TSっ娘が悲惨な未来を変えようと頑張る話 作:生クラゲ
秋の夜空は森の木々に隠れ、風に揺らめく木々の囀りが森を包む。不慣れな森を進軍する彼らにとって、それはどれだけの苦難だっただろう。
いつどこから飛んでくるともわからない、敵の飛び道具。いつしか相応に数が減り、連絡がつかなくなった仲間たち。
「……お、見えてきたか」
だがしかし、苦労は実るもの。斥候として、森に潜伏する敵の猛攻を防ぎながら前進を続けたアマンダの部隊は、ついに目的地へと到達した。
「ああ、ここだな」
進軍開始から、数時間。慎重に進軍を続けた彼らが、ついに開けた場所へと到達する。
それはまさしく、
「奴らの村だ」
今回の目標地点。虐殺と簒奪を行い、この地を滅ぼす事こそが彼らの使命。
アマンダの部隊は、ついにポート達の住む森の中の集落へと足を踏み入れたのだった。
「……ふむ」
アマンダが村の入り口に到達して、まず感じたのはその異質さであった。
彼女は今までいくつもの村落を攻め滅ぼしてきた。だからこそ、「普通の村とはどういうものか」を明確なイメージとして持っていた。
森の中の集落。それは、交通の便が悪く寂れた集落であることが多い。その代わり、獣に襲われないように様々な工夫を凝らし独自の防衛様式を備えていたりする。
水で集落を囲ったり、木の杭で砦を築いたり、獣除けの罠をこれでもかと並べていたり。その防衛様式は多岐にわたる、のだが。
「ここは、商業都市か何かか? どうしてこんなに優雅な建築物が多いんだ?」
「確かに、森の中にポンと都市だけ入り込んだような妙な場所だ。俺の故郷なんかより断然発展してる」
「……この周辺は、領主の治世によりすさまじく発展しているとは聞いていた。まさかこれほどとはな」
アマンダを出迎えたのは、かなり近代的な集落だった。石造りで外壁が作られ、村の建造物は高い技術力が用いられ、そして一目で高度な治水がなされていると分かった。
ポートの村は、酒造業により沢山の旅人と交流があり、様々な技術が流入していた。その発展度は、周辺の村落とは一線を画している。それが、アマンダの感じた違和感の正体である。
ちなみに、その発展の『秘訣』を纏めた指南書が各集落に流通したことにより、ここら一辺の集落はみな凄まじい発展を遂げていた。
そのお陰もあってますます商人たちが集まり、ポートの村周辺でちょっとした商業圏が確立しつつあった。その商業圏は領主のコントロールできる範囲を超えて発展し、隣国から目を付けられるに至った。
その原因を作った
「これを俺等だけで焼き払うのは手間ですね。本隊の到着を待ちますかい?」
「……いや、本隊に任せて私たちは先へ進もう」
アマンダの脳内にあるような寂れた村であればこのまま焼き払うつもりだったが、これはちょっと手に負えない。
村落は人っ子一人おらず、まさにもぬけの殻だ。逃げ行く農民共にどれだけ被害を出せるかが、今回の作戦のカギである。
ここで本隊を待ったりすれば、本末転倒だ。
「……ん? 立て札がありますぜ、隊長」
「ほう、何と書いてある」
「『ここは麦酒の名産地、森の中の憩いの場、プロート村落』とのことでさ。旅人を歓迎する立て札の様です」
「ここはプロートと言う村か。まぁ、報告の際には必要となってくる情報だ。よくやった」
兵士の一人が見つけたその立て札を、アマンダは満足げに眺める。
麦酒の名産地。そういえば、この辺で酒造で有名な村落があると風の噂で聞いていた。ここが、きっとそうなのだろう。
アマンダ達がそのまま無人の村を進んでいく。すると、村の中央部に大きな舞台が用意されてるのに気が付いた。
それは、ちょっとした祭典の後のような賑やかなものだった。
「『本日は収穫祭です、皆様お楽しみください』っと、立て札に書いてますぜ」
「ああ、成程。今日は祭りの日だったんだな」
ふと見れば、周囲には纏められた椅子やテーブルが残っており。その中から、ほんのり良い香りが漂ってきている事に気が付いた。
「ナッツだ。ジャーキーもあるぞ」
「奴らめ、農民の癖にいいものを食いやがって」
「ああ、腹が減ってきた」
その皿の上にかけられた布を取り除くと、豪勢な食事がまとめられていた。その傍には、まだ中身が満たされているであろう麦酒の瓶も置いてある。
それは、夜通し歩いてきた彼らにとって耐えがたい誘惑であった。
「おい、そんなものは放っておけ。農民を追うぞ」
「……いえ、待ってくださいアマンダ隊長。何か、このテーブルの紙に重要な事が書いてあります」
「なんだと?」
そして、思わず料理にくぎ付けになっていた兵士が見つけた紙とは。
「『祭りで余った酒は手前の民家を倉庫に蓄える事。売上金は、この道を真っすぐ行った先の村長の家に届ける事』。どうやら、お宝のありかが記されてます」
「……」
今回のもう一つの目的である『略奪』の助けとなるものだった。これで、むやみに村を探し回らずに済むだろう。
「ねぇ、隊長。そういやさっきから敵の襲撃がありませんね」
「村に入ったからな。森に隠れてこそこそ射るしかできない連中だ、こんな開けた場所で攻撃できるだけの度胸もないんだろう」
「ああ、成程。じゃあ、ここは安全なのか」
そして確かに、さっきから攻撃がない。油断をすればすぐに眉間に飛んできたあの狩人の矢が、さっきから射るそぶりも感じなくなった。
……この村の中に居さえすれば、安全なのだろう。
「なぁ隊長、本当に農民を追う必要があるのか? こっちだって被害も出ているんだ、ここは確実にこの村を確保しておけばいいんじゃないか?」
「俺達は必死こいて農民を追っかけて、また激戦でしょう? で、後から悠々入って来た後続は、ここで美味しい料理とうまい酒で楽しむんだろう? なんか、面白くないなぁ」
「あ、本当だ。本当にこの民家に、酒が山ほど並べてあるぜ。これだけ飲めりゃあ、どれだけ幸せだろうかね」
……。アマンダは、その悪辣な罠に歯噛みした。
「攻撃が出来ない訳ないだろうっ……、あの長距離狙撃をやった敵だぞ? 見逃されているんだよ私達は!」
「え、ですが何で」
「奴らの目的は、最初から足止めなんだ!」
これは、確かに有効だ。
看板で『麦酒の名産地』だとアピールし。敢えて料理を片付けず、目に入る位置に放置し。酒や金の保管地点を『村以外の人間が見てもわかるように』メモ書きして残しておく。
こんな場所に、先行してきた兵士が来たらどうなるか。当然、足を止めたくなるに決まっている。攻撃が止んでしまったら尚更だ。
「あの狩人は、私たちがこの村に入ったから攻撃をやめたんだ。この村で私達を足止めするために」
「え、それは考えすぎでは」
「考えすぎなものか! こんな料理があからさまに置いてあって、酒の場所も教えてくれて、そんな便利な略奪があってたまるか!」
兵士の士気は、ガタ落ちしている。ここで真面目に農民を後追いしたら、ここにある旨い酒や料理は後続の連中のもの。
そんなの、やっていられるわけがない。その心情を利用した、この村の悪辣な罠だとアマンダは看破した。
「都に帰ったら、私が有り金はたいてたらふく良いものを食わせてやる!! だから、ここは前進だ!!」
「……」
「嘘なもんか。お前らが今回の作戦の勲功第一だし、山のように報奨金が出る筈だ。それとは別に、私から奢りも入れてやる!!」
「……へ、へい」
アマンダ自身にも芽生えかけていた「もう、ここで休んでもいいんじゃないか」という誘惑を断ち切り、前進を宣言した。
本隊はノロノロとしているが、アマンダの部隊に関してはかなりの速度で急追している筈。もしかしたら、追いつけるかもしれない。
「いくぞ!」
そうアマンダが叫び声をあげた瞬間、彼女の隣で渋々と立ち上がった兵士の頭が射抜かれる。
……もう、見逃してやる理由はない。そう、宣言するかのように。
「見ただろう、やはりここはあの狩人の射程内だ! 全速前進!!」
「りょ、了解!」
この、村の様相を見たアマンダは感じた。
おそらく、指揮官にあたる人間がいる。この村には、それなりに優れた集団の統率者が存在する。
村長なのかその他の権力者なのかは知らないが、森の中での遭遇戦と言いこの悪辣な罠と言い、敵は常にこちらが一番嫌がるだろう選択肢を的確に取り続けている。
「ち、厄介な村だ」
再び始まった見えぬ敵からの狙撃を警戒しながらも、アマンダは村の連中が逃げたであろう森の奥へと足を進めた。
何もかもが上手くいかぬ今回の任務に、若干の苛立ちを覚えながら。
「スルーしたか」
「……ごめん、読み違えた。絶対に、ここに留まると思ったのに」
僕とラルフはアマンダと名乗る女の部隊を追跡し、そして自らの立てた作戦の失敗を悟った。
「侵略が目的じゃないのか? 何で追撃を優先した?」
「森に隠れている僕達を、やっつけないと安心できないとか?」
「だったらそれこそ、村の中で待って本隊と合流した方が安全だよ。あんな少人数で森に切り込むよりよっぽどね」
アマンダ達には、手を出せない。僕の幼稚な投擲武器じゃあ、とても勝てる相手じゃない。リーゼが牽制し続けてくれているけど、あまり時間稼ぎにはなっていない。
このままじゃ、先に逃げた人たちは追いつかれてしまうだろう。
「リーゼには、アマンダを追って貰う。彼女の矢も、牽制にしかなってなさそうだけど」
「もともと時間稼ぎができりゃあ何でもいいんだろう。俺たちはどうする」
「ここで、アマンダ以外の斥候兵を相手しよう」
だけど、あの部隊を戦闘の素人たる僕達が何とかするのは不可能だ。腸が煮えくり返るほど憎いあの女だが、現状放置するしかない。
「あの少ない時間のなか、わざわざ酒と金の場所を書いた紙まで用意したのに。あの戦闘狂め、まさか僕達を殺すのが楽しいだけじゃないだろうね」
「……仕方ない。俺達はここであの連中が先に逃げた仲間に追いつかないように、って神に祈るわけね。まぁ、それしかないか」
「あー、僕は神様には祈らないかな。宗教上の理由で、悪魔に祈ることはあっても神様には祈らないんだ」
必死で平静さを保とうと軽口をたたきながら、僕は再びボーラに手を伸ばして毒を塗った。
「どうかお願い、みんな無事で────」
そう、非力な僕達は祈ることしかできない。
僕らの包囲網を突破して村の仲間へと迫るアマンダ達を放置し、ここで他の連中を食い止める。本隊を遅らせることも、大事な仕事なのだ。
共に戦ってくれている旅人冒険者さんと歩調を合わせながら、僕はしっかと森の闇を睨みつけた。
「荷台の痕がありますね」
「よく見つけた!」
だがしかし。
現実は、残酷で冷酷だった。
「しめた、逃げた方向が分かれば楽に追いつける!」
「ははは、運が向いてきた。これはさすがに罠とは思えない」
村の大切なモノや動けない人間、足腰の弱い人間をのせた荷台は、明確な痕跡を森の道に残していたのだ。
アマンダは、嬉々としてその痕を追い続けた。その先にいるだろう、無抵抗な村人を殺すべく。
「はっ!!」
「弓矢が激しくなりましたね」
「よっぽど、先に行かれたくないんだろうね!!」
ポートの読みは、今のところほぼ外れていた。
遭遇戦に徹すれば、そこそこの時間は稼げるだろう。敵が村に到達したら、きっと進軍をやめるだろう。
それらは、決して的外れではない。軍事的知識のないポートなりに、必死で考えた考察だった。
だがそれは、あくまで希望的観測に過ぎない。むしろ、そうなってくれないと村が助からないからこそ、そう信じていたのだ。
現実として。アマンダの部隊は破竹の勢いで進軍し、ついに逃げまどう村人の尻尾をとらえた。
その先にあるのは、生まれ変わった彼女が最も恐れた、虐殺である。
「……ねぇ。あれじゃないか?」
「あ、ああ。見つけましたね隊長」
今回の侵略において、ポート達にアマンダはどうしようもなかった。アマンダの部隊に何かちょっかいをかけたとして、逆に返り討ちにあって殺されただけだ。
天才狩人のリーゼですら、足止めするのが手一杯。長い人生を戦場で過ごしたアマンダの相手は、平和に生きる村の住人に荷が重かった。それだけの話である。
「襲い掛かるぞ。私に続け!!」
そして、ついに蹂躙が始まった。
「……て、敵っ!?」
「みんな逃げろ、誰か迫ってきているぞ!!」
突如として沸いた叫び声に、村人たちは動揺している。その隙を、アマンダ達が逃すはずもない。
「ひ、ひぃぃぃ……!」
「だ、ダメょ、アセリオちゃん!! 走って!」
その最後尾にいただろう村娘が、恐怖にひきつった顔でもんどりうって倒れた。近くにやたらガタイの良い男もいるが、武装しておらず脅威ではなさそうだ。
「どうも、こんばんは。そして、死んでください」
その人物が、誰かにとってどれだけ大切な人間かなんて分からない。目の前で恐怖に目を凍り付かしている少女が、どの様な人生を歩んでいて、どれ程の人に大事に思われていたかなんて知る由もない。
「アセリオちゃ────」
魔女帽子をかぶった、まだ少女と呼べる年齢のその娘は。熟練剣士の、その一刀のもとに切り伏せられた。
「────」
少女の首がボトリと血を振り乱しながら大地に落ちる。その首を邪魔だと蹴飛ばして、アマンダは続けざまに顔を真っ青にしている男に斬りかかった。
アセリオという少女を切り殺したことなど、アマンダは気にも留めない。
「ごめん、僕の読みは外れてばっかりだ」
「仕方ねぇさ。やれるだけのことはやってたと思うぜポート」
何とか斥候を処理しながら、ラルフと僕は必死で逃げまどっていた。
「敵の本隊が、もうこんな場所に来てたなんて。もっと距離を取らないと、殺されちゃう」
「はぁ。もう、村の向こうまで逃げちまおうぜポート。その方が、皆に追いつきやすいし」
「だね。多分、敵も少しは村に残留してくれるだろう」
作戦を立てるというのは、非常に難しい。ある程度は当たると予想していた戦略も、ほぼほぼ裏目を引いている。
僕にはやはり、リーダーとしての才能はないのかもしれない。
「ねぇ。やっぱりさ、ラルフが村長やって欲しいな」
「なんだよ、こんな時に」
「僕は僕なりに頑張ってみたけど。本当にこの作戦でいいのか、本当にあってるのか、いつも迷ってばっかりだ。君みたいなリーダーシップは、僕には存在しない」
「……いや、割と頑張ってたじゃん、お前」
「今も、僕の知らないところで何か悪いことが起きているかもしれない。僕の力不足で、大事な何かを取りこぼしてしまったかもしれない。現に、僕はナタリーさんたちを守れなかったんだ」
「……」
「君が、村を導いてくれたらどれだけ安心するだろう。どうかな、この戦いから生きて帰れたら……、考えておいてくれないかな」
こういう時に、こんなことを言うのは卑怯かもしれないけど。でも、今回で僕は実感したんだ。
僕は人の上に立つべき人間じゃない。僕は、誰かを支えるべき人間だ。
強いリーダーシップを発揮する誰かの隣で、その誰かの見落とした穴をふさいであげる役目が性に合っている。
「僕は怖がりだから。もし、何か不測の事態が起こったら……、そんなことばかり考えちゃう」
「それは悪い事なのか?」
「ううん、そんなことはないと思う。でも、どんな選択肢を選んでも、僕は自信が持てないんだ」
その役目に最もふさわしいのは、やっぱりラルフ、君だろ思う。
「今回だって、不測の事態に備えて色々と小細工はしているけど……。どれだけ役に立つか分からないし」
「結局、アマンダとか言うのは放置せざるを得なかったしな。見つからないように神頼みとか、情けない」
「いや、多分見つかるよ。荷台を使っているもの、逃げた先なんてバレバレさ。すぐ追いつかれるだろうね」
「……は?」
あ、やっぱりラルフは気付いていなかったのか。
今回僕達は、逃走に大きな荷台を使っている。アマンダとか言うのが、あの大きな荷台の痕を見逃がすとは思えない。
十中八九、みんなは追いつかれる。まぁ、それは織り込み済みだ。
「え、ちょ、じゃあどうすんだよポート!?」
「君が言ったじゃないか。信じるしかないと」
「信じるって、何を」
だけど、現状ここにいる誰もアマンダに勝てない。だったら、アマンダを何とかできるような人間に何とかしてもらうしかない。
「僕達の幼馴染を信じるしかないだろう」
「幼馴染……?」
「そうさ」
僕は、ちっぽけな存在だ。僕一人じゃ、きっと何もできない。
だからこそ、僕は頼りになる人間に助けを求める。それが、前世で僕に欠けていた事だと思うから。
「何のために、
だから僕は、アセリオに最後尾に待機してもらうように、お願いしておいたのだから。
「……うら、めしい」
「……え?」
それは、いかなる事象だろう。
村娘を切り殺し、次の標的へと剣を構えたアマンダが目視したのは、炎に包まれた生首だった。
「恨めしい、恨めしい、恨めしい!! ああ、我が胴体は何処!? ああ、誰があたしをこんな姿にした!?」
「……えっ? え、な、なにこれ?」
その、異様な光景にさすがのアマンダも背筋を凍らせる。
見れば、先程切り殺した筈の少女の首が、口から血反吐を吐き散らしながら宙に浮いて慟哭しているではないか。
「あああああああああああっ!!」
それだけではない。
大地では、首の無い死体がモゾモゾと、何かを探して這いずり回っている。
「恨めしい、恨めしい、恨めしいぃぃぃ!!!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!!」
その、あまりに衝撃的な光景に。兵士の一人は、大絶叫と共に剣を捨てて逃げ出してしまった。
「あ、う、うわぁぁぁ!?」
「ゾンビだ、魔性の村だ!! この村に手を出しちゃいけなかったんだ!!」
「あああああああああああっ!! あたしをこんなにしたのはお前かぁぁぁぁ!!」
一人が逃げだすと、それを皮切りに。次から次へと、恐怖に心を折られた兵士たちが先程の『村落』目指して全速力で逃げ始めた。
そのあまりに非現実的な光景に、耐えきれなくなったらしい。
「ちょ、逃げるな、お前たち!!」
「……お前か? お前なのか?」
「ひ、来るな化け物!」
「あたしの胴体は何処だ? あたしはどうしてこんなになった?」
「く、く、来るなぁ!!」
そして。数多の戦場を渡り歩いたアマンダをもってしても。
首を切り落とした人間から、呪詛をぶつけられたのは初めての経験だった。
「……ちっ!!」
周囲の、自分に付き従っていた兵士は脱落した。もはや、村人を皆殺しに出来るか分からない。
それ以前に、怖い。この村の人間全員、切り殺したら化けて出るかもしれない。
アマンダは、若干冷静さを失いながら、
「死者がさ迷うな、とっとと果てろ!!」
そう捨て台詞を残して、逃げ出してしまった。
「ア、アセリオ、ちゃん?」
「むふー」
その後。生首を紐で操って、胴体の中に頭を隠していたアセリオがのっそりと起き上がり。
「まったくもって他愛なし。深淵の魔女たる我を相手にするには、早かったようだな」
唖然とするナットリューの方を向き、満面のどや顔をその場で浮かべたのだった。