失われし時を求めし者は....... 作:バーバラすこすこ侍
お疲れ様です、彼女持ちイケメン2人ととある世界遺産に3人で観光に行ったら、彼女へのお土産トークが始まりとても悲しい思いをした非リアのババすこ(略)でございます泣
3人ともオタクで、私が小説を書いていることは知っているので、「お前らの話を恋愛小説でネタにしてやるからな??」と言ったら「それが誰かに読まれるならむしろ本望だ」と……。はぁ……(溜め息)
はい、というわけで本編へどうぞ!
「あー、疲れた」
夕方になって交代の店員が来たので今日の仕事は終わりである。今日はお客さんがあまり来なかったので疲れるようなことはしていないが、何となくそう言っておけば働いた感じがしそうだと思った。
仕事が終わりといっても、この建物の2階に住んでいるので退勤というよりは休憩に近い感覚で帰宅した。
「あ、何か買ってこないと食べ物ないか」
この世界には冷蔵庫いった文明の利器はないが、呪文のおかげで食料品を冷蔵、冷凍保存しておける魔道具があるので問題ない。電気を使わず環境にやさしいので、CO2のようなものを排出することもない。
帰宅してその魔道具を確認したらあまり食料品の類が入っていなかったので、先ほど退勤したばかりの1階の店に行く。王宮お抱えの店というだけあって品ぞろえは一級品である。社割制度的なものがあるので買い物はもっぱらここでしている。基本的に前の世界とあまり変わらない食べ物が売っているので、意外と日本食が簡単に作れたりする。もちろんレトルトなどといった便利なものは技術力的に存在しない。
「お疲れ様ですー」
「あら、レイ君どうしたの?」
「食材の買い物です」
交代した人と軽く会話してから買い物に入る。人間関係はそこそこ上手くいっている気がする。勿論俺がこの世界の人間でないのは伝わっている。秘密にしていて何か不測の事態があった時に同僚に余計な不安と心配を与えることになってしまうためである。俺が話しても混乱を与えるだけだったので、そのあたりはリーズレットがうまくやってくれた。
「あ、レイ様。ここにいらっしゃったのですね」
ぼんやりと何を買うか考えながら品物を選んでいると、セーニャが入ってきた。出会った時はショートヘアーだったが最近は伸ばしているらしい。今はどちらかといえばミディアムに近くなっている。
買い物だろうか。たまにいろいろ買いに来るので特段久しぶりというわけではないが。
「どうしたの?」
口ぶりからして俺のことを探していたようであるが、何か用事だろうか。
「急ぎというわけではないのですが、レイ様に会っていただきたい方がおりまして」
「会ってほしい人?」
いったい誰だろうか。この世界で俺の知り合いなんて両手で数えるほどしかいないので、顔見知りという可能性は低い。会ってほしい人ということは、異世界生活中という俺の置かれている状況に関して理解してくれる人ということになるが。
「ええ。とりあえず買い物が終わったら少し付き合っていただいてもよろしいですか?」
「そのくらいなら問題ないよ」
時間的にもまだ晩御飯というほどではないし、その人物が個人的に気になっているから会ってみたい。
セーニャとかかわりの深い人物。もしかしたら旅のメンバーだろうか。そう考えたらより一層会いたくなってきた。
「もしよろしければ、用事が住んだ後、私が晩御飯をお作りいたしましょうか?」
「……い、いや、大丈夫。俺が自分で作るから」
……セーニャの手料理は遠慮したいので丁重にお断りした。
△
「それで、どこでその人と待ち合わせしてるの?」
あの後買い物を手早く終わらせて魔道具に入れて整理した。今はセーニャとともに街を歩いている。
「王座の間ですわ」
「待ち合わせにしてはなんとも分かりやすすぎる場所だな……」
渋谷ハチ公前もびっくりの待ち合わせスポットである。広場の噴水の前とかではだめなのだろうか。
「成り行きでそうなったのですわ」
「なるほどね。で、その待ち合わせの人ってセーニャの旅の仲間とか?」
シャールと普通に会えるくらいでセーニャの知り合いと言ったらこのくらいしか思いつかない。まぁ、この国の王女様は好奇心旺盛すぎて軽率に旅人と会おうとするので、謁見というよりはただの王女から旅人への質問タイムになってしまうのだが。噂ではお土産を持っていくと大変機嫌がよくなるんだとか。なんともちょろい女王様である。
「いえ、私の仲間ではございませんわ」
「あれ、そうなの?」
そうなると誰がいるのだろうか。俺が異世界人であることは簡単に他人にばらしてしまえることではないことはセーニャも分かっているはずなので、それを話しても問題ない人なはずだが……。
考え込んでいる様子を見てか、セーニャが続ける。
「心配する必要はありません。会っていただきたいという人は、私の故郷の長老様でございます」
「長老って、聖地ラムダの?」
「ええ。なにか用事があったのか、先ほど王国にお見えになったのです。たまたまリーズレット様の所に行っていたので少しお話ししました。それで、長老様であれば何かレイ様にとって良いことが聞けるのではないかと思ったので、長老様に会っていただきたい方がいるから、と言ってお待ちしていただいているのですわ」
「そういうことだったのね」
それなら納得だ。聖地ラムダの長老といえばかなりの人物である。そのような人と知り合いになることができれば、この世界での生活が楽になるかもしれない。
セーニャの言う通り俺にとって有益な何かが聞けるかもしれない。
「そういうことですので、お会いすることに関しては問題ありませんわ」
そうだね、と言って引き続き王宮に向けて歩く。初めて王宮に行った時は緊張していたが、今では日常生活の一部となっているので特に何も感じない。昼間働いている時にも思っていたが、いくら事情があるといっても王女にいろいろ教えたり、逆に教えてもらったりしているのはなんとも不思議な感じである。その等価交換によって文字を覚えつつあるので不満はない。むしろ感謝している。
「それにしても、まだまだ寒いですね」
「そうだね。いくら雪国って言ってももう少ししたら春なんだしそろそろ暖かくなり始めてもいいころなはずなのに」
雪国事情は分かりかねるが、いくら年中気温が低いといっても四季の変化によって多少の変動くらいはあるだろう。沖縄県だって冬には20℃くらいになってたりするくらいなのだから。
「時が経てば自然と気温も上がってくるはずですし、気長に待ちましょう」
「それもそうだよね。ちょっとロトゼタシアの機嫌が悪いだけだよね」
「ふふっ、なんですかそれ」
小さく笑ったセーニャがかわいらしくて少々ドキッとした。カミュもそうだが、見た目がいいのでいろいろな表情が様になる。仮に前の世界で女子高校生をやっていたら学校中の男の憧れの対象になっていただろう。セーラー服がとてもよく似合いそうだ。ドジっ子生徒会長ポジションにでもなったら間違いなく大人気だ。
「……それにしても平和だなぁ」
少々考えが逸れてしまったので、周囲の風景から拾った適当な話題に変換する。元気に駆け回りながら雪合戦をしている子供たちを見ていたら自然とそんな言葉が漏れていた。
「そうですわね。ウルノーガを打倒して取り戻した平和を大事にしていきたいです」
「勇者の仲間たちがいれば何かあっても大丈夫だと思うけどなぁ。ホントに何かあった時は頼りにしてるよ」
「はい、頑張りますね!」
胸の前で力強く両手で握りこぶしを作る。きっとセーニャ達なら本当に何かあっても世界を救ってくれるのだろう。すごく安心していられる。勿論世界に何も起きないことが一番いいのだが。
頭を使うことくらいしかできない、魔法も剣術も無理で非力な俺にとっては何もできる気がしないので、頼みっきりになってしまうことになるのがなんだか申し訳ないな、などとやはりどこか他人事っぽく考えてしまう自分がいた。
△
「お、来たね」
「昨日ぶりかな」
王座の間に入ると、最初の時に比べてだいぶ打ち解けたリーズレットに声をかけられたので軽く挨拶をした。2,3日に1回は会っているので今更無用な気遣いはいらない。
「こんにちは」
「こんにちは、王女」
「シャールでいいっていつも言ってるではないですか」
「一国の王女相手にそんな馴れ馴れしくできないって。タメ口にするのが限界」
タメ口も大概馴れ馴れしいいと思うんだけどね、と脇でリーズレットが呟いていたがスルーすることにした。
「長老様、お会いしていただきたいと言っていた方をお連れいたしましたわ」
軽く挨拶を済ませたところでセーニャが本題に入る。シャールとリーズレットがいる場所から少し離れたところに長老らしき人がいた。間違いなくあの人である。
「おお、セーニャや。感謝するよ」
「いえいえ」
長老がこちらに近づいてきた。ゲームで見るよりも小さくて不思議な雰囲気を醸し出している人物、というのが第一印象である。
「はじめまして。私は聖地ラムダの長老のファナードです。セーニャがお世話になっているようでありがとうございます」
「こちらこそはじめまして。俺はレイと申します。セーニャさんには命を助けていただいたりそれ以外でもいろいろ助かっていて、逆にお世話になっております」
ひとまず自己紹介。この世界においてはコミュニケーションが何よりも大切である。SNSのようなもののないので"リアルの人柄"が極めて重要だということをこの数週間で学んだ。
「して、セーニャ。何故レイさんを私に合わせようと?」
勿論気にならないわけがない。この人になら安心して話せることはセーニャから聞いた時点で分かっていたが、実際に会うとそれが間違いないことを確信した。
「端的に申し上げますと、レイ様の現状について聞いていただくためです」
「現状……?」
疑問符を頭上に浮かべながら俺の方を見たので、ここからは俺が話したほうがよさそうだ。
「はい。実は俺は、この世界の人間ではないんです」
「……と、いいますと?」
ファナードの表情が訝しげなものに変わった。続きを促している様子だったので黙って続ける。
「言葉の通り、ここではない別の世界です。言葉は通じても文字が違う。流通しているお金も、風景も違う。そんな世界です」
ファナードは驚いた様子で俺を見ている。さすがの長老と言えど仕方ない。最初は皆びっくりするはずだ。当たり前の反応である。
「なぜこっちの世界に来たのかは全く分かりません。仕事を終えて、この世界にはないとある乗り物で自宅に帰っている最中に寝てしまって、起きたらシケスビア雪原にいたものですから。魔物に襲われていたところをセーニャさんとカミュさんに助けていただきました」
「そのようなことが……。しかし、運がよかったのでしょう。命の大樹のお導きがあったのですね」
この世界は何かあるたびに『命の大樹』を引き合いに出しがちである。今でこそ慣れたが最初の頃は"またか"、と一人で思っていた。
「そうかもしれません。そのあとはクレイモランでリーズレットと王女の保護の下生活させていただいております。今は毎日楽しくやれてるので、人間その気になれば何でもできるみたいですね」
厳密には保護ではないが、そういったほうが分かりやすいだろう。最後の言葉は完全に本心から来ている。余計な心配を与えないようにと少々ネタっぽくまとめた。
「それなら良かったです。私としても安心いたしました」
聖地の長老というだけあってみていると心の落ちつく笑顔である。セーニャの笑顔にも同じような効果があるのは、きっと育ってきた環境がいい影響を及ぼしているのかもしれない。
「……ところで、少々気になった点があるのですが聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょう?」
話が一区切りついたところでファナードが話題を転換する。どうしたのだろうか。
「私には、夢見という不思議な力がございまして、少し先の未来を寝ている間に夢で見ることがあります」
「……夢見、ですか」
そういえばゲームでもそんなものもあったな、といった認識である。ここではあまり関係がないような気がするが、夢見がどうしたのだろうか。
「数日前、寝ている間にこの世のものではない存在とセーニャが一緒にいる場面を夢で見たのです。この世のものではないというのは、どうも夢での映像の中でその存在だけが上手く視認できなかったからそう思っていただけなのですが、もしかしたらこの夢はレイ様とお会いすることを示唆していたのかもしれないと思いまして」
「なるほど。うーん……不思議ですねぇ」
この世のものではない、という表現に少々傷つきかけたが、理由を聞いて納得した。姿かたちが分からないのならそう思いたくもなるだろう。
「他にはなにか特徴的なことはありませんでしたか?」
「些細なことでも構いませんので」
セーニャが質問する。夢の中にはセーニャも出てきていたのだ、他に何かないか気になるのは当然だろう。
「そうですね……。上手く言葉にはできないのですが、もう1つ、不思議なことがありました」
「どういったことでしょうか?」
やはりまだ何かあったらしい。この夢見の力で得られる情報は曖昧で断片的だった記憶だが、それを聞いておいて損はないと思った。
「どうも、セーニャとレイ様らしき影の周囲の景色だけ流れるのが遅かった、といった感じでして……。2人と周囲の景色との間に流れる時間にズレが生じていた、とでも表現できるかと」
「時間の……」
「ズレ……?」
イマイチ意味が分からない。人と景色の間で時間がずれるなどということがあり得るのだろうか。いや、そんな現象は聞いたことがない。
「私にもよくわかりません。これが何を示唆しているのかは皆目見当がつきません。ですが、何かの兆候かもしれないので、覚えておいてくださいませ」
そう言って、ファナードは言葉を結んだ。なんとも意味の分からない話である。
「え、ええ。分かりました」
なんにしても、役に立つかはわからなものの少し興味深い情報が得られたのでお礼を言う。深いことは後々考えばいい。
「何か夢見に関することで私たちにやっておくべきことはございますかね……」
「見た張本人の私としても詳しいことは分からないんだ。今はとにかく、何があってもいいように旅に出られる準備をすることと、カミュさんにもこのことを伝えていてもらえると嬉しいよ」
「分かりましたわ」
さすがにこういう時に頼りになる存在である。伊達に聖地の長老をやっていないというわけだ。
「それでは、私はここで失礼いたします。シャール様、リーズレットさん、ありがとうございました。レイさんとセーニャも、体調には気を付けて。何か聞きたいことがあればセーニャとともにキメラのつばさでラムダの里にまでお越しくださいませ」
「はい、ありがとうございます」
ファナードはその場にいた人々に挨拶をすると、王座の間から出て行った。おそらくそのままキメラのつばさでラムダまで帰るのだろう。
「とても不思議なお話でしたわね」
「うん、そうだね」
見送ったセーニャは顎に右手の人差し指をあてて考え込んでいる。分からないことを考えても答えが出ないのは分かり切っているので、俺はもう考えることはやめた。なにか手がかりを得られたときに考えればいい。
「私としても気になるので、こちらでもいろいろ調べてみようと思います」
「魔女として長く生きてるけど私にもまだまだ知らないことがあるらしいね。何かないか探してみるよ」
「ありがとうございます」
シャールとリーズレットも協力してくれるそうだ。こういうことの人出は多いに越したことはない。
「とりあえず、帰ろうか」
「ええ、そうですわね」
今はとにかく日常生活を大事にすることにした。
ありがとうございました! ようやく話が動き出す(かも?)という感じです。長い前置きでした。
夢見の話を書いていて夢見りあむの顔がずっと頭の中にいたのはここだけの秘密です笑
大変うれしい感想を頂きました。本当に励みになります! 未熟ですがこれからも頑張っていきたいです! 次回以降もよろしくお願いいたします!
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