蘭とお兄ちゃん   作:火の車

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禁断症状には勝てませんでした。


ずっと嫌いだった

裕也「__ありがとうございましたー。」

 

 俺はバイトに来ていた。

 

裕也「(てか、もう一人いるはずだけど、遅刻か?どんな人なんだろ。)」

 

 俺がそんな事を考えてると

 

?「__すいませーん、遅れましたー。」

裕也「あ、来た来た。大丈夫なので準備...を?」

 

 振り向くと、そこには...

 

モカ「あれー?裕君ー?」

裕也「もう一人のバイトってモカだったのか。」

モカ「そうなのですよー。謎のアルバイトの正体は美少女モカちゃんでしたー。」

裕也「まぁ、準備こいな?遅刻の事は内緒にしとくから。」

モカ「おー、流石、裕君ー。」

 

 モカはそう言って、更衣室に行った。

 

裕也「(それにしても、この時間は人が来ないなー。)」

 

 俺がそんな事を思ってると、ドアが開いた。

 

裕也「いらっしゃいませー。」

蘭「あ、お兄ちゃんだ。」

裕也「蘭じゃないか。」

蘭「モカ、ここいる?」

裕也「今、裏に行ったぞー」

蘭「じゃあさ、これをモカに渡しといて__」

モカ「あー、蘭が来てるー。」

蘭「__貰わなくていいや。はい、モカこれ。」

モカ「うんー。ありがとー蘭ー」

裕也「なんだそれ?」

蘭「これは、あたし達の次のライブのチケット。

あとでお兄ちゃんにも渡そうと思ってたんだけど。」

裕也「ライブかー。恥ずかしがりの蘭がかー?」

蘭「もう大丈夫だし!信じられないなら...」

モカ「裕君も来ればいいよー。」

 

 モカはそう言ってさっきのチケットを渡してきた。

 

蘭「!?」

裕也「貰っていいのか?」

モカ「別にいいよー。渡す相手もいないしー」

蘭「ちょ、ちょっとモカ...」

モカ「どーしたのー、蘭ー?」

蘭「...なんでもない。」

モカ「...」

裕也「じゃあ、このチケットは貰っとくよ。ありがとな。」

モカ「いえいえー。」

蘭「...じゃあ、もう帰るね。バイト、頑張って、二人とも。」

裕也、モカ「はーい。」

 

 蘭はそう言って店を出ていった。

 

裕也「それにしても、バンドのライブかー。

皆もそんなことするようになったんだなー。」

モカ「人は成長するものなのですー。」

裕也「最近それを感じるよ。なんか遠くに行っちゃったなー。」

モカ「......ほんとに、モカちゃんが遠くに行ったのかな。」

裕也「?なんか言ったか?」

モカ「いやー、なんでもー?」

裕也「そうか?」

 

 そうして、時間は過ぎていき。

 俺たちのシフト時間が終わった。

________________________

 

裕也「あー、疲れたー。」

モカ「そーだねー。立ってるだけっていうのがまた...」

裕也「だよなー。」

 

 俺たちが歩いてると...

 雨が降ってきた。

 

裕也「はぁ!?雨が降るなんて言ってなかっただろ!」

モカ「ありゃりゃー。これはまずいよー。」

裕也「と、取り合えず、俺の家行くぞ!近いし!」

モカ「りょーかーい。」

 

 俺の家に向かって、全力で走った。

________________________

 

裕也「__うはー、濡れた濡れた。」

モカ「すごい雨だったねー。」

裕也「取り合えず、タオルでも持ってくるなー」

モカ「はーい。」

 

 俺はタオルを取りに行った。

 

裕也「__お待たせー。これで拭くと良いぞー」

モカ「ありがとー。」

裕也「ほら、あがれよ。」

モカ「おじゃましまーす。」

 

 俺たちはリビングに行った。

 

裕也「__えーっと、モカは服が濡れてるな。

貸してみ、乾かしてやるから。」

モカ「え?」

裕也「?」

モカ「...裕君のエッチ~。」

裕也「なんで!?...って、あ。」

 

 俺は考え。

 

裕也「(そうだ、モカももう高校生、年頃の女の子だ。

今の発言はどう考えてもセクハラだ。

昔のノリでつい言っちまった!)」

モカ「まー、この下にも着てるんだけどねー。」

裕也「着てるのかよ!」

モカ「うんー。シャツなんだけどねー。」

裕也「まー、まだマシだな。取り合えずパーカー貸してみ。」

モカ「はーい。」

 

 俺はモカのパーカーを受け取り、乾かしに行った。

 

裕也「__こんなもんだろー。」

モカ「乾くまで暇だねー。」

裕也「そうだなー。」

モカ「昔話でもしよっかー。」

裕也「おー、いいなそれ。」

 

 俺たちは昔話を始めた。

 

裕也「昔は皆、良く公園で遊んでたよなー。」

モカ「そうそうー。その時に蘭が来たりして、今につながったよねー」

裕也「俺と会ったのは蘭と会った後だっけ?」

モカ「そうそうー。迷子になったモカちゃん達を羽沢珈琲店まで送ってくれてー」

裕也「あー、あったあった。それで次の日に俺を見つけてお礼言ってきてたよなー」

モカ「あれは蘭の提案だったんだよー。お礼が言いたいってー。」

裕也「そうだったのか?いやー、嬉しいなー。」

モカ「...それから、皆で遊ぶようになったよねー」

裕也「そこの公園で鬼ごっこしたりしたよなー。」

モカ「裕君はいっつも鬼だったよねー。」

裕也「ジャンケンが弱かったからな。」

モカ「嘘だー、ワザとだったんでしょー」

裕也「ジャンケンでワザととかできるかー?」

モカ「さぁー?」

裕也「まぁ、それは買い被りだぞー。単純に弱かっただけだ。」

モカ「そうなのかなー?」

裕也「そうだぞー。」

モカ「...ねぇー、裕君ー?」

裕也「どうした?」

モカ「裕君はかくれんぼした時の事、覚えてるー?」

裕也「えー?いつのだー?」

モカ「裕君が引っ越す1年前だからー、4年生の時かなー。」

裕也「うーん...あ、冬にやったやつか!」

モカ「それそれー。」

裕也「あの時はなかなかモカが見つからなかったなー。」

モカ「うんー。」

裕也「そのかくれんぼがどうしたんだ?」

モカ「あの時、モカちゃん、寒くて、誰も来てくれなくて、寂しくて、辛かったの。」

裕也「1時間しても出てこなかったからな。確か、閉じ込められてたんだよな。」

モカ「うんー。その時に裕君は見つけてくれたよねー。」

裕也「もしかしたら、と思ったからな。」

モカ「その時の裕君の言葉が、ずっと離れてないの。」

裕也「言葉?___」

 

 ピー♪

 洗濯機が鳴った。

 乾燥が終わったんだろう。

 

裕也「と、取り合えず、取って来るよ。」

モカ「...うんー。」

 

 俺はモカのパーカーを取りに行った。

 

裕也「__ほれ。」

モカ「ありがとー。」

裕也「それで、さっきの話なんだけど__」

モカ「じゃー、今日は帰るねー。」

裕也「え?」

 

 パーカーを着たモカが立ち上がった。

 

裕也「ちょ、ちょっと待って!」

モカ「じゃーねー、裕君ー。」

 

 モカは玄関の方に行った。

________________________

 

裕也「__モカ、待て!」

モカ「んー?どーしたのー?」

裕也「なんでそんなに急いでるんだ?」

モカ「そんな事ないよー」

裕也「いやある。どう考えても様子がおかしい。

言葉って、なんなんだ!」

モカ「...ダメだよ。」

裕也「?」

モカ「それは裕君自身に思い出してほしいのー。だからダメー。」

裕也「言葉...」

 

 俺は記憶をたどった...だが、どれか分からない。

 

モカ「__それと、もう一つー。」

裕也「?」

 

 モカは靴を履いて...

 

モカ「モカちゃんは、ずっと、嫌いだった。

見てくれない裕君...いや、お兄ちゃんも。

見られないモカちゃん自身も。」

裕也「!!!」

 

 モカは家を出ていった。

 

裕也「モカ!」

 

 俺は慌てて家を出た。

 だが、もうそこにはモカの姿はなかった。

 

裕也「モカ...」

 

『ずっと嫌いだった。』

 

裕也「どういう事なんだよ...俺は皆が...」

 

 俺は激しい焦燥感を感じた。




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