蘭とお兄ちゃん   作:火の車

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リサ編、続行です。


過去と現在

 ”リサ”

 

 体育祭が終わって期末テストとの間のちょっとした期間。

 普通、この期間は何もやる事がなくて、ちょっと退屈に感じる。

 そう、普通なら......

 

リサ「__な、なんで......///」

 

 今の私の心象は、そんな期間をゆったりできるほど穏やかじゃない。

 なんで、私が今こんなにテンパってるかというと、私は二日前の体育祭で危ない目に合ったの。

 そんな時、和田君が助けに来てくれて、とってもかっこよくて......

 

リサ「で、でも......」

 

 私には、昔から好きな人がいる。

 あの男の子だって、ずっと私の心の支えだった、あの時の思い出は何ものにも代えられない。

 だから、分からないの。

 

リサ(私が好きなのは和田君?あの時の男の子?)

 

 どうしたらいいか分からなくて、時間だけが過ぎて、私の心は揺れ続けてる。

 

 気づけば、時計の針は昼の12時を指していた。

 

リサ「__やば、もうこんなに時間たったんだ。」

リサ母『リサー!』

 

 私が時間に気付いたのと同時にお母さんが声をかけて来た。

 

リサ「なにー?」

リサ母『少し降りてきてー!』

リサ「わかったー!」

 

 私はお母さんに呼ばれ私は一回に降りた。

__________________

 

リサ「__どうしたの......って、なにしてるの?」

リサ母「いやね、折角のお休みだから片付けしてたんだよ。」

リサ「言ってくれれば手伝ったのに。」

リサ母「いや、何か悩んでそうだったから、声かけるのも悪いかなって?」

リサ「そんな事ないよ。」

リサ母「そう?まぁ、いいや。」

 

 お母さんはそう言うと、あるものを取り出した。

 

リサ母「はい、これ!」

リサ「そ、それって!」

 

 お母さんが出したのは綺麗な青い石。

 でも、宝石というわけじゃなくて形は普通の落ちてる石、偶然生まれたという事を表してる。

 

リサ母「これねー、湊さんの所と旅行に行ったときにどこかに行ったと思ったら急に戻ってきてねー。それで、絶対に失くさないで!って言っててねー。」

リサ「覚えてる、覚えてるよ。」

 

 忘れるはずない、忘れちゃいけない。大切な思い出。

 

リサ母「リサ?」

リサ「......え?あ、どうしたの?」

リサ母「ボーっとしてどうしたの?」

リサ「い、いや、懐かしいなーって思って!」

リサ母「それで、これなんなの?」

リサ「これは、思い出だよ。」

リサ母「思い出、ねぇ。」

 

『__これ、綺麗じゃないか?』

リサ(幼)『ほんとだ!すっごく綺麗!』

『これ、持って行っていいよ。』

リサ(幼)『え?』

『これ見せたら、その友達とも仲直りできるよ。きっと。』

リサ(幼)『ほ、ほんとに......?』

『あぁ、きっとな。』

 

リサ(たしか、こんな感じで貰ったっけ。)

リサ母「これどうする?」

リサ「持っていく!ありがとう、お母さん!」

リサ母「う、うん。」

 

 私の迷いはなくなった。

 私はあの男の子を、過去を追いかけるよ。

__________________

 

 ”裕也”

 

 Prrr......

 

裕也「ん?」

 

 早朝、誰かから電話がかかってきた。と言っても誰がかけてきてるか分かってるが。

 

裕也「もしもし?」

雄介『久しぶりだな、息子よ。』

裕也「久しぶり。ってなんだよ、その喋り方?」

雄介『いやー、なんか冗談を言いたくってな!なんか、厳かな父親風を演出しようかと。』

裕也「似合わないなー。」

 

 電話をかけてきてたのは、案の定、父さんだった。

 

雄介『それでどうだ?蘭ちゃんとかには会えたか?』

裕也「うん。よく一緒にいるよ。」

雄介『そうかそうか!』

 

 父さんはすごくうれしそうだ。

 昔から俺が楽しそうにしてると自分の事のように嬉しそうにしてくれる、良い父さんだ。

 

雄介『あー、それで、あの女の子にはあったのか?』

裕也「え?あの女の子?」

雄介『いや、昔旅行に行ったときに一緒にいた女の子だよ!』

裕也「え?」

雄介『昔、新幹線に乗った時言ってたろ?しかも、同じとこで降りたって。』

裕也「......あ。」

雄介『......忘れてたのか?』

裕也「......完全に忘れてた。」

雄介『ははは!流石俺の息子だ!よく俺も母さんとの約束を忘れてぶん殴られてたよ!』

裕也「いや、自慢できないから。」

雄介『まぁ、それはそれとして。かわいい息子に女の子を探す手がかりを教えよう!』

裕也「手がかり?」

雄介『確か、友達と喧嘩をして泣いてた女の子にお気に入りだった石をあげたって言ってたぞ!』

裕也「......え?それだけ?」

雄介『あとは......確か同じところで降りてたみたいで、見つけた、って言ってたぞ!』

裕也「それだけかー。」

雄介『まぁ、頑張れ!』

裕也「え?ちょ__」

 

 親父は急に電話を切った。逃げたな。

 

裕也「うーん、確かにそんなことあったけど......」

 

 俺は記憶をたどった。

 が、あの時の記憶は結構あいまいだ、女の子の外見も思い出せない。

 

裕也「そもそも、昔の話だし。もう引っ越したかもしれないよなー。」

 

 旅行に行ったのは確か10年前だ。

 向こうも覚えてるわけない。

 

裕也「......考えても仕方ない。家事でもするかー。」

 

 俺は考えるのをやめ、家事を始めた。

 これより後、あの話を考えることはなかった。

 

 だが、この時の俺は知らない、この出来事をめぐっての事態の急変を。

 




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