裕也「__な、なにしてるんだ?こんな所で?」
俺は体育倉庫に座り込んでる加那原に問いかけた
加那原は小さな声で答えた
暦「間違えて、閉められちゃいました......」
裕也「それは、災難だな。」
加那原って、体育倉庫の片づけとかするっけ?
てか、うちのクラス、体育なかったし
裕也「あ、体育倉庫の片づけ手伝おうか?」
暦「だ、大丈夫です......もう、終わりました......」
裕也「そうか?じゃあ、早く帰った方がいいぞ?」
暦「はい......」
加那原はそう言ってゆっくり体育倉庫を出た
足元がおぼついてない
様子がおかしい
裕也「?」
暦「きゃ!」
裕也「加那原!?」
しばらく様子を見てると、加那原は足がもつれて転んだ
俺は加那原に駆け寄った
裕也「だ、大丈夫か?」
暦「だ、大丈夫__っ!!」
裕也「?」
俺が近づくと加那原の顔色はサァーっと青くなった
そして、急に立ち上がった
暦「ご、ごめんなさい......!」
裕也「え?」
加那原は突然、謝ったかと思うと
今度はどこかに走って行った
俺は不思議に思ったが、元気そうだったので家に帰ることにした
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翌日、俺はいつも通りの時間に学校に来た
すると、突然、男子に囲まれた
A男「お、おい!裕也!」
裕也「どうした?」
D男「ど、どうしたじゃないっしょ。」
E男「北川をフッたって、本当なのか!?」
裕也「あぁ、それはほんとだけど。それがどうしたんだ?」
俺がそう言うと、皆は信じられないと言う顔をした
昨日の北川もこんな顔してたな
B男「な、なんで、断ったんだ?」
裕也「好きじゃないかったから。中途半端に付き合うのは失礼だと思ったから。」
D男「そ、そっか。」
E男「まぁ、裕也っぽいちゃ、そうだよなぁ。」
皆はまだ困惑してる様子もあるが
納得もしてきてるみたいだ
A男「まぁ、裕也が選ぶことだし、俺達からは何も言えないよな。」
裕也「そうか(?)」
朝から騒がしかったが
それから時間はいつも通り進んで行った
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裕也「__あっ。」
昼休み、俺はある事を思い出し、席を立った
男子の視線が俺に集中した
A男「どこ行くんだ?」
裕也「図書室で借りた参考書、返却日が今日までだったんだ。返してくるよ。」
B男「マジ?やべぇじゃん。行って来いよ。」
裕也「あぁ、行ってくる。」
俺はそう言って教室を出た
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図書室に来ると
俺は返却のためにすぐにカウンターの前に行った
ここには、管理を担当してる生徒がいるはず
裕也「__あれ?加那原?」
暦「和田君......?」
カウンターには加那原がいた
図書委員会だったのか
どうりで、昼休み教室で見ないと思った
裕也「あ、この本返却お願いできる?」
暦「は、はい......」
俺は加那原に本を渡した
加那原は慣れた手つきで処理を済ませ
ほんの返却は完了した
暦「これで、返却は完了です......」
裕也「ありがとう、加那原。」
暦「いえ、仕事なので......」
俺は加那原の言葉にうなずき
少し、考えた
裕也(次、何の本、借りようかな。)
俺は読書は好きだ
家にいたら暇な時間もあるし
一冊くらいは借りていきたいな
暦「あの、どうしましたか......?」
裕也「次に何の本借りようか考えてて。」
暦「じゃあ、あの、これはどうでしょう......」
裕也「ん?」
加那原は一冊の本を差し出して来た
俺はそれを受け取り、表紙を見た
暦「それは、推理小説で、かなり面白いんです......」
裕也「へぇ、じゃあ、これ借りてもいい?」
暦「はい、どうぞ......」
加那原は貸し出しの処理を済ませ
俺に本を手渡した
裕也「ありがとう。仕事、頑張れよ。」
暦「はい......」
俺は軽く手を振って
図書室を後にした
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夜、俺は今日借りた本を読んだ
確かに、すごく面白い
表現と雰囲気がお洒落で
展開も途中まで王道なのかと思へば
変化球が来たり、想像できない展開が後半になるにつれて増える
面白いと楽しいが混在する、そんな小説だ
裕也「......おぉ。」
この小説の探偵はかなりいいキャラクターだ
一見すれば、冷徹なリアリスト
でも、危険な行動は一人でして
常人なら考えられないような回答をさも当然のように導き出してる
でも、助手とのやり取りはくすっと笑ってしまう
裕也(マジで面白い。)
俺はそれから
かなりページのある小説を一晩懸けて読破した
気づけば外は朝になっていた
__________________
裕也「__ふぁぁ......」
流石に寝ないのはまずかった
授業中寝ないようにしないと
そんな事を思いながら、教室の自分の席に座った
裕也(あっ。)
暦「......」
教室に入ると加那原の姿が見えた
今日はかなり早めに学校来てるのに
裕也「おはよう、加那原。」
暦「あ、お、おはようございます......」
挨拶をすると加那原は少しきょどりながらも挨拶を返してくれた
俺はそれを聞くと、机に伏せた
暦(ね、眠たそう......)
裕也「......加那原。」
暦「っ!は、はい。」
裕也「あの本、マジで面白かった。」
暦「え?」
裕也「それでつい、夜更かしした。」
俺は顔を伏せながらそう言った
裕也「また、おすすめ、教えてくれ。」
暦「は、はい......」
裕也「ありがと。おやすみ......」
俺はそう言って
授業が始まるまで、睡眠をとった
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昼休みになると
俺は借りた本を持って図書室に来た
裕也「__加那原ー。」
暦「和田君......?」
裕也「おすすめの本、頼む。」
俺はそう言って加那原の前に座った
暦「少し、待っていてください......」
裕也「分かった。」
そう言って加那原は本棚の方に向かった
俺はボーっと加那原を眺めていた
暦(えっと、あの本は......あった。あれは貸し出し中だし......)
加那原はスムーズな手つきで本を手に取っている
まるで、本がある場所が全部わかってるみたいだ
裕也「あっ。」
暦(と、届かない。)
しばらくすると
加那原は本棚の前で飛び始めた
高い位置の本を取ろうとしてるのか
俺は椅子から立ち上がり、加那原の方に歩いた
暦(ど、どうしよ、待たせちゃう......脚立は使ってるし......)
裕也「__この本か?」
暦「!」
俺は加那原がとろうとしてたと思われる本を手に取り
それを見せた
暦「えっと、あの......」
裕也「?」
暦「その本の、右側です......」
裕也「あれ!?」
これは恥ずかしい
マジで、これはダサすぎる
俺はすぐに本を直し、右側の本を取った
暦「ふふっ。」
裕也「?(笑った。)」
少し慌ててる俺が面白かったのか
加那原は小さく笑った
暦「あ、ご、ごめんなさい......!」
裕也「いや、そんなに謝らなくてもいいよ?別に笑うくらいで怒らないし。」
俺がそう言うと、加那原は胸をなでおろした
俺ってどんなイメージもたれてるんだろう
悪くない、と願いたい
裕也「あ、本持つよ。俺が借りるのだし。」
暦「ありがとう、ございます......」
それから、俺と加那原は机の方に行き
俺は加那原から本の説明を受けた
どれも面白そうだったので
順番に何冊かずつ借りていくと言う事にし
今日は2冊本を借りた
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一週間ほど経った
俺は図書室に行くことが多くなり
必然と加那原と話す機会も増えた
加那原は最初こそ、暗い雰囲気があったけど
慣れれば、普通に話してくれる
教室でしてる、あのつまらない話よりはるかに楽しい
裕也「__おはよう、加那原。」
暦「あ、おはようございます。和田君。」
裕也「って、その髪。」
暦「はい、切っちゃいました。」
加那原の髪はショートヘアになっていて
今まで少し見えずらかった目がよく見える
裕也「いいと思う。似合ってるよ。」
暦「ありがとうございます、和田君。」
なんだか、更に蘭に似た気がする
蘭、元気にしてるかなぁ
俺はそんな事を思いながら席に座った
そして、昼休みまでの時間を過ごした
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昼休みになると、俺は屋上の人気のない場所に来た
周りを見渡すと、一つの影があった
裕也「__お、いたいた。」
暦「和田君......?」
裕也「いやー、図書室にいないなと思ったら、こんなとこにいたのか。」
俺はそう言いながら困惑する加那原の横に座った
そして、話を続けた
裕也「なんで、こんな所で食べてるんだ?」
暦「えっと、教室には......」
裕也「居辛い?」
暦「はい......」
加那原は小さな声でそう答えた
加那原は何で居づらいんだろう
周りはグループなのに一人だからか?
裕也「でも、それちょっとわかる。」
暦「え......?」
裕也「あの教室にいても、つまらないよな。」
俺はぼやくようにそう言った
加那原は不思議そうな顔をしてる
裕也「皆、録音してるみたいに無感情で同じ話しててさ。それで、違う話しようとしたら変な目で見て来るし、居づらいよ。」
暦「和田君みたいな人でも、そうなんですね......」
加那原はそう呟いた
俺はそれに対してこう言った
裕也「俺みたいって言うけど、そんな特別なことある?」
暦「え、だって、和田君はクラスの中心にいつもいるし......」
裕也「それだけ?」
暦「え、えっと......」
加那原は目に見えて慌ててる
俺はその様子を観察することにした
暦「和田君は、顔もカッコしいし、頭もいいし、運動もできるし、そんな人が居づらいなんて......」
裕也「へぇ、俺の事そんな風に思ってたんだ。」
暦「え、あっ///あの......////」
裕也「あはは!冗談だよ!」
暦「!」
俺が笑いながらそう言うと
加那原は驚いたようだ
裕也「俺なんかより、加那原の方がすごいよ。」
暦「え?いやいや、私なんて......」
裕也「いやいや、俺、聞いたよ。加那原の夢。」
暦「え?」
裕也「図書館の司書になりたいんだろ?」
暦「!」
俺がそう言うと、加那原の肩が跳ねた
俺は続けて話をした
裕也「図書委員の子が、加那原はいっつも熱心に勉強してて、委員会の仕事も頑張ってるって。」
暦「そのくらいしないと、司書さんにはなれないので......」
裕也「難しいって聞いたことあるよ。加那原は司書資格?を取らないといけないんだよね。」
暦「はい。」
司書って言えば、本のスペシャリストって感じだし
あれは何気にすごい仕事だよなー
それを目指す加那原ってすごいと思う
裕也「ほら、加那原、すごいじゃん。」
暦「え?」
裕也「しっかり目標をもって、それのために努力してる。俺なんて、その時その時を適当に生きてるのに。」
暦「そ、そんなことは......」
裕也「あるよ。俺には夢なんてないからさ、取り合えず、与えられた道を歩くしか出来ないから。」
俺は空を眺めながらそう言った
加那原は静かに話を聞いてくれてる
裕也「だから、自分で道を切り開こうとする加那原を尊敬してる。加那原の頑張りは尊いものだから。」
暦「私、勘違いしてました......」
裕也「ん?」
俺が話し終えると
加那原は口を開いた
勘違いって、なんだろ?
裕也「勘違い?」
暦「はい。」
裕也「それって?」
暦「和田君も他のみんなと一緒で、私を馬鹿にする人だって、ずっと思ってました......」
裕也(バカにする?)
俺はその言葉が引っ掛かった
誰だろう、加那原を馬鹿にしたのは
暦「よく図書室に来てたのも、私を騙すためなんじゃないかって......」
裕也「え?いやいや、待って?それ、何の話?」
話の方向がおかしい
加那原の口ぶりじゃ、まるで、今までバカにされてきたみたいだ
裕也(そう言えば......)
暦「和田君......?」
裕也「加那原、腕、見せて。」
暦「っ!!」
所詮、直感だけど
季節的には6月だけど
もう、袖をまくりたいくらい暑い
でも、加那原は頑なに長袖のまま
裕也「__っ!!」
暦「......」
裕也「これは、なに?」
最悪の予想が当たってしまった
加那原の腕は無数のあざが出来てて
肌の色の割合よりも多い
暦「......」
裕也「このあざの感じ、最近出来てるよね。しかもかなり強打されてる。」
加那原は口を開こうとしない
俺は加那原の目をまっすぐ見た
裕也「話して、加那原。これは、場合によっては大きな問題になる。」
暦「......!」
裕也「誰にやられてるの?」
暦「......クラスの、皆さんに......」
裕也「!!」
俺はその言葉を聞いて
背筋に寒気を感じた
裕也「......それは、男子も含めて?」
暦「はい......」
裕也「これの、主犯は?」
暦「北川さん、です......」
裕也「......そっか。」
これで、納得した
あの時、加那原が荷物を運んでたのも
体育倉庫に閉じ込められてたのも
暦「和田君......?」
裕也「ごめん、加那原。」
暦「!」
俺は加那原に頭を下げた
加那原は慌ててそれを止めた
裕也「気付けなくて、ごめん。」
暦「い、いえ、私も気づかれないようにしてたので......」
裕也「それでも、クラス規模でしてるのに気づけなかったんだ......!」
俺は歯を食いしばった
一人の女の子がこんなになるまで耐えてたのに
それに気付けないなんて
到底、許せるわけがない
裕也「学校は、相談した?」
暦「一応、しました......でも、北川さんがいるから......」
裕也「そういう事か。」
北川は市議会委員の娘
学校としては、大事にはしたくない
だから、もみ消そうとしたわけか
裕也「......クソ学校が。」
よくよく思い出せば
担任の加那原への態度はおかしかった
このイジメは教師もグルだ
裕也「やりやがったな、北川カリナ......!」
暦「和田君......?」
加那原の怪我で診断書を発行して学校にたたきつけるか?
でも、それじゃあ、かき消される
じゃあ、教育委員会?
いや、それでも......
裕也「......どこもかしこも、役に立たない。」
暦「え......?」
裕也「加那原。」
暦「は、はい......?」
裕也「これからは、俺が加那原を守る。」
暦「!!」
俺は気づけばそんな事を言ってた
言わずにはいられなかったんだ
裕也「安心はできないと思うけど、俺、頑張るよ。」
暦「和田君......」
俺がそう言うと、加那原は優しい微笑みを浮かべた
俺は首を傾げた
暦「ありがとう......!」
裕也「あぁ。」
暦「やっぱり、和田君は他の人と違いますね......!」
俺はこの時、加那原を守ると誓った
ここから、俺と加那原との関係が始まった