平民派DQN女オリ主がいくFFタクティクス 作:ひきがやもとまち
今回の話はゴチャゴチャ解消のため、一部を吐き出して書き捨ててみたネタ放出用の読み切りとお考えください。最近どーも思考がまとまらなくて上手く書けない日が続いているものですから…。
君たちは“獅子戦争”について、どこまでの話を聞いたことがあるだろうか?
かつて、太陽と聖印に護られた双頭の獅子が治める国『イヴァリース』を二分して争われた後継者戦争である『獅子戦争』は一人の若者、ディリータという名を持つ無名の英雄の登場によって幕を閉じたと信じられてきた。
ここで暮らす者なら誰もが知っていた英雄譚だ。“百年ほど前までは”
ここに一冊の書物がある。
歴史の真相の暴露を恐れた教会によって執筆者が捕らえられ、数百年もの間隠匿され続けた末、ようやく執筆者の子孫の手により真実の歴史と真の英雄と彼の子孫の名誉のすべてを回復させるに至らしめた真実の歴史書“デュライ白書”
獅子戦争を終わらせた真の英雄について記されたこの本を基に、執筆者の子孫であるアラズラム・デュライによって描かれ直した“ブレイブストーリー”は、今では広く一般に浸透し、新たな世を生きる若者たちに真の勇気と、真実の英雄の生きざまについて書かれた書籍として毎年売り上げを伸ばし続けている。
だが今年に入って発見された、驚くべき新たな歴史資料が物議をかもしていることは君たちも知るところだろう。
それは民家の書庫から見つかったもので、長年誰も英雄について書かれた一文であったなどとは想像もしないまま放置され続けてきたが故に残されてきた貴重な紙片で、そこに記されていた短い文章が今、世の中すべてを驚愕させている。
なんと、彼の英雄は“男性”ではなく“女性”だったと、そこに記されていたのである。それは真実が暴かれるまで真実とされてきた歴史とも、“デュライ白書”によって明かされた本当の真実ともまったく異なる、前提を覆すほどの大発見だったと学会では言われている。
果たしてどちらが真実の歴史なのだろうか? その問いは私に答えられるものではない。
ただ、一つだけ言えることは“デュライ白書”は、執筆者オーラン・デュライ自身が見聞きした出来事をまとめあげた書物であって、歴史に隠された答えの全てを記すために書かれた本ではないということだけである。
彼は彼なりに歴史と向き合い、後の世に生きる我々に真実を恐れることなく探求する道を示してくれた。
もし、彼の英雄の生きざまと勇気に憧れを抱く者が、この中にいるとするならば、真実の答えを誰かに教えてもらうばかりではなく、今はまだ“歴史のIF”とされている中から答えを探求する旅に出る勇気をこそ学ぶべきだと説教をして、今日の私の講義は終わりとする。
起立、礼、着席。明日の講義にも遅れないように。以上だ。
イヴァリース共和国ガリランド国立大学歴史学講師アーラム・デュライ教授より
――数百年前。
後に自分のことが講義として語られているのと同じ場所、同じ位置に立ちながら、後世の英雄にして、近い将来には異端者となる未来を持つ若者は高い天井を見上げながら不愉快そうに眉根を寄せていた。
原因は、建物の外から響いてくる稲光の不吉そうな音に、ではなく。
建物内部に集められている、人間とかいう二本足で歩いて平和を口で唱えながらも一向に戦争の歴史をやめることができないでいる、愚かな同族たちの交わす会話内容が不愉快そのものだったというだけのこと。
「・・・昨夜もイグーロス行きの荷馬車がやられたんだとさ」
「それも、骸旅団の仕業なのかしら・・・?」
アカデミーに在籍している生徒たちのうち、上級生の全員が集まるよう命じられていた講堂内に、そこかしこから不安を吐露するささやき声が聞こえてきている。
まだ講師が到着していない現在、私語が禁止されているわけではなかったが、不安を抑えきれずに零してしまう声を周囲に聞かれて余計な不安を与えてしまわぬようにとの配慮からか低く抑えられている。
それでいて、ハッキリ聞こえてきている上に、誰もその事を指摘しようとしないところが『オルタ・ベオルブ』にとっては実に馬鹿馬鹿しく見えてしまって仕方がない。
「偉大な先祖を持ち、万民の上に君臨する根拠としている貴族の子弟たちが、たかだか盗賊の被害に怯えるとは情けない限りだね」
ハッキリと言い切って鼻を鳴らす、目つきの悪い金髪の少女貴族の呟きが聞こえたらしい、幾人か中級貴族の子弟たちがギョッとなって彼女の方を向く。
独白としては声が大きかったから、その反応は誇り高き貴族として当然のものではあったものの、相手の顔を見た途端に表情をゆがめると目線を逸らして黙り込む辺りに、彼らの家柄自慢と内実の底が知れてしまってオルタとしては愉快な気持ちになれようはずがない状況だった。
だがオルタはひとつ肩をすくめただけで相手を追撃しようとはせず、うつむいて黙り込んでしまった相手から視線を外して、傍らに立つ信頼すべき幼馴染みの少年の方へと顔と意識を向け直した。
食ってかかってくる気概がある相手ならまだしも、弱い者イジメをする趣味を彼女は持ち合わせていた記憶はなかったからである。
「さて、これからイヴァリースでは何が始まるんだろう? 君なら知らないかな、ディリータ。我が信頼する幼馴染みにして未来の副官殿」
「茶化さないでくれよ、オルタ・・・」
幼い頃からの付き合いである少女の露悪趣味を遺憾なく発揮させられながら語りかけられた、茶色の髪と瞳を持つ、貴族とは思えない騎士見習いの少年『ディリータ・ハイラル』は苦笑しながら前置きして、自身の幼馴染みであり“未来の主君”でもある少女からのご下問に対して、予測され期待しているであろう回答を述べ始める。
「今起きていない未来のことなんて知るわけがないさ。
ただ、ある程度の想像ならつくけどな」
「と言うと?」
「まず、ラーグ公がこの町へおいでになる」
やはり予想通りの回答だったのか、相手の少女はディリータからの返答にさほど驚いたようには見えなかったが、口に出しては意外さを強調させた。友人に対して気をつかったのである。
「ラーグ公が・・・? それは何故?」
「ラーグ公だけじゃない。ランベリーの領主・エルムドア侯爵も、公に次いでお出でになるだろう」
「それは初耳だ。公式訪問ではないな」
オルタは納得させられたように頷いて、親友の能力の高さに満足の意を表したが、取り繕っていたのもそこまでが限界で、つい“地”が出た。
「・・・・・・もっとも、非公式訪問なんだから初耳なのは当然なんだけどさ」
クツクツと、自分自身が先に放った愚かな失言をおかしそうに嗤う親友の姿に、ディリータとしては肩をすくめざるを得ない。
(こういう事をしなければ、もっと人に好かれる善いヤツなんだが・・・・・・)
そう思わずにはいられなかった。
そして思い出す。自分がコイツの家に拾われて、コイツと共に育てられるようになった初めての日のことと、今までのことを僅かな時間だけ振り返る。
彼、ディリータ・ハイラルは貴族のみが通うことを許された士官アカデミーに在籍していながら貴族子弟ではなく、平民出身の騎士見習いだった。
両親を黒死病で同時に失ったとき、当時その地を治めていた先代領主であるオルタの父親バルバネオス・ベオルブ様に養子として引き取っていただき、実の息子や娘たちと同様にかわいがられ、こうして士官アカデミーにも特例として入学を許可していただけた。
偉大なる先代様には感謝しかないが、同時に多少の後ろめたさと複雑な思いをも感じさせられていたのも事実である。
その原因となっているのが、今隣に立って嗤っている自分の親友オルタ・ベオルブであり、彼女を屈折させてしまった自分自身の出自そのものだったからだ。
彼女は幼い頃から正義感が強かったが、一方で正室の子ではなく側室の子であったことと、母親の身分が低いことから劣等感を強く抱かされており、引っ込み思案で我が弱く、自分の気持ちをハッキリと口に出すのが苦手な女の子として育ってきてしまっていた。
バルバネオスが平民の子供であるディリータを養子として迎え入れたことも、オルタの母親が平民出身であったことと無関係ではなかったのだろう。
同格の身分にある者同士で、互いに理性よりも感情が先に立つ子供なら対等の友達になれるかもしれない・・・そう考えた故かもしれない。
仮にそうだったとしても、彼の予測は正しかったことになるのだろう。自分たちはすぐに仲良くなり、親友同士になれたが―――逆にそれが良くない結果を招いてしまった。
―――結局のところ、オルタやバルバネオス様がいくら俺を自分たちと対等に扱ってくれたとしても、ほかの貴族たちにとって俺は永遠に平民の子でしかないって事なんだろう・・・・・・
そんな苦い思いを記憶の中の出来事の総論として出した後、ディリータは軽く頭を振って余計な思考を外へと追いやるとオルタに対して話を再開した。
「今のイヴァリースは、どこもかしこも危険地帯ばかりだ。
騎士団は八面六臂の大活躍だが、実際には人手が足りていない・・・・・・」
「減らした分だけ、こっちが補充してしまっているからね」
またしても辛辣すぎる皮肉な酷評。
ディリータとしては、ここまで来ると聞き流して無視する以外に取るべき道が他にない。
実際、オルタの言うとおりであり現在のイヴァリースで脅威となっている盗賊たちの多くは五十年戦争の敗北によって始まった不経済によって職と収入を奪われた者たちが野盗化したものが大半を占めている。
彼らを討伐するにも金がいる。軍隊という存在は基本的に生産に寄与するところがほとんどなくて、もっぱら壊すこと殺すことを生業としている暴力集団なのだから当然のことだ。
多少は必要物資の買い付けなどで金を落としていってくれはするものの、元々から民の払った税金で支払いを済ませて俸禄をもらっている者たちで形成されている集団である以上、増やされる分より減らされる量の方が遙かに大きいのは自明だろう。
結果、金がなくなって食うに困った者が野盗化して、それを討伐するために騎士団が派遣されるために税が増やされ、足りなくなった分はまた民衆に補充を求めて貧困層を増やし、野盗に走る者を増加させる悪循環を作り出していく・・・・・・負のスパイラルが現在のイヴァリースを覆っている暗雲の正体なのだから、どんなに騎士団が盗賊退治で活躍したところで彼らが根絶されることはあり得ないのだ。
問題の根源となっているものが別のところにあるのだから、それを放置して枝葉の問題にどんなに対処したところで応急処置以上のものにはなりようがない。
当時のイヴァリースが抱えていた混乱が収まらなかった理由は、まさにその一点にこそあったのだから・・・・・・。
「だからこそ、ラーグ公とエルムドア侯爵がこの町へお出でになる。そして、その結果として俺たち士官候補生たちの出番が回ってくるというわけだ」
「・・・つまり君は、ラーグ公とエルムドア侯爵が手を結ぶと・・・?」
自分でも予測していたとおりの答えに親友が達しただけでしかないのはディリータには丸分かりだったし、相手にもその意図は伝わっていたことは疑いないにも関わらず、わざとらしいほど芝居がかった態度で驚きをあらわにしてくる親友の態度にいい加減面倒くさくなってきたらしいディリータは大きく両手を左右に広げて、短く簡明な一言で自分と相手が達していた答えが選ばれる理由を説明して話を無理矢理終わらせた。
「他に打てる手はないだろう? このイヴァリースの状況では」
「・・・・・・確かに。他に手はないだろうね・・・・・・君の言うことは道理だよ」
言い切られて、自分が悪ふざけをしすぎていたことを自覚させられたオルタはばつが悪そうに視線を逸らし、あらぬ方向へと顔ごと向けて親友の視界から自分自身を追い出させる。
今やイヴァリース中に数千規模で蔓延るまでに拡大した盗賊集団を一網打尽にするためには、たとえ国内であろうと大規模な討伐軍を編成して遠征を行う必要があり、ここまで大規模な討伐作戦を行うためには幾つか満たさなければならない条件が存在している。
第一に、参加者全体が盗賊どもを根絶やしにしようとする熱意を共有していること。
ただ一度の大規模作戦で禍根を断ち、数年は枕を高くして眠れるようになるなら一時の犠牲と出費を惜しむべきではないと参加者たちの多くが信じてこそ犠牲を前にして怯むことなく初志を貫徹できるものだからだ。
そして今一つが、経済的支援だ。
経済の支援なくして軍隊も戦争も成り立たない以上、これは致し方がない。大量の兵力を一カ所に集結させることで編成されるのがが大規模討伐軍とは言え、彼らを食わせる側も楽ではないのだ。
最低限この二つを両立させることが、骸旅団殲滅作戦を成立させるためには必須であり、その条件を満たすため最適な人材がラーグ公とエルムドア侯爵二人による同盟締結だった。
ラーグ公はイヴァリースを守護する二つの最強騎士団の片割れである『北天騎士団』を配下に擁する大貴族であり、彼と肩を並べうる存在を貴族の中で探すとするなら『南天騎士団』を擁して同格の爵位と血筋の尊さを持つゴルターナ公以外には存在しない。
今でこそ、骸旅団が主な活動場所としているのがラーグ公の統治しているガリオンヌ地方に集中していることから国境警備の重要性を強調して賊どもの討伐に消極的なゴルターナ公も、同じく統治領を持つ上級貴族のエルムドア侯爵までもが盗賊退治に参加するとなれば状況が変わってくる。
如何に勇名をはせたエルムドア侯爵と言えども、貴族である以上は一人で盗賊退治に赴いてくる訳もなし、親類縁者も含めてかなりの数の貴族たちに檄文が届けられるはずで、彼からの頼みを面と向かって袖に出来る家格の者など数えるほどしかいない貴族たちは内心がどうであろうと参戦せざるを得まい。
まして、エルムドア侯爵が統治するランベリーは広大な穀倉地帯と知られるイヴァリースの食料庫である。彼が加わってくれるだけで補給の心配はほとんどなくなり、野盗退治ごとき北天騎士団単独でもやり遂げてしまいかねない実力を持っている集団なのだから、貴族たちとしては出遅れて自分だけが手柄を立てられない憂き目には遭いたくないところだろう。
なにより、彼らの支配する領地の中にも不平分子や反貴族思想を持つ者たちは日に日に増加していくのには手を焼いているのは確かなのである。
連中は骸旅団に参加こそしていなかったが、貴族相手に立ち回っている彼らの活躍に我も我もと続き始めた「お調子者の日和見主義者ども」である事実に変わりはない。
根を絶たれれば枝葉は枯れるしかない以上、彼らとしては絶てるものなら根を絶ってしまいたいと思うのは当然の心理だった。
こうなってくると、ラーグ公が治めるガリオンヌ領だけの問題であったからこそ、「自分のケツぐらい自分で拭け」の理屈を貫いても一切損をしなくて済んでいたゴルターナ公の旗色は一挙に悪くなってしまう。
国内治安を預かる有力者の一人が、『国中で協力して解決すべきと判断された問題』に一人だけ参加しないなどあってはならない事態だし、それ以前に国内最強と名高い二つの騎士団のうち北天騎士団だけが敵と戦って勝ち名声を得て、自分たちは蚊帳の外で見ているだけだったなどと誇り高き南天騎士団の団員たちまでもが主君への不平不満を抱くようになるのは明らかだった。
たった一人の侯爵を抱き込むだけで、ゴルターナ公としては参加せざるを得ない状況ができあがり、さらには国内6つの統治領を持つ上級貴族たちのうち半数が参加して解決に望む国内治安の問題を他の三名が完全に無関係でいるのも不可能になるだろう。
「よくできた計画だよね。いったい誰が立てたものなんだろう? ザルバッグ兄さんとは思えないし、ダイスダーグ兄さん辺りかな」
「・・・・・・まっ、それは計画を立てた上の人間が考えればいいこととしてだ」
知っていたところで答えられる身分ではない質問を、サラリと無視してディリータは話を纏めて結論を出し、ちょうどタイミング良く聞こえてきた騒々しい鉄製のブーツが立てる足音を扉の向こう側に聞きながら姿勢を正し。
「ご到着だ。無駄話はまた後でな? 親友」
「・・・・・・」
そう言って、軽く腰を叩いてやったときには既に相手も姿勢を正して前を向き、模範的な士官候補生の体を取り繕いながら、今朝方に急遽ガリランド入りしてきた北天騎士団の騎士隊長様からありがたい訓示なり命令なりが言い渡されるのを大人しく待つ体制を整え終えていた。
その時だった。
バタン!!!
「一同、整列ッ!!」
必要以上に大きな音を響かせながら、樫の木で作られた両開きの扉が外側から開かれて、一人の完全武装した北天騎士団の団員とおぼしき男性騎士が入室してくると、声に慌てて整列しなおすため元の位置へと戻っていく学生たちの列のど真ん中を、彼らには一瞥もくれることなく、大きく腕と肩を振り回すように大股な歩調で通り抜けていきながら、生徒たち全員の全面にある壇上に立ち、マントを翻す音を響かせながら生徒たちの方へとようやく振り返って叫ぶ。
「士官候補生の諸君、任務である!」
騎士らしく力強い大声での宣言だった。
大仰なのが好きな男だな、とオルタだけは冷ややかな視線で思っていた。
たかが初陣もまだな士官候補生ごときに大した任務など与える馬鹿な貴族なんて流石にいないだろうにと、心の中で付け足したが声に出しては何も言わずに周囲の反応を眺める。
自分とディリータは例外としても、他は一部を除いて今の叱咤で姿勢と意識を正したように感じられた。そちらの方が余程オルタには馬鹿馬鹿しい。
「諸君らも知っていると思うが、昨今、このガリオンヌの地には野蛮極まりない輩どもが急増している。
中でも、骸旅団は王家に徒なす不忠の者ども。見過ごすことのできぬ逆賊どもだ。一匹たりとも生かしておく訳にはいかない!
我々、北天騎士団は君命により骸旅団殲滅作戦を開始する。
この作戦は大規模な作戦である。北天騎士団に限らず、イグーロス城に駐留するラーグ閣下の近衛騎士団など多くの騎士団が参加する作戦だ。
諸君らの任務は後方支援である。具体的には、手薄となるイグーロスへ赴き、警備の任についてもらいたい」
具体的に彼らのやるべき事を説明してくれた騎士の熱意に応えるように、講堂内に熱気が刻一刻と上昇していくのを肌で感じて、逆にオルタ・ベオルブは心の温度が急激に低下していく自分を抑えられなくなっていく。
・・・皆、気づいていないのだろうか? 今の命令を要約すると『自分たち士官候補生は骸旅団と戦う多くの騎士団の中で頭数にも含まれていない』と断言されたに等しいのだが・・・。 主城の警備もたしかに重要な任務ではあるし、いざ敵が攻めてきたというときに守備兵が弱兵ばかりでは主を守り切れずに、『戦場で勝ったが戦争に負けた』などという事態を避けるためにも疎かにしていい事では決してない。
が、逆に言えば『いざという時』が来るまでは見栄えだけシッカリ警備してくれていればいいだけの存在であり、前線が一兵も通さないと覚悟を決めている軍隊の場合だと自分たちは、『未来のイヴァリースを背負って立つ新進気鋭の若手騎士候補生たち』として、やる気だけは一人前以上のヒヨコの群れとして、見た目だけ息上がっていてくれればそれでいいと思われているような気がしてならないのだが?
――斜に構えて穿った考え方をしている自分を自覚しながらも、それを改める気にどうしてもなれないでいたオルタの背後で音がして、男性騎士が入ってきたときとは真逆に静かな音だけ立てて扉を開き、一人の女性騎士が慌てたように入室してくると男性騎士に何事かを告げ、即座に元来た道を戻っていく光景が展開された。
「士官候補生の諸君、装備を固め、剣を手に取るがいい!!
我々北天騎士団によって撃砕された盗賊団の一味が、この町へ逃げ込もうとしているとの連絡を受けた。我々はこれより町に潜入しようとする奴らの掃討を開始する! 諸君らも同行したまえ!」
何事かと、無言のままにざわめきだす士官候補生たちを鎮めるため、男性騎士は必要以上に声を張り上げ命令を伝達した。
その声を聞いた瞬間、講堂内にいた誰もに緊張が走る。オルタとて、それは例外ではない。当たり前のことだ。
なぜなら自分たちはこれから、人生で初めて実戦の戦場を経験しに行く・・・・・・初陣のため出陣するのだ・・・ッ!!
「これは殲滅戦の前哨戦である! 以上だ! ただちに準備にかかれッ! いざ出陣!!」
『オオオオォォォォォォッ!!!!』
臨時の指揮官役を兼ねることにでもなったらしい北天騎士の号令に応えて、士官候補生たちの多くが緊張を吹き飛ばすためにも威勢良い声を上げて熱意に応え、規範通りに列を乱さず秩序を保ったまま講堂を出て、それぞれの出陣準備を整えるため四散していく。
「・・・まっ、こうでもならないと騎士として手柄を立てるなんて夢物語だからね。仕方がないか」
そんな中、オルタはディリータと並んで併走しながら愛用の剣を持ち出すために部屋へと急ぎ、その途上でそんな自虐めいた言葉を口にする。
実績のない若造がどんなに偉そうな正論を吐いたところで無視されるのは当然のことだ。自分の言葉に説得力を持たせたいなら実際にやって見せて実績を立てていくより他にない。
誰かを救うにせよ、護るにせよ、実績もなく家柄しか取り柄のないお嬢様のままでは侮られるだけで何もさせてもらえないだろうし、それで誰かが救えたり、何かを変えられたりできると思い込むほど自分はもう子供ではない。
自分はもう“あの日から”子供ではいられなくなって久しいのだから・・・
「・・・・・・」
「ん? なんだいディリータ? 僕の顔に何かついているのかな?」
「・・・いや、別に何も」
「ひょっとして、死神でも背中に張り付いてたのかな? ハハッ、できれば初陣ではまだ連れて行かれたくないんだけどな~」
「・・・・・・やめろ、そういう冗談をこういうときに言うことだけは本当に。本気で怒るぞ」
一瞬にして真剣さを増した親友の言葉に、“またしても”やり過ぎた自分を自覚させられ、オルタ・ベオルブは「・・・ごめん、ディリータ」とだけ告げて頭を下げ、ディリータはそれに応えようとせずに頭を振って「――急ぐぞ」とだけ言って走る速度を上げる。
これは英雄の物語であり、IFの歴史を描いた架空の物語であり、一人の少女騎士が性別を偽ってまでナニカを成したいと願った故の物語であり、オーラン・デュライの知らない刻と場所で紡がれていたラムザ・ベオルブの物語である。
後の世で『真の英雄』と呼ばれる若者が、自ら手にした正義と剣で切り開く世界にもたらされるのは秩序か、さらなる混沌か―――
それは後の世で綴られた光り輝く英雄譚の、知られざる影の部分が綴られた歴史でもある。
余談として、他のアイデアには『ファイナルファンタジー・タクティクス・オウガ』とかもあります。
あと、『FFタクティクス・オウガ外伝』とかも。
似たようなもんじゃんと自分も思うんですけどな…。