蘭とお兄ちゃん   作:火の車

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エピローグ

 季節は冬なだけあって少し冷える

 

 山の中だからなおさらだ

 

 俺と蘭はそこにある墓地にいる

 

 目的は暦の墓参りだ

 

裕也「__来たよ、暦。」

蘭「ここであってるの?」

裕也「あぁ、あってるよ。」

 

 墓石には暦の名前が刻まれてる

 

 それを見ると改めて

 

 暦の死を意識してしまう

 

裕也「始めるか。」

蘭「うん。」

 

 それから、俺と蘭は墓回りの掃除を始めた

 

 定期的に来てる人がいるのか

 

 かなり綺麗にされてる

 

 ゴミ一つ落ちてない

 

 そんな状態からの掃除だったから

 

 想像よりも早く終わった

 

裕也「__さてと。」

 

 俺は持ってきた鞄から線香を出した

 

 線香ひとつ立てないで墓地からは帰れないしな

 

 俺は線香を立て、墓石の前で手を合わせた

 

裕也(.....遅くなってごめん。報告に来たよ。)

 

 俺は心の中で今回の事の顛末を話した

 

 暦は喜んでくれてるだろうか

 

 いや、優しい暦のことだ

 

 少し、渋い顔をしてるのかもしれない

 

 俺はしばらく、手を合わせた

 

裕也(最後に。俺さ、進路の事、決めたよ。)

 

 俺は心の中でそれだけ言って立ち上がった

 

 どこまで、暦に届いてくれたかわからないけど

 

 言うだけ言えてよかった

 

蘭「大丈夫?お兄ちゃん?」

裕也「あぁ、大丈夫。蘭も暦に何か言ってみてくれ。」

蘭「うん、分かった。」

 

 蘭はそう言って墓石の前に屈んだ

 

 そして、手を合わせた

 

蘭(初めまして、美竹蘭です。この間、お兄ちゃんの彼女になりました。)

 

 蘭はなにを話してるのだろう

 

 すごく真剣だ

 

蘭(暦さんの心はこれからも私たちが守ります。)

 

 しばらくして、蘭は立ち上がった

 

 俺はその様子を見て、声をかけた

 

裕也「帰ろうか。」

蘭「うん、お兄ちゃん。」

 

 そうして、俺と蘭はその場をあとにした

__________________

 

 やっぱり、この時期の山は寒い

 

 蘭もかなり寒そうにしてる

 

裕也「__蘭、これ。」

 

 俺はそう言って来てる上着を差し出した

 

 でも、蘭は首を横に振った

 

蘭「それじゃ、お兄ちゃんが寒いよ。」

裕也「そうか。」

?「__君は。」

裕也「?」

 

 帰り道の途中

 

 夫婦と思われる人達が話しかけてきた

 

 2人は少し老け込んでいて

 

 ストレスからか、白髪も多い

 

?「君は、和田裕也くんかな?」

裕也「はい、そうですが?」

?「やっぱり。あの子が言った通りだ。」

裕也「!」

 

 どうやら、2人は俺のことを知ってるらしい

 

 そして、なんで知ってるかはすぐにわかった

 

裕也「あなた達は、暦の?」

宗広「はい、父の宗広です。」

時音「母の時音です。」

裕也「和田裕也です。」

蘭「美竹蘭です。こんにちは。」

 

 俺たちは頭を下げた

 

 2人は俺たちを見て穏やかな顔をしてる

 

宗広「今日はあの子のお墓参りかな?」

裕也「はい。来る決心が着いたので。」

宗広「ありがとう、こんなに寒い中。」

裕也「いえ、そんなことないです。」

時子「和田くんのことはよく聞いていたので、すぐに分かりました。」

 暦はそんなに俺のことを話してたのか

 

 どんな話をしてたかは、謎だけど

 

宗広「本当にあの子は毎日、帰ってきては和田くんが優しいやかっこいいとよく言っていました。」

裕也「......そうですか。」

時子「暗かったあの子が髪を切って、可愛らしくなって。私たちは嬉しかったです。」

 

 2人は優しい声でそう言った

 

 俺が責任を感じないようになのか

 

 本当は吐き出したい感情だってあるだろうに

 

宗広「私たちはあの子の苦しみに気づけなかった。」

時子「そんな中、和田くんはあの子を支えてくれました。」

宗広「本当に、ありがとう......!」

裕也「っ!」

 

 2人は俺に頭を下げた

 

 俺は少し戸惑ったが

 

 すぐに言葉を出した

 

裕也「俺は、そんなのじゃないです......」

蘭「!」

裕也「俺はあの日、選択を間違えました。その罪は一生、消えることは無いです。だから、感謝はしないでください。」

 

 俺はそういった後

 

 2人に向け頭を下げた

 

裕也「護れなくて、すみませんでした......」

宗広「そんなことはないよ。」

裕也「!」

時子「暦が死んだのはあなたのせいじゃないです。どうかお気に病まないでください。」

 

 2人は俺にそう言って

 

 暦の墓の方に歩いていった

 

宗広「今日はありがとう。君と話せてよかった。」

時子「どうか、あの子の分まで幸せに生きてください。」

 

 そう言って、2人は遠くに消えていった

 

 俺はその場で立ちすくんだ

 

裕也「.....」

蘭「帰ろう、お兄ちゃん。」

裕也「......あぁ。」

 

 そうして俺と蘭は山を降りていった

__________________

 

 "羽沢珈琲店"

 

リサ「__それにしてもさー。」

 

 2人が去った後

 

 リサが口を開いた

 

リサ「なんで、モカは2人の背中、押したの?」

巴「あー、そういえば聞いてなかった。」

モカ「あれー?言ってなかったけ?」

ひまり「言ってないよ!」

つぐみ「私も気になるな!」

 

 この4人に裕也への未練はない

 

 これは、ただの興味本位だ

 

モカ「まー、普通に考えただけだよー」

巴「?」

モカ「裕君の話を聞いてさ、裕君の相手は蘭じゃないといけないって思ったんだよねー。」

リサ「あー、そういうこと。」

モカ「裕君にとって1番大切なのは蘭なのでー、暦さんでてきた心の穴を埋めれるのは蘭だけだったんですよー。」

 

 モカは真剣な顔でそう言った

 

 1番は蘭の部分は多少、癪に障ったが

 

 4人は納得した様子だ

 

ひまり「そういう事なら言ってくれればいいのにー!」

つぐみ「そうだよ!何か手伝えたかもしれないのに!」

モカ「いやいやー、恨まれ役はモカちゃんだけで良かったんですよー。」

 

 モカはそう言いながら

 

 4人から目を逸らした

 

モカ(それに、目の前で蘭と裕君が結ばれて耐えられないでしょ?なーんて、言えないよねー。)

リサ「.....モカ?」

モカ「あ、はい。なんですかー?」

リサ「頑張ったね。」

モカ「!!」

 

 りさは優しい声でモカにそう言った

 

 モカ激しく動揺している

 

リサ「つぐみー、コーヒーの追加よろしく!あ、ケーキもね!」

つぐみ「はい!かしこましました!」

モカ「......気づいてたんですかー?」

リサ「あったりまえじゃん☆お姉さんにはなんでもお見通しだよ☆」

モカ「かないませんなー。」

 

 モカはため息まじりにそう呟いた

 

 その後、リサからケーキをご馳走になった

__________________

 

 "とある病棟"

 

 山奥にある精神病棟

 

 その中から、ある叫び声が洩れた

 

カリナ「出して!出してよー!」

警官「うるさいぞ!219番!」

 

 ここは、警官が徘徊する精神病棟

 

 ここにいる収容者は

 

 責任能力の欠けた犯罪者ばかりだ

 

カリナ「なんで、私がこんな目に!!」

警官「知るか。お前が犯罪を犯したからだろ。」

カリナ「そんな!私は彼氏を取り返そうとしただけなのに!?」

警官「あーそうかよ。まぁ、お前をここに送り込んだのはその彼氏くんなんだけどな。」

カリナ「え.....?」

警官「あ、そういえば。」

 

 警官はカレンダーを確認した

 

 そしてカリナに質問をなげかけた

 

警官「お前、ここに来て1ヶ月だよな?」

カリナ「そうだけど、それが何?」

警官「だったらいいや。おい!入ってこい!」

 

 警官がそう叫ぶと

 

 扉が開き、他の収容者が入ってきた

 

カリナ「え?」

警官「今日からこいつがお前らの玩具だ!くれぐれもガキなんてこさえるなよ!」

収容者たち「うーい。」

警官「じゃあ、あとは好きにしな。」

 

 警官はそう言って

 

 手を振りながら部屋の出口へ歩いていった

 

カリナ「え?待って、なにこれ!?」

警官「あー、ここにお前を送り込んだやつからの言葉があってな。」

カリナ「和田くんから......?」

警官「徹底的にやれ、だそうだ。何やったんだ?優しそうな坊ちゃんだったのに。」

カリナ「え?そんな、嘘でしょ.....?」

警官「嘘じゃねぇよ。まぁ、頑張れよ。」

収容者たち「さ〜、遊ぼうね〜。」

カリナ「いや......いやー!!!」

警官「慰みものとしてな。」

 

 それからの、カリナの詳細を知るものはいない

 

 だが、自分の犯した罪の分だけ

 

 苦痛の日々はまだまだ続いていくのだろう

__________________

 

 "裕也"

 

 帰りの山道

 

 遠くには綺麗な紅葉が見える

 

 そんな道で俺は足を止めた

 

蘭「__お兄ちゃん?」

裕也「なぁ、蘭。」

蘭「どうしたの?」

裕也「俺さ、進路決めたんだ。」

蘭「え?そうなの?」

裕也「あぁ。」

 

 俺は深く頷いた

 

 蘭は俺の方をじーっと見てる

 

蘭「何か、したいことでも見つかった?」

裕也「あぁ、見つかったよ。」

蘭「それって、なに?」

 

 蘭がそう聞いてくると

 

 俺は少し空気を吸った

 

 そして、こう言った

 

裕也「俺、司書になるよ。」

蘭「そっか。」

裕也「暦の分まで、頑張りたいから。」

蘭「じゃあ、あたし、お兄ちゃんのいる図書館に毎日通うよ。」

裕也「!」

蘭「だって、お兄ちゃんが司書になってる頃には、あたし達、夫婦になってるから。」

 

 蘭は恥ずかしい事を恥ずかしげもなく言う

 

 それにしても、夫婦か

 

裕也「そうだな、なってるな。」

蘭「うん!」

裕也「じゃあ、手繋いで帰るか。」

蘭「うん!繋ご!」

 

 俺と蘭は手を繋いで

 

 そして、山道を降りていった

 

 暦、俺はさっきも言ったけど司書になるよ

 

 大きな図書館で人を笑顔にできる

 

 立派な司書になる

 

裕也(それまでは見守っててくれ。)

 

 俺は秋晴れの空にそう心の中で呟いた

 

 この声はなんとなく、暦に届いた気がした

 

裕也(また来るよ。蘭と一緒に。)

蘭(!)

 

 俺は横にいる愛する恋人であり妹でもある蘭の手を握った

 

 離れないように、固く握った

 

 もう、絶対に後悔しないように

 

 俺はこの手を離さない

 

 そう、心に強く、深く誓った

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