蘭とお兄ちゃん   作:火の車

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リサ編、最終です。


再会

 ”リサ”

 

 分かってた、自分がロゼリアの中で劣ってることも、足を引っ張ってることも。

 高い技術のロゼリアの中じゃ浮いちゃうってことも、全部、分かってたつもり。

 

リサ「__ダメだったんだね......」

 

 今まで、あたしの悪口を言ってた人がいなかったわけじゃない。

 でも、それはあくまで技術の事だけで、ロゼリアにいらないって言われたのは初めてだった。

 

リサ「何が、何がダメだったの......?」

 

 今日は調子も良くて、いつもの自分よりマシになったんじゃないかって、そう思ってた。

 でも、ダメだった。

 

リサ「......もう、どうしたらいいのか分かんないよ......」

 

 周りの木が風に揺られた音さえ、あたしを否定してるように聞こえてくる。

 もう、やめて......

__________________

 

裕也「__ここも違うか。」

 

 俺は昔の記憶をもとに今井を探してる。

 もしかしたら、偶々似てるだけで、今井があの子とは限らない。

 仮に昔に会ってたとしても、人は変わる。

 

裕也(思い出せ!過去のあの子と今井と接した時間を!)

 

 あの子ならどこに行く、今井ならどこに行く。

 記憶ならある、分かるはずなんだ。

 

裕也「__待て、もしかしたら。当てはまる場所ならあるぞ。」

 

 俺は走り出した。

 俺には確信があった、絶対にこの条件の場所になら居るって。

__________________

 

 ”リサ”

 

 どの位、時間が経ったんだろう。

 さっきまで少し暗いくらいだったのに、もう真っ暗になってる。

 

リサ「__早く帰らないと。でも......」

 

 帰れない。

 帰ったら友希那がいる。今、友希那にどんな顔で会えばいいの?

 その心があたしの足を重くして、家に帰ることを拒否してる。

 

リサ(会いたくない。ロゼリアの皆に。)

 

 今会っちゃうと、絶対に心配されちゃう。

 それは絶対にダメ、これ以上、皆の足を引っ張ちゃダメなの......

 そう思ってる、でも......

 

リサ「助けて......」

 

 そう言葉が零れる。

 そして、求めてしまう、誰かの助けを。

 あの時のような、救いを。

 

リサ「誰でもいい、誰でもいいから、助けて......」

裕也「__どうしたの?こんなところで。」

リサ「え?和田君......?」

 

 目の前には和田君がいる。

 でも、その喋り方、似てる。

 

裕也「これ、綺麗じゃないか?」

リサ「え?」

 

 あたしの目には、あの時貰った石が写っていた。

________________

 

 やっと見つけた。

 やっぱり、こういうところにいた。

 昔もこんなとこで一人で泣いてた。

 

リサ「な、なんで、和田君がその言葉を......?」

裕也「これを見て思い出したんだ。こういうところで泣いてた女の子、いたってな。」

 

 周りが木に囲まれた場所。

 街灯も届かず、普通なら人がいるなんて絶対に思わない。

 

裕也「いや、あの時の女の子は二つに結んでたっけ?」

リサ「え?え?」

裕也「久しぶり、でいいのか?」

 

 今井は信じられないものを見たような顔をしてる。

 

裕也「どうした?」

リサ「え?あの時の?」

裕也「まぁ、これを知ってればそうだろうな。」

 

 俺は今井に石を手渡した。

 

リサ「で、でも、なんでこれを?」

裕也「いや、今井が落としてたから。」

リサ「もしかして、和田君があの時の?」

裕也「まぁ、そうらしい?」

リサ「でも、なんで探しに来てくれたの?」

裕也「うーん......今井が心配だったから。」

 

 俺は今井の横に座った。

 ここまで走ってきた疲労がここで出てきた。

 

裕也「......ふぅ。」

リサ「......ごめんね。」

裕也「ん?」

リサ「大分、走ったでしょ?ごめん......」

裕也「いや、別にいいぞー。それより、大丈夫か?」

リサ「......大丈夫、じゃないかも。」

裕也「だよな。」

 

 今井の表情が曇る。

 まぁ、そうだろうな。

 

リサ「......あたしって、ダメだよね。」

裕也「......」

リサ「いっつも皆の足引っ張って、今回も皆、心配してるだろうし......」

裕也「うーん、どうだかなー?」

リサ「え?」

裕也「湊は怒ってたぞ?」

リサ「友希那が......?」

裕也「何、勝手な観客の言葉なんかで傷ついてるのかしら、だって。」

 

 ここに来る前、ライブハウスを出た時に湊達に事情を説明してきた。

 湊は怒り狂ってた『そいつはどこにいるのかしら。』って、探しに行こうとしてたし。

 氷川もあこも白金でさえ、怒りの表情を浮かべてた。

 それだけ今井はロゼリアの皆に愛されてるんだ。

 

裕也「今井は全然ダメじゃない。」

リサ「!」

裕也「今井はロゼリアから愛されてて、必要とされてる。それに他の誰かなんて関係ない。」

リサ「和田君......」

裕也「ま、今日、湊に会って怒られるのは免れないだろうけど。」

リサ「え?ちょ__」

裕也「まぁ、頑張れ!」

リサ「ひどいよ~!」

裕也「ははは!」

 

 俺はしばらく、今井を見て笑ってた。

 

裕也「__さーて、湊に怒られに行くかー。」

リサ「た、助けてよー......」

裕也「まぁ、言い訳くらいには付き合ってやるよ!」

リサ「......ねぇ、和田君?」

裕也「ん?」

リサ「......ありがとね。」

裕也「おう。」

リサ「それとね。」

裕也「うん?__って、今井!?」

 

 今井が突然、後ろから抱き着いてきた。

 

リサ「久しぶり。」

裕也「......おう。」

リサ「そ、それと......///」

裕也「?」

リサ「あの時から、ずっと、好きです///」

裕也「......そうか。」

リサ「は、反応すくない......?///」

裕也「実は__」

 

 俺は今井にモカとのことを説明した。

 話し終えると今井は驚いた顔をしてた。

 

リサ「モカとそんな事が?」

裕也「そうなんだ、情けない話だけど。」

リサ「じゃあ、あたしも待つ!」

裕也「え?」

リサ「あたしも和田君......いや、裕也が好きだから///」

裕也「そっか。」

リサ「だから、その、もしも和田君が選んでくれたら、嬉しいな///」

裕也「今井__」

リサ「リサ。」

裕也「ん?」

リサ「リサって呼んで、裕也///」

裕也「......リサ。」

リサ「うん///」

裕也「長くなるけど、待っててくれ。」

リサ「うん、ずーっと待ってる!///」

 

 今井の笑顔はとても綺麗だった。

 昔もこんな笑顔だったな。

 

裕也「さて、湊に怒られに行くぞー。」

リサ「あっ。」

 

 俺たちが戻る頃には湊は怒り心頭だった。

 そこで、今井が湊に怒られるのと同時に俺も何故か怒られた。

 何故なんだ......

 

 まぁ、色々あったが、これがロゼリアのライブ日だった。

 何はともあれ、もう夏休み、蘭たちと一緒の久しぶりに夏休みだ。心が躍るな。

 




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次回より、夏休み編、突入。

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