失われし時を求めし者は.......   作:バーバラすこすこ侍

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 お疲れ様です。匿名投稿なのをいいことに前・後書きで好き勝手やっているババすこでございます! 匿名じゃないほかの小説では猫被ってるので、この姿が私の本当のキャラクターです()
 (多分)いつか匿名を解除するので、その時はほかの小説での優等生感を鼻で笑ってください笑

 では、本編をどうぞ!


第7話:サマディー王国にて

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファナードが来てから一週間が経った。結局めぼしい情報は得られることなく、そして何も起こることなく日常生活を送っていた。その時に聞いた話はカミュと、なぜかマヤにも共有されることになった。

 情報を知っている人が増えたところで特に変わることはなかったので、前述の通りになっているわけだが。まぁ、今はそんなことは考えずに楽しもう。というのも。

 

「久しぶりにこっちのほうに来るとやっぱりあっちぃな……暑いの苦手だ……」

「兄貴だっせぇな。何回も来てたんだろ? ちょっとはシャンとしろよ」

「うるせぇな。そういうお前だって今にも死にそうな顔して汗だくになってるじゃねぇか」

「オレはこっちに来るのは初めてだからいいんだよ」

「んな自分勝手な……」

「まぁまぁお2人とも、とりあえず水分を摂ってください。でないと倒れてしまいますわ」

 

 カミュとマヤ、セーニャ、そして俺の4人でサマディー王国のウマレースを観に来ていた。なんでも、『ろくに休暇も取らず働き詰めだから少しは休め』とのことで、半ば強制的に休暇を取らされた。かなりホワイトである。休めと言われても何もすることがないなと悩んでいた時に、カミュがウマレースを観に行かないと誘ってくれた。セーニャも来るのは分かっていたが、マヤも一緒に来ることになった。『兄貴はオレがいないとだめだから』とか言っていたが、間違いなくマヤの方が離れたくないのだろう。ツンデレな妹は早く兄離れすべきだと思う。

 

 先ほどキメラのつばさで王国にやってきて、今は城下町を歩いている。クレイモランの城下町は歩きなれたが、他の国に来るのは初めてなのでとても新鮮な気分である。欲を言えば船などを使って実際の旅っぽく旅行してみたかったが、そんな時間はないので致し方ない。泊りがけではあるので、ゆっくりと街並みを楽しむことにしよう。2人のように俺も暑さでなかなかにやられているが。

 

「確かに、めちゃくちゃ暑いよね……。前の世界では砂漠なんて行ったことなかったからなぁ」

「へぇ。それじゃどんなとこだったんだ?」

 

 マヤが興味深々と言った様子で聞いてくる。

 

「大きな建物がいっぱいあって、人も大勢いて、夜でも活気があって栄えてるとこかな」

 

 東京に住んでいたかのような説明だが、実際は浜松市の隣くらいの地域に住んでいただけである。浜松駅周辺ならそう言っても恐らく問題ないので嘘はついていない。脚色はしているが。

 

「結構都会だったんだな。地域はそうだけど、国としてはどんな感じだったんだ?」

「春夏秋冬の差がはっきりしてて、四方を海に囲まれた島国だったな」

「自然が豊かそうでいいな」

 

 実際豊かである。この世界も負けず劣らず雄大な自然に囲まれているのでなかなかに好きだ。特に雪の美しさにはすっかり魅せられてしまった。

 

「俺が暮らしてた時の話は王女とかリーズレットには話してるけど、3人にはあまり話せてなかったもんなぁ」

「そういえばそうですわね。こんどゆっくり聞かせてください」

「もちろん」

 

 なんだかんだ日本が大好きな俺なのでいくらでも語れそうな気がする。意外と旅行とかも行ったりしていたので、住んでいなかった地域でもそれなりに語れるだろう。写真も見せたかったが、この世界に飛ばされてきてからスマホは壊れてしまっていて電源が付かないのでそれはかなわない。エッケハルトに試しに魔力を注いでもらったが動かなかった。

 

「それよりさ、さっきからずっと気になってたんだけど、なんか周りの人、みんな歩くの少し遅くない?」

 

 なんとなくそう感じただけであるが、気になったので聞いてみた。遅いといっても、本当に少しだけである。

 

「そうでしょうか?」

「クレイモランの人って意外とせっかちなとこあるしそれに慣れちまったんじゃねぇのか?」

「うーん……。まぁ、そうかもしれないね」

 

 考えても仕方ないので諦めた。この世界のことはこの世界の住人の方が詳しいのできっとそうなのだろう。実際、たまに道具屋でも会計が混んでるときは列に並んでるお客さんが皆イライラしているのが分かる。

 

「っと、着いたみたいだぞ」

 

 そうこうしているうちにレース場の観客席入口に着いたようだ。受付の人に入場料を支払って、良い場所がないか4人で探しつつ歩く。いい具合に日陰になっている4連番席を確保することに成功して、ひとまず落ち着いた。

 

「当たり前だけど、ウマレースって観るの初めてだから緊張するなぁ」

 

 前の世界では、競馬なんて観たこともなければ興味の欠片さえなかったのだから当然だ。

 

「俺とセーニャは観たことあるよな」

「そんなこともありましたわねぇ」

 

 2人が懐かしそうに呟く。

 

「勇者と旅してた時に来たのか?」

「ああ。この国の王子が誕生日を迎えたお祝いのレースって時に、王子が馬に乗れないからって背格好の似たエルバを代役にしてレースに出場させたんだよ」

「え、まじかよ!」

 

 マヤは驚いているが、俺からしたらそんなイベントもあったなという感じである。『ドラゴンクエストⅧ』のチャゴスほどではないが、ヘタレっぷりが板についたいいキャラだった。最後はしっかりしてくれたので個人的にはポイントが高い。チャゴスは生きている価値なし。

 

「あまり大きい声では言えない話ですがね」

「そんなことがあったんだ」

 

 仮にも将来国を背負って立つ存在の人間がそんな卑怯ともいえる真似をし、それに巻き込まれたのだから印象には残るだろう。決して口外してはいけない話なのは間違いない。

 

 『うおおおお!』

 

「お、始まるな!」

 

 話に花を咲かせていると、会場の熱気が一気に高まった。レースが始まるようだ。人生初ウマレース、しっかりと楽しんでいきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 △

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウマレースってすごいんだねぇ」

 

 いくつもレースを観て、とりあえず最初に思ったのはそれである。会場に入る前に感じた違和感はどこへやら。完全に楽しんでいた。

 前の世界での競馬のようにどの馬が優勝するかで賭けのようなことも行われている。さすがは人間。どこの世界、たとえ創作の中の世界であっても考えることは同じらしい。

 

「世界が平和になって以降、ウマレースの観客動員数が飛躍的に増加したそうですからね」

「これも俺たちがウルノーガを倒したからだって思うと心の底から嬉しくなってくるぜ」

 

 自分たちが勝ち取った平和を多くの人が享受しているのを知るのはやはり嬉しいのだろう。世界的に称えられてもおかしくないほどの事を成したのにそれを大っぴらにして威張ることなく生活しているのだから、平和な世界を実際に見て静かに喜ぶくらいはバチが当たることはない。むしろ本来であれば称えられるべきなのである。本人たちがそれを望んでいるかは別として。

 

「次で最後のレースとなります!」

 

 総合司会のようなポジションにいる男性の一声によって会場からは『えー!!』『さっき始まったばかりだろー!!』『まだ来たばかりだぞ!!』など多くの残念そうな声が聞こえてきた。もちろん時間は十分に経過しているわけで、さっき来たばかりだ、というのは楽しすぎて時間が過ぎるのが早いという意味なのは容易に理解できる。ちなみにマヤもそれらの歓声に混じって声を上げていた。なんだかんだ一番楽しんでいたようだ。ノリノリである。

 

「残念なのはわかりますが仕方のないことです。ですが、それにふさわしい選手を厳選しております! そして! ラストレースを彩るスペシャルなゲストをお呼びしております!!」

 

 途端に湧く会場。あちらこちらでお祭り騒ぎである。思わず一歩引いて見てしまうレベルには。

 

「それでは、ご登場いただきましょう! この方です!」

 

 司会の紹介でスペシャルゲストが出てくる。……かに思われたが、一向に姿を現さない。先ほどまでの盛り上がりが嘘のように、今度は会場の人がざわざわしだした。

 

「どうしたんでしょうか……」

「もしかして、ゲストが逃げ出したんじゃねーの?」

 

 マヤがそんなことを言い出す。そんなことがあっては暴動になりかねないだろう。

 

「いったいどうしちまったんだろうな。……って、おい! あそこ見ろあそこ!!」

 

 突然カミュが大声をあげてどこかに指をさす。その先はレース場のオブジェの上。よく見ると、そこには人影があった。カミュが大きな声を出したことによってそれが徐々に伝播していき、皆がその一点に集中する。

 

「あそこにいらっしゃるのって……」

「ああいう登場の仕方はまちがいない。あいつだ」

 

 カミュとセーニャがこころなしか嬉しそうにしている。俺にもこの登場の仕方は心当たりがあるようなないような……。

 

 会場がどよめきに包まれているのを察したのか、オブジェの上にいた人影が華麗に飛び降りた。かなり高いところから着地したにもかかわらず、階段を2段ほど飛び降りましたと言わんばかりの綺麗な着地。素晴らしい身のこなしだった。ここまで見て、俺もようやくその正体に気が付く。その様子に会場は大盛り上がり。

 

「あの人って……」

 

 いまだに嬉しそうに人影を見ている2人。マヤは何が何だかわからない様子。それも仕方ない。

 

「あいつは、俺たちの旅の仲間だった、旅芸人のシルビアだ」

「観客を盛り上げることに関して右に出る者がいないレベルの素晴らしい旅芸人ですわ」

「シルビア……か」

 

 予想通りだった。ゲームで見ていた時は単純に高いところから飛び降りてきがちなキャラだと思っていたが、実際目の当たりにすると人間離れしていて驚くことしかできない。これが本物なのか、と思わずにはいられなかった。

 人影の正体がシルビアだと気が付き始める人が増え、今日一番の大盛り上がりを見せるウマレース会場。完全にシルビアの独壇場である。

 

「みんな~! 楽しむ準備はできてる~?」

『うおおおおおお!!!』

 

 まるでアイドルのライブのようである。今にも『後ろのほうまでちゃんと見えてるからね~!』とか言いそうな雰囲気だ。

 

「後ろのほうまでちゃんと見えてるからね~!」

「ほんとに言ったよ……」

 

 思わずびっくりしてしまった。こればかりは仕方ないだろう。

 

「ゴ、ゴホン。それではシルビア様。定位置にお着きくださいませ」

「了解よ~。司会者ちゃん、あとはよろしくね!」

 

 司会者自身も動揺しているのか些か声が震えている。事前に打ち合わせもなくこんなことをするなんて、とても自由である。

 

 心底楽しい、といった様子で愛馬に跨り、定位置に着くシルビア。ラストレースも5人で走ることになるが、シルビア以外の4人からしてみれば自分が注目されることはないのだからたまったものではないだろう。

 司会者がレースを始める合図をすると、会場は嘘のように静まり返り、始まる瞬間を今か今かと待ちわびている。

 スタート位置の左側に、雷管を持った人が立つ。引き金が引かれればその瞬間、参加者たちは走り出すのだろう。シルビア以外の選手は皆、近隣では強いとされている魔物が数多く生息しているバクラバ砂漠の調査という重大な任務を任されている手練ればかりである。いくらシルビアと言えど油断はできないだろう。

 

 会場中の人間の心音が聞こえてきそうなこの空間、そこに雷管が発する、パンッという子気味いい音が鳴り響き、一斉にウマがスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 △

 

 

 

 

 

 

 

「やーすごかったな! ウマレース!」

 

 やや興奮気味にマヤが言う。ずっとバイキングの元で暮らし、黄金化など様々なことがあってウマレースなど観たことがないマヤにとって、この上なくエキサイティングなものになったのは間違いない。

 

「うん、すごかったね! またいつか来てみたいな」

 

 俺も思ったことを素直に言った。自分を忘れて心の底から楽しめるのはとてもいいことである。次からは俺だけでもここにキメラのつばさで飛んでこられるので、気軽に来られる。機会を見て、カミュやセーニャに頼んで世界中の国や地域に連れて行ってもらえれば、そのあとは簡単に1人旅ができそうだ。都市をただ飛び回るだけなのを旅と呼べるのかはわからないが。非力な俺にとって外の世界を旅するのは一人では絶対に無理だ。

 

「なぁ、せっかくだしシルビアに会いに行ってみねぇか?」

「あ、いいですわねそれ!」

「会いに行けるの?」

「知り合いだっていえば多分大丈夫だろ」

「んじゃ会いに行ってみたい」

「了解。行くか」

 

 カミュとセーニャ以外の勇者の仲間と初めて会えることになった。これは大変嬉しいことである。

 いまだ興奮冷めやらぬ状態のマヤと話したり、4人で仲良くシルビアがいるであろう場所を目指した。ウマレースが終わって間もないので、まだパドックにいるはずである。そこに向かって歩を進めた。

 

「着いたな」

「だね」

 

 しばらく歩いてパドックに着いた。シルビアのウマは遠目から見ても分かりやすいくらいには派手な装飾がなされていたのですぐに見つけることができた。

 

「シルビア様、いらっしゃいませんね」

「だな。あの人どこ行っちまったんだ?」

 

 セーニャとマヤが不思議そうに呟く。カミュも、シルビアのオッサンならウマの手入れしてるかと思ったんだけどな、と同意している。

 

「しょうがねぇ、とりあえずいったん外に出――――」

「カミュちゃ~ん!!!!」

「うおぁ!? あっぶね!!」

 

 一度仕切り直すために外に出ようとカミュが振り返ったその時、いきなり走ってカミュに飛びつこうとしたのはシルビアだった。さすがの身のこなしで間一髪回避した。勢いあまって転ぶかと思われたシルビアの方もしっかりと受け身をとっていつの間にかキメポーズをしている。

 

「どうして避けるのよ~」

「どうしてもこうしてもあるかっ! オッサンにくっつかれても嬉しくねぇよ!!」

「カミュちゃんのいけず~」

 

 実際に目の前で見ると、恐ろしく顔の整ったキャラの強いオカマである。いきなりテンションが高すぎる。

 

「お久しぶりです、シルビア様」

「セーニャちゃん、久しぶり~! 元気してた?」

「ええ!」

「ウマレースの時、下からみんなのこと見えてたわよ~?」

「え、見えてたのか?」

「もちろんよ、マヤちゃん! マヤちゃんも久しぶりね!」

「ああ!」

 

 旧友と会ったためかとても楽しそうに会話を弾ませる3人。一瞬だけ疎外感を感じる場面であるが、こういう時は必ず、知り合いに挨拶を済ませた後に俺に話を振ってくる。

 

「……ところで、3人と一緒にいたアナタ。どなたかしら?」

 

 予想通りである。しばらくこの世界で暮らしているとこのくらいわかってしまう。これから他の旅の仲間と会うことになれば絶対にこうなるはずだ。勿論旅の仲間とその身内であれば俺の素性を話しても問題はないと判断している。

 

「俺の名前はレイといいます。ちょっと縁があって3人と行動を共にしてます」

「ちょっとした縁、ね。なにか訳ありかしら?」

「察しが良くて助かります」

 

 パドックでは大きな声で話せる内容ではないので、一度外に出て人気のないところに移動し、詳細に俺について話した。

 

「……なるほどね。だいたいの事情はわかったわ。とても大変な思いをしたのね」

「いえ、最初こそ大変でしたが、今ではこうやって普通に暮らせてますしなんてことないですよ」

「レイちゃんがそういうなら大丈夫なのね。何かあったらこのシルビアお姉さんがなんでもて手伝ってあげるわ!」

「ありがとうございます!」

 

 シルビアはキャラこそ濃いが、中身はとても他人思いでいい人だ。何かあったら確実に相談に乗ってくれるだろう。

 

「シルビア様は、これからなにか用事などはありますか?」

「特にないわね。一晩泊まったらソルティコの街に帰るわ。今日の夜は久しぶりにサーカスに顔を出そうと思って」

 

 ウマレースに出たばかりだというのに、次はサーカスだ。表には出さずとも疲れているはずなのに、それを見せずだ。すべてはお客様の笑顔のため行動しているのだろうか。尊敬である。

 

「まだサーカスまで時間はあるし、せっかくだから少しお話ししてましょ?」

「ええ、そうですわね」

「俺たちも大丈夫だぜ」

 

 カミュとセーニャが答える。俺もマヤも特に異論はなかったので頷いた。

 

「それじゃ、喫茶店にでも行きましょう!」

 

 ビシッっと音がしそうな勢いで指をさしシルビアが歩き始める。久しぶりの再会なので積もる話もあるのだろう。ゲームにはなかったが、この世界にも喫茶店はある。マヤもいるので酒場より喫茶店のほうが癒合がいい。

 

 

 

 

 この時、最初に感じた違和感のことなど、とうに忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ありがとうございました! 「後ろの方まで見えてるからね〜!」(天海春香風に)(アイマス無印ネタ)
 登場人物が増えてくると一人称ミスやら口調のおかしな点はないかなどいろいろ苦労しますね汗

 徐々に読者様の数が増えてきて、より一層頑張らないとな、となっております。 書き溜めが若干減っているので少々投稿頻度が堕ちる可能性もありますが……。リアルがちょっと楽しく忙しい時期なので……。
 
 次回以降もよろしくお願いいたします!

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