オーバーロード二次短編集   作:taisa01

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ぶくぶく茶釜さんちの家庭事情(アウラ・マーレ・ペロロンチーノ・ぶくぶく茶釜)

「じゃ戸締りお願いね」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」

 

 ぶくぶく茶釜は、一度振り返ると手を振ってから仕事に出かけていく。

 

 そこには今年中学生になった双子の姉弟、マーレとアウラが手を振っていた。

 

 義理の娘息子とはいえ、良い子に育ったと思いながら今日もぶくぶく茶釜は仕事に向かう。

 

 彼女は人気声優だ。日中はアニメなどの収録。空いている日はトレーニング。それでいて家事をこなし、夜も収録が入る日もある。普通に考えれば忙しいを通り越しているところだが、その辺は子供達やぶくぶく茶釜の弟にあたる大学生のペロロンチーノがなんだかんだとサポートしていた。

 

 見送った双子はリビングに戻ると、アウラはゲーム機を、マーレは読みかけの本を片手にソファーに座る。

 

「マーレ? どうしたの」

「ううん。なんでもない」

 

 ゲームが一区切りついた頃、アウラは静かに本を読む弟の姿になんとなく疑問を感じて声をかける。マーレは一言答えると読みかけの本に目を落としてしまう。

 

 特に何かがわかっていたわけではない。明確な理由もない。ただ何となくいつもと違う。

 

「こ~ら」

「やめてよ。お姉ちゃん」

 

 アウラはじゃれつく子犬のように、マーレに抱き着く。二人は双子。男女の違いはあるが本当によく似ている。十三才ということもあって、女であるアウラのほうが少し背は高いが、あと一年もすればマーレが追い抜いてしまうだろう。

 

 そんなアウラが両手でマーレの頬をつかむとグイっと強引に自分の方を向かせる。 

 

「顔にはなんでもなくないって書いてあるよ」

 

 その一言に、マーレは視線を外してそっぽを向こうとする。

 

 だけど今はアウラのほうが力が強い。顔を強引に固定されてしまい、諦めてアウラを顔をみる。

 

 はたから見れば鏡写しのように二人はよく似ている。そんな感想がでそうだが、マーレは若干不満の表情を浮かべている。

 

「ペロロンチーノおじさんが、家をでちゃうんだって」

「あ~シャルティア先輩と一緒に暮らすっていってたね」

 

 二人は学園ナザリックの中等部に通っている。サークルはいわゆるエンジョイ系で珍しく中高大分け隔てなく参加できるアインズ・ウール・ゴウンという娯楽系サークルである。この二人がそんなサークルに入った理由は単純で、義理の母親であるぶくぶく茶釜が学生時代に在籍していたから。おまけで叔父にあたるペロロンチーノも在籍していたりもしたので、二人としては気後れすることなく活動できていた。

 

 そして話に上がったペロロンチーノの恋人であるシャルティアとも同じサークルの先輩後輩ということで面識があった。

 

「うん」

「ペロロンチーノ叔父さんとシャルティア先輩が付き合うの反対?」

「ううん。そんなことない。たぶんシャルティア先輩は叔父さんじゃないと、一生結婚できないとおもう」

「あ~。あの趣味はね~」

 

 そういいながらアウラはシャルティアのことを思い返す。

 

 ホラー好きを拗らせた「死体愛好家」にして「流血趣味」。「サド」にして「マゾ」。しかも廓言葉も微妙に間違っており、すでに別言語となりかけている。けして頭が悪いわけではない。正確には成績はいいらしいが、目先の楽しさを優先するあまり、ちょいちょいおかしな判断をしてよく周りを巻き込んで騒動をおこしている。そんな人格破綻一歩手前のような存在だが、見た目だけは可愛いのだ。

 

 どっかのアニメやゲームに出てくれば、そんなキャラクターも成り立っただろうけど、普通に生活するには相当難しい。実際に学校でもアインズ・ウール・ゴウンというある意味で変人があつまるエンジョイ系サークル以外にあまり居場所はないように見えていた。

 

「うん。だめだね」

「うん」

 

 アウラはあっさりシャルティアの将来に見切りをつける。そしてマーレもうなずく。いろいろ世話になっている叔父の恋人に対して失礼とか以前に、事実なのでそのへんは割り切ることに双子の中では決まったようだ。

 

「じゃあなんで不機嫌? うりうり」

「やめてよお姉ちゃん」

 

 しかし、ペロロンチーノとシャルティアのことが、おかしな雰囲気の原因ではないとわかると追撃とばかりにアウラはマーレの柔らかいほっぺをこねくり回す。

 

 しばらくは何も言わずに無視しようとするが、いつまでたってもやめない姉の行動に諦めたのか、本を置き両手でアウラの手をつかむとまっすぐ見返す。

 

「この家から」

「うん」

「男がいなくなっちゃう」

 

 たしかに現在この家は義理の母親であるぶくぶく茶釜にその弟のペロロンチーノ。そして双子しかいない。ぶくぶく茶釜の両親、双子にとって祖父母は転勤で離れて暮らしている。そのため、ペロロンチーノが就職を機に恋人と同棲をはじめると、この家にはマーレしか男がいないことになる。

 

「そうだね。でもこのあたりは別に治安が悪いってことないし、ぺロロンチーノ叔父さんも、なんだかんだで隣駅の商店街裏のアパートっていってたから、電話一本ですぐに来れる場所だし。問題ないんじゃないかな?」

 

 アウラは別に男はマーレ一人でも問題ないと考えていた。普通に暮らすにあたって男手が必要と感じることもなかったし、なにかこまったことがあっても、いままでのようにスグではないにしろ、近くに叔父も住んでいるのだ。恋人との時間を邪魔するという点だけは気になるが、シャルティア先輩だしとなぜか納得できてしまった。

 

「べつに私はこれでも強いし?」

「あっ。お姉ちゃんのこと心配してないから」

「なによ!」

 

 無常な反応を示したマーレにアウラはとびかかる。実際アウラは活発でアインズ・ウール・ゴウン以外の運動部も掛け持ちしている。逆にマーレは読書が好きなため、図書館とアインズ・ウール・ゴウンのサークル部屋を往復するような状態。アウラに掴みかかられてマーレは抵抗らしい抵抗ができないぐらい、身体能力は差がひらいていた。

 

 ひとしきりアウラは暴れると、マーレをはなしてもとの位置にもどる。マーレもあきらめたようにアウラの方に顔を向けてソファーに座りなおす。

 

「茶釜母さんのこと?」

「うん」

 

 アウラはどうやらマーレのどこかおかしい原因を言い当てたようだ。

 

「まあ、人気声優だし」

「うん」

「愛嬌あって、美人だし」

「うん」

「優しいし、家事も一通りできるし」

「うん」

「叔父さんには、口よりも足が先にでるけど」

「あれは叔父さんが地雷を踏むから」

 

 アウラは義理の母親であるぶくぶく茶釜のことを上げ、そしてマーレも同意する。二人にとって茶釜は普段の行動、外見や名声も含めて自慢のそして理想的な母親だった。

 

「もしかして、死んだ父さんの代わりを連れてくるっておもってる」

 

 なにより現在二十一才の時、双子の父親と卒業前に結婚。その時、祖父母の反対を押し切って結婚したため、一時期は絶縁状態だったらしい。

 

 しかし双子の父親は結婚して一年もたたずに事故で他界。

 

 その時、双子の親権についていろいろと揉めたのは子供ながらも理解していた。そんな時、「二人は私の子供だ」と周りを説得したのはぶくぶく茶釜であり、それを助けたのはペロロンチーノである。それからだろうか? ほとんど記憶にもない生みの母親よりもぶくぶく茶釜のことを双子は本当の親と思うようになっていた。

 

 アウラも思春期を迎えるようになってわかっている。アウラとしては、ぶくぶく茶釜が別の男性を父親として連れてきても、すぐには無理でも祝福しようとさえ思っていた。なによりぶくぶく茶釜は二十四才。普通にかんがえれば、これから結婚して生活がはじまっても可笑しくない年齢ない。そもそも中学生の双子が子供としていることがおかしいとさえ考えていた。

 

「そんなことない! 茶釜母さんはそんなことしない」

「うん。しないね」

 

 マーレは否定する。

 

 そしてアウラも肯定する。

 

 双子の目からみても、ぶくぶく茶釜は死んだ父親のことを今でも愛している。そして自分たちのことも本当の子供として愛してくれている。そう確信できるぐらい、茶釜は二人に対して惜しみない愛情を注いていたのだ。

 

「じゃあ、なにが不満なの? 叔父さんがいなくなって男がいなくなるっていうけど、茶釜母さんが別に父さん以外の人と付き合うとかも考えてないんでしょ?」

 

 だからこそマーレの言葉に若干の矛盾があるようにアウラは感じていた。

 

「それは」

「うん」

「僕が」

「マーレが?」

 

 アウラはゆっくり相槌をうつ。

 

「我慢できなくなるから」

 

 マーレはそういうと顔を赤くしながらうつむいてしまう。

 

「もしかしてあんた」

「うん」

 

 なにより最後に続いた言葉はアウラにとって意外な言葉であった。

 

「そっか」

 

 しばらくの沈黙のあと、アウラはなんとか答えることができた。

 

 そう。

 

 自分の双子の弟は、義理の母を女性として(・・・・・)好きになってしまった。

 

 そう言っているのだ。

 

「でも日本の法律的にどうなの?」

「ダメ」

「もしかして調べた?」

「うん」

 

 アウラは混乱しながらも、なんとか言葉を続ける。しかし寄りにもよって法律はないだろうと思い返すが、マーレはさらりと答えてしまう。

 

 実際、マーレは自分の気持ちを理解した時、最初は勘違いと思い込もうとしていた。しかし自分は母親として茶釜のことを見ていないと気が付いてしまった時、必死に否定するための理由を探した。

 

「例えば、父さんと茶釜母さんが離婚しても?」

「うん。だめだった。民法で決まってたし、判例もあった」

「このこは……」

 

 その過程で民法や関連事例の裁判所の判例までマーレは確認してしまった。その結果、自分の考えは世間的に異常であると断じたのだ。その意味で他の男性であるペロロンチーノの存在はありがたかったのだ。

 

「本気なんだ」

「うん。茶釜母さんが好き」

「私は?」

「お姉ちゃんも好き」

「家族として?」

「うん」

 

 アウラはすこしづつマーレの言葉を引き出す。

 

「生みの母さんは?」

「感謝はしているけど他人」

「父さんは?」

「今は嫌い。違うかな。もうどうでもいい」

「なんで?」

「茶釜母さんを一人にしたから」

 

 生みの母親と死んだ父親のことをアウラが聞くと、マーレは表情を消して言い放つ。その言葉にはすでに怒りとか嫌いとかの感情よりも、関心さえなくなったものへの雰囲気が乗っていた。

 

 もっともその一点に関しては、アウラも同じであるのだが、ここでは言わない。

 

 この双子は本当の意味でよく似ているのだ。

 

「茶釜さんは?」

「たぶん女性として」

「そっか~」

 

 アウラもその言葉を聞いて悩んでしまう。すくなくとも、アウラも女の子。シャルティアという男女バッチコイという、特殊事例ではないので、ぶくぶく茶釜のことを家族として愛していた。

 

「どうしよっか」

 

 しかしマーレの気持ちもアウラにはわかるのだ。だからこそ悩む。

 

「いっそのことペロロンチーノ叔父さんの家に……」

「いやいや、さすがにシャルティア先輩にも叔父さんにっもわるいっしょ」

「う~」

 

 マーレは思いついたとばかりに、恋人と同棲をはじめるペロロンチーノの家に転がり込むことを提案する。たしかに学校に通うのは一駅遠くなるが、中学生だ問題はないだろう。しかし、さしものアウラも、シャルティアとペロロンチーノの心情を思うと否定せざるえなかった。

 

「あ~」

 

 そんな時、間の抜けた声が扉の方から聞こえてきた。

 

「ぺ……ペロロンチーノ叔父さん」

「叔父さん」

「そうだね叔父さんだね」

 

 そこには、やっと気付いてくれたとばかりにリビングには入ってきたぺロロンチーノがいた。その手にはオレンジジュースのパックと、コップを三つ器用にもっている。

 

「いつ帰ってきたんですか?」

「ちょっと前かな?」

 

 ぺロロンチーノは双子の前に座るとコップを置き、ジュースを注ぐ。特に動作はしないが、とりあえず飲めという雰囲気を察したのだろう。双子はそれぞれコップに口をつけるのだった。

 

 アウラとマーレはさっきの話をどこまで聞かれたか気が気でないため、ペロロンチーノの顔をうかがっているが、特段怒ったり、あきれたりするような表情をしていなかったので、普通に聞くことにした。

 

「声かけてくれれば」

「普通に声かけて家に入ってきたし、キッチンから話声も聞こえてたから飲み物ぐらい用意しようともってね。ちゃんと扉の前でなんども声はかけたよ? まあ込み入った話してたみたいで、聞こえてなかったみたいだけど」

 

 さすがにペロロンチーノはここまで話すと若干だが困った表情をする。

 

 だがそのあとのマーレの行動は、いつになく機敏なものだった。

 

「死にます」

「まてええええええ」

 

 素早く立ち上がり部屋から出ようとするマーレを、アウラが飛び掛かり抑えつけ近くに置いてあったタオルをマーレが倒れたスキに口に突っ込み舌を咬ませないようにする。

 

 あまりの行動の速さにペロロンチーノはあきれるが、別に普段からこんな状況ではない。

 

ーーギャグ時空だから

 

 ただそれだけである。

 

 

   ******

 

 さてと、といってペロロンチーノは座りなおす。さっきまでのドタバタは気にしないことにして、ジュースを一口のんで落ち着かせる。

 

「とりあえず、姉さんのこと好きはいいとして男女としてか~」

「はい」

 

 ペロロンチーノは確認のばかりにマーレに質問をする。事ここに至って腹をくくったのだろうか、マーレはしっかりとうなずく。

 

 もっともこのタイミングのペロロンチーノは、マーレの真剣な顔を見ているわけでなく、アウラと見比べてほんと男の娘だよな~と思っているのだから、この男の思考回路も相当おかしい。

 

「今すぐ手を出したい?」

「そんなこと!」

「しない?」

「……はい」

 

 マーレもぶくぶく茶釜のことを女性として好きではあるが、しっかりとした倫理観も備えている。いろんなものを無視して手を出したいとまではおもっていない。あくまで本人が怖がっているのは、ふとした拍子にタガが外れた時の、いわば緊急事態のことなのだ。すくなくともそのぐらいの分別はつくとマーレは思っていた。

 

「じゃあ、それでいいんじゃないか?」

「え?」

 

 しかし、そんなマーレの思いを汲んでかどうか不明だが、ペロロンチーノは肯定するのだった。

 

 その、あんまりな言葉にマーレは珍しい口調で聞き返してしまうほどに驚いていた。

 

「叔父さんがエロゲ脳に……」

「中学生がそんなこといっちゃいけません!」

 

 アウラは、叔父がエロゲにそこまで思考を汚染されていたのかと、いろいろ無視して突っ込んでしまう。ペロロンチーノは年上らしく十八禁を理由にアウラをとがめるが、今時の中学生はエロ本やエロゲぐらい知っている。まあ、知っていてもやったことがあるかどうかは別であり、双子も用事があって入ったペロロンチーノの部屋でエロ本を見たことこそあるが、エロゲはさすがに未経験だ。 

 

「まあまあ、冗談はおいておくとして。なんでいいの?」

「正直いえば、母親が初恋ってのは結構ある話なんだわ。まあ、たいてい意識してもそれは親愛の情で上書きされ、外の出会いを経て……ってね」

「?」

 

 ペロロンチーノはつらつらという。さすがにマーレも言われていることをすぐには理解できなかった。

 

「べつにマーレが姉さんに好意を持つのは至って普通のことってことだ」

「でも」

 

 とりあえず一般論をペロロンチーノが言っていることはマーレも理解できた。しかし、自分とぶくぶく茶釜の関係は違う。その認識が、ペロロンチーノの意見を受け入れられないものとしていた。

 

「確かに姉さんとマーレは血がつながってない。死んだ義兄さんが姉さんと再婚するまで、母親役がいなかったってのも聞いてる」

 

 ペロロンチーノは双子の事情を一通り理解している。双子は生みの母親のことを知らない。そして母親役は再婚したぶくぶく茶釜がなるまで母親のぬくもりや愛情というものを知らなかったのだ。

 

「もちろん初めてできた身近な異性が姉さんだったからなんて言わないよ」

「まさか……手を出しても結婚できないだけだからセーフとか……」

 

 ペロロンチーノは持論を展開する。

 

 しかしその物言いはアウラからすれば、どこか物語世界の解釈のようにも聞こえ、突っ込む気分というか本当に考えているのか? という疑問しかわいてこない。まったくもってペロロンチーノの普段の行いの結果である。

 

「これが物語の中やエロゲの話だったら、そんな回答もありだけど。マーレは姉さんのこと本気に好きなんだろ?」

「うん」

「じゃあ、好きでいいじゃないか」

「叔父さん!」

 

 結局、ペロロンチーノの意見は理論的な回答ではなかった。早くこいつを何とかしないとと思いながらアウラは声を荒げる。しかし、ペロロンチーノはすました顔で、言葉を続けるのだった。

 

「マーレは、無理やり姉さんをっておもってないんだろ?」

「うん」

「まあ、マーレが優しい子ってのはわかってたし、だから悩んでるのもわかる。マーレは人の気持ちがわかる優しい子だ。だから姉さんの意思を無視しない。まあ、マーレも中学生の男の子だ。暴走しそうな時は家にくればいい」

「茶釜母さんのこと、好きでもいいの?」

「ああ。もちろん成長して、別の好きな人ができるかもしれない。どうしても、変わらないならその時考えよう」

「それって先送りじゃ?」

 

 先送り。

 

 アウラの感じる通りペロロンチーノの意見は先送りである。しかし実際問題として感情は永遠ではない。期間を置けば変化する可能性も大いにあるのだ。マーレが今生きる世界は惨く小さい。それは大人になるにつれ広がっていくものだ。そして広がる世界によって考えもかわるかもしれないと言っているのだから、頭から否定できることではなかった。

 

「ぶっちゃけ、日本を出たとしても真っ当に結婚できる国はなかったと思う。あるかもしれないけど、ぱっと検索したぐらいじゃでてこない。各国の法律や宗教・慣習を調べるぐらいの手間のかかることだ」

 

 そのべロロンチーノの言葉にマーレはうなずく。それは自分が調べた結論といっしょだから納得できる。

 

「日本でも相続などに問題はあれど結婚せず内縁の~ってのはあるんだ。いま無理にマーレを抑え付けても、それはマーレにとって不幸なことかもしれない。どっちにしろ姉さんに振り返ってもらえるぐらい、いい男になるしかマーレには道がない。もちろんそれは内面だけの話じゃない。養えるぐらい収入も必要だろう。最終的に人間関係をリセットできるぐらいの力が必要かもしれない。その力は財力かもしれないし、社会的地位かもしれない。もちろん、世界が広がって姉さんのことを母親としての好きとなり、別の女性を好きにかもしれない」

 

 ペロロンチーノの提案は、時間稼ぎでしかない。しかしあながち間違った意見でもない。ペロロンチーノは、自分の姉がどれほどモテるか知っている。家族としての視点が薄いマーレには、さぞ魅力的な存在に見えるだろう。でも同時に、日本人としての倫理教育というものをペロロンチーノは軽視していない。マーレが大人になるにつれ、世界は広がっていく。その過程で悩むこともあるだろうし、苦しむこともあるだろう。

 

 その経験をしてでも、姉を好きだというなら、義理の甥を応援してやろうとエロゲ脳が囁くのだ。

 

「わかるかマーレ」

「うん」

「でも、成長したもんだよな。姉さんの関心を引きたくって、アウラとマーレが二人で服を交換してた頃とは大違いだ」

 

 中学生になった今ではしていないが、双子は姉の関心をふくために服を交換していた。オタ業界にどっぷりのぶくぶく茶釜もペロロンチーノもその心理を理解して対処しる。つまり双子は「誰が気が付いてくれるのか、子供ながらに回りを試していた」のだ。しかし、この双子は男女の性差がしっかりした今ならともかく、小学校の頃は本当に似ていた。髪型まで同じにしていれば一発で見分けられないほどに。

 

 実際、義理の兄は間違えた。

 

 しかしぶくぶく茶釜は、マーレを一発で見分けてしまった。

 

「叔父さんそれは」

「まあ、マーレもこれからだ」

「はい」

 

 さすがにもうしないとアウラは嫌そうにつぶやくが、ペロロンチーノはマーレの方に手をおいて励ます。

 

「あ。アウラ。この件、姉さんに内緒な。ばれたら殺されるわ」

 

 

ーーそうね。ばれたら殺さないとね




茶釜16:声優デビュー(子役)
茶釜20:学生結婚 マーレ9 アウラ9
茶釜24:現在(冬) マーレ13 アウラ13 中1

これだと未亡人の茶釜さんが爆誕
まあ、短編だしこんなのもいいでしょう

あとコミケC97の準備中 いつもどおりオバロのSS本とオバロ系グッズかな?

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