夜、俺は今日の事を考えていた
暦への、あいつらの行動もだけど
その後の、暦の言葉......
裕也「__なんなんだろう。」
俺は暦を守るために行動してた
でも、それは好きだからとかじゃなくて
ただ、そうしないといけないと思ったからで
決して、好きだったとかそう言うのはない
裕也「......」
俺は元から、家族以外の人間が嫌いだった
でも、暦と接してるうちに
人間とは、尊いものなんじゃないかって
こういういい人間もいるのかって、思えた
それも、一つの事実
裕也「......どう思う、蘭?」
俺は机に置いてる写真にそう話しかけた
勿論、答えてくれるわけない
裕也「暦......」
暦は、好きって言ってほしかったのかもしれない
辛いときに、心の支えが欲しかったのかもしれない
そうだとしたら......
裕也「......明日、話をしよう。キッチリと向き合って。」
俺はそう思い
その日は早く寝た
__________________
次の日の朝、俺は走って学校に向かっていた
早く、暦と話さないといけない
それで、暦を見て、俺の答えを出そう
そう思って、必死に俺は走ってる
裕也「__はぁはぁ......って、なんだ、あれ?」
学校の前に着くと
そこにはパトカーと野次馬が大量にいた
俺は不思議に思いながら、取り合えず、野次馬に近づいた
「__うわ、これはひどい......」
「こ、この子に何があったんだよ。」
裕也「?」
俺は野次馬の中を進んで行った
その途中、色々な声が聞こえたが
上手く聞き取れなかった
そして、俺は長い野次馬の集団を超えた
裕也「__え......っ?」
警官「君、今はここは通れないよ。」
裕也「待って、待ってくれよ。」
警官「?」
俺、は悪い夢を見てるんだろうか
そうだ、そうに決まってる
だって、そうじゃなきゃ......
暦が、血を流して倒れてるわけ......
裕也「暦!!!」
警官「ちょっと、君!!」
俺は警官を振り払って暦に駆け寄った
暦は動かない、こんなに血が流れてるんだ
裕也「誰か!!救急車を呼んでください!!!」
警官「君は、この子の知り合いか?」
裕也「そうです!!早く、救急車を__」
警官「......ダメだ。」
裕也「なんで!?警察は重症者を見捨てるのかよ!!!」
警官「......死んでるんだ。」
裕也「__は?」
俺はその言葉を聞いて頭が真っ白になった
そして、警官に掴みかかった
裕也「ふざけたこと言うな!!!」
警官「っ!!(な、なんて力だ!!!)」
裕也「まだ温度がある!!死んでない!!!」
警官「この子は!!屋上から頭から落ちて、即死だった......」
裕也「は、は?屋上......?嘘だろ......?」
警官は悲しそうに首を振るだけだ
とても、嘘をついてるようには見えない
俺は膝から崩れ落ちた
裕也「な、なんで、暦は......?」
警官「......分からない。でも、この状況から考えられるのは......」
警官は口を閉じた
分かってる、いや、分かった
昨日の暦の言葉は告白であって、告白じゃなかった
あれは、分岐点だったんだ
裕也「暦、暦......?」
暦「......」
裕也「目を、開けてくれよ......まだ、昨日の話が終わってないぞ......?」
暦「......」
裕也「これからだって、暦は司書になって、本が好きな人を笑顔にするんだろ......?」
暦「......」
裕也「なぁ、目を開けてくれ......即死なんて嘘だろ?だって、まだ__っ!!」
気づけば、暦の身体は段々、冷たくなっていってる
この前切ったと言ってた髪は長くなって、地面に垂れ下がってる
嫌でも、理解させられる、でも、まだ拒んでる
その時、俺の携帯が鳴った
裕也「これは、暦!?」
俺は急いで携帯を開き
文章を見た
そこには、こう書かれていた
『和田君、最後までありがとうございました。
和田君がいたから最後に優しい思い出を作れました。
こんな形になってしまって、ごめんなさい。
どうか、悲しまないでくださいね。
最後に
和田君はそうじゃなかったと思いますが、
私は本当に、あなたが大好きでした。』
裕也「......」
俺は力が抜け、携帯を地面に落とした
視界は何かで潤んでて、良く分からない
でも、俺は暦を抱きしめた
裕也「ごめん......ごめん......」
好きに、なりたかった
でも、好きになれなかった
俺の決断力の乏しさが、最終的に暦を殺した
警官「......こちら○○。目撃生徒の聞き取りを__」
裕也「聞き、取り、生徒......?」
警官「っ!!」
俺は警官の方を見た
そして、こう問いかけた
裕也「目撃生徒は......?」
警官「確か......2年A組の生徒は全員いた。」
裕也「......そうか、そうかよ。」
俺は暦を優しく置いて
フラフラと立ち上がった
全てを理解した
裕也「......」
俺は校舎に向かって歩きだした
感情がグチャグチャになって
溶けて、段々と透明になっていく
そんな感覚があった
__________________
俺はゆっくりと歩いて教室に来た
中からは楽しそうな話声が聞こえる
カリナ「__あはははは!!」
A男「お、おい、マジで飛んだぞ!?」
A子「流石にまずいでしょ!?てかなんで、写真なんて撮ってんの!?」
カリナ「え?あいつを殺すためだけど?」
B男「そんな事言ってなかっただろ!?」
カリナ「大丈夫だって!こんなすぐにもみ消すから!」
E子「そ、それなら......」
ドン!!!
俺は勢いよく扉を開けた
そして、教室に入った
裕也「......」
カリナ「あ、和田君♪」
教室に入って最初に声をかけて来たのは北川だ
笑みを浮かべながら俺の方を見てる
カリナ「加那原さん、残念だったね♪」
裕也「......」
カリナ「でも、あんな女良いよね?私がいるんだから♪」
裕也「......」
A男「お、おい。北川、流石に......」
裕也「......黙れ。」
クラスメイト「!!」
俺はそう言って、集団に近づいた
すると、A男が近づいて来た
A男「お、おい、裕也?返事してくれよ?俺たち友達だろ?」
裕也「......」
A男「き、昨日、加那原を襲ったのは俺達だけど、それは......」
裕也「それ以外は。」
A男「い、イジメも北川の命令で......」
裕也「いつからだ。」
A男「い、1年の時から__」
ガン!!!
俺は手に持ってた消火器でA男の頭を殴った
A男は人形のように倒れた
A子「きゃぁぁぁあ!!!」
裕也「お前らが......」
A子「ちょ、え__」
俺は次にA子を消火器で殴った
血が飛び散って顔にかかった
裕也「お前らが暦を殺したのかっ!!!」
B男「に、逃げ__」
裕也「お前らが死ね!!!」
俺は見境なく、その場にいる奴らを殴った
段々と、流れる血が増えて
足が重くなっていく
裕也「お前らのせいで!!!暦は死んだ!!!お前ら全員死んじまえ!!!」
G子「こ、殺さないで......お願い......!」
裕也「暦もそう思ってたんだ......」
G子「え......?」
裕也「暦だってずっと、助けを求めてた。それなのに、お前らは......!!!」
俺はG子の頭部を殴った
G子は悶絶して、痙攣してる
裕也「なんで、暦が死んだ......暦は優しくて、本が好きで、誰よりも努力してた普通の女の子だったのに......」
c男「く、来るな......俺は死にたくない......」」
そう言って、命乞いをしてくる奴らに吐き気がする
暦は良くて、自分はダメなのかよ
イジメを一人で耐えて、孤独に努力してた
それを分からないで、遊び感覚で、人の命をもてあそんだ
俺は消火器を振り上げた
c男「あ、謝る、謝るから!」
裕也「......お前らが。」
c男「へ......?」
裕也「お前らが死んで、暦が生きればよかったんだ!!!このゴミどもっ!!!」
c男「ガッ!!!」
裕也「返せ!!!返せよ、暦を!!!」
それからの記憶はない
ただ、赤い景色と叫び声だけが残ってる
そして、次に俺の意識がはっきりした時には......
裕也「__お前が、最後だ。」
カリナ「なんで?なんでなの?」
目の前の北川は困惑の表情を浮かべてる
目には涙を浮かべて、俺を見てる
カリナ「私は、和田君に付く虫を殺しただけなのに、なんで?」
裕也「......」
カリナ「!!」
俺は静かに北川に近づいた
そして、血を這うような声でこう言った
裕也「虫、いや、虫以下はお前だ......」
カリナ「なんで、なんで?和田君は私のものなのに?なんで、私を殺そうとするの?」
裕也「もう、いいよ。死んで、暦に詫びてくれ......」
教師「__おい、何をしている......って、これは!」
振り下ろす直前
教師が教室に入ってきた
信じられないものを見る目で教室を見回してる
教師「和田ぁ......!」
裕也「......」
カリナ「せ、先生!!」
北川は教師の後ろに走った
そして、教師は近づいて来て俺の胸倉を掴んだ
教師「なんてことをしたんだ!!お前は自分のしたことを分かってるのか!?」
裕也「じゃあ、あんたらのしたことは何だ......?」
教師「あ?」
裕也「寄ってたかって、一人の女の子の未来を潰して......お前らこそ、自分のしたことを分かってるのか!?」
教師「命の重さを考えろ!」
裕也「は?」
俺は教師の口から吐き出された言葉を疑った
こいつは何を言ってるんだ?
教師「こんなに才能あふれる生徒を、たかが加那原なんぞのために。」
裕也「何を、言ってるんだ......?」
教師「イジメなんて学校が黙認してたものを、お前ひとりで暴れやがって。加那原なんぞ捨て置けばいいものを。」
黙認?学校が?
何を言ってるんだ?
教師「この件は北川のお父様の権限でもみ消すんだ。お前さえ、暴れなければ......」
裕也「命の重さって、なんだよ......命に格差なんて......」
警官「__ここか!」
裕也「......さっきの。」
警官「これは、君が?」
裕也「......はい。」
警官「......」
俺が答えると
警官は俺の前に立ち
手錠をつけて来た
警官「......話は署で聞く。」
裕也「......はい。」
俺は警官に連れられ
教室の外に歩いた
カリナ「すぐに助けてあげるからね♪」
裕也「......」
そう言う北川の言葉を無視し
俺は静かに、教室を後にした
__________________
その後、俺はパトカーに乗せられ
警察署に連行された
そして、しばらく、牢に監禁されたあと
取調室に通された
警官「__なんで、こんなことをしたんだ?」
裕也「......」
警察「......聞くまでもないか。」
警官はさっき、学校の前にいた人だ
何かの配慮なんだろうか
裕也「俺は、死刑ですか?」
警官「そうはならない。」
裕也「......そうですか。」
俺はそう答えて、下を向いた
手は皮が擦りむけていて
血が付いた服はしみついてて冷たい
警官「さっき、クラスで死亡者はいないと分かった。君の理性が少しでも働いていたんだろう。」
裕也「......そうですか。」
警官「先ほど、圧力がかかって君を釈放することになった。」
裕也「......(北川か。)」
警官「後で親御さんが迎えに来るよ。」
警官は俺の背中を軽くたたいた
励ましの意味があるのか
さすってるようにも感じる
警官「質問をいくつかしたい。返答の強制はしない。」
裕也「......はい。」
警官「じゃあ、一つ目__」
それから警官は俺に質問を投げかけて来た
俺は全て、正直に答えた
今回の犯行に殺意がある事
責任能力はある事、すべてを認めた
警官「__最後に、彼女がなくなった原因は何だと思う?」
裕也「......俺の弱さです。」
警官「......そうか。」
俺がそう答えたのと同時に
取調室の扉が開いた
雄介「__裕也!」
裕也「......父さん。」
父さんは心配そうに俺に駆け寄ってきた
それに続いて母さんも部屋に入ってきた
裕也「......ごめん、迷惑かけて。」
警官「お父さん、お母さん、彼の今回の行動は__」
桜「分かっています。」
警官「!」
雄介「裕也は理由もなく暴力を振るう男じゃありません。こいつがここまでやるって事は何か大きな理由がある。」
警官「......理解のあるご両親で助かります。」
雄介「裕也、もう帰っていいってよ。帰ろう。」
裕也「......うん。」
俺は椅子から立ち上がり
警官に頭を下げてから取調室を出た
__________________
帰り、俺は車に乗っている
周りのすべてがゆっくりに見える
今になって、記憶が蘇ってくる
裕也「......」
雄介「__なぁ、裕也。」
途中、父さんが話しかけて来た
俺は父さんの方を見た
雄介「お前は今、どう思ってる。」
裕也「......っ。」
父さんは静かな声でそう問いかけて来た
俺はうつ向いたまま考えた
そして、こう言葉をこぼした
裕也「悔しい......」
桜「!」
間違ったことを間違ったままにされた
俺だけが今、生きてる
たった一人の女の子を守れなかった
そんな無力が、悔しい
裕也「悔しい、全てが、悔しいよ......っ!」
雄介「......そうか。」
父さんは運転しながらそう答えた
俺は勝手に涙が流れてきて
太ももにしたたり落ちてる
雄介「お前の気持ちは、見れば伝わってくる。」
裕也「......」
雄介「だが。」
父さんは厳しい声を出した
俺は静かに聞いている
雄介「暴力で訴える人間は弱い。」
裕也「っ......」
雄介「どんな理由であっても、男は女に手を出しちゃいけない。」
裕也「......分かってる。」
桜「あなた、そんな事言わなくても。」
雄介「だが、大切な女のために振るう力はすべて正しい。」
裕也「!」
雄介「俺は世間的な間違いを承知で豪語する。お前の行動は正しいと。」
父さんは厳しく優しい声でそう言った
その言葉を聞き入った
雄介「やり返すチャンスは絶対に来る。今は女の子の分まで生きろ。」
裕也「父さん......」
雄介「あ、暴力はもうなしだぞ?別の方法でやり返せ!」
裕也「あぁ、父さん。」
雄介「お前に時が来れば、俺は今の立場を全部捨ててでもお前を助ける。」
桜(全く、こういう時だけ、父親なんだから。)
暦は、俺の事をどう思ってるんだろう
望んでないかもだけど、俺はもう少し生きるよ
絶対に暦の無念、晴らすから
許して、とは言わないけど
俺が死んで、そっちに行ったとき
裕也(また、仲良くしてくれるか?暦。)
俺は心の中でそう暦に語り掛けた
俺はまだ、暦の墓参りにも行けてない
胸を張って、行けるようになったら
きっちり、話をしに行こう
__________________
”現在”
蘭は泣き疲れて寝てしまったが
俺は皆に話を終えた
これが俺が北川を憎んでる理由
そして、頑なに暴力を使わない理由だ
リサ「__そ、そんな事が......」
裕也「俺は誓った。絶対に暦の無念を晴らすと。」
モカ「裕君......」
巴「......」
バン!
と、巴は机を叩いた
そして、俺を凝視した
巴「すまなかった......っ!」
裕也「え?」
すると突然、巴は頭を下げた
俺は少しぎょっとした
巴「アタシは疑ってないみたいなこと言ってたけど、もしかしたらって考えちまった......っ!」
裕也「しばらく会ってないし、仕方ないよ。」
巴「でも、本当にそうじゃなくてよかった。」
巴はそう言って笑顔を見せた
そして、こう言った
巴「アタシが好きな、かっこいい兄貴のままだった!」
裕也「え?」
巴「あっ///」
巴はしまったと言う感じの顔をして
そして、慌て始めた
ひまり「ちょっと、巴!ずるい!」
裕也「え?」
ひまり「わ、私だって!お兄ちゃん好きだもんっ!///」
裕也「ひ、ひまり......?」
つぐみ「......///」
ひまりもそう言った
俺は慌ててワタワタしてる
な、なんだ、この状況
つぐみ「私も......///」
裕也「え?」
つぐみ「私も、お兄ちゃん、大好きです///」
裕也「つ、つぐみも?」
まさか、つぐみまでそうなのか?
俺って、そこまで......
巴「アタシ達じゃ、暦さんの代わりになれない。」
裕也「っ!」
ひまり「でも、暦さんみたいに私達も好きだから!///」
つぐみ「お兄ちゃんには、幸せになってもらいたい!///」
裕也「巴、ひまり、つぐみ......」
リサ「あたし達も。」
裕也「!」
リサとモカも話に入ってきた
そして、優しく微笑んだ
モカ「裕君の幸せ、願ってるよー。」
リサ「だからさ、裕也の過去の因縁を断ち切れるまで待つよ。」
裕也「そっか......」
もしかしたら、暦はこんな事、許してくれないかもしれない
こんなに思ってくれる皆がいて
俺今、幸せ感じてるから
裕也「ありがとう、皆。」
巴「あぁ!いいってことよ!」
裕也「皆の気持ちにはできるだけすぐ、答えを出すよ。」
後悔しないように、という言葉は飲み込んだ
そして、俺は少し表情を引き締めた
裕也「でも、1つ、話を聞いてほしいんだ。」
ひまり「なんですか?」
裕也「文化祭までの日数、俺はこの町を離れる。」
つぐみ「えぇ!?」
モカ「......そういう事かー。」
モカはなんとなく気付いたのか
納得したような顔をしてる
裕也「少し、決着をつけてくる。」
巴「そうか......」
裕也「ごめんな。」
モカ「いいけどー、告白の返事、少しでも早くしてねー。」
裕也「うっ、わ、分かった。」
モカ「それでいて真剣に答えてねー。」
裕也「それは当然だよ。」
モカ「うん。裕君、大好きー。」
モカは軽い口調でそう言ってるが
耳は真っ赤で照れてるのが分かる
変な所で素直じゃないな
裕也「皆、蘭の事、よろしくな。」
巴「おう!任せとけ!」
つぐみ「絶対に立ち直ってもらいます!」
ひまり「頑張ります!」
裕也「あぁ。」
俺はそう言って椅子から立ち上がった
そして、目を閉じた
裕也(暦、俺、やるよ。)
そう心の中でつぶやき
解散して皆が帰った後
俺は準備を進めた