平民派DQN女オリ主がいくFFタクティクス   作:ひきがやもとまち

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最新話を更新です。
いくつかの候補を書いたものの、どれにするかで決めかねており、夕方頃ようやく決め打ちして書き進めて完成しました。

ウィーグラフ戦、決着まで書いてもよかったのですけど、時間的に今回は切っておきました。次回までに更に良くなるよう努めます。


第22話

 

 後の骸旅団団長となるウィーグラフが、《聖剣技》を伝授されたのは、平民の義勇兵ばかりで組織された義勇騎士団《骸騎士団》の団長に志願して就任した五十年戦争末期のことだった。

 イヴァリース王家やグレバドス教会には古くより、一般の騎士たちには知られていない、魔法のような効果を発揮する特殊な剣技が奥義として伝えられ続けてきた歴史と伝統がある。

 

 反面これらの奥義は、誰にでも使えるというほど便利なものではなかった。

 詳細は不明だが、神殿騎士団団長《ヴォルマルフ・ティンジェル》の子息であり、若くして一隊を任される俊英だった《イズルード・ティンジェル》が、父や姉のような逸話をもたず、独自の技を編み出さざるを得なかった点から見ても、奥義の修得に何らかの条件付けが施されているものだったことが推測される。

 

 だが、『教われば誰にでも使えるようになるわけではない、魔法のような特別な技』という存在は、むしろ権威付けという観点からすれば優れた利点として見ることも可能になる部分でもあった。

 

 王家と教会は、これらの技を『選ばれし特別な者にのみ使用可能になる力』と称して、騎士団長クラスの者や、特別な役職を仰せつかった者のみに伝授を許可することで、技そのものを神の奇跡の一部として神聖視する風潮を作り出すのに利用していたと考えられるのだ。

 

 

 平民達の義勇兵部隊である骸騎士団の団長にして、骸旅団団長になる人物ウィーグラフ・フォルズだが、その一方で彼自身は騎士であって平民ではない。

 だが妹ミルウーダの言から見ても、彼女が平民として生まれ育った娘であったことは恐らく事実だろうと推測されている。

 正確なところは分かりようもないが、彼は中堅貴族が平民にもうけさせた妾腹の子だったのかもしれない。

 その点ではラムザ・ベオルブと同じだが、父である貴族が皆バルバネス・ベオルブのようである訳もない以上、『認知していない自分の子ではある少年』を、自らの部下の実子ということにでもして育てさせていた可能性は捨てきれない。

 

 そういう出自が、後に彼を平民達の義勇兵だけで構成された骸騎士団を率いる団長として、左遷されたとはいえ元は北天騎士団員だったギュスタヴより上位の地位に就く人事を受け入れさせたことに影響していなかったかと問われれば、否定する材料は多くもつ者はいないのだろう。無論もしそうだったらの話ではあるが・・・。

 

 その彼が、王家や教会のみに伝えられてきた秘伝の一つ《聖剣技》を伝授されることが許されたのは、骸騎士団団長という役職に自主志願した就任時のことである。

 それは《騎士団モドキの食い詰め共》《イモ騎士団》などと正規の騎士団や貴族達から揶揄されていた平民出身者ばかりの骸騎士団にたいして『箔付け』を目的として与えられた手切れ金でもあったのだ。

 

 

 当時の五十年戦争末期頃のイヴァリース国内は、想定外の事態の頻発によって長引いてしまった戦乱によって経済が破綻寸前で、年頃の働き手を戦場へと駆り出された農民たちは生活が立ちゆかなくなくなってしまい、各地でも農民一揆を続発させるようになったことから外征だけでなく国内にも治安維持の兵力を裂かねばならない窮状へと追い込まれつつあった。

 飢えから来る反乱と鎮圧の連鎖。

 それは民衆と貴族双方が、互いに対する憎しみと恨みを増大させ続け、後に《骸旅団の反乱》へと至る遠い萌芽となるものであったが、それでも尚イヴァリース軍に兵力が足りていないことは事実であり、平民への感情がどうあれ貴族たちも彼らを厚遇して平民たちの怒りを静めるためアピールせざるをえない現実を受け入れるより他なかったのだ。

 

 それがウィーグラフに、権威付けのための奥義である《聖剣技》が箔付けのため、平民ばかりの骸騎士団に切り札として与えられた理由であり目論見であった。

 しかし貴族たちの思惑がどうあれ、平民出身の義勇騎士ばかりの骸騎士団にとって、ウィーグラフが伝授された《聖剣技》は虎の子の切り札だったことに変わりはない。

 ウィーグラフに率いられた彼らは必死に、敵国オルダリーアの軍勢と戦って戦果を上げ続けた。彼らにはそうする必要があったのだ。

 

 戦争を一刻も早く終わらせて、戦火にあえぐ家族の苦しみを無くすために。

 そして自分たちが戦争勝利に貢献することによって平民の実力と価値を国に見せつけ、貴族たちからの不当な搾取と差別をやめさせるために。平民の地位向上を国に認めさせるため――彼らは誰より必死に敵を倒して手柄を立てなければならない必要性を背負った立場にあったのである。

 

 だが、彼らの期待と貢献は、最悪の形で裏切られる。

 オルダリーアと交わされた事実上の降伏と、多額の賠償金要求。その負担は下にいる者達ほど押しつけられ、各地で一揆を続発させていた『平民たちの同類』でしかない彼ら骸騎士団などは真っ先に切り捨てられる存在となった。

 どれほど活躍して貢献しようと、彼らが国に見られることは最後までなかったのである。

 

 事ここに至ってウィーグラフは、合法的に平民たちの地位向上を受け入れさせるという選択肢を放棄する決断をくだした。

 国から自分たちへの処遇は、『必要なときに役立つ間だけ報いてやり、不要になれば切り捨てる』という認識しか持たれていないことを意味するものだと思い知らされたからである。

 

 斯くして平民たちの義勇兵部隊だった『骸騎士団』は、平民のための革命を成す『骸旅団』へと名を変え、ウィーグラフは王家の敵を倒すため伝授された《聖剣技》を、かつての戦友たちへと振るう相手を変えていくこととなる。

 

 国を守らせるため王家が平民に与えられた《聖剣技》を、平民たちが王家を斃すため貴族を殺す最強の武器として振るう。その皮肉にウィーグラフとしては笑みを浮かべずにいられない。

 《聖剣技》は本来、寄せ集めに過ぎなかった骸旅団にとって貴族打倒の象徴的存在となり、彼らの勝利を支える最強の切り札であり続けてきた存在だった。

 

 そうだったからこそ。

 ・・・・・・ウィーグラフは今、目の前で起きた光景に絶句させられることになる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「「――プハッ!?」」

 

「なにっ!?」

 

 

 聖剣技《不動無明剣》の直撃を受けたベオルブ家の兄妹たちが、グラリと身体を傾けさせたと思った瞬間。

 大きく息を吐き出すと、ふらつく足取りながらも倒れることなく、しっかりと地に足をつけて転倒するのを防いだ姿を見せつけられてしまった時。

 

 思わずウィーグラフは足の歩みを止め、驚愕した瞳を見開き相手を見つめ、接近してトドメを刺すつもりであった己の思考を完全に忘却してしまう醜態を晒すことになる。

 戦場で驚き立ち止まるなど自殺行為でしかない――その程度のことは心得ていて当然の漢であったが、今この時だけは肉体が思考に追随してくれなかった。

 あまりにも意外すぎる光景に思考が止まり、止まった思考が肉体としての足をも留めさせる結果に至らす。

 

「まさか・・・防いだと言うのか!?

 貴様らのような士官候補生が、我が《聖剣技》を初見で受けさせられながら・・・っ!?」

 

 それは彼にとって、ありえないはずの現象だった。

 殺しきれなかったときに備えてトドメを刺す予定でいたとはいえ、それは本当に「万が一の時のために」であって、本当に万が一が実現すると考えて動いていた訳ではなかった。

 

 無論、今までにも《不動無明剣》の直撃を受けて即死を免れ、《睡眠》の効果さえしのぎきった猛者がいなかった訳ではない。

 だがそれは、熟練の武人が騎士用の重装鎧をまとうことで初めて可能になる難事であって、士官アカデミーを出たばかりで戦場での苦楽に鍛えられていないヤワな肉体では不可能なはず・・・・・・それを戦場経験の乏しい兄妹はやってのけたというのか!?

 

(馬鹿な! 一体どうやって――まさか!? ザルバッグか! 奴が《聖剣技》に対抗する術を弟たちだけには伝授していたかッ!!)

 

 その発想が頭に浮かんだことで、ウィーグラフの思考も急速に通常の状態へと復帰していく。

 骸騎士団は五十年戦争中に、北天騎士団と何度か戦場を共にする機会があり、ウィーグラフはその中でザルバッグが自分と同じ《聖剣技》を使って幾人もの敵を蹂躙していくさまを目撃した記憶があった。

 

 その頃はまだ、兄ダイスダーグも戦場に立っていた時期でもあり、ベオルブ家兄妹の長男と次男がともに戦う姿は味方にとって守護神そのものとしか言い様がなく、敵からすれば最悪の死神以外の何物でもない。

 そんな圧倒的すぎる武門の頭領一族を率いる兄弟の実力は、王家支配に反発を抱くようになっていた当時のウィーグラフから見ても圧巻の一言であり、同じ剣士として率直な敬意を抱いたし――将来的に改革の敵となった時には恐るべき雄敵となるだろうと警戒を抱かされもした相手。

 

 兄弟2人が振るう《聖剣技》《不動無明剣》・・・その武神のごときコンビネーションが可能だった者たちであれば、まともな方法で防ぐ手段など重装備するしか無いように思える技にさえ、何らかの対抗策を見いだし伝授することが可能だったのかもしれない。

 

(あるいは、ダイスダーグによる小細工か・・・・・・今回の件の繋がりを考えれば、奴が弟たちを使って何らかの策を考え出した可能性は十分にあるだろう。――だが!)

 

 そこまで考えたとき、再びウィーグラフの時間は動き出す。

 自分では無駄な思考に時間を浪費してしまった未熟さに歯ぎしりせんばかりの怒りを抱いていたが、実際には数秒に満たない極小の時間に脳細胞を高速回転させて導き出された、剣士としての分析と合理的計算に基づく冷徹な判断。

 

「だが一度しのぎきった程度で、我が《不動無明剣》に破ったなどと思うのは大間違いだぞ! ラムダ! そしてラムザよ! 今その事実を教えてやる!!」

 

 ニヤリと笑って、そう叫び。

 ウィーグラフは先と同じ動作を、先と同じ位置で今一度繰り返すことで、もう一度《不動明王剣》を同じ相手たちに食らわせて、今度こそトドメとするため動き出す。

 

「――ラムダッ!!」

「分かってます――よッ!!」

「うっ!?」 

 

 剣を振りかぶり、刃に光の粒子を発生させる《聖剣技》特有の流れをなぞろうとした、まさにその一瞬の隙を突くようにして、急激に頭を下げて上半身を前に倒した兄ラムザの後ろからタイミングを計ったように、妹のラムダが私に向かってナニカを投げつけ、それが何であるかを捉えた瞬間――私は聖剣技の使用を一旦停止せざるを得ない状況へ追いやられる!

 

(《投石》・・・・・・だとっ!?)

 

 いつのまにか拾っていた拳ほどの大きさを持った石礫が、私に向かって飛来してくるのを視認させられ、さすがに今のまま魔法の光を剣に纏わせるためのモーションを続行することは難しくなり、私は片腕を顔の前に立てて投石を防ぎきる。

 

 ガツッ!!

 

「ぐ・・・っ」

 

 鈍い音が鼓膜を叩き、腕に痺れがわずかに残る。

 小手をはめて武装している腕でガードしたからこそ痺れるだけで済んだ痛みだったが・・・・・・目をやられてしまえば元も子もない。

 本来なら騎士の戦い方として卑怯ともされる手段をベオルブ家の一門がとってくるとは想像していなかったが、年齢から見て見習いでしかない彼らはそういう戦い方を学んでいる時分であったのかもしれない。

 

 そのような年齢で戦いに習熟せざるを得なくなった身の上には同情を禁じ得ないが・・・・・・だが、どちらにせよ同じ事! 悪足掻きだ! 一度阻止しただけで退避が可能になれるほど《不動無明剣》によるダメージは小さくはない!

 

 私はそう考え、痛む腕に力を込めて前に出ると、傷ついた二人共に、あるいは兄か妹のどちらか片方だけにでもトドメの一撃を振り下ろそうと、顔を庇っていた腕を下げると同時に相手へと急速に接近して、そして――ッ!!

 

「っ!! はぁあああああッ!!!」

「なにッ!? ぐぅぅっ!」

 

 突如として、下腹部に激しい衝撃を覚えて一瞬だけ息が止まる。

 ・・・・・・さきほど前傾姿勢に上半身を倒して妹に活路を開いていたラムザの方が、そのままの姿勢で全力での体当たりを断行してきたのだ。

 

 剣を構える余裕もなく、ただガムシャラに全力で、力任せに私の身体へ自分の身体を武器として叩きつける。

 もしこれが、武器を使って私に斬りかかることまで計算した動きであったなら、私の予測の域を出ることなく今この場で決着の刃が振り下ろされていたことだろう。

 

 だが彼らは、私を倒すよりも生き延びれる可能性が高い道を選択した。

 それが私の計算を狂わせ、大したダメージを与えられることもなかった代わりに――自分たちが最初の窮地を乗り越えるのを成し遂げてしまったのだ。

 

「くっ! 子供だましをっ!!」

「ぐっ!?」

「ていッ! ていッ!! えぇーい!!」

「チ――いぃッ!!」

 

 身体にしがみつくようにタックルをしてきたラムザの身体を蹴飛ばして距離を開けさせ、改めて前に出ようとする私を子供のような必死のかけ声を連続して叫びながらラムダ・ベオルブが私の顔面めがけての投石をひたすらに連発してきている!

 

 その必死の形相と戦いぶりを見せつけられ――私の中で一瞬、迷いが生じる。

 このまま進んで決着を強いるか? いったん退いて態勢を立て直して仕切り直すか?

 二つに一つの判断で、私は迷わされるほど彼らの必死さは常軌を逸する域に達しつつあったからである。

 

「はぁ・・・、はぁ・・・、ゲホッ・・・はぁ・・・」

「・・・ふぅ・・・、ふぅ・・・、ふぅぅ・・・・・・」

 

 ――傷ついた身体をかばい合うように剣を構えながら、手負いの獣のように荒い息づかいと、鋭く鈍い光を湛えさせたまま私の両目をまっすぐ睨み付けてくる四つの眼光。

 それは明らかに、覚悟を決めて腹を据えた戦士のみが放つことの出来る本物の気迫そのものだった。

 

 “たとえ、実力及ばず敗れるとも、確実に腕の一本も道連れにして死出の土産とする”

 

 ・・・・・・そういう気迫が無言のままでも、百の弁を弄するより雄弁に私の心へ伝わってくる。来てしまう・・・。

 

 ――ジャリ。

 

 我知らず、前に出ようと地面に付いた左足が、角度を曲げる。

 進もうとする身体を、逆に押さえ込むため抑制しようと、反発の音が鼓膜を叩く。

 

 

「・・・・・・」

 

『『―――』』

 

 

 双方共に相対して、互いに互いを睨み合う。

 その時間が私の中で、躊躇いが生じているのを痛切に自覚させられ歯がゆさが増す。

 

 ・・・この兄妹はおそらく、どちらかが私の剣で倒されたとしても、その『死を使って』私の身体の一部は確実に持っていく覚悟を既に決めているのだろう。

 仮に2人共を一息の内に、ほぼ同時に止めを刺すことが可能だったとしても、結果は変わることはない。たとえ死んでも、死んだ後の死体が私の一部だけは兄の、妹の仇として確実に連れて逝く。

 

 そのような真似は現実的にあり得ない――そう言い切るのは容易いが、それら普通に考えればあり得ないことが起きることが往々にして起き得るのが、狂気に犯された戦場で修羅と化した者達の業というもの。

 

 私自身、『五十年戦争』の戦場で幾度も奇跡を目の当たりにしている。

 心臓を貫かれて即死したはずの敵兵が振るってきた刃を。

 首だけになっても噛み付いてきた敵の将を。

 

 そのような『狂気の奇跡』を私は地獄の戦場で幾度も見せつけられる不運を味あわされ続けてきたのだ。・・・奇跡の代償に支払われる戦友たちという犠牲によって・・・。

 

 この兄妹が、この年齢にして既に彼らの域に手をかけていることは驚愕に値したが・・・・・・だからと言って敵の勇者を相手に敬意を払うため、身体の一部を損なう賭けになるかもしれない危地に飛び込むことは今の私には躊躇われる理由があるんだから―――

 

(・・・ここで私が、戦えない身体になるわけにはいかない・・・。

 真なる革命を成し遂げる日まで、剣士としての命を失うわけにはいかんのだ――!!)

 

 それが私の足を止めさせた想いだった。

 ここで彼らを倒しても、まだ北天騎士団本体との戦いが残っている。

 私が命だけは長らえようとも、剣士として戦場に立てなくなれば確実に士気は低下し、一挙に敗亡の縁へ追いやられる危険性が高すぎる!

 

 今ここで進めば、傷ついた二人の兄妹の片割れは確実に殺めることが出来るだろう。

 そして、二人がかりで私との戦いを支えている彼らでは、兄と妹のどちらかが失われた状態で私の攻撃を防ぎきることは、もう出来まい。

 残る一人も遠からず後を追う宿命からは逃れられない。 

 

 ――その事実を、この兄妹は知っている。実力差を理解した上で、『生に続く可能性』に賭ける気でいるのだ。

 

 確実な敗北による死よりも、殺される覚悟で前に出ることで可能になる勝利へ続く一撃に賭ける。

 失敗すれば共に死に、上手くいこうと兄妹のどちらかは死ぬかもしれない一撃のため、そこまで出来る・・・・・・。

 

 『死中に活路を見いだす』『死と引き換えに道連れにする』などといった後ろ向きな想いでは至ることの出来ない武の極地。

 実力で上回る相手を倒すための、究極の後の先。――そこに彼らは手を掛けようとしている。

 

 

「・・・・・・」

 

 私は彼らから注意をそらすことなく、足を後ろに下げて僅かながら距離を取り、周囲の戦況を確かめる。

 率いる部隊同士の戦いにおいても、我ら骸旅団の方が優位に戦局は進めているようだった。

 敵は若く、年齢から見て士官候補生に過ぎないと思しき者達だったが、それでも尚我が方の精鋭と互角に近い戦いを演じているのは大したものではあった。

 兵も将も未熟ながら、よくそれを心得て互いの欠点をよく補い合えている、良き兵であり、良き将だった。

 

 ――だが、五十年戦争の修羅場をくぐり抜けてきた我らとでは場数が違う。

 決定的な優勢を奪われることこそ阻止しているとは言え、終始不利な戦いを強いられていることに変わりはない。

 軍用チョコボにして、私にとっては戦友でもあるボコの存在も大きい。

 

 遠からず彼らは敗退し、集団戦としての勝敗は我が方の勝利に帰するだろう。

 ならば今ここで、私と彼ら兄妹との決闘による勝敗に固執して、貴族たちとの決戦に及べなくなるリスクを負うのは、組織を率いる者として取るべき道ではない―――

 

 

「・・・・・・チッ!」

 

 私は決断して剣を引く。

 一旦は兄妹との距離を取って陣形の立て直しを命じながら、仕切り直しを計る道を選択する。

 

 それは同時に、《聖剣技》によって深手を負った相手に傷を癒やす猶予を与え、体勢を立て直す機会をも与えてしまうことを意味していたが・・・・・・この場合はやむを得なかった。

 我々の戦いはまだまだ続くのだ。ここで全てを終わらせてしまうわけにはいかない。

 革命の灯を、今この場で消してしまうことだけは私には決して許されないことなのだから!!

 

 

 

 

 

 

 

 ――こうして、骸旅団団長ウィーグラフと、ラムザ・ベオルブ率いる士官候補生たちによる一隊との戦いは、序盤にして最大の窮地を乗り切り、決着を先延ばしにして継続する流れが確定する運びとなった。

 

 《デュライ白書》が研究する後世の歴史家たちの間では、この時のウィーグラフが下した決断を酷評する者は数多い。

 

 北天騎士団との戦いを組織として優先するなら、最初からラムザたちなど無視するべきであり、妹の仇討ちという情に駆られて無用な決戦を挑んでしまった彼の甘さと現実認識能力の乏しさを批判する声は、今も昔も多数派として勢力を保ち続けている。

 

 ただ《デュライ白書》が研究されるようになってから、新たな見解を示す者達が現れはじめ、近年では一定の支持を集めるようになってきているのも事実である。

 

「ウィーグラフは妹ミルウーダの仇と思い込んだラムザたちに対する、仇討ちの情は確かにあった。

 だが彼が、名もなき風車小屋で彼らとの決戦に及んだのは、それだけが理由ではなく、戦略的な必要性を鑑みてのものだった」

 

 と彼らは主張している。

 ウィーグラフの立場では『ベオルブ家の一員であるラムザたち』の行動を、北天騎士団とは無関係と考えることは難しいというのが、その理由であった。

 

「貴族たちと戦う彼にとって、平民の娘でしかない少女を助けるために、武門の頭領であるベオルブ家の末子が少数の寡兵で敵中深くにまで進軍してくるという状況を認識しがたい立場にあったのではないか?」

 

 ――というのが彼らの主張だ。

 また、仮にラムザたちの戦いが含むところのないものだったとしても、彼らがベオルブ家の一員である以上、その行動の裏に『ダイスダーグ・ベオルブ』の思惑が絡んでいる可能性を、骸旅団の団長である彼には「無い」と言い切れない。

 

 一説にはこの時、『エルムドア侯爵誘拐事件』がダイスダーグ・ベオルブが行わせた狂言誘拐だったという真相を、ラムザたちはウィーグラフから伝えられていた可能性を、《デュライ白書》の作者は記している。

 

 もしそれが事実だとすれば、残存部隊が籠城しているジークデン砦の後方へ出ることが出来る小道へ続いている《名も無き風車小屋での戦い》には別の側面を持った戦いだったのかもしれない。

 

 

 

「いずれにせよ、ウィーグラフ・フォルズは、多くのものを背負いすぎていた。

 彼は北天騎士団という正面の敵と、腐った現状の社会と、近く訪れる貴族たち同士の私利私欲による内乱の被害から民衆たちを守ること。――それら全てと戦って勝利を得るため最善を尽くしていた。

 彼だけが、たった一人で全ての敵と戦って、民衆たちの勝利を得ようと奮戦し続けていたのだ。

 彼の使命感と献身、さらには民衆たちを想う気持ちは、同時代人の中で最も優れていたと私には思われる。

 現実認識能力も決して低い訳ではなかったのだろうと、多くの裏事情を知った今では思うようになっている。

 だが彼は、全てを一人で背負い、他者に押しつけることなく解決しようと努力し続けていた。

 イヴァリースに生きる全ての人々に関わる問題を、自分一人で背負って、他者に責任を押しつける気なく、解決することが可能だと信じて、新時代への道を歩み続けていたのだ。

 ・・・・・・それが可能だと信じてしまったのが彼だった。

 裏切り者の粛正も、仇討ちも、仲間たちの死を無駄にしない革命継続も。

 信念を曲げて権道を用いるようになってさえ、本質的に彼は一人だけで信念を貫き通して理想を叶えんが為、孤独な戦いを一人だけで続けていたのである。

 だからこそ私は彼に対して、多くを知ることが出来るようになった今でも思わざるを得ないのだ。

 骸旅団団長ウィーグラフは、“甘すぎる”と―――」

 

 

                 執筆者不明の女騎士が記した晩年の日記より

 

 

つづく




注:今話序盤で記されているウィーグラフの出自設定は今作オリジナル解釈によるものです。真に受けないでくださいませ。

原作設定での整合性をつけるために、そうしただけですので今後のストーリーに反映することはないと思われます。
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