平民派DQN女オリ主がいくFFタクティクス   作:ひきがやもとまち

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時間見つけて少しずつ書き進めてたのが今しがた完成。更新です。
また1章目のラストバトルに当たる今回の戦いでは、大きく3部構成で描く仕組みを取らせて頂きました。

前回の1部目は、ゴラグロスとディリータ視点での描写。
今回の2部目は、アルガスとラムザ視点での描写。
最後の3部目は、ラムダです。

このため今話のプロローグ部分は、前回ラストと微妙に異なり、必ずしも一人称だからと、その人の視点ではないですのでお気を付けを。


第27話

 

 ――そこに辿り着くまで、その場所でその光景を目撃する刻まで、僕はずっと信じ続けながら生きていた。

 信じられる人たちだと、ずっと信じ続けながら生きてきた。

 

「兄さん・・・、どうして・・・?

 どうして、ティータを・・・・・・?」

 

 その光景を見つめながら、僕は呆然として呟くことしか出来なかった・・・・・・。

 それ以外に何も出来ない・・・何もしたいと思えない・・・何も今は・・・思いたく、ない・・・・・・

 

 ・・・あるいは―――それが真実だったとしても。

 ウィーグラフが言っていた話は嘘なんだと。兄さんたちが侯爵を誘拐させたなんて敵が言ったデマカセだと。

 それでも僕は、兄さんたちは信じてたんだ。

 

「すまなかった、ラムザ、ディリータ。それにラムダも。

 こんな手は私たちも使いたくなかった。もう二度と使わないと約束しよう。

 ベオルブ家の名を穢すような行いは、我らは決して繰り返さないことを、亡き父上の名の下に―――」

 

 そう言って、僕たちに向かって謝りながら頭を下げて、少しだけ気まずそうな顔をしながらでも、僕とディリータとラムダとティータを、家族の帰りを祝福してくれる・・・・・・そんな明日が来ることを信じていたからこそ、今日まで走り続けることが出来ていた。

 

 その未来を、その明日を。

 ザルバッグ兄さんの口から、その言葉を聞かされる瞬間まで、今までずっと―――

 

 

 

「アルガス、構わん。やれ」

 

 

 

 そう告げた兄さんが、橋の上から落ちていくティータの姿を見つめながら。

 静かな態度と瞳のままで、何事もなかったかのように、何も告げないまま背中を向けて去って行く姿を見せつけられた日まで、ずっと・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・・・んだとぉ・・・・・・っ!?」

 

 その光景を目撃させられながら、俺は歯軋りしたい気持ちを必死で抑えつけ、味方の手柄に嫉妬する姿をザルバッグ騎士団長“殿”に気付かれないよう注意しながら、余計な邪魔をしやがった野郎を血走った目で睨み付けるのを我慢することまでは出来なくなっていた!

 

 見るとソイツは、得意げな顔を早々に引っ込めて、ジークデン砦の中に身を隠しちまって顔すら碌に確認できないまま見逃しちまう羽目になる!

 

 ――チクショウが! 計算外だ!!

 せっかくディリータの見ている目の前で、アイツの妹をラムザの兄貴からの命令って形で殺して激高させ、感情的に斬りかかってきやがったところを返り討ちにする大義名分が得られる寸前までいったってのに! 余計な邪魔をしやがってあのクソ野郎!

 

 そうなっていれば、ラムザだって殺すことは出来たはずだったんだ! 親友を庇って兄達と騎士団の裏切り者になったヤツなら殺す理由は充分にある! 澄まし顔のラムダも『愛しの兄様』が殺されたとなりゃあ冷静さの仮面も綺麗に剥がれるに違いなかった!

 いや、殺せなくてもいい。兄貴たちに恨みを抱いて生き延びれたなら、必ず将来裏切ってくる! そうなれば殺せる時期は必ず訪れる!

 

 そんな事態が来れば、俺にとって万々歳になるはずだった・・・。

 弟にも妹にも裏切られたとなれば、ザルバッグもダイスダーグも冷静では居続けられない。必ず部下を疑い、次は誰が裏切るかと疑心を抱き始めるだろう。権力者ってのはそーいうもんだ。

 その時こそ、俺の天下が訪れるはずだった。門地を失い、家への信頼を失った俺が、国の重臣に側近として仕えられる唯一の道。・・・・・・そこへ至るため周到に準備を進めてきたってのに、どっかの部隊のお節介ヤロウめが!クソがッ!!

 

「ザルバッグ将軍閣下! 予想通り山道に、新たな敵兵が出現しました!

 人数は50名ほど。中には骸旅団の首魁ウィーグラフらしき顔を見かけたとの報告です!」

「分かった、すぐに行く。――あとは任せたぞ? アルガス」

「は!?」

 

 怒りに震える俺たちの背後から、伝令役の下っ端が走ってきて行った報告。――それ自体は俺の知ったこっちゃない。

 だが、次にザルバッグから言われた命令は別だ。ここに残って、後始末をやれという命令。

 ――冗談じゃない! 心の底から、そう思わされるクソみたいな命令だ!

 

 上司から見えないところで、見てもいない手柄なんざ立てても、有って無きが如しのゴミクズみたいな代物にしかなれやしない!

 俺の爺さんが、下っ端の言い分だけで濡れ衣着せられた時と同じだ! 後から誰がどうとでも言い繕えちまう程度のモンでしかない! そんな役目を押しつけられて喜べるほど精神的家畜に成り下がった覚えはねぇ! 

 

 ・・・・・・だが、形式的には今の自分がベオルブ家トップの命令に逆らいようがない立場だってのも事実じゃある・・・・・・クソッ、やっぱり選ぶべき相手を間違ったのか!? いや、さっきのヤツが余計なマネさえしなければ今頃こんなことには――

 

「どうした? アルガス。返事がないようだが」

「は、・・・は。無論、ご命令とあらば謹んでお受けしますが・・・しかし私としましては閣下のおそば近くにあった方が、お役に立てる機会も多いかと存じまして、その・・・・・・」

「軍において命令は絶対だ。俺はお前に任せると言った。――よいな?」

「―――ハッ」

 

 そしてジロリと念を押すように言い含められた命令を復唱されたことで―――俺は歓喜の喜びに打ち震えることになる。

 相手の言葉の意図と、その視線が向けられている先がなんだったかを、そのとき俺は理解した。

 

 一見すると俺に向かって命令を下しているようにも見える、ザルバッグの態度と視線。

 だが実際には、その視線は跪く俺の背後にこそ向けられており、そこにはザルバッグが率いてきた北天騎士団の部隊が整列している。

 その事実と配置と思い出したとき、喜ばずにいられるヤツが騎士の中にいるだろうか?

 

 

 俺は・・・・・・北天騎士団長から、部隊の指揮権を委ねられたんだ!!

 エルムドア侯爵配下のランベリー近衛騎士団から鞍替えしたばかりで新参の俺が、北天騎士団の正騎士たちを指揮する隊長の地位に抜擢された!

 

 やはりザルバッグは、俺を利用する方法を理解している! それが分かった!判明したのさ!

 ・・・・・・そして俺も、ヤツが俺に何を望んで、こんな待遇を与えてきたかは理解している。理解できなければ今後もヤツからの信頼を得続けていくことは不可能だと分かっていたから・・・・・・。

 

 去って行く上司の背中を見送った後、雪の上に膝を突いていた身体を立ち上がらせて、ゆっくりと振り返った俺の耳に、甘ちゃん坊やが叫ぶ声が聞こえてくる。

 それを聞きながら俺は、笑み崩れそうになる表情を、威厳ありげに見えるよう整えるのに苦労しながらユッタリと―――ボウガンの狙いを、ソイツに向けて構えていきながら・・・・・・そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティータ! 」

「・・・ッ!!」

 

 その声が聞こえ、走り出した相手の背中が瞳の中に映りこんだ瞬間。

 僕は今までの世界と、今までを壊した兄の言葉・・・・・・二つの『過去の時間』から『現在』へと意識が浮上してきた自分自身を実感し―――凄まじい恥ずかしさと自己嫌悪を感じずにはいられない!

 

 あまりに衝撃的な光景を目にして、言葉を聞かされたせいで、今やるべき事を失念していた自分を思い知らされる!

 

 そうだ・・・走り出したディリータの示すとおり、ティータは弓矢に撃たれて橋の下に落ちただけ―――死んだと決まったわけじゃない!! 今なら助かる可能性があるかもしれないのだ!

 なら今すべき事は、一刻も早く彼女の元へ駆けつけて治療を施すことだけだったはず! それなのに僕は過去を否定された想いで思考が止まって躊躇して、『現在』より『過去』を選んで時間を浪費してしまっていた!

 遅れを取り戻さなきゃいけない! ティータを助けなきゃいけない! 兄さん達との問題や政治のこと、色々と考えなきゃいけないことは後回しにしてでも今僕たちがやるべき事は親友の妹を助けること――それ以外に何があるって言うんだ!?

 

「――っ!! 兄様ッ!!」

「止めるな!ラムダ! 僕は止めたって行くからなッ!!」

 

 背後から聞こえてきた妹からの鋭い呼びかけにも、僕は後ろを振り返ることさえしようとも思えず、先を行くディリータの背中を追って走り出す足を止める気にはなれない!

 理屈じゃない! 感情だけでもない! 行かなきゃいけないと心から、そう感じているから行くだけ―――その邪魔だけは幾らラムダだって許すことは僕には出来ない! 今だけは決して!絶対に!!

 

「止めません!! 部隊の指揮は私が執ります! だから兄様はディリータさんを追ってください! 早くッ!!」

「ッ!! ――すまない! 頼む、ラムダ!!」

 

 けれど妹からの続く言葉は、僕の予想の斜め上に行く。

 その意外性が一瞬だけ、僕の足を止めさせて後ろを振り向かせたけれど・・・・・・その強い意志が込められた二つの瞳を見つめた時。

 僕は「止まるべきではない」と感じさせられて、言葉と目礼だけを残してディリータの後を追い続ける道を選択した!

 

 ・・・・・・あるいは、ラムダも僕と同じものを感じているのかもしれないと思ったからだ。

 ティータを助けたい、突出するディリータを放っておけない――そういう思いも勿論あるけれど・・・・・・それら前向きな感情とは異なる、もっと後ろ向きで暗い感情が、先程から僕の心の内側から生じて、足を止める思いを押さえ込み続けていた不気味な気持ち。

 

 それは、『追わなければいけない』という――怖さ。

 もし今ディリータを追わなければ、『二度と彼が僕たちの元へ戻ってくることはない』という―――恐怖心。

 

 それが僕の足を止めさせていない、最大の理由になってる感情。

 何故なのか、自分でも分からない・・・。理由なんて無いのかもしれないとも思う・・・・・・けど! それでも今は! どうしても彼の後を追って、共に行かなきゃいけない! そんな気持ちが内側から溢れてきて止まることがどうしても出来なかった! 絶対に!どうしてもーーッッ!!

 

「ティータ! ティータ! 今行ってやるからな! 待っててくれティータ!!」

「ディリータ! 待ってくれディリータ!!」

 

 距離は先程から大して離れていない、親友の背中。

 でも何故だか、視界に映る彼の背中は妙に見えづらくなっている――そんな錯覚を抱いた僕は、思わずナニカを掴もうと手を伸ばす。

 

 ・・・よく似ているのに、まるで違う。

 ディリータの姿をした別の人間が、今の彼には重なって見えているような・・・・・・そんな錯覚が、さっきから僕の目に見えている世界の中で、彼の姿を捉えにくくしていた。

 

 質素だけど実戦的な、愛用の赤茶けた色の戦場では目立ちにくい軽装の鎧をまとって、ティータの元へ走り寄ろうとしている。そんな今のディリータの姿。

 

 そんな彼に被さるように、殉教を示す色の深紅と、神聖なる金属の黄金色で彩られた、『神に認められたい』と願う信仰の騎士たちの姿をもつ、幻のディリータ。

 

 ・・・・・・それがボヤけて、重なって見えてしまう。

 どちらが本当に今の彼の姿だったのか、急に思い出すのが難しくなってくる・・・。

 

 だから僕は、彼の背中に向かって手を伸ばす。伸ばさずにはいられない。

 今そこにいる彼だけは確実に本物の親友であることを、僕は知っているから。理解しているのだから―――だから。

 

 僕は、隣に立っていた僕を突き飛ばして離れていきながら、ティータの元へ急ぎ駆けつけようとするディリータの背中に追いつくために、追いつけるように―――そう願って必死に、彼の背中に手を伸ばす―――

 

 

「兄様! ディリータさん! 避けてくださいッ!!」

『『っ!?』』

 

 

 背後から急に発せられたラムダからの、危機を知らせる警告の声!

 それが聞こえた僕たち2人は、思わず反射的に身体をひねって動きを逸らす!

 

 そうした直後。

 ヒュン!!と鋭い風切り音がしたと思った時。

 

 ・・・・・・ディリータが、進もうとしていた道の一歩先の地面に積もった雪に、一本の矢が突き刺さっている光景が目に止まる・・・。

 それを見て僕は、まさかと思う。なぜ、と疑問が沸く。

 

 そんなことをしても彼には何の意味も無いはずで、何の理由もないはずなのに・・・・・・・何故だ!? どうして!? 

 

「どこへ行こうっていうんだ?」

「アルガス! 貴様ーッ!」

「なんだ、やろうってのか? “俺たち北天騎士団”と。

 いいだろう、相手になってやるぜ。家畜は所詮、家畜だってことを教えてやるよッ!

 そこに転がってる、メス豚の家畜と同じようなァッ! はっはっは!!」

「ッッ!!!! アルガーッス!! 貴様というヤツはーッ!!!」

 

 妹を助けに赴くのを阻止する形で放たれた、足下に突き刺さっている一射を前に、ディリータが激高して殺気走った怒声をあげる。

 この状況では仕方のないことだとは思う――けど、今はマズい!

 

「よくもティータをッ! 殺してやる! お前だけは絶対に俺の手で殺してやるーッ!!」

「よせディリータ! 北天騎士団まで敵に回すつもりなのか!?」

 

 悲鳴のような叫び声で、僕は彼を制止する! ティータを殺したアルガスの行動じゃなく、ディリータの方の行動をだ!

 勿論こんなこと僕だって言いたくはない! 一刻も早くティータを救助しに行きたい気持ちは僕だって同じだと断言できる!

 けど!それでも! この状況では止めるしかない!!

 

 ザルバッグ兄さんから「後を任す」と言われたアルガスに剣を向けることは、彼だけじゃなく北天騎士団まで敵に回すことになってしまう!

 それでは勝ったとしても、ディリータの帰れる場所が無くなってしまうしかない! 騎士同士の私闘じゃ済まされない!!

 

「オレに構うな、ラムザ! アルガスの次は、お前の番だッ! ティータを殺した仇は、みんなオレの倒すべき敵だッ!!」

「で、ディリータ・・・・・・気持ちは分かるけど・・・・・・けどっ!」

「お前だけじゃない! 貴族たち全員、この国の全てがティータを殺した俺の仇! 絶対に許すことなど出来るものかー!」

「クックック、そうだぜラムザ? 余計なことを言ってくれるんじゃねぇよ。どのみちコイツの居場所は、北天騎士団にはもう無くなっちまった後なんだからな」

「アルガス!? なにを・・・いったい何を!?」

 

 相手の言葉で余計に訳が分からなくなった僕には、ただ叫ぶように彼に問うことしか出来ない。

 いったい何故こんな状況になってしまったのか・・・改めて考えれば考えるほど、不可解な点が多すぎる今の状況。

 そこに更なる疑惑をもたらすように、不吉な声音と歪んだ表情でアルガスが言ってきた意味深な発言。

 

「―――目撃者を生かしとく訳にはいかないんだよ」

「な、なんだと・・・!?」

 

 唐突にアルガスの口から出た言葉。それに僕は思わず目を剥いて彼を見直すことになる。

 今この場では意味ある言葉とは思えない発言に、一体彼が何を言いたがっているのか即座には理解できなかった僕の頭を小バカにしたような笑みを浮かべながら、アルガスは傲然と冷徹に言い切る。言い切ってみせる。

 

「たかが平民の小娘のために騎士団の誇りを捨てて、奴らの要求を飲むわけには行くまい?

 だが外聞が悪い行為だってのも事実じゃある。非難される口実は誰も作りたくはない。

 ・・・・・・だから余計なことを外部に漏らしそうな、殺された娘の兄キには死んどいてもらった方がいいのさ。

 この件でベオルブ家やラーグ公を“逆恨み”して逆賊共に寝返られても面倒だしな。こういうときは唯一の目撃者を殺して、漏れる口を塞ぐってのは当たり前の話だろう?」

「馬鹿な!!」

 

 相手の話を聞いて僕は思わず叫び声で否定していた!

 まるで財産目当てで人を殺す殺人者のような言い草・・・とても北天騎士団と行動を共にしている者とは思えない言い分―――そのどれしもが僕が今まで信じ続けてきた『騎士の在り方』から懸け離れすぎていて受け入れることなんて到底できるわけがないデタラメすぎる屁理屈としか思えない!!

 

「目撃者を消すなんて・・・・・・今この場には、僕たち以外にも大勢の人がティータを君が射殺すところを見てたんだぞ!? それなのに――」

「ああ、いるな。“北天騎士団の団員たち”が、俺たち以外にも他に大勢・・・な」

「あ・・・っ!?」

 

 ニヤリと笑いながら言われて、僕は今になって「ハッ」と気付かされていた。

 そして僕とディリータとアルガスとの間に立ち塞がるように立ち並んで配置された、北天騎士団の所属を示す揃いの鎧と軍服とを纏った一団を見つめさせられる。

 

 そうだ・・・興奮しすぎて今まで気付かなかったけど・・・無言のまま僕らに向かって静かに剣と殺気を向けてきている彼らの顔は無表情のものばかりになっていて、新参のはずのアルガスからの号令以下ベオルブ家の一員ではある僕たちに平然と剣を向けてくることを躊躇う様子は微塵も見られない。

 それは・・・つまり、その反応が意味するものは―――

 

「最初からグルなんだよ、コイツらは。みな納得した上で従っている。今回の件でも全会一致ですべて無かったことになるだろうさ。

 “北天騎士団は平民であろうと兇賊に浚われた国民を救出するため全力を尽くしたが、追い詰められた賊は降伏を拒んで自暴自棄の末に人質を殺してしまった”・・・とな」

「そ、そんな・・・そんな事って・・・っ!」

「誰も自分たちが属する組織の醜聞なんて望んじゃいねぇのさ。むしろ喜んでるヤツも多いだろうぜ。

 “自分たち騎士の家系に生まれた者が苦労しながら、平民の子供がベオルブ家に拾われただけで出世できる。依怙贔屓だ。殺されたのは当然の報いだ、ザマーミロ”ってな。

 ハハッ、この場にお前らの仲間なんか一人もいない! ソイツさえ殺しちまえば全て無かったことになって、“オレたち”北天騎士団の名誉に傷つけるヤツは誰もいなくなるんだ!」

 

 

 

 ―――仲間同士の庇いあい―――

 

 

 組織の中にあって忌むべきものとして非難され続けながらも、未だに残り続けていて無くすことが出来ていない、冤罪を発生させて罪を正当化するための……最も効率的な悪行。

 

 それを僕たちが属する組織が……北天騎士団がやろうとしている。

 そういう…事、…なのか……? 

 

 

「――言いたいことは、それだけか? アルガス」

 

 得意げに語ってくるアルガスの言葉に被さるようにして突然、冷たい声音で、静かな口調と表情で―――いつもの表情の下に怒りの激情を激発させようとしているディリータの声が、アルガスを殺意と復讐の炎で焼き殺さんとしているように強く激しく叩き付けられる。

 

「殺してやる! お前らみんな殺してやるぞ! そんな理由でティータを殺して無かったことにしたがっているお前ら全員を、俺は皆殺しにするまで絶対に許さないッ!!!」 

 

 

 ザシュウッ!!!

 

 

 ・・・・・・こうして、僕たち兄妹とディリータとアルガス率いる部隊との戦いの幕は、怒りに任せた一斬から幕を開けることになる。

 イヴァリース中の領主と軍隊が領地の垣根を越えて協力し合って結集した、貴族たちの連合軍による骸旅団の殲滅作戦。

 王家に弓引き、貴族打倒と革命を掲げる彼らを討伐するための作戦。その最終局面で戦うことになったのは、皮肉にも僕たち貴族と同じ貴族が率いる部隊と部隊だった・・・。

 

 逆賊となっていた骸旅団を倒し終えた後の戦場で、勝ち残った側であるはずの味方同士が剣を合わせる歪な戦場。

 その皮肉な噛み合わせこそ、ウィーグラフが言い残した捨てセリフの予言が成就してしまった証明だったのかもしれない・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――私たち、一応は北天騎士団の一員に数えられてはいる士官候補生たちの集団と、アルガスさん率いる騎士団に属する一部隊だけとの戦いは、おそらくは互いに想定外だったであろうことに五分と五分のまま一進一退を続けていくことになっていました。

 

 ガキィン! ガシィン!!と剣と盾、槍と鎧がぶつかり合う金属同士の衝突音があちらコチラから響いてきますけど、その音の発生場所と距離は先程からそんなに変わっていないままで、延々と衝突だけが続いていることを示すものにしかなれていない。

 

 その原因は、敵が今まで戦ってきた骸旅団と違って、全員が正規の訓練を受けてきた騎士団員ばかりというところが一つ。

 今一つは、分厚い騎士たちの壁に覆われた防御陣の後ろから、アルガスさんが与えられたらしい新しい武器のボウガンを、間隙を縫うようにして射込んできては支援射撃を放ってくるせいで危なっかしくて近寄りづらい!っていうのが理由でしょうか――ねっ!!

 

 ガギィィッン!!

 

「チッ! 流石に正規の剣術を1から学んできた相手は楽じゃありませんね・・・っ。これでも私はベオルブ家の長女なんですから少しぐらい手加減してくれても良いでしょうに!」

『・・・・・・―――ッ』

 

 揺さぶり効果があるか無いか分からないまでも、とりあえず言ってみてはいる私の言葉にも無言のまま返事を返さず、ただただ会話の全てを拒絶して私たちベオルブ家の兄妹に斬りかかってくる北天騎士団の正騎士たち!

 

 幸いコチラ側からの離脱者は今のところ一人も出ていないことだけは、私たちにとって幸運だったと断言していい部分でしたけどね!

 アルガスさんの言い様じゃないですが、今回の敵に剣を向けることは北天騎士団に背いたものと判断されてもおかしくない行為。士官アカデミーで同級生同士だったってだけの理由で付き合い続けるには条件の悪すぎる相手たちとの戦い。

 

 それを踏まえて、“言い含めていた”とはいえ、全員が全員受け入れて納得してもらえるとは限らず、後ろから突然襲いかかってこられる危険性もそれなりに高いと思っていた私としては正直助かってる状況ですけど・・・・・・それでさえ永遠に続く友情とは考えにくい。

 不利になってくれば裏切られる危険性は高まる一方である以上、早めに勝負を決したいのは私でなくとも同じでしょうけれど・・・・・・肝心のアルガスさんご自身は分厚い甲冑で身を包んだ騎士たちに守られた鉄の城壁の向こう側に隠れたまま一方的に矢を射ってくるばかり。

 

 ――チッ、つくづくイヤらしい手ばかり使いたがる人ですね・・・持久戦はこっちに取ってだけ不利だって言うのに、畜生・・・ッ。

 

「何故だ? 何故こんなことをしたッ! アルガス、何故だ!?」

「おいおい、ラムザ。これは、お前の兄キの命令で、俺はそれに従ってるだけなんだぜ。何故はないだろう?

 それに、さっきも言ってやったはずだぜ。“たかが小娘のために騎士団の誇りを捨てて要求を飲めと言うつもりか?”ってな!」

 

 そんな硬直した戦況に危機感を感じ始めていた私の鼓膜に飛び込んできたのは、兄様とアルガスさんによる大将同士の舌戦。

 現代日本で生きてた頃、アニメとかで同じような場面を見ていた時には現実味のない無意味なやり取り・・・・・・そんな風にしか感じたことはありませんでしたが、今こうして聞かされながら戦っている身になってみると、思ったよりずっと影響が大きかった行為だったのだなと実感させられる。

 

 自分たちが身体を張って戦っている、その戦闘目的と指示を決めるのが役目の大将が、敵の大将よりも劣っている、負けている、押されている―――という姿を見せつけられながら戦うのは、兵士たちの立場では少々キツいものがあるからです。

 

 精神的にキツい。不安に駆られる、恐怖心が伝播する。

 本当にこの人の指示に従ったままでも大丈夫か?と、そんな思いが浮かんでは消えて再び浮かび上がる。

 現代日本でテレビ画面の向こう側しか見る必要がなかった頃には考えようともしなかった戦闘の側面が、今の自分にはリアルタイムでいるべき場所として私に色々と分からせるのを強要され続ける。

 

「そう言うラムザ、そしてラムダも。お前ら自身はどうなんだ?

 何故、オレと戦っている? 何故オレに剣を向けているんだ?

 北天騎士団長ザルバッグ卿から処置を一任されたオレに剣を向けると言うことは、北天騎士団を裏切ることだぞ!

 お前らはディリータのため、死んだ平民の小娘のためなら、騎士団を率いる家族を敵に回してもいいって言うのか!?」

「クッ・・・それは・・・・・・。しかし・・・、しかし、こんなこと、許されるって言うのか!?」

 

 そんな立場で、お二方の会話を横から聞いているだけの立ち位置だったからなんでしょうかね? 先程からの話を頭の中で整合していく過程で、いくつかの疑問が散見されてたことに気付かされ始めたのを自覚するようになっていました。

 

 たしかにアルガスさんの言うことにも一理ある部分は確実にあり、追い詰められた骸旅団を相手に人質交渉によって要求を飲むことは現実的にあり得ない。

 人質しかカードを持たなくなった相手は、決して人質を手放さないのは確実でしょうからね。

 幾ら要求を聞いてやったところで『今、殺さない』という以上の成果が得られることは決して無いでしょう。

 そして拒否した途端に罰として殺されるか無理心中させられるかの二択だけ。・・・・・・不毛な選択としか言い様がありません。その点で彼は間違ったことは言っていない。

 

 ただ――見方を変えると彼は『今の状況の話』しか語っておらず、故意か無意識か『自分たちが今やった行動の説明』は素っ飛ばして、条件説明だけに終始していたとも言える。

 

 客観的に見て、躯旅団は既に廃滅する寸前の惨状にまで追い詰められている。

 今すぐ短兵急の手段で全滅を急ぐほどの敵とは到底思えない、ザコ集団の生き残り程度の存在。

 

 それをわざわざ犠牲覚悟で強攻策に出なきゃいけないような理由なり、戦略条件やらがあったようには今いち思えない。そんな状況。

 

「許されるさ! むしろ誰が許さないってんだ? 誰の許しが必要になる?

 “北天騎士団の長が命じた攻撃”を“部下であるオレが実行した”。そこに何の問題がある? 誰が許さず裁く権利を持っている?

 ベオルブ家が仕えるラーグ公の政敵ゴルターナ公爵か? ゴルターナ公の側近“雷神シド”か? 南天騎士団か? 病に伏せったまま王都から出馬できないオムドリア国王陛下か?

 誰も出来ないさ! 何も出来ない! 許すしかない! 北天騎士団に属するオレが団長の命令でやったことを裁くと言うなら、ラーグ公爵家に戦争しかけて勝った後にでもなきゃ無理なんだよ!!」

 

「・・・・・・なるほど」

 

 アルガスさんによる勝ち誇ったような“わめき声”を聞き流しながら、自分の中で生じた疑問部分への解析と分析を進める作業に没頭していた私は、彼の放った言葉を聞かされ“おそらくは正解”であろう可能性を一つ見いだすことが出来ました。

 

 表面的にはまっとうな敵への行動。人質を取ったテロリストごときの言い分を聞き入れてやる理由はない治安維持の常識。敵と味方、身分の上下。

 ・・・それら条件を一つ一つだけ見ていけば兄様たちの方が問題行動で、アルガスさんは命令に従っている正しい軍人の在り方を通してるだけに見えるはずなのに、妙にシックリこない部分。

 

 ――北天騎士団側の対応に、“焦り”が感じられすぎる過激な強攻策。

 既に追い詰められて逃げ場を失った残敵の始末ごときで、何故わざわざ父様が養子に引き取った未来の側近候補の妹を殺してでも、今すぐの解決を求めたのか・・・・・・その理由。

 

 おそらくそれは現在の状況から見て、一つだけが一番当てはまる可能性が高い部分。

 だから私は、それを問います。

 確認を得るため、未だ嵩にかかって何かしら喚いているアルガスさんにも聞こえるよう、聞き逃される心配のない言葉の途切れた隙間を狙った疑問形での反問によって。 

 

 

「それでも、ティータは・・・・・・ティータはディリータの妹なんだぞッ!? それを、お前は・・・!」

「いい加減に気付いたらどうだ!? おまえとアイツらは『違う』ってことにな!

 生まれも違うなら、これからの人生もまったく違う! 宿命って言ってもいい!

 ヤツとヤツの妹は、ここにいてはいけなかった! 花でも売って暮らしてればよかったのさ! それなのに分不相応な夢を見るから―――」

 

 

「―――つまり、国王陛下の御様態になにか変化でも起きたというわけですね?

 ラーグ閣下の妹君が嫁いで子を成した、オムドリアⅢ世陛下のご病状が進んでしまった。

 オリナス王子殿下の誕生会で倒れられた後は回復に向かっていた陛下の様態が悪化したことで、後ろ盾となるべき存在が予定より早く崩御される恐れが出てきてしまった。

 だからこそ、情勢の変化に対応するため今すぐ、この作戦を完了しなければいけなくなったから焦っている。・・・・・・そんなところが本心ではないのですかね?」

 

「違いますか? 飼い主に寄生しないと生きていくことも出来ない虫ケラさん。

 自分の身は安全なところに置きながら、為政者の悪口と不満ばかりを言いながら生きていきたがる、家畜より劣る寄生虫ヤロウさん。

 ブタより劣る虫ケラは―――死ねッ!!」

 

 

 

つづく

 




最後で久々に炸裂したラムダちゃんからのラムダ節。

【狂皇子ルカ・ブライト】と【暗黒騎士ランスロット】好きな作者なりのオマージュ台詞ですので、気分を悪くされた方には申し訳ございませんでした(陳謝)
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