失われし時を求めし者は....... 作:バーバラすこすこ侍
次はなんの泣けるアニメを観ましょうかね(笑)
違う作品の話はここまでにして、本編に行きましょう!
では、どうぞ!
「よし、これで最後だ」
「分かりましたわ」
食事に使った食器類を息の合ったコンビネーションで片付けていくカミュとセーニャ。後片付けくらいはやるといったが、俺たちでやるから客人は座っててくれ、とカミュに言われ、セーニャもそれに同調したため、大人しく座っている。助けてくれただけでなく客人扱いまでしてくれる優しさに、素直に甘えることにした。
特にやることもないためぼんやりと皿洗いの様子を眺めていたが、傍から見ていると完璧に夫婦だ。セーニャには否定されたので婚姻関係にはないのだろうが、現在の時間軸が勇者がいなくなった後ということもあって、原作では起こりえない心情の変化というものがある可能性だってある。
また、この世界には水道管なんてものはもちろんあるわけがないので蛇口をひねればいくらでも水が使い放題ということもない。井戸から水をくみ上げてそれを使用し、出た汚水はろ過をして再利用する、というのを数回繰り返す。どの世界においてもやはり水は大事なんだな、と実感した
そんなことを考えているうちに最後の皿を片付けたようだ。よほど冷たかったのか、2人ともすぐに暖炉の前に行き両手をさすりながら暖めている。暖めるならメラを使えばいいのでは、と思わないでもないが、余計なことに魔力を消費するのはあまり好まれないのかもしれない。ゲーム内のMPのように数値化できるものではないと思うが、間違いなくキャパシティというものはあるはずだ。
「皿洗いも終わったし今からクレイモラン王国の城下町に食材やら日用品を買いに行こうと思うんだが、お前も来るか?」
「クレイモラン王国? 行ってみたい!」
カミュが聞いてきたので、すぐに決断する。この世界に来てしまったのならいろいろ見て回りたいという好奇心からの言葉だ。食事中の会話で、しばらくはこの小屋にいていいと許可をもらったので、道端で野垂れ死ぬ心配はなくなった。そういう安心感もあっての返答である。
「では3人で行きましょう。魔法についてリーズレット様に少しお聞きしたいこともありますし」
「そういうことなら、早速行くか」
セーニャの口から出た"リーズレット"という言葉を聞いて、少々考える。……確か、一度王女に成りすましてたのがバレて勇者一行に倒されたが、そのまま王女の警護人になった魔女だったはずだ。きっと2人と一緒にいれば俺も会えるはずなので、実物をぜひとも拝んでみたい。
「行くって言っても、帰りは暗くなりそうだけど大丈夫なの?」
素朴な疑問を口にする。寝ていた時間はそれほど長くはないだろうが、恐らく昼はとっくに過ぎているはずだ。今から出かければ遅くなるのは間違いない。故に、夜間の外出は絶対に危険だろうと思ったからだ。寒さはもちろん、夜間帯の方が魔物が凶暴化するのは常識である。無論、ゲーム内知識ではあるが。
「問題ないぜ。これがあるからな」
新しく買ってもらったおもちゃを友達に自慢するような少年の顔でポケットから取り出したのは、真っ白い羽根のようなもの。見た目的には羽ペンであるが。これは……。
「あ、キメラのつばさか」
「そうだ。これさえあれば城下町までも、そこからこの小屋にまでも楽にいけるんだ。レイを助けてここに戻ってくるときにも使ったんだ。道具屋にいけば結構安く手に入るし重宝するぜこれは」
ま、俺はキメラ自体から盗めば金はかからないんだけどな。と得意げに付け足す。セーニャはそんなカミュを見て苦笑い。
そういえばそんなアイテムもあったな、と考えるくらいには長らく触れていなかったものだ。『ドラゴンクエストXI』ではシナリオの序盤でルーラの呪文を習得できるので基本的に使う機会は本当にシナリオの最初の部分だけとなってしまいがちだと思う。主人公である勇者しかルーラの使い手はいないことを考えれば、他の仲間はキメラのつばさを常備していても不思議ではない。
「ということなので心配はいりません。では向かいましょうか」
「そうだね」
通勤カバンを持っていても何も意味がないので何も持たないことにした。できればスーツから動きやすい何か別の装備に着替えたいところだが、生憎この世界に流通しているお金は持っていないのでそれはかなわないだろう。
小屋から3人で出る。どうやらカギはかけないらしい。それがこの世界流か。
「それじゃあいくぜ」
カミュがキメラのつばさを放り投げるために勢いをつける。キメラのつばさの使用法は簡単で、ただ行き先を思い浮かべながら放り投げるだけだという。これで一度行ったことのある場所にならいくらでも行けるのだから、とても便利な代物である。
しかし、移動中はそのような感覚なのだろうか。それにも興味が湧いた。
「せーのっ!」
△
「あー……気持ち悪い……」
成人した後の会社の飲み会で、初めてアルコールに触れたということで上司に飲まされまくった時の二日酔いがこんな感じだったなぁと、今すぐに出も胃の中のものを吐き出したい衝動を抑えるために別のことを考える。今思えばあれは立派なアルハラだったのではないか。猛烈に上司を訴えたい衝動が湧いてきた。ちなみに、セーニャがホイミを唱えてくれているが効く気配はない。こういう時って回復呪文が効くのだろうか。キアリーなら効果があるか?
「大丈夫ですか? まだ体調がすぐれないのでは……」
「雪原で倒れたのとは違う理由だから心配しないで。すぐに良くなるから」
キメラのつばさを使用したときの移動中の様子が気になっていたが、結論から言えば、絶叫マシンのような感じだった。絶叫マシン自体は苦手ではなくむしろ得意な方だ。だが、最初に少し体に浮遊感があったかと思えば遮蔽物がない高度まで一気に上昇し、そのあとは風の抵抗は受けない、とてつもない速度の平行移動、そして、地面に激突するのではないかというほどの速度での下降。この3つの行程が一瞬で目まぐるしく変わり、三半規管がやられてしまった。思っていたよりも凄まじかった。正直キメラのつばさをナメていた。
「では、少し座りましょう。その方が楽になるはずですわ」
「そんじゃ、ここの教会とかでいいんじゃないか」
カミュが指さしたのは、城下町の門を入ってすぐ左にある教会。たしかに、ここならゆっくり休めるはずだ。素直に賛成して教会に入る。
満腹時と空腹時には乗り物酔いしやすいと前に聞いたことがあるので、帰りの時はもしかしたら大丈夫かもしれないが、乗り物酔いと同じにして考えてしまっていいものなのかはわからない。
「おお、カミュじゃないか!」
「お、おっさん久しぶりだな」
入口のすぐそばの椅子に腰かけると、神父の恰好をした男性が話しかけてきた。
「お久しぶりですわ、神父様」
「セーニャさんもいらっしゃったのですね。本日はどうされました?」
「このお方の具合がよろしくなくて、少し休憩しようというお話になったもので、立ち寄らせていただきました」
親しげに話しているが、この神父さんはストーリーに何か関係があっただろうか……と、少しずつ引いてきた吐き気を抑えるために考える。
カミュとセーニャが神父と話している間に考えていたが、そこで、あっと思い出した。カミュのことを昔から知っているポジションの人だということをようやく記憶の引き出しから引っ張り出せた。
「そうだったのですね。して、このお方はお二方とはどのようなご関係なのですか?」
神父がこちらを見ながらセーニャに尋ねる。確かに見ず知らずの人間と知り合いが一緒にいたら気にならないわけがない。
「シケスビア雪原で魔物に襲われていたのをお助けしたのですわ」
「疲労からか倒れちまったんで、雪原の北にあるいつも使ってる小屋で休ませてから、俺たちが買い出しに行くのに付き合ってもらってる」
「えっと、レイです。2人には助けてもらって、しかもご飯までご馳走になってしまったので、感謝してもしきれません」
2人が順に説明したので、ついでに自己紹介。知り合いを増やしておくに越したことはない。
「レイさんですね。危ないところでしたね。これも神のご加護あってこそでしょう。旅人のようには見えませんが、どうしてシケスビア雪原に?」
そりゃ気になりますよね、という感じである。
「俺にもよくわからなくて、迷い込んでしまったというか何というか……」
「迷い込んだ? うーん……不思議なこともあるものですね。世界のどこかには、違う大陸と大陸とを結ぶ"旅の扉"なるものがあると以前聞いたことがありますし、そういった類のものでしょうか」
2人にも使った誤魔化し文句を使う。神父の言葉に、カミュも確かに、というようにうなずいている。旅の扉を実際に使った人間からするとわかることもあるんだろう。
教会の建物の中の暖かさもあり、先ほどよりも吐き気はなくなっている。もう少しここで休んで入ればまともに動けるようにはなるはずだ。
「ひとまず、ここでゆっくりしていってくださいませ。レイさん、お困りのことがございましたら何なりとお申し付けください」
「はい、ありがとうございます」
さすがは神に仕える人物とだけあって親切というか慈悲深いというか。大変ありがたいことには変わりないので、気持ちを素直に受け取った。
△
「へぇ、すごく綺麗な街だなぁ……」
吐き気もなくなり元気になったので、神父さんにお礼を言ってから3人で外に出た。先ほどは具合が悪くてそれどころではなかったが、改めて見てみると、今まで見てきた中でもトップレベルで美しい街並みだった。住んでいた地域が雪とは無縁な場所だったため馴染みが薄い分補正がかかっているのかもしれないが、それにしても美しい。カミュが、クレイモランは世界一美しい町なんだ、と教会の中で言っていたがこれほどまでとは思わなかった。
町は、30秒あれば端から端まで行けるような小さなものではもちろんなく、しっかりとした大きな町だった。
現実として認識するならこのくらいでないと人々の営みの規模が大変なことになってしまう。仮に原作通りの町の大きさだったなら、世界の海を渡るのに5分とかからなくなってしまうからだ。
恐らく、主に栄えている範囲はゲームで実際に動き回ることのできる場所で、ゲーム内マップには表示されないが、現実としては存在している所謂"都市郊外"のような住宅密集地が大部分を占めている。下町、とも言えるかもしれない。この広さと家の多さなら、ゲームでの情報やアイテムの収集は大変だな、と思った。もちろん人の家に急に上がり込んでタンスを開けたりツボを割ったりなどをするつもりはない。
「とりあえず、先に日用品を買うか」
「そうですわね」
特に異論はないので、道具屋に向かう。原作では売り物が少なく、冒険に必要なものしかリストに無かったがさすがにそれはなく、多くの品物が売っていた。原作の品揃えだけでは店が成り立つわけがないので、それはそうかと1人で納得している。
「これとこれと、あとこれも」
「カミュ様、こちらなんてどうでしょう?」
「んじゃそれも買うか」
道具屋の店先に置かれていた買い物かごのようなものに次々に買うものを入れていく。この後食料品を買うことと、リーズレットに会いに行く事を考えると不安である。
「そんなに買って大丈夫なの? 持ちきれないんじゃ……」
「へへっ、大丈夫だ」
「この袋があれば問題ありませんわ」
そう言ってセーニャがポケットから取り出して広げて見せてきたのは、何の変哲もない布製の袋だ。これだけでどうにかなるとは到底思えないが……。
「この袋にはな、容量の制限がないんだ。いや、正確にあるのかもしれないが、制限が分からないくらいにはめちゃくちゃ物が詰め込めるようになってる」
「え、すごいねそれ」
セーニャが試しに道具屋で買ったものを入れる。普通なら袋が大きくなってズシリとした重さが感じられるはずだが、そんな様子もなくただの平たい袋のままだ。制限が分からないくらいにいくらでも物が詰め込める袋。ゲームをしていてそんなにものを持ち運べるわけがないといつも思っていたが、こういうカラクリがあったのかと勝手に納得する。取り出したいものを思い浮かべるとそれを袋から出せるそうでだ。例えるなら、国民的アニメに出てくる青狸の腹についている四次元のアレである。あの青狸はよく『あれでもないこれでもない』と道具を散らかしているので、セーニャが持っている袋のほうが有能かもしれない。買ったものをすべて詰めたらまた元のようにポケットに入る大きさにまで畳んでしまえる。本当に便利すぎる代物である。
「っと、ちょっと待ってろ」
道具屋を後にしようとしたところでカミュがまた何かを買おうとしているようだ。買い忘れでもあったのだろうか。
「はい、これ。お前も持っておけ。またさっきみたいになるかもしれないけど」
ほどなくしてもどってきたカミュがそう言って渡してきたのはキメラのつばさ。なぜ、と質問しようとしたが意図を察した。魔物に襲われたりなど何か起こった際、これを放り投げれば簡単に逃げられるというわけだ。単純に移動手段にもなる。しかし。
「もらっちゃっていいの? お金とか……」
「構わねぇよ。大して高くもないし、金なら結構持ってるから」
「……そうなの? じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」
「いいってことよ」
お礼を言ってありがたく受け取る。しかし、お金を持ってるとはどういうことだろうか。さすがにまだ盗賊家業をしているなんてことはないはずである。
「カミュ様は魔物を倒すことによって得られるお金をコツコツと貯めておられるのですわ。一応私も、カミュ様には及びませんが、少々貯蓄はあります。それに、カミュ様はたまにお城の兵士の方々の稽古をお手伝いして謝礼金をもらったりしておりますし、私は魔法の研究が進んでいるこのクレイモラン王国で研究をさせて頂いていて、研究資金も融資していただいております。私の場合は魔法の修行にもなりますから」
「へぇ、そうなのか。すごいんだなぁ2人とも」
前を歩き始めたカミュに聞こえないようにこっそりとセーニャが教えてくれた。なるほど、強ければこその生計の立て方だ。素直に尊敬である。適材適所、といった感じだろうか。
個人的には魔物を倒すと本当にお金を落とすんだな、ということが一番驚きであるが。
「どうした? 行こうぜ」
「うん、そうだね!」
なんだかんだ順調に馴染め始めているな、と思った。
ありがとうございました! 書き溜め全然作れてないのでピンチです汗
これから友人の家で鍋を囲みながらお酒を飲むことになっているので今日の執筆も絶望的という……。酒と鍋と、多分麻雀もするんだろうなぁ。(おっさんかよというツッコミはなしで笑 ぴちぴちの若者です!笑)
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では、また次回お会いいたしましょう!
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