裕也「__ね、眠れなかった。」
俺はモカの言葉が頭から離れず、徹夜をした。
俺はいまだにモカの言葉を理解することが出来なかった。
裕也(あれは、どういう事なんだ?モカが俺を好き?)
思考がまとまらない。
モカに限ってそんな事があるなんて、いや、意味が違う可能性もあるかも......
裕也「あー!分からん!取り合えず学校だ!」
俺は迷いを振り切り、身支度を整え学校に行った。
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日菜「__おはよー!裕也君!」
裕也「おはよう、日菜。」
徹夜明けの身体に鞭打って学校に来ると、日菜が話しかけてきた。
日菜「うわっ!すごいクマだよ!?」
裕也「いやー、色々考えてたら寝れなくなってな......」
日菜「あんまり無理すると体壊すよー?」
裕也「気を付ける。」
麻弥「おはようございます!二人とも!」
日菜「麻弥ちゃんだー!おはよー!」
裕也「おはよー大和。」
麻弥「え!?和田さんそのクマどうしたんですか!?」
裕也「それはもう見た。」
麻弥「え?」
裕也「いや、なんでもない。」
俺はしばらく日菜、麻弥と談笑していた。
日菜が話題を振り、俺と麻弥が相打ちを打つ、それが基本的な流れだ。
裕也(しかし、俺はモカにどうするべきなんだろう。そもそも、俺はモカをどう思ってるんだ?)
日菜「__でさー!......って、裕也君?」
裕也「んあ?あ、あぁ、どうした?」
日菜「どうしたの?すっごい上の空だったよ?」
裕也「悪い悪い。」
日菜「さっきの一晩考えてたこと?」
麻弥「何か悩みならジブン達に相談してくださいね?力になれることがあれば力になりますし。」
裕也「じゃあ、二人に質問していいか?」
日菜「質問ー?」
麻弥「なんですか?」
裕也「......二人は好きな人とかいたことあるか?」
日菜、麻弥「え?」
裕也「いたことがあるんだとしたら、その時の気持ちを聞きたいんだが。」
日菜「うーん。それはどういう意味でー?」
裕也「恋愛的な意味だ。」
麻弥「それならジブンは無かったですね?」
日菜「あたしもー。」
裕也「そうか......」
日菜「あ!」
日菜は何かを思いついたような声をあげ、勢いよく立ち上がった。
日菜「こういう話にはリサちーだよ!」
裕也「今井?」
日菜「うん!リサちーならいたことあるかも!」
麻弥「そ、そうですね?」
日菜「だよね!じゃあ、早速行こ!」
裕也「え、ちょ、ま___」
俺は日菜に引っ張られA組に向かった。
その通り道で他の生徒に奇異の目で見られたが、気のせいだろう。
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日菜「__リサちー!」
リサ「日菜?どうしたの?」
友希那「何かデジャヴを感じるわね。」
日菜「今日はリサちーに聞きたいことがあって!裕也君が!」
リサ「和田君が?」
裕也「あぁ。もう今井だけが頼りなんだ。」
リサ「え?どうしたの?」
裕也「今井は好きな人とかいたことがあるか?」
リサ「......え?」
日菜「もう、裕也君を助けられるのはリサちーだけなんだよ。お願い、リサちー。」
リサ「え?えぇ!?」
今井はひどく困惑したような顔をしてる。
友希那は真顔だ。
裕也「今井......!」
リサ「え、えーっと、あるっちゃある、かなー?」
友希那「え?あるの?」
リサ「よく覚えてないんだけど、昔、旅行に行ったときに、って、その時、友希那も旅行一緒だったよ?」
友希那「え?」
リサ「あたし達が喧嘩してさ。」
友希那「......思い出したわ。」
リサ「その時に話してくれた男の子があたしの初恋、だったのかなー?」
裕也「なるほど。それで、その時の気持ちはどんなだった?」
リサ「なんて言うか、その男の子を思い出すと、なんだか勇気が出てきて、でも少し後悔するかな。」
裕也「後悔?」
リサ「あの時に小さいなりにでも思いを伝えてればよかったって。」
裕也「ふむ。」
リサ「だからさ、あたしが思うのは後悔しないようにするのがいいのかなーって。」
裕也(モカもそうなのか?いや、恐らくそうなんだろう。だったら!)
日菜「裕也君?」
裕也「......俺の行動は決まったぞ!」
リサ、友希那、日菜「!?」
裕也「今行くぞ、モカー!」
リサ「え?モカ?」
裕也「うおあぁぁぁ!__って、あ。」
ガッシャーン!!!
俺は気持ちが走り過ぎたのか、徹夜明けの身体が付いて来ず、思いっきり転倒してしまった。
リサ「わ、和田君!?」
裕也「......ZZZ」
友希那「......寝てるわね。」
日菜「あー、裕也君、徹夜明けだったからねー。」
友希那「何をしてるのかしら?」
リサ「と、とりあえず、保健室釣れて行こっかー。」
日菜「手伝うよー。」
リサ「ありがと☆」
裕也はリサと日菜に保健室へ搬送された。
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裕也「___ん、ここは......?」
俺は周りを見た。
ここはどうやら保健室らしい、窓からは赤い夕焼けの日の光が差しており、かなり時間が経ったことが分かる。
裕也「やっばい。ほぼ一日寝ちまったよ。」
モカ「__裕君いますかー?」
裕也「も、モカ!?」
モカ「あーいたー。」
裕也「な、何の用で来たんだ?」
仕切りのカーテンを開け、モカが顔をのぞかせて来た。
俺は気絶する目の記憶からか、モカが来たことにかなりテンパってしまった。
モカ「裕君が転んで気絶したってリサさんから聞いたよー。」
裕也「いやー、聞けば聞くほど情けないな。」
モカ「さて、裕君はどうしたのかなー?」
モカは俺を見据えるような眼で見て来た。
モカの大きな瞳には俺の焦ってる顔が映っている。
裕也「い、いやー、色々あってなー。」
モカ「......モカちゃんのせいでしょー?」
裕也「!?」
モカ「だって、お兄ちゃんの悩みなんてモカちゃん以外ないよねー」
裕也「ま、まぁ、モカの事は考えてたが。」
モカ「ごめんねー、お兄ちゃんー......」
モカはどことなく落ち込んだ顔をしている。
俺はそんなモカに手を伸ばした。
裕也「......謝らなくてもいいって。」
モカ「!」
俺はモカの頭を撫でた。
モカは驚いた表情だ、だが、俺は構わず撫で続けた。
裕也「俺は嬉しかったよ、モカ。モカが俺の事を思っててくれて、しかも何年も。」
モカ「それは、お兄ちゃんが、かっこよくて、優しかったからだよー」
裕也「ありがとうな。」
モカ「いえいえ~」
裕也「でも、聞いてくれ、モカ。」
モカ「......うんー。」
俺はモカに自分の気持ちを言う事にした。
裕也「俺は皆が好きだ、それに優劣は付けられない。」
モカ「うん。」
裕也「だから......」
モカ(フラれるんだろうなー......そうだよね、だって、お兄ちゃんは皆のお兄ちゃんだもんねー)
裕也「だから......」
モカ(さよーならー、あたしの初恋ー)
裕也「__だから、あと1年待ってくれ。」
モカ「......え?」
裕也「今の俺じゃモカを恋愛対象として見れない、でも、時間を書ければあるいはと思ったんだが。」
モカ「......」
モカは面食らったような顔をしている。
多分、こうなるとは思っていなかったんだろう。
裕也「情けない話で済まないが__」
モカ「別にいいよー。」
裕也「え?」
モカ「だってー、9年待ったんだしー、1年なんてすぐだよー。」
裕也「......ごめん。」
モカ「あとー、お兄ちゃんには、もう少し何かあるかもだから、モカちゃんを選ぶのは時期しょーそーだよー。」
裕也「どういう事だ?」
モカ「なんでもなーい。」
裕也「?」
モカは意味深な言葉を言ってから、こっちに背中を向けた。
モカ「じゃー、モカちゃんはそろそろ行くねー。」
裕也「え?」
モカ「今日はしっかり休むんだよー。」
裕也「待って、さっきのはどういう__
モカ「じゃーねー。」
モカがカーテンを閉めた後、ドアの音が聞こえた。
保健室は物音ひとつしない、静かな空間だ。
裕也「時期尚早?どういうことなんだ......?」
この時の俺にはあの言葉の意味を理解できなかった。
その後、沈む日を見てあわてて家に帰った。
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”モカ”
モカは楽しそうに夕焼けが照らす道を歩いている。
その表情はどこか満足そうな、楽しみが待ってる子供のようなそんな表情だ。
モカ(1年かー、これは絶対に何かあるよねー)
モカは夕焼けを見た。
夕焼けはいつも通り、綺麗な赤色だ。
モカ(昔からの思いと、目覚めた思い、これから目覚める思いも、全部お兄ちゃんに......)
モカ「__なーんて、思ってみたりしてー。」
モカは鼻歌を歌いながら家に帰って行った。
家についた頃には夕焼けは沈み、夜の空に染まり切っていた。
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