目を覚ますと見覚えのある景色が見えた
ここは、羽丘に行く前に住んでた家だ
なんで、ここにいるんだ?
俺は困惑しながら辺りを見回した
裕也「......朝ごはん、作らないと。(あれ?)」
今、無意識に言葉が出た
そして、学校に行く用意を始める
ハンガーにかけてる制服に着替え
準備されてる学校鞄を肩にかけた
その行動に違和感を感じない
そのことが一番の違和感だ
裕也(......まぁ、いいや。)
俺はその違和感を拭い去り
部屋を出て、階段を降りて行った
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桜「あら、起きたのね裕也。」
裕也「おはよう、母さん。」
リビングに来ると母さんがいつも通りソファに座っている
それを確認してキッチンに立つ
朝ごはんはシンプルにトーストとかでいい
雄介「__うおぉぉぉ!寝坊したー!」
裕也「寝坊じゃないって。それと、ズボンのチャック開いてる。」
雄介「マジか!?」
裕也「嘘だよ。」
俺が朝ごはんと歯磨きを終えた後
慌てて父さんがリビングに入って来た
俺は用意した朝ごはんを並べて
父さんと母さんを手招きした
雄介「うっひょー!うまそー!」
裕也「別に普通なんだけどね。」
俺は洗い物をしながらそう言った
父さんと母さんは朝ごはんを食べてる
そんな時、俺はあることがふと気になった
裕也「今日って、何月何日だっけ?」
桜「6月26日だけど、それがどうしたの?」
裕也「え?」
雄介、桜「?」
6月26日......?
いや待て、ありえない
裕也「い、今って西暦何年?」
雄介「20○○年だが、本当にどうした?」
裕也「なん、だって......?」
俺は血の気が引くのを感じた
一瞬、思考がフリーズし
それと同時に俺は食器を置いた
裕也「__っ!!!」
雄介、桜「裕也!?」
俺は洗い物の水で手を濡らしたまま
鞄も何も持たず家を出て行った
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裕也(なんで、なんでだ......!!!)
20○○年6月26日
この日を忘れるわけがない
いや、忘れちゃいけないんだ
俺は息を切らしながら走った
裕也(暦が死んだ日が来てるんだ......!!!)
景色が流れて、学校に近づく
イヤな汗が止めどなく流れてくる
まるで水の中にいるみたいに息苦しい
裕也(見えた!)
しばらく走ると学校が見えて来た
最後見た時と何ら変わらない校舎
だが、俺は違和感を感じた
裕也「人混みが、ない......?」
あの日のこの時間
その時は野次馬が大量にいた
でも、今はそれがない
一体、何が起きてるんだ......?
裕也(入ってみるか。)
俺は校門から校内に入り
在籍してたクラスの教室に向かった
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学校内には普通に生徒がいる
俺は息を荒くしながら教室まで来た
......憎たらしい笑い声が聞こえる
全てがノイズとなって耳に入ってくる
俺は覚悟を決めて教室に入った
A男「__おっ、裕也!」
B男「おはよう、裕也。」
裕也「っ!」
教室に入ると憎たらしい顔が並んでいた
殺意を抑えるために唇をかむ
でも、握った拳が緩められることはなく
今にも目の前に汚物に振るわれそうだ
A男「おーい!愛しの彼氏が来たぞー!」
裕也「......は?」
B男「何そんな怖い顔してるんだ?彼女が泣くぞ?」
こいつらは何を言ってるんだ?
まさか、北川の事を言ってるのか?
ありえない、絶対にありえない
北川が出てきたら殺してやる
俺はそう心を固めた
暦「__わ、和田君......!」
裕也「え?」
その声を聞くと渦巻く殺意が消えた
視界にぎりぎり入らない横からの声
俺は自分の首を動かし
声がした方に目を向けた
暦「おはよう......ございます!」
裕也「こ、暦......?」
俺は困惑して尋ねた
でも、この姿は間違いなく暦で
間違える事は絶対にありえない
暦「はい、暦ですが......って、どうしたんですか......!?」
A、B男「裕也!?」
視界が潤んでよく分からない
でも、そこに確かに存在する
俺は慌ててる暦に近づいた
裕也「よかった、よかった......!!」
暦「わ、わわ和田君!?///」
俺は暦を抱きしめた
存在する、幻じゃない
死にたくなるほどに後悔した
守れなかった子が目の前にいる
暦「い、いきなり抱きしめるなんて、そんな......///」
A男「ひゅ~!見せつけてくれるねぇ!」
裕也(いや、待てよ。)
暦が存在するのは嬉しい
でも、北川はどこにいる?
今、この空間にはいない
まだ学校に来てないのか?
裕也「A男、北川はどこにいる?」
A男「え、北川?」
B男「それは......裕也が一番分かってるんじゃないか?」
裕也「え?」
俺が尋ねると全員が渋い顔をした
その様子を見て困惑した
ここで北川はアイドルのような存在
この時点ではこんな顔をされるわけがない
暦「北川さんは捕まりました。」
裕也「え?」
暦「イジメられてる私を和田君が助けてくれて、その時に告白して、それで......///」
裕也「!!!」
暦は恥ずかしそうにそう言った
そして、全てを理解した
これは夢であると
違和感だらけなのに疑わなかったのも
多分、夢だからだ
夢で夢だと自覚することはほぼないから
暦「席に行きませんか......?また、面白い本を見つけたんです!」
裕也「......あぁ。」
暦「それでは、行きましょう!」
俺は暦に手を引かれ自身の席に着いた
夢であることは分かってるし
未練がましいのも最低なのも分かってる
でも、少し、少しだけでいいから
この優しい世界に浸っていたい
暦「__この本が本当に良くて!恋愛小説なんですけど、主人公とヒロインのじれったさがたまらなくて__」
裕也「あぁ、面白そうだな。」
楽しそうな暦を見て頬が緩む
そうだ、俺はこれを望んでいたんだ
この笑顔が見たかった
手に入らなかったものが目の前にある
裕也「......暦。」
暦「はい?」
名前を呼ぶと、暦は首を傾げた
何か言いたいことがあったのに
その言葉が出てきてくれない
裕也「やっぱり、なんでもないよ。」
暦「そうですか?」
裕也「あぁ、話に割り込んでごめんな。」
暦「いえ、和田君の名前を呼ばれて嬉しかったです!」
裕也「......そっか。」
それから俺は暦の話を聞いた
その時間は楽しくて、幸せで
涙をこらえるのに必死だった
__________________
昼休みになって
俺と暦は2人で図書室に来てる
基本、人が集まりずらい場所で
2人になるにはもってこいの場所だ
裕也「この本はこっちでいいのか?」
暦「はい!大丈夫です!」
裕也「オッケー。」
今は図書委員の手伝いをしてる
暦は嬉しそうに鼻歌を歌ってて
俺も心から嬉しく思う
暦「えっと、あとはこれをこっちに......」
裕也「これだな?」
暦「!」
俺は高い所に直そうとした本を取り
それを暦の頭上の本棚に入れ
確認のために少し下を向いた
暦「......///」
裕也「暦?どうした?」
暦「え、えと、すごく近いので......///」
暦は恥ずかしそうにそう言った
それを聞いて、俺まで少し恥ずかしくなる
完全にここまで無自覚だった
裕也「ご、ごめん。」
暦「い、いえ......すごく、嬉しかったです......///」
裕也「そ、そっか。」
あまりに恥ずかしがってて
むしろ、俺の方が意識してしまう
俺がそんな事を考えてると
暦が俺の体に腕を回して来た
裕也「暦?」
暦「少し、このままでいたいです......///」
裕也「......あぁ、いいぞ。バレないようにな?」
暦「もう、今更ですよ......///」
裕也「そうだったな。」
俺は暦にそう言われ、
朝の自分の行動を思い出した
それからは図書室の隅の方で2人で抱きしめ合い
その時間が終わったのは、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った時だった
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放課後になり
俺と暦は一緒に学校を出た
今日1日、本当に幸せだった
授業中に横を見ても、休み時間になっても、絶対に横に暦がいた
暦「__嬉しそうですね、和田君。」
裕也「あぁ、今すごく嬉しいよ。」
夕日に照らされてる道を暦と歩ける
絶対に実現することがない
そう思ってたものが夢だけど叶ってる
暦「......でも、気付いてますよね?」
裕也「っ......!」
歩道橋に真ん中に差し掛かったころ
暦が足を止め、静かにそう言ってきた
俺はそれを聞いて足を止め
後ろにいる暦に目を向けた
暦「これは和田君が見てる夢で、私も本物じゃありません。」
裕也「......」
暦「そして、夢は覚めるものです。」
裕也「......そっか。」
そんなことは分かってる
夢だと気づいてからこうなるのは分かってた
でも、分かってたとしても
少し、寂しいと感じてしまう
裕也「......」
始まりがあれば終わりがある
夢は夢にしないといけない
そんなことは分かってる
裕也「......ありがとう、暦。」
暦「こちらこそ、幸せでした。」
裕也「......」
涙がまた溢れて来た
子供の時、駄々をこねて泣いたのを思い出す
今の気持ちは正にそれなんだろう
手放したくない、終わりたくない
そんな事を考えるのはダメなんだろう
裕也「もう、終わりか......」
日が沈むのが早くなっていく
辺りは段々と暗くなり
ポツポツと街灯がついて行く
裕也「なぁ、暦。」
暦「はい。」
裕也「一個、嘘をついても良いか?」
暦「嘘、ですか?」
暦は首をかしげてる
きっと、俺は本心からこれを言えない
だって、最後まで思えなかったから
俺は少しだけ呼吸を整え
次の言葉を口にした
裕也「好きだったよ、暦。」
暦「!」
その言葉を口にすると
周りの景色が少しだけ白くなった
もう、夢から覚めるらしい
でも、悔いはない
暦「......私も嘘を1つ。」
裕也「!」
暦は少しうつ向いた後
顔を上げ、俺に近づいて来て
そして、笑顔でこう言った
暦「和田君の事が大嫌いでした!」
裕也「!」
こんなに可愛らしい嘘、初めてだ
俺は少しだけ口角が上がって
暦に小さく手を振った
暦「......ありがとうございました。」
裕也「こちらこそ、ありがとう。そして、さようなら。」
暦「お幸せに、和田君。」
暦がそう言った後
周りは白い光に包まれて
段々と現実に戻って行くのを感じた
__________________
裕也「__っ。」
蘭「すぅ......」
目を覚ますと、目の前には蘭がいた
穏やかな寝息を立てていて
いつも通り可愛い
蘭「ん......っ、起きたの?お兄ちゃん......」
裕也「蘭......」
蘭「ひゃ!///な、なに!///」
俺は蘭を抱きしめた
暖かくて、心が落ち着く
抱きしめる力が強くなってしまう
裕也「ダメ奴でごめん、蘭......」
蘭「......悲しい夢でも見た?」
裕也「......優しすぎて、悲しくなった。」
蘭「そっか......」
蘭は俺の背中に腕を回し
そして、優しくなでて来た
少しだけ心が軽くなったように感じた
蘭(きっと、暦さんの夢を見たんだろうな。)
目から涙が零れてくる
蘭はそれを分かってるのか
抱きしめる力を少し強めた
蘭「大丈夫、あたしはずっとお兄ちゃんと一緒にいるから。」
裕也「蘭......」
蘭「絶対にお兄ちゃんの前からいなくならない。」
裕也「......うん。」
俺と蘭はしばらくの間抱き合った
こころが段々と軽くなって行って
少しするといつもの調子に戻った
俺はそれを蘭に伝えてから離れ
ベッドから出た
蘭「__少し、嫉妬する。」
裕也「え?」
蘭「お兄ちゃん、暦さんの事好きすぎるんだもん。」
裕也「......」
蘭は少しむくれながらそう言った
周りから見ればそう思われるのか
実態は少し違うんだが
裕也「......それは違うよ、蘭。」
蘭「?」
裕也「俺はまた、暦を好きになれなかったから。」
蘭「!」
俺は薄く笑いながらそう言った
蘭は少しだけ悲しい顔をして
俺の方を見てる
裕也「......俺には蘭がいるから。」
蘭「お兄ちゃん?」
裕也「愛してるよ、蘭。」
蘭「......うん、あたしも愛してるよ///」
今の俺には蘭がいる
一番大切な女の子がいる
だから、夢でも浮気は出来なかったんだ
手遅れかも知れないけど
蘭「......あたしの事だけ見てくれるように頑張るから///」
裕也「今でもほとんど蘭しか見えてないよ。」
蘭「ダメ、暦さんにも勝ちたいもん。」
裕也「っ!......ははっ、そうか。頑張れ。」
蘭「うん!」
また、嘘をついた
別に今でも蘭は暦に勝ってる
むしろ、今まで勝った子はいない
でも張り切ってる蘭の手前
それを口に出すことが出来なかった
裕也(嘘つきだな、俺は。)
蘭「お兄ちゃん!朝ごはん食べよ!」
裕也「あぁ、分かった。何がいい?」
蘭「おまかせかな。」
裕也「あぁ、分かった。」
俺は少し笑って
部屋を出て行く蘭について行った
夢での時間は嘘だったかもしれないけど
現実の本当の時間の方が好きだ
勿論、これに嘘なんてあるわけがない