忘物語   作:しろくまお

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初投稿です。至らぬところが多いとは思いますがよろしくお願いします。


001・002

人間誰しも生きていれば物を忘れる。忘れていく。それは、一瞬だけのときもありずっと忘れるときもある。原因だって様々であまり深く覚えようとしなかった結果かもしれないし、はたまた交通事故に巻き込まれての記憶喪失かもしれない。けれど、本当に大事なことは何があっても忘れない。これは、そう思いたい僕、高校2年生、時 知数《とき ともかず》の周りで起きた不思議な事件の話だ。

 

その日は雨だった。降った雨が川を作り、地面には水溜まりができる。そんな豪雨だった。僕はその日、天気予報を見損ねてしまい傘を家に置いたまま来てしまっていた。どうにも困った。これでは帰るに帰れない。そんな湿度のせいなのか気分のせいなのかわからない頭痛と重い体を僕は引摺り昇降口から引き返し自分の教室に戻った。教室にはまだ数人が残っておりそんな僕があまりにもひどい顔をしていたのか声をかけてくれた。大丈夫と声をかけ僕は机にうつぶせになった。僕の通う私立直江津高校は進学校ゆえ設備がわりとしっかりしている。お陰で僕の体のだるさも机がゴツゴツしていないため少しは楽になった。しかし頭の痛さは引かない、むしろどんどんとひどくなっていく。何かが内側から脳を叩いているような錯覚に襲われる。だんだん視界も悪くなってきた。周りの人達も気づいたようで駆け寄ってくるのがわかる。周りの気遣う声にどんどん意識が遠ざかっていく。そのとき、頭の中に微かな笑い声が響いた。こちらを嘲笑うでもなくまるで慈しむような優しい笑い声、その声が聞こえなくなった瞬間、僕はなにかを忘れた、いや違う忘れたような気がした。すると今までの痛みがすっと消えてなくなり視界が戻ってきた。瞼を開けると心配そうにこちらを見つめるクラスメイトたちの姿があった。教室のドアが開き保健の先生が入ってきた。どうやら呼んできてくれたらしい。僕は先生の手に引かれるまま保健室への道を歩いた。保健室に入ったものの特になにも症状がなかったため僕はすぐにかえされた。人通りの少ない廊下を歩く、ふと窓から空を見ると雨はすっかりあがっており僕はそのまま帰路に着いた。

帰り道、僕はずっと今日のこと、つまり何かが頭から抜け落ちた現象に襲われたことについて考えていた。しかしどう頑張っても思考の霧が晴れない。こんなことを言うのも僕は嫌だけれども、まるで妖怪に思い出を抜かれた、そんな気分だった。考え事をしていたせいなのか曲がり角を曲がろうとしたときに人とぶつかってしまった。麦わら帽子を被った金髪の幼女を肩車している男性と、とっさに受け身などとれるわけもなく僕は格好悪く地面に打ち付けられた。相手の男性を見ると彼はなにもなかったように立っていた。どれだけ体幹が強い人でも多少はよろけるだろうがその男性はピクリともしなかった。こちらに差し出してくれた手を取ろうとしたとき金髪の幼女が彼に耳打ちをしているのが見えた。彼は全て話を聞き終わったのか、先ほどとは違う険しい表情でこちらにこう、声をかけた。

「少し、話をしないか?」

その声の奥に僕は確かに決意を感じた。

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