失われし時を求めし者は....... 作:バーバラすこすこ侍
Twitterで呟いたら、よく来る男友達の彼女のものじゃね? という意見をもらったので、もしそうなら確実にぶっころ案件ですね笑
非リアのやっかみはここまでにして、本編に行きましょう。
では、どうぞ!
「さて、次は食料品だな」
やってきたのは、町の東側、銀行と宿屋が併設されている建物の隣だ。ここでは日持ちしそうな食材と、無くなりかけている調味料類を買うつもりらしい。ふと疑問に思って、肉などの生鮮食品類は袋に入れている間どうなのか聞いたが、袋の中にあっても腐ってしまうらしい。袋の中だけ時が止まっているなどという都合のいいものではなかった。だがその理論でいえば、旅の間に自家栽培が可能なのではないかということに気が付いた。これが本当にできるなら、旅をしながら自給自足生活ができる。現実味がなさ過ぎて皆やらないだけかもしれないが。
閑話休題。
「さっきからずっと思ってたんだけど、カミュとセーニャってずっとあそこの小屋に住んでるの?」
買う食材を見極めながら問いかける。ちなみに、この世界に野菜類は普通に現実世界のものと大変良く似ていて、食べるのに抵抗はなさそうだ。寒冷地で育った野菜。高原キャベツのようなものだろう。
「ずっと住んでるわけではないな。不定期で城と小屋を行き来してる感じだ。少し小遣い稼ぎをするときに使ったりもする。基本的にはセーニャが魔法の研究をするために町の外でいろいろと魔物相手に試したり、古代図書館っていう雪原にある建物に調べ物をしに行くときに拠点にしたりだな。今は研究中だ。
俺はセーニャが小屋に行くときは基本的に一緒に行くようにしてるんだ。何かあったらまずいからな。でないとベロニカに怒られちまう」
「なるほど、そうだったのね」
ベロニカのことを交えておどけて話す。セーニャも思わずといった様子で笑っている。とても平和な光景だと思った。研究やフィールドワークなどの際に拠点として起臥寝食の場として用いているらしいが、仮に俺がこの世界にやってきたのがその期間でなければどうなっていたかと考えると恐ろしい。
想像に震えている間に、日用品を買った時と同じように、カミュとセーニャは次々に買い物かごに食料品を入れていく。少々多い気がするがこんなに必要なのだろうか。何日か分をまとめ買いするならこれくらいなのか?
「ちょっと多くない……?」
「そうでもありませんわ。いつもこのくらいですし」
「へ、へぇ。そうなの……」
至極当然、といった様子である。この寒い地域で外で研究活動をするのならこんな感じなのだろうか。何事も食が資本なのでこれくらい必要なんだな、と勝手に自分の中で結論を出した。
「……っと、こんなもんでいいな」
しばらくして、買いたいものを選び終えたようだ。店主に代金を支払って、日用品と同様に袋に入れる。これでやらなければならない用事は済ませた。あとはセーニャがリーズレットに聞きたいことがあるようなので、それについていく。
「それでは、リーズレット様のところへ行きましょう」
「だな。暗くなる前に済ませちまおうぜ」
今更ながら、"王宮"という存在とは縁遠いためとても緊張してきた。明らかに王宮内で浮いてしまう気がする。そんなことを気にしたところで何かが変わるわけではないので、感じてい緊張に大人しく身を委ねるしかないが。
空が茜色に染まりつつある。オレンジ色に染まった街の景色は、先ほどまでとは異なる雰囲気を醸し出している。もう少し時間が経てば、この美しい町並みは宵闇に包まれ、また違った表情を見せるのだろう。雪明かりによって照らされるクレイモランを見てみたくなった。一口に雪といっても、時間帯や周囲のものによって沢山の顔があることに気が付いて自然と嬉しくなった。
その雪の上を、カミュとセーニャの後ろについて移動する。王宮は町の北側にあり、町の中心部にある広場を横切っていかなければならない。沢山の人が広場にはいて、思い思いの行動をとっている。路上ライブさながらに広場の端で歌う吟遊詩人に、噴水の縁に腰を掛けて話に花を咲かせる主婦。元気に追いかけっこをしている子供たち。広場から外れたところには、楽しそうに雪合戦をしている子供もいる。混ざって遊んでみたい、なんてことを思ってしまった。雪に馴染みがないので、表には出さないがずっと雪でテンションが上がっている。非雪国民の性のようなものだ。
広場と王宮の敷地の境目、アーチ状になっているところの両端に立っている見張り役の兵士にカミュが話しかけ、中に入る許可を得る。許可を得ているといっても形式上で、ほぼ顔パスも同然である。
城の中に入ると、暖房器具などあるはずもないのにとても暖かく、思わず息が漏れる。真冬に炬燵に入った瞬間の感覚だ。
「ここをまっすぐ行けば王座の間ですわ。リーズレット様は王座の間にいらっしゃるシャール王女のおそばに居られるはずですので、参りましょう」
△
城は思っていたよりも大きくなく、こじんまりとしていた。
本当に女王に会うのか、と未だ内心ビクビクしている。リーズレットだって、一応は魔女である。当たり前のことではあるが、この世界に来るまでは魔女など見たことがないので、現実として見るとどんな風に見えるのだろうか。
セーニャを先頭に歩き、王座の間に入る。少し高い段になっているため階段を上る。護衛の兵士数人と王女、それからリーズレットが視界に入った。
「失礼いたします。セーニャでございます」
「セーニャさん、お久しぶりです。カミュさんも」
「ああ、どうも」
「本日はどうなさいましたか?」
「ちょっと魔法のことでリーズレット様にお聞きしたいことがございまして……」
「そうだったんですね」
見知った顔ということで、王女らしくない、ただの友人とするように会話を始めるシャール。年齢は分からないが、恐らくそこまで年上ではないはずだ。城下町を彩る雪のような透き通った肌がまぶしく感じられる事からして、そうだろう。リアルで見ると一層美しく感じられる。
「どうしたんだい、セーニャ?」
名前を出されたリーズレットが反応する。よく見てみると、魔女とはいってもそれほど人間と見た目的には差がなく、少々威圧感というか、存在感が大きい、といった感じだ。衣装? がなかなかに扇情的な気がしなくもないが、そこは気にしないことにする。また、右手に持っている槍がとても鋭利で、武器に馴染みの薄い俺からするとそれが恐怖心を刺激する。
「氷の呪文系統についてお聞きしたいことがあります」
「私にわかる範囲であれば答えてあげるよ」
原作でもそうだったが、案外この魔女は面倒見がいい。実は中身はとても優しいんだろう。仮にリーズレットのような姉がいたとしたら頼り切りになってしまうのではないか、などと思うくらいには。
「私はお姉様から呪文を受け継いだことによって多くの攻撃魔法が使えるようになったと以前お話したのは覚えておいでですか?」
「ああ、覚えてるよ。アンタが王宮お抱えの魔法研究者になった初日に少し話したときに言っていたね」
「ありがとうございます。それで、元は使えなかった呪文が使えるようになっても、慣れていないせいか練度が低く、ヒャド系の呪文、特にマヒャドを使用した際にすべてが氷ではなくどうしても少し溶けた状態での攻撃になってしまうのです。ヒャドやヒャダルコではまだ問題ありませんが、規模の大きいマヒャドになるとどうしてもそのようになってしまって……。威力が落ちてしまうのがもったいなく感じてしまっていたのです」
セーニャが悩みを打ち明ける。ゲームの中では、呪文を受け継いだ瞬間からベロニカと比べても遜色ないほどの威力をたたき出していたが、やはり現実としてとらえるのならばそうもいかないのだろう。いきなり上手くできるなどということは、いくら姉妹だといってもないようだ。氷が溶けかけの状態だと威力が下がってしまうものということも知らなかった。確かに、よくよく考えてみたら氷系の呪文なのに溶けていたら威力も落ちる上に魔力が無駄になるのかもしれない。
「うーん、なるほどねぇ。氷の魔女である私なら氷の呪文についてわかると思ったんだね?」
「そうです。お姉様が得意としていた炎を操る呪文は、幼いころから一番近くで見てきたのですぐにコツを掴むことができたのですが……」
セーニャの言葉に、リーズレットは左手を顎に当てて考えるそぶりを見せる。好奇心旺盛だというシャールは興味深そうに2人の魔法談議に耳を傾けていた。カミュは話に特に興味がなかったのか、近くにいた護衛の兵士の方に行って雑談をしている。俺は特にやることもなかったので成り行きで2人の話を聞いているだけだが。
「マヒャドを唱える時、どういうイメージを持って唱えてるんだい?」
「イメージ、ですか……。とにかく"大きな氷の塊、とんでけー!"という風に考えながら唱えております」
その『痛いの痛いの、とんでけー!』なノリは一体……。セーニャが天然系なのは知っていたが、実際に目の当たりにすると大変かわいらしく思える。
「ふふっ。いかにもアンタらしいじゃないか。でも、それじゃだめだ。氷の呪文ていうのはね、ただ氷の大きさを考えるんじゃなく、氷の温度まで考えて唱えないといけないんだ」
「温度、ですか?」
「ああ。例えば、0度の水があるとするだろ? 水が0度の時は氷になり始める温度だ。だけど逆に、0度っていうのは氷が水になり始める温度でもある。その温度近辺では水と氷が混在しているんだ。つまり、氷を想像するとき、しっかりと"全体が氷である温度"イメージとして持たないと話にならないんだ」
氷点と融点の話だろうか。この世界にそんな言葉があるのかはわからないが、0度というように温度の概念があるなら"こういうものである"といった考え方としては存在しているのかもしれない。
「なるほど……! とってもわかりやすかったです!」
ぽん、と手を打って納得した様子のセーニャ。どことなく学習塾の生徒と講師のような関係性に思えなくもないやり取りだったな、とぼんやり考える。
「やり方や考え方さえわかってしまえば、あとはアンタがどうするかだよ」
「はい! ありがとうございます!」
疑問が解決してすっきりした様子を感じ取ったのか、カミュが兵士との話をやめてこちらに来る。
「終わったか?」
「はい! さすがはリーズレット様です。一瞬で疑問が解決いたしましたわ!」
上機嫌に話しているセーニャ。勇者の仲間として世界を救ったとはいえ、年齢でいえば高校生くらいだ。年相応に見えるその姿がとてもかわいいと思った。
「そうそう、ずっときになっていたんだけどさ……」
オホン、と空気を変えるように一つ咳払いをしてから、リーズレットが俺のほうを向く。この展開も何回か繰り返しているのでどういうことを聞かれるのか瞬時に理解した。
「カミュとセーニャと一緒に来たアンタ。名前はなんていうんだい?」
「俺の名前はレイです。2人とはちょっとした縁があって、今は行動を共にしています」
「へぇ? そうなのかい」
興味深そうに俺のつま先から頭の頂上までじっくりと眺める。俺がいったいどうしたというのだろうか。現在の恰好は相変わらずスーツなのでそれが物珍しいのかもしれないが、そうとは思えない気味の悪さを感じる。
「アンタ、他の人間から感じられるのとは違うものを感じるね。……本当に人間かい?」
「……は?」
突然言われたことに混乱してしまった。思わず素で返してしまったのは仕方のないことだろう。
「いや、言葉が悪かったね。謝罪するよ」
「いえ、大丈夫です」
素直に謝罪してくれた。別段気分を害したわけではないので謝罪はしなくても良かったのだが、話がこじれるので黙って受け取った。
「それならありがたい。それにしても……。不思議な感覚がするねぇアンタ。只者ではない気がするよ。私が思うに、間違いなくただの人間ではないね」
「あっはは……」
どういうことなのだろうか。よくわからない。俺には魔法は使える気がしないし、剣術などは平和な国である日本では極められるわけがない。剣道はあるが俺はやっていなかった。それに、真剣と竹刀は比べるものではない気がする。
「とりあえず、さっさと小屋に帰ろうぜ。日が暮れちまう」
「そ、そうですわね」
困っている様子を見かねてか、2人が助け船を出してくれた。ありがたい限りである。
そういうことなら、と未だに思案顔のリーズレットと不思議そうな顔のシャールに頭を下げて帰ろうとする。……が、しかし。
「……ちょっと待ちな」
リーズレットに呼び止められてしまった。なんだかとても嫌な予感がする。
振り返ってみると、もしかして? というような、何か問いたげな表情をしていた。感じた嫌な予感が胸の中で膨らんでいく気がした。
「まさかとは思うんだけど、アンタもしかして……この世界の人間ではなかったりするんじゃないかい?」
「…………は?」
嫌な予感というものは、往々にして的中してしまうものである。
ありがとうございました! 第一部完です!
呪文に関してはオリジナルの考えです。矛盾点はないとは思いますが、なにか気になることがございましたら遠慮なくお申し付けください。
☆9、☆10評価を頂いてひっくり返りました。ありがたい限りです……泣
これからもよろしくお願いいたします! 引き続き、感想。評価、お気に入り等お待ちしております!
では、また次回お会いいたしましょう!