蘭とお兄ちゃん   作:火の車

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蘭の出番が久しぶりな気が......


予感?

 中間テストが終わり一息つける季節になった。

 6月にもなり、段々と梅雨に近づいている、はずなんだが......

 

男子1「__体育祭だー!」

男子たち「うおぉぉぉお!」

 

 雨雲を吹き飛ばすほどの勢いで、男子たちは盛り上がっていた。俺も体育祭は楽しみだが、あそこまで盛り上がることはない。でも、なんであそこまで盛り上がってるんだ?

 

男子2「高校3年間、彼女なんてできなかった......」

男子3「これが最後のチャンスだ。」

男子4「絶対モノにしてやる!」

裕也(あー、そういう事かー。)

日菜「あはは!皆面白いねー!」

裕也「まぁ、動機が不純そのものだけどな。」

麻弥「ま、まぁ、やる気があるならいいんじゃないですか?」

裕也「彼女がどうのこうのとかは俺にはよくわからないなー。」

麻弥「ジブンもあまり。」

日菜「うーん。」

裕也「どうした?」

日菜「いやさ、裕也君って蘭ちゃんに彼氏が出来たりしたらどう思うのかなって?」

裕也「え......?蘭が......?」

 

 ”想像”

 

蘭『お、お兄ちゃん、あたしさ彼氏できたんだ。』

裕也『え?そ、そっか、よかったな!』

蘭『今までお世話になったお兄ちゃんに一番に報告したくてさ。』

裕也『い、いやー、お兄ちゃん冥利に尽きるなー』

蘭『でもね。』

裕也『ん?』

蘭『これからはさ○○がいるから、お兄ちゃんに迷惑かけずに済むよ。』

裕也「え?そんな、迷惑なんて。」

蘭『今までありがとう、お兄ちゃん。』

○○『おーい!らーん!』

蘭『あ、○○!じゃあ、行くね、お兄ちゃん!』

裕也『ら、蘭。』

蘭『また何かあったら一番にお兄ちゃんに教えに来るからね!』

 

 蘭の背中が段々と遠くなっていく。

 その向こうには顔は見えないが、蘭の彼氏の姿が見える。

 

蘭『__あたし、幸せになったよ。お兄ちゃん。』

 

 そして最後に、ウィディングドレスの蘭が微笑みながら、そう言った。

 

 ”想像終了”

 

裕也「......」

麻弥「わ、和田さん?......って、泣いてる!?」

裕也「蘭......幸せになるん、だぞ......」

麻弥「和田さん、戻ってきてくださーい!」

裕也「__っは!ら、蘭は!?」

麻弥「いや、ここにはいないですよ!」

日菜「あははー!裕也君おもしろーい!」

裕也「やばい、意識が別世界に行ってた。」

麻弥「どんなにショック受けてるんですか?」

裕也「なんだろう、愛娘が嫁に行くときの父親ってああいう気持ちなんだな。」

麻弥「どこまで想像してたんですか?」

裕也「取り合えず、蘭の結婚相手が見えて、殴ってやろうかと思った。」

麻弥「父親!?」

日菜「でも、それがいつか現実になって......」

裕也「......蘭の所に行ってくる。」

麻弥「待ってください!日菜さんも冗談は駄目ですよ!」

日菜「でもさ、蘭ちゃんって可愛いじゃん?」

裕也「あぁ、蘭は超絶かわいい。」

日菜「そんな子をさ、男子が本当にほっとくかな?」

麻弥「い、言われてみれば確かに。」

日菜「蘭ちゃんだけじゃなくて、他の子だって......」

裕也「ま、待て。」

日菜「裕也君に彼氏を見せに来るかも......」

裕也「やめろー!!」

 

 俺はあまりの恐怖から叫び声をあげた。

 そんな未来は考えたくもない。想像しただけでぶっ倒れそうになる。

 

裕也「......全員、俺が養う。」

麻弥「とんでもない事言い出した!?」

日菜「あはは!」

 

 そんなこんなんで、体育祭の競技やらなんやらが決まって行き、放課後になって行った。

________________________

 

 放課後、俺は特に何もやることもなく、教室でぼーっとしていた。

 周りでは、この後遊びに行こうやら、体育祭の話やら、高校生らしい若々しい会話が聞こえてくる。

 そんな中、洗濯物の事や不足してる食材、調味料を考える辺り俺は中々お爺さんなんだろうか。

 

蘭「__お爺さんみたいな顔してるよ、お兄ちゃん?」

裕也「んー?蘭かー......って、蘭が何でここに!?」

蘭「えっと、お兄ちゃんに用があって。」

裕也「ま、まさか......」

蘭「?」

裕也「か、彼氏か!?」

蘭「え?なんで?」

裕也「違うのか?」

蘭「うん、てか、なんで彼氏?」

裕也「いや、なんでもない。」

 

 昼の話を引っ張り過ぎた。

 そう、蘭はお兄ちゃん子なんだぞ!彼氏なんかできるわけない!出来ない......ですよね?

 

裕也「それで、何の用で来たんだ?」

蘭「えっと、体育祭の後にやる後夜祭ってあるの。」

裕也「あー、そう言えばそんなのあったなー。」

蘭「それで、その、その時のダンス、お兄ちゃんと踊りたいなって。」

裕也「え?」

蘭「だめ、かな?」

裕也「別にいいぞー。どうせ誰にも誘われないからな!」

蘭「そんなに誇る事?それ。」

裕也「......だって、皆、俺にそんなに興味ないだろうし。」

蘭「......見る目ないね。最近の子って。」

裕也「ん?なんか言ったか?」

蘭「いや、なんでもないよ。」

裕也「そうか?」

蘭「ともかく、後夜祭、あたしと一緒に踊ろうね。」

裕也「うん、いいぞー。」

蘭「やった。じゃあ、約束だよ!」

 

 そう言って蘭は嬉しそうに教室を出ていった。

 うん、蘭が嬉しそうで何よりだな!

 

日菜「__裕也君は蘭ちゃんが好きなの?」

裕也「うん?いたのか日菜?」

日菜「ずっといたよー。それで、どうなの?」

裕也「もちろん、好きに決まってるだろ。」

日菜「じゃあ、告白したりしないの?」

裕也「告白?なんで?」

日菜「え?」

裕也「蘭は妹みたいなものだぞ?」

日菜「あっ(察し)」

裕也「俺は蘭が好きだが妹的な意味、つまり家族だ。」

日菜「じゃあ、裕也君はシスコン?」

裕也「シスコン?......そうだ、俺はシスコンだ!!!」

日菜「わーお、宣言したー。」

裕也「皆、俺の妹だぞー、皆俺が一生養うんだー!」

 

 俺はこの時、変なテンションだったのだろう。

 この時の発言は九割くらい記憶から消えていた。

________________________

 

裕也「__一体、俺は何をしてたんだ?」

 

 俺はテンションが戻ってきたと同時に、いくつか記憶が抜け落ちていた。そんな中、俺は家に帰ろうとしていた。

 

モカ「あー、裕君だー。」

裕也「ん?モカか?」

モカ「どもどもー。」

 

 俺が帰り路を歩いていると、後ろからモカが走ってきた。

 モカは何かを思いついたような顔をしている。

 

モカ「ねー、お兄ちゃんー。」

裕也「?」

モカ「モカちゃんとー後夜祭のダンス踊ろうよー。」

裕也「え?」

モカ「この学校にはさー後夜祭のダンスを男女で踊るとー結ばれるって噂があるんだよねー。」

裕也「ふむ。」

モカ「だからさー少しでもお兄ちゃんに、アピールがしたいのですよー。」

裕也「うーん、でも、もう蘭と約束しててなー。」

モカ「うんー、知ってるよー。」

裕也「え?」

モカ「その上でモカちゃんを選んでほしいなーって。」

裕也「......それは。」

?「___そこをなんとか!」

裕也、モカ「?」

 

 俺とモカが話していると、近くの曲がり角から懇願するような叫び声が聞こえてきた。俺とモカは少し気になったので、覗いてみることにした。

 

男子「__どうか!」

リサ「だ、だから、あたしは好きな人がいて」

男子「だ、だったら、ダンスだけでも!」

リサ「それももう決まってるかなー?」

男子「嘘だ!今井さんはそんな話をしてなかったじゃないか!」

リサ「い、いや、前から約束してる子が__」

男子「そんなに......!」

リサ「!」

 

 今井は男子に壁に押し付けられた。

 男子は目が血走ってる、このままじゃ何をしでかすか分からない。

 

裕也「__あれ、やばくないか?」

モカ「うんー、モーレツにヤバいねー。」

裕也「助けに行ってくる。」

モカ「裕君ー?」

 

 俺は今井の方に行った。

 近づくにつれてドロドロした空気になって行ってる気がする。

 

裕也「あのー。」

男子「な、何だお前!」

リサ「わ、和田君?」

裕也「俺、今井とダンス組む約束してるんだけど。割り込みはやめてくれないか?」

男子「な!?」

リサ「!」

裕也「あと、女子をそんな風にするのも感心しないから、やめた方がいいぞ?」

男子「くそっ!この尻軽女が!」

 

 その男子は今井に手をあげようとした。

 俺は頭が判断する前に体が動いて、二人の間に割って入った。

 

 ドン!!!

 

裕也「__いってー......」

リサ「和田君!大丈夫!?」

裕也「大丈夫大丈夫。......それでさ。」

 

 俺は男子の方を向いた。

 今の俺の顔はおおよそ蘭たちには見せられない顔になってるんだろうなぁ。

 

裕也「女の子に手をあげようとするのはさ、流石の俺も怒るよ?」

男子「な、なんだと?」

裕也「父さんが言ってたんだ。男が絶対にしてはいけない事は女の子を傷つけることだって。それをすると、そいつは男として終わるってな。」

男子「だ、だから何だって言うんだ!」

裕也「君、今のが今井にあたってたら、怪我してたぞ......!謝れよ、今井に......!」

リサ「わ、わだ、君?」

男子「___くそが!!」

 

 男子はそう言ってこの場から逃げようとした。

 このまま、あの男子を放置するのはまずい、どうにかしないと。

 

モカ「__せんせー、こっちですー。」

裕也「モカ!」

先生「おい、そこの男子、何をしてる!」

男子「ゲッ!」

先生「生徒指導室に来い!」

男子「くそ、このアバズレのせいでー!」

 

 男子はそう叫びながら先生に引っ張られていった。

 俺は緊張が解けたのと、頭を殴られたのが原因で体の力が抜けた。

 

裕也「あー......痛い。」

リサ「だ、大丈夫!?和田君!」

裕也「うーん、大丈夫だぞ。それよりも、今井は怪我してないか?」

リサ「う、うん、あたしは大丈夫。」

モカ「遅れてごめんねー、裕君ー。」

裕也「いや、ナイスだったぞ。証拠が出来てくれたからな。」

リサ「ほんとにごめんね......」

裕也「別にいいぞー。」

モカ「リサさんも大変ですねー。あんなのに目をつけられるなんてー。」

リサ「うん......」

モカ「それとー、裕君ー?」

裕也「?」

モカ「リサさんとダンス踊るのー?蘭と約束してたんじゃー?」

裕也「......あっ。」

モカ「勢いに任せ過ぎたねー。でも、裕君が踊らないと、またあの男子リサさんに絡むよー。」

裕也「どうしよ......?」

リサ「あたし、後夜祭の時帰るよ。迷惑かけちゃうし。」

裕也「いや、それは。」

リサ「いいの!あたしはね!」

モカ「裕君ーどうするー?」

裕也「......今井は皆でいるのが好きっていう性格だ。だから、帰らせない。」

リサ「いや、でも......」

裕也「俺が頑張るよ。ダンスは、少し考える。」

モカ「モカちゃんもー?」

裕也「ま、まぁ。」

モカ「やたー。三つ巴だねーリサさんー?」

リサ「え、えぇ?」

 

 こうして、波乱が起こりそうな体育祭、後夜祭の日に近づいて行く。

 できれば、何も起こらないといいなー......なんてことを考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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