蘭とお兄ちゃん   作:火の車

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ロゼリアの話です


勉強会をしよう

 今は5月下旬だ。

 太陽は着々とウォーミングアップを進め、段々と気温が上がっている。

 

裕也「__太陽のビルドアップ......」

リサ「え?どうしたの?」

裕也「あ、なんでもないぞ。」

 

 俺はそんな中、例の如くバイトに来ていた。

 このバイトを始めて少し経ったが、かなり慣れたと思う。

 今井ともかなり仲良くなり、バイト中も話したりするようになっていた。

 

リサ「それでさ、さっきの話なんだけど。」

裕也「なんて言ってたっけ?」

リサ「もー!中間テストだよ!」

裕也「中間テスト?もうそんな時期だったか?」

リサ「うん。だからさ、皆で集まって勉強会しようよー。」

裕也「勉強会かー、楽しそうだなー。」

リサ「でしょ!」

裕也「まぁ、勉強会をするのはいいんだが、メンバーは?」

リサ「日菜は仕事でこれないから、あたしのバンドのメンバーかな?」

裕也「あー、前に言ってた、ロゼリアだっけ?」

リサ「うん!皆いい子だよ!」

裕也「でもいいのか?俺が入っても?」

リサ「大丈夫だよ!友希那もいるし、折角和田君と友達になったから紹介したいもん!」

裕也「んー、まぁ、そういう事なら参加させてもらおうかな。」

リサ「オッケー☆じゃあ、日程は__」

客「あのー、これお願いしまーす。」

裕也「はい!......話の続きは後でな。」

リサ「うん!」

 

 俺たちは各々、仕事をこなした。

 あまり客は来なかったが意外と仕事は多い、品出し、店内の清掃、揚げ物の調理、入れ替えなど、その他様々だ。

 そんな仕事をしてるうちにシフトの時間が終わった。

________________________

 

リサ「__やーっと終わったー!」

裕也「お疲れ様、今井。」

リサ「和田君もお疲れー!」

 

 バイトが終わった後は今井と帰るのが最近のお決まりの流れだ。

 もう日が落ちるのはだいぶ遅いが、この時間になると暗くなり、女の子を一人で歩かせるのは危険だ。

 今井と帰るのはボディガード的な役割でもあると俺は勝手に解釈してる。

 

リサ「ねぇ、和田君?」

裕也「どうした?」

リサ「さっきの話なんだけどさ。」

裕也「あー、勉強会の話か?」

リサ「うん、そう!それで、日程なんだけど、明後日くらいでもいい?和田君もシフト入ってないよね?」

裕也「そうだな、うん、大丈夫だ。」

リサ「じゃあ!明後日ってことで!」

裕也「りょーかい。」

リサ「あ、あたしの家そこだから行くね!」

裕也「うん、またなー。」

リサ「うん!ばいばい!」

 

 今井はそう言って家に入って行った。

 さっきまで話していた子がいなくなったのに少しの寂しさを感じつつ、俺も家に帰って行った。

________________________

 

 二日後、勉強会の日になった。

 俺は帰りの用意を手早く済ませ、足早に教室を出た。

 だが、俺はとあることに気付いた。

 

裕也(__って、集合場所聞いてないんだった。どうしよ。)

リサ「和田くーん!」

裕也「今井?」

リサ「もう教室出てたの?早いねー?」

裕也「待たせるのは悪いなと思ってたんだ。」

リサ「うんうん!良い心がけだねー!モテるよー!」

裕也「そんなもんなのか?」

リサ「そう言うものだよ!」

友希那「......何の話をしてるの?」

裕也「あ、湊だ。てか、気付かなかった。悪い。」

友希那「別にいいわ。それよりも早く行きましょ。」

リサ「そうだね!行こ、和田君!」

裕也「りょーかい。」

 

 俺は今井と湊について行った。

________________________

 

 俺たちは商店街を通り過ぎ、とあるファミレスに来た。

 道のりは中々暑くて、のどが渇いてきた。

 

リサ「__お待たせー!皆!」

紗夜「いえ、私達も今来たところです。」

燐子「こんにちは。」

友希那「待たせたわね。」

紗夜「いえ、私達もさっき着いたところです。それで、そちらの方は?」

リサ「あ、そうだった!この人が和田君だよ!」

裕也「えっと、和田裕也です。」

紗夜「はじめまして。私は氷川紗夜です。」

燐子「白金燐子......です。」

裕也「氷川?どっかで聞いたような?」

リサ「紗夜は日菜のお姉ちゃんなんだよー。」

裕也「なるほど、道理で。」

紗夜「日菜がいつもお世話になってます。お話はよく伺っています。」

裕也「こっちこそ、日菜には世話になってるよ。」

紗夜「え?日菜に?」

裕也「?」

燐子「あの......今井さん?」

リサ「んー?どうしたのー?」

燐子「あこちゃんは......一緒じゃないんですか?」

リサ「あこ?......あっ。」

友希那「......忘れてたわ。」

裕也(あこ?いやいや、そんな偶然はな。)

あこ「__リサ姉ー!友希那さーん!」

 

 ファミレスのドアを勢いよく開け、少し怒ったような声を上げた子が入ってきた。

 

あこ「もー!置いて行くなんてひどいですよー!って、裕也兄?」

裕也「あこ?なんでここに?」

友希那「あこは私たちのバンドのメンバーの一人よ。」

あこ「うん!あこはロゼリアのドラマーだよ!」

裕也「すごいな、世間は意外と狭いな。」

紗夜「あの、早速ですが勉強を始めませんか?」

 

 氷川がそう言うと、ある子達の肩が跳ねた。

 

友希那「べ、勉強?」

あこ「きょ、今日はライブの打ち合わせなんじゃ......?」

紗夜「えぇ、そう言わないとお二人は来なかったでしょう?」

あこ「あ、あこ、りんりんから聞いて......」

燐子「ご、ごめんね......あこちゃん......」

友希那「り、リサ、謀ったわね......!」

リサ「ご、ごめん~」

裕也「二人は勉強嫌いなのか?」

リサ「うん、それはもう。」

紗夜「ひどいものです......」

 

 二人は肩を落としている。

 かなり苦労してるんだろう。

 てか、なんであの学校に入れたんだ?

 

紗夜「それでは、ビシバシ行きますよ。覚悟してください。」

友希那「......」

あこ「......」

 

 その後は中々、可愛そうなことになっていた。

 まぁ、主な原因は氷川のスパルタ指導なわけだが、友希那とあこはどこかげっそりしてる気がする。

 

裕也(......大丈夫なのか、あれは?)

燐子「あの......手が止まってますが......大丈夫ですか?」

裕也「えっと、白金だっけ?」

燐子「はい......あの、それで。」

裕也「あー、俺は大丈夫だぞ。考え事してただけだ。」

燐子「そ、そうですか。」

裕也「心配してくれてありがとう。」

燐子「いえ.....」

リサ「二人とも話せるようになったんだね☆」

裕也「まぁ、白金はいい子そうだからな。」

リサ「うんうん!見る目あるねー!」

燐子「そ、そんな......今井さんの方が......」

裕也(仲がよさそうで安心安心。)

紗夜「そこの三人も手伝ってくれませんか?」

裕也「え?」

紗夜「どうも私一人じゃ手が回らなくて。」

リサ「し、仕方ないかー。」

燐子「お、お疲れ様......です。」

裕也「湊とあこは大丈夫なのか?」

 

 そこからは色々大変だった。

 湊の目からハイライトが消えて意味の分からなことを言い出したり、あこの口調が変わったり。それを今井と白金が介抱したりと、ファミレスで何やってるんだよって言いたくなった。

 それから少しの時が過ぎ、時刻は7時を回った。

 

紗夜「__そろそろ帰らなければいけないですね。」

裕也「あー、もうそんな時間か。」

リサ「そろそろ帰ろっかー。」

燐子「そう......ですね。」

友希那「終わったの......?」

リサ「そうだよー。」

あこ「やっと、やっと、終わったよ......」

紗夜「ですが、あと6日は勉強会ですよ?」

友希那、あこ「」

裕也(......ご愁傷様。)

紗夜「和田君も今日はお疲れ様でした。」

裕也「おう。氷川もお疲れ?」

燐子「今日は......楽しかったです。」

裕也「俺も楽しかったよ、ありがとう、白金。」

リサ「うんうん!仲良くなれてよかったよ!」

 

 それから、俺たちは解散した。

 俺はいつものパターンで今井と湊と帰った。

 湊は終始ぶつぶつ何かを呟いていたが、闇が深すぎるので聞かなかったことにした。

 

 それからテストまでの残り六日、湊の目に光が戻ることは、なかった。

 

 

 




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