蘭とお兄ちゃん   作:火の車

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今週はこの作品の週間です。


思いの始まり

裕也「__ね、眠れなかった。」

 

 俺はモカの言葉が頭から離れず、徹夜をした。

 俺はいまだにモカの言葉を理解することが出来なかった。

 

裕也(あれは、どういう事なんだ?モカが俺を好き?)

 

 思考がまとまらない。

 モカに限ってそんな事があるなんて、いや、意味が違う可能性もあるかも......

 

裕也「あー!分からん!取り合えず学校だ!」

 

 俺は迷いを振り切り、身支度を整え学校に行った。

________________________

 

日菜「__おはよー!裕也君!」

裕也「おはよう、日菜。」

 

 徹夜明けの身体に鞭打って学校に来ると、日菜が話しかけてきた。

 

日菜「うわっ!すごいクマだよ!?」

裕也「いやー、色々考えてたら寝れなくなってな......」

日菜「あんまり無理すると体壊すよー?」

裕也「気を付ける。」

麻弥「おはようございます!二人とも!」

日菜「麻弥ちゃんだー!おはよー!」

裕也「おはよー大和。」

麻弥「え!?和田さんそのクマどうしたんですか!?」

裕也「それはもう見た。」

麻弥「え?」

裕也「いや、なんでもない。」

 

 俺はしばらく日菜、麻弥と談笑していた。

 日菜が話題を振り、俺と麻弥が相打ちを打つ、それが基本的な流れだ。

 

裕也(しかし、俺はモカにどうするべきなんだろう。そもそも、俺はモカをどう思ってるんだ?)

日菜「__でさー!......って、裕也君?」

裕也「んあ?あ、あぁ、どうした?」

日菜「どうしたの?すっごい上の空だったよ?」

裕也「悪い悪い。」

日菜「さっきの一晩考えてたこと?」

麻弥「何か悩みならジブン達に相談してくださいね?力になれることがあれば力になりますし。」

裕也「じゃあ、二人に質問していいか?」

日菜「質問ー?」

麻弥「なんですか?」

裕也「......二人は好きな人とかいたことあるか?」

日菜、麻弥「え?」

裕也「いたことがあるんだとしたら、その時の気持ちを聞きたいんだが。」

日菜「うーん。それはどういう意味でー?」

裕也「恋愛的な意味だ。」

麻弥「それならジブンは無かったですね?」

日菜「あたしもー。」

裕也「そうか......」

日菜「あ!」

 

 日菜は何かを思いついたような声をあげ、勢いよく立ち上がった。

 

日菜「こういう話にはリサちーだよ!」

裕也「今井?」

日菜「うん!リサちーならいたことあるかも!」

麻弥「そ、そうですね?」

日菜「だよね!じゃあ、早速行こ!」

裕也「え、ちょ、ま___」

 

 俺は日菜に引っ張られA組に向かった。

 その通り道で他の生徒に奇異の目で見られたが、気のせいだろう。

________________________

 

日菜「__リサちー!」

リサ「日菜?どうしたの?」

友希那「何かデジャヴを感じるわね。」

日菜「今日はリサちーに聞きたいことがあって!裕也君が!」

リサ「和田君が?」

裕也「あぁ。もう今井だけが頼りなんだ。」

リサ「え?どうしたの?」

裕也「今井は好きな人とかいたことがあるか?」

リサ「......え?」

日菜「もう、裕也君を助けられるのはリサちーだけなんだよ。お願い、リサちー。」

リサ「え?えぇ!?」

 

 今井はひどく困惑したような顔をしてる。

 友希那は真顔だ。

 

裕也「今井......!」

リサ「え、えーっと、あるっちゃある、かなー?」

友希那「え?あるの?」

リサ「よく覚えてないんだけど、昔、旅行に行ったときに、って、その時、友希那も旅行一緒だったよ?」

友希那「え?」

リサ「あたし達が喧嘩してさ。」

友希那「......思い出したわ。」

リサ「その時に話してくれた男の子があたしの初恋、だったのかなー?」

裕也「なるほど。それで、その時の気持ちはどんなだった?」

リサ「なんて言うか、その男の子を思い出すと、なんだか勇気が出てきて、でも少し後悔するかな。」

裕也「後悔?」

リサ「あの時に小さいなりにでも思いを伝えてればよかったって。」

裕也「ふむ。」

リサ「だからさ、あたしが思うのは後悔しないようにするのがいいのかなーって。」

裕也(モカもそうなのか?いや、恐らくそうなんだろう。だったら!)

日菜「裕也君?」

裕也「......俺の行動は決まったぞ!」

リサ、友希那、日菜「!?」

裕也「今行くぞ、モカー!」

リサ「え?モカ?」

裕也「うおあぁぁぁ!__って、あ。」

 

 ガッシャーン!!!

 俺は気持ちが走り過ぎたのか、徹夜明けの身体が付いて来ず、思いっきり転倒してしまった。

 

リサ「わ、和田君!?」

裕也「......ZZZ」

友希那「......寝てるわね。」

日菜「あー、裕也君、徹夜明けだったからねー。」

友希那「何をしてるのかしら?」

リサ「と、とりあえず、保健室釣れて行こっかー。」

日菜「手伝うよー。」

リサ「ありがと☆」

 

 裕也はリサと日菜に保健室へ搬送された。

________________________

 

裕也「___ん、ここは......?」

 

 俺は周りを見た。

 ここはどうやら保健室らしい、窓からは赤い夕焼けの日の光が差しており、かなり時間が経ったことが分かる。

 

裕也「やっばい。ほぼ一日寝ちまったよ。」

モカ「__裕君いますかー?」

裕也「も、モカ!?」

モカ「あーいたー。」

裕也「な、何の用で来たんだ?」

 

 仕切りのカーテンを開け、モカが顔をのぞかせて来た。

 俺は気絶する目の記憶からか、モカが来たことにかなりテンパってしまった。

 

モカ「裕君が転んで気絶したってリサさんから聞いたよー。」

裕也「いやー、聞けば聞くほど情けないな。」

モカ「さて、裕君はどうしたのかなー?」

 

 モカは俺を見据えるような眼で見て来た。

 モカの大きな瞳には俺の焦ってる顔が映っている。

 

裕也「い、いやー、色々あってなー。」

モカ「......モカちゃんのせいでしょー?」

裕也「!?」

モカ「だって、お兄ちゃんの悩みなんてモカちゃん以外ないよねー」

裕也「ま、まぁ、モカの事は考えてたが。」

モカ「ごめんねー、お兄ちゃんー......」

 

 モカはどことなく落ち込んだ顔をしている。

 俺はそんなモカに手を伸ばした。

 

裕也「......謝らなくてもいいって。」

モカ「!」

 

 俺はモカの頭を撫でた。

 モカは驚いた表情だ、だが、俺は構わず撫で続けた。

 

裕也「俺は嬉しかったよ、モカ。モカが俺の事を思っててくれて、しかも何年も。」

モカ「それは、お兄ちゃんが、かっこよくて、優しかったからだよー」

裕也「ありがとうな。」

モカ「いえいえ~」

裕也「でも、聞いてくれ、モカ。」

モカ「......うんー。」

 

 俺はモカに自分の気持ちを言う事にした。

 

裕也「俺は皆が好きだ、それに優劣は付けられない。」

モカ「うん。」

裕也「だから......」

モカ(フラれるんだろうなー......そうだよね、だって、お兄ちゃんは皆のお兄ちゃんだもんねー)

裕也「だから......」

モカ(さよーならー、あたしの初恋ー)

裕也「__だから、あと1年待ってくれ。」

モカ「......え?」

裕也「今の俺じゃモカを恋愛対象として見れない、でも、時間を書ければあるいはと思ったんだが。」

モカ「......」

 

 モカは面食らったような顔をしている。

 多分、こうなるとは思っていなかったんだろう。

 

裕也「情けない話で済まないが__」

モカ「別にいいよー。」

裕也「え?」

モカ「だってー、9年待ったんだしー、1年なんてすぐだよー。」

裕也「......ごめん。」

モカ「あとー、お兄ちゃんには、もう少し何かあるかもだから、モカちゃんを選ぶのは時期しょーそーだよー。」

裕也「どういう事だ?」

モカ「なんでもなーい。」

裕也「?」

 

 モカは意味深な言葉を言ってから、こっちに背中を向けた。

 

モカ「じゃー、モカちゃんはそろそろ行くねー。」

裕也「え?」

モカ「今日はしっかり休むんだよー。」

裕也「待って、さっきのはどういう__

モカ「じゃーねー。」

 

 モカがカーテンを閉めた後、ドアの音が聞こえた。

 保健室は物音ひとつしない、静かな空間だ。

 

裕也「時期尚早?どういうことなんだ......?」

 

 この時の俺にはあの言葉の意味を理解できなかった。

 その後、沈む日を見てあわてて家に帰った。

________________________

 

 ”モカ”

 

 モカは楽しそうに夕焼けが照らす道を歩いている。

 その表情はどこか満足そうな、楽しみが待ってる子供のようなそんな表情だ。

 

モカ(1年かー、これは絶対に何かあるよねー)

 

 モカは夕焼けを見た。

 夕焼けはいつも通り、綺麗な赤色だ。

 

モカ(昔からの思いと、目覚めた思い、これから目覚める思いも、全部お兄ちゃんに......)

 

モカ「__なーんて、思ってみたりしてー。」

 

 モカは鼻歌を歌いながら家に帰って行った。

 家についた頃には夕焼けは沈み、夜の空に染まり切っていた。




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