平民派DQN女オリ主がいくFFタクティクス   作:ひきがやもとまち

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本来18話の後半に入ってるはずだったラムダたちサイドのシーンです。
色々あって後回しにする予定だったんですが、奥歯に物が挟まったような気分はどうも苦手で、結局は書いてしまったので続けて投稿です。

18話として改めて一纏めにしちゃっても良いのですけど、マシンの調子的に念の為。




第19話

 

 後世において『骸旅団の反乱』は、獅子戦争の前哨戦として人々には認識されるようになっている。

 これは後の大乱が、国内史上最大規模の内乱であったことや、50年戦争では味方として戦った英雄豪傑たちが敵として戦う構図が人々の心に響きやすかったこと、そして何より『平民出身の英雄王』という存在が戦乱の主役であることを民衆たち自身が望んで止まなかったからこその結果でもあった。

 

 ただ獅子戦争は、あくまで『大貴族同士たちによる主導権争い』でしかなく、戦乱を終わらせた英雄王の身分が平民の生まれだったというだけであって、戦いそのものは終始一貫して王家に連なる大貴族たち同士による政治目的のために行われ、平民たちで結成された第三勢力が台頭してくるような事態には遂に最後まで訪れることはない戦いでもあったのだ。

 

 そういう視点で鑑みた場合、『骸旅団の反乱』は平民たちが自主的に権利を得るため立ち上がった、最初で最後のイヴァリース貴族たちと平民たちとの争覇戦だったと言えるのかも知れない。

 

 又この戦いの中で、はじめて歴史の表舞台に名を記した“2人の人物”が現れているものの、その現れ方が好対照であった点は非常に興味深い一例として知られてもいる。

 

 その内の一人は当然ながら『英雄王ディリータ』

 だが後に大乱を終結に導く英雄王も、この時点では北天騎士団に属する一騎士見習いとして名が小さく記されているに過ぎず、英雄となった後に経歴を紐解かれていく過程で本当の出自が明かされるようになっていく流れを経た偉人だ。

 

 そして今一人の人物は『ラムダ・ベオルブ』

 北天騎士団を率いる武門の棟梁ベオルブ家の長姉で、ベオルブ家における参謀格の一人として獅子戦争勃発後も、その姿と影響を所々でもたらしながらも自らが覇権を求めることは決してなかった、未だに謎多き女傑の一人。

 

 民想いで知られるディリータはともかく、ラムダには含むところが多すぎる言動から、その行動に隠された本心が奈辺にあったかを探ることが極めて難しい人物として知られており、その評価は未だ定まっていない。

 

 その彼女が、はじめて歴史の表舞台に影響を与える策謀を弄した戦いの一つに、骸旅団の反乱末期における《名もなき風車小屋での決戦》がある。

 特定の地名すら与えられない地にて行われた、骸旅団の首魁ウィーグラフと、真の英雄ラムザ・ベオルブたちによる戦いの結果として、彼らも歴史の濁流の渦に飲み込まれていくことになる。

 

 それはラムダ・ベオルブが《影の軍師ラムダ》として、彼女個人の歴史がはじまる戦いでもあった――――

 

 

         小説【女たちの獅子戦争~歴史は男が創りだし、女が紡がせる~】

           『第三章:影の軍師ラムダ・ベオルブ』より

     

            作者:バルマリーア・ラナンドゥ

           

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・泥の中を掻き分けながら進むように、重く、苦しく。

 いっそ楽になってしまいたいと、意識を手放してしまいたい欲望に襲われながら、それでもミルウーダ・フォルズは全身の力を振り絞って意識の海の水面へと、己の心を浮上させることに成功することが出来たようだった。

 

「・・・・・・う・・・く・・・」

 

 身体が重い。頭も満足に動かない。

 まるで、鉛でも詰め込まれたように考えることが難しく、身体はもっと動いてくれない。

 

 否、動けないのだ。両手足が縛られて、なにかの箱の中に押し込まれた不自由な体勢で運ばれている途中であることを、彼女の頭はようやく理解し始めて、完全に身動きする自由を奪い尽くされてしまっている自分自身の体勢までもをやっと自覚し、そして―――

 

「おや、意識が戻ったようですね。ご気分は良くないですか? ミルウーダさん」

「――ッ!! きふぁまは・・・っ!?」

 

 近くから掛けられた聞き覚えのありすぎる声によって、完全に我を取り戻して激高し、怒鳴り散らそうと声を発した瞬間には、自分が手足だけでなく猿轡まで噛まされて満足に喋る自由さえ奪われた惨めな虜囚となっている事実をイヤというほど噛み締めさせられる羽目になる。

 

「動かない方が良いですよ? まぁ動きたければ動いても良いですけどね、無駄ですけど。

 ただ疲れるだけですし、傷だって全くない訳じゃない身なのですから、素直に休んどいた方がいいだろうなと忠告してあげてるだけですから。勝者の余裕からくる善意としてね?」

「きふぁま! おふぉへッ!!」

 

 ガタガタと! 必死に動かぬ身体を動かして相手の言葉に抗議するミルウーダだったが、この様な姿で生かされていたのでは相手の非道を糾弾することさえ出来はしない。

 猿轡で口を開けっぱなしにせざるを得ないせいで、悔しさに歯嚙みすることさえ出来ず、思わず涙目になりそうになってしまいながら、それでも彼女としてはこう言おうとするしかない。

 

「こふぉへッ!」

「まぁ多分、こういう場合の定番として“殺せ”って言っているのだと仮定しての返事になりますけど、お断りしておきます。

 死にたいのでしたら、骸旅団が倒れて戦い終わって解放された後にでも、自分で喉を突いて自殺でもしてください。

 もっとも、そうなった後で自殺したところで共に戦った仲間達と同じ場所に行けるかどうかは、無神論者の私には保証しようのない問題ではありますけどね」

「・・・くふぉを・・・・・・っ」

 

 軽く肩をすくめながら言い換えされて、それ以上抗弁してもしなくても、余計に惨めにしかなりようがなく黙り込むしか選択肢が与えられていないミルウーダ。

 視線だけで殺せるのなら百回ほどは殺戮できそうな瞳で睨みつける自分に向かって「フフン」と勝ち誇ったような笑みを浮かべてきた相手に、思わず動かぬ身体を動かしまくってジタバタ暴れたい衝動に駆られてしまう。

 

 ・・・・・・だが、やれば絶対にバカにされると分かりきっている相手の前だから出来ない。絶対に出来ない。コイツの前でだけは醜態を見られたくないと思える怨敵にまで憎しみが昇華した相手から、せめて自分だけは相手を視界から外してやろうと目を逸らし。

 

 そこに、どうやら食料その他を運ぶ荷馬車の荷台らしい車体に、荷物と一緒くたにして運ばれていた自分と同じように、食べ終わった食料を入れていたらしい樽の中に二人分の金色の頭と、汚れた泥がついてるものの白色のローブの切れっ端だけが見えた瞬間。

 

 思わず目を見開いて、上げられぬ声を上げて彼女たち二人の名を呼んでしまっていた。

 

「みんふッ!? ふぃんくふぁのッ?! あふぁははひ、生きふぇ・・・・・・ッ!!」

「大丈夫、お二人とも生きてますし死んでませんし、怪我も大したことないみたいです。

 他の味方に見つかって処刑されないような運び方で、私たち自身も先を急いでる最中ですから扱いは荒いですけど、助けた命を殺す物好きな趣味だけは持ってませんので、そこはご安心のほどを」

 

 苛立たしいほどに落ち着いた声音で説明を受け、囚われのミルウーダはようやく力を抜いて、自分の惨めな境遇を諦めるしかない運命を受け入れていた。

 自分だけでなく、部下の姉妹二人まで助命されて運ばれている事実の意味を、不毛な言い合いで言い負かされねば理解できないほど彼女は愚かな人間ではない。

 

 ――指揮官である自分が自殺すれば、部下である彼女たちも殺される。

 彼女たちだけを依怙贔屓する気はないが、彼女たちだけしか生き残った部下たちがいない以上、もはや今の自分に感情の赴くまま部下たちを道連れにする決断と行動をとれるだけの意欲と勇気は、己の中に残っていない心をミルウーダは自覚せざるを得なくなってしまっていた。

 

 一人でも多くの貴族を道ずれにすることで、未来の民衆たちが権利を手にする戦いに立ちはだかる強敵を減らせるのなら、諦めることなく挑み続けよう。

 戦いの犠牲が無駄にならない未来に続いていると信じられるなら、部下たちに徹底抗戦を命じることに躊躇いはない。

 

 ・・・・・・だが、どちらも不可能なことが確定した状況下で、ただ意地を張って部下に無駄死にを強要できるには、ミルウーダは既に自分自身への自信を持てなくなってしまった後になっていた。

 

 信じていた大義は、敵方へと移ってしまった後だった。

 平民たちのための戦いは、平民たちを巻き込んで苦しめる戦いへと変化していた。

 自分たちの戦いは、未来に続いていると信じていた。今のような世の中がいつまでも続くものではないと心から信じて、今尚それは疑っていない。

 

 ・・・・・・ただ、貴族たちに未来がないことは、自分たちに未来があることと同じではないという事実に気づかされただけだ・・・・・・。

 

 敵の悪さ、禄でもなさ、非人道さを誰よりも多く見てきて、強く激しく糾弾した自分たちが、悪くないわけではない事実や、碌でもない部分を有していたことや、非人道的な行為に手を染めるようになっていたことを自覚させられただけでしかない・・・。

 

 ただ、それだけだ。それだけの事でしかない。

 今まで自分たちがやってきたことの一部でしかなかった行為の内訳を、今までの自分が“気付こうとしなかったことを気付かされた”・・・・・・それだけの事だ。

 それだけの事だから――もうミルウーダは動けない。戦えない。

 

 自分が気付いてなかっただけで、自分たちは今やこんな存在になってしまっていたのだと、気付いてしまった後の自分には・・・・・・戦うために何を信じればいいのか、もう分からなくなってしまった後だったから・・・・・・。

 

「・・・んぶぅ・・・」

「どうやら落ち着いたようですね。まぁ、何言ってんのか分かりませんけど、しばらくは大人しくしてて下さい。話は終わった後にでも、ゆっくり聞かせてもらいますから。ね?」

「・・・・・・ぶふぅ、ん・・・・・・」

 

 頭の上から蓋をソッと被せられながら、ミルウーダは堪えていた涙を一筋だけタラリと流した。

 それは敗残の身で敵に捕らわれ、あまりに惨めな恥態を晒している自分自身に女として屈辱と恥辱に耐えきれなくなった故だったのか。

 あるいは・・・・・・そういう言い訳をすれば泣いていいと思った、騎士としての自分の逃げ口上でしかなかったのか。ミルウーダ自身にも分からなかった。

 

 それでいいと彼女には思えた。分からなくていいとミルウーダはこのとき思っていたのだ。

 ――どのみち考える時間は、これから幾らでも与えられてしまう羽目になる身なのだから・・・。

 死に損なって、皆と一緒に戦って死ぬことが永遠にできなくなって、夢見た革命の未来が閉ざされてしまった今になっても。

 

 ・・・・・・自分は、革命のために死ぬ事は、もう出来ないのだ。永遠に・・・・・・。

 過ぎ去りし夢は遠く、仲間と夢見た希望の光は悲願の彼方へと去って行き、後に残されたのは孤独な生命と、命をかけると誓った夢が潰えた後の余生のみ――

 

「・・・うっ・・・ううぅ・・・・・・ああっ、ぁ・・・・・・うううぅぅぅ・・・・・・・・・っ」

 

 暗い闇に包まれた、狭苦しい自分一人だけの樽の中でミルウーダは泣いた。静かな声で延々と、ただただ泣き続けたまま運ばれていく。

 自分がどこへ運ばれているか知る事はなく。自分が運ばれた先で誰が誰と話しているのか知るよしもなく。

 

 ただただ彼女は泣いて、泣き続けて、泣き疲れて寝てしまった時にはもう既に―――何もかもが終わってしまった後になっている未来を。

 

 このときの彼女は最後まで、知る事はないまま終わりを迎える。

 骸騎士団の女騎士ミルウーダにとって、獅子戦争の前哨戦とも呼ぶべき《骸旅団の反乱》は今の時点で、こうして終わりを迎えさせられてしまったのだった――

 

 

「静かになりましたか・・・・・・その方がいいでしょうね。

 決して生かしておく手段がない立場のお兄さんを殺した相手とは、流石に今の彼女であっても手を取りたいと思える相手ではなれないことぐらい、私にも理解は出来ますのでね。

 まったく――理想主義な兄を持つと苦労しますよね? お互いに・・・」

 

 そう呟き、中の声が聞こえないよう調整しておいた樽から離れ、わずかな間だけでも座って休ませてもらった女の身の上に感謝しつつ。

 

 ラムダ・ベオルブは部門の頭領ベオルブ家の長姉として、部隊の最前列をいく兄と親友の後ろ姿に並び立つため前に出る。

 

「どうです? 敵の様子は」

「悪くないよ。ラムダの策が功を奏したみたいだ。テッドを連れて案内していった先、そこには報告する相手の幹部がいるはずだからね」

「・・・ティータを助け出すには、まず居場所を聞き出さなきゃならない・・・・・・面倒だが彼女を救えるなら俺は何だってや―――待て!

 まさか、アイツは・・・・・・あの部隊を率いている隊長は、まさか・・・ッ!?」

 

 

 こうして、予期せぬ場所で予期せぬ強敵との再会を果たしてしまった三人の騎士見習たちは瞳を見開きながら相手を見上げ、そして心の中で覚悟を決める。

 既に覚悟していた相手とはいえ、別の味方の手によって確実に殺されるであろう最大のターゲットの『死』を覚悟していただけだった少年少女たちに、獅子戦争へと続く戦いにおける最大最強の試練が立ちはだかるため姿を現す。

 

 そして、それは同時に《影の軍師》に一計を案じさせる材料を与える戦いでもあった。

 獅子戦争へと影響を与える反乱騒ぎの中、最大の変化をもたらすための戦いが今、幕を開ける!

 

 ――血色の憧憬と、血塗れの理想が、どのような未来をもたらす切っ掛けとなるものか、未来に影響を与える本人自身さえ今の時点では知らないままの戦いが――。

 

 

つづく




追記:次話で説明する予定でしたが、今話のラムダがとった策を念のため説明です。

テッドの報告するタイミングを、自分たちの行軍速度に合わさせることで敵の動きを制限したかったというのが主目的の策です。

ティータ救出が自分たちの目的のため、追い詰められつつある躯旅団部隊のドレが彼女を確保してるか分からなかったため、【本拠地に立てこもる以外の選択をしていたとき用】の作戦も必要だったという次第。

一方で、大将であるウィーグラフが直々に最前線まで出張ってきてるとは想像してなかったのが今話の内訳。

色々知ってる風に見えて、組織を持たず情報を入手するツテが限られているラムダは意外と行き当たりばったりな策しか取れないことが多い立場で、思わせぶりな言動で誤魔化していたから本心が分かりづらかった。

……という歴史の裏話も絡まっていた、そんな内容でした~。
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