行く前に寄るのもいいなと思った。個人的にもう少しこの町をよく見てみたいのもある。

 

「それじゃ俺について来いよ。万が一の時はさっき言ったとおりの場所でな。先に噴水にいてもらえればいい。用事を済ませた後に迎えに行くって形で」

 

 他の皆も異論はないようなので、カミュを先頭に歩き出した。

 

 

 

 

 

 宿は城下町の東側。元々下層があった方にあるらしい。下層に住んでいた人々は基本的に東側の一角に固まって住んでいるようだ。下層の雰囲気を気に入っていた人には、デルカダール王の施策に異を唱える者もいたようだが、固まって済ませることでそれをなくし、上手く問題を着地させたようだ。

 

 東側の方は、住宅ももちろん多いが、西側に比べて商店が多い。そのせいか人通りも激しく、ところによっては、満員電車とまではいかないまでも、渋谷のスクランブル交差点のような人口密度になっていた。

 

「あ、すみません」

 

 まともに歩いても何度も人に当たってしまう。その度に小さく謝罪の言葉を口にしている。あまり人ごみに慣れていない人間なので本当に大変だ。

 

 他のみんなは慣れているのか、先ほどから人とぶつかっている様子はなかったはずだ。もとより体の扱い方が上手なので、うまく歩けているのだろう。前を歩いていた仲間の方を見る。見て何か参考になればいいのだが……。

 

 

 

「……あれ? もしかして、はぐれた……?」

 

 

 

 しかし、俺の前には仲間たちの姿はなかった。何度もぶつかって謝ったりして視線を外しているうちに、はぐれてしまったようだ。はぐれた時の対策を自分から言っておいて、まさか自分がこのような状況になるとはだれが予想できただろうか。しかし、このような時こそ冷静でいなければ。俺はもう子供ではないのだから。

 

 

 この人の数では探すのも到底無理だろう。それに、慣れていない土地で下手に動き回るのはかえって迷子になる恐れがある。引き返せばいいだけなので道は分かっている。仲間たちは用事を済ませてから来るはずなので、ここは道中の屋台をじっくり眺めつつ噴水を目指すことにしよう。

 

 

 

 

 一時的にではあるが、この世界に来てからの初めての一人旅である。楽しまない手はないだろう、と前向きに考えつつ時間を潰すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ありがとうございました! ロウと言えばこの演出ですよね!()

 作中の主人公の母親の教育の話ですが、実は私が実際に母から教えられてたことだったりします。なんだかんだ両親の教育はしっかりしていたと思うので感謝しているんですよねぇ(照)
 お話の中に作者である私の実体験を混ぜたりしているので、「あ、こいつこういうこと経験したことあるんだな」とか考えながら読んでいただけると多分私と仲良くなれます(誰得)

 それでは、次回以降もよろしくお願い致します!

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