TSっ娘が悲惨な未来を変えようと頑張る話   作:生クラゲ

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近況報告会

「リーシャさん、リーシャさん……」

 

 僕が文官となって数日が経った。この職場で、いつしか僕はリーシャの世話係の様な立ち位置となっていた。

 

「女の子が仮眠してる部屋に入るのは、やっぱ躊躇われましてな」

「いくらその女の子がリーシャ様とはいえ、ね」

 

 具体的な仕事の一つとして、仮眠を取ったリーシャの起床係が僕になった。

 

 今までガイゼルさんは性別など気にせず叩き起こしていたのだが、僕が加入してからは僕に任せるようになった。

 

 曰く、同性に起こしてもらった方がリーシャとしても良いだろう、だそうだ。確かに理あるので、僕は渋々その役目を引き受けていた。

 

 リーシャは、すぐサボる。昼頃になると、眠くなって効率が落ちるからとグゥグゥ寝始める。そして、ほっとくと平気で夕方まで起きてこない。

 

 そもそも仕事中に寝るな。

 

「起きましょうリーシャさん、今日の仕事が終わりませんよ」

「むにゃ……もうちょい……」

 

 ……それに。彼女には、警戒心とか無いのだろうか。

 

 僕の目前には服を脱ぎ散らかし、下着姿でシーツに抱き付いて涎を垂らすリーシャが居る。

 

 こんな姿を今までガイゼルさんに見せていたのだろうか? 女性としてモテたいなら、もう少しくらい恥じらうべきだ。

 

「リーシャさん、もう少し慎みを持ちましょうよ。こんなんじゃ、襲われても文句言えませんよ……」

「……んが? 私の方が強いし、勝つし……、Zzz」

「そういう問題じゃ有りませんよ」

 

 全く。ダメな子ほど可愛いと言うが、リーシャさんは上司の立場。

 

 僕は仕方ないなで済ませるけれど、こう言うところを今後増えるだろう新人さんに見られたら威厳も何も無くなってしまう。早めに矯正しないと。

 

「……ふぅ、仕方ないなぁ」

 

 なら少し、お仕置きするか。アセリオ特製のえれくとりっく☆ぼんばーの在庫がまだある。

 

「起きないリーシャさんが悪いんですからね」

 

 僕は寝ている彼女の隣に腰かけて、耳元で囁くように警告した。

 

「少し、お仕置きさせて貰いますよ……」

 

 さあ、アセリオの玩具を起動しよう。

 

 

 

「はい、起きましたぁぁぁ!」

「うわっ!」

 

 悪戯を仕掛けるような気持でリーシャの耳元で囁いた瞬間、彼女は目を見開いて怯えるように立ち上がった。

 

 びっくりした。そんな勢いよく起きなくても。

 

「ポ、ポポート! 今お前、何をしようとした!?」

「え、起こそうとしただけですけど」

「そうか。なら起きた、ばっちり起きた、もう良いな?」

「は、はぁ」

 

 というか、何をそんなに焦っているんだ? 目を少し白黒とさせているようだけど。

 

「ふぅー、はぁー。よ、よし。もう目覚めた、着替えるから出て行ってくれ」

「わかりました。早く詰め所に戻ってきてくださいね」

「わかった」

 

 まぁ、起きてくれたなら構わないか。着替えると言っているし、とっとと出ていこう。

 

 まぁ出ていくもなにも、元々リーシャは半裸なんだけど。ここは家じゃないんだから、服くらい着て眠って欲しい。

 

 

「……次から服くらい着た方がいいかなぁ。ちょっと身の危険を感じたぞ……」

 

 

 その時、部屋からぶつくさと独り言が聞こえた気がしたが、興味が無いので聞き流した。

 

 

 

 

 

 

「ガイゼル。何で最近お前が起こしに来ないんだ、ビックリしたじゃないか」 

「そりゃあポート様が加入してくれたからです」

「ポートと私は女同士なんだぞ! 間違いが起きたらどうしてくれる、今まで通りお前が起こしに来い」

「……ん?」

 

 書類を他の部署に届けて部屋に戻ってくると、リーシャさんとガイゼルさんがもめていた。どうしたんだろう。

 

「ああ、ポートも戻って来たか。明日から、お前は私を起こしに来なくていいからな」

「あれ? どうしてです?」

「ガイゼルが私を起こしに来る役目なんだ」

「はぁ」

 

 同性の僕じゃなくて、わざわざガイゼルさんを指名するのね。

 

 また下着姿を見せつけるつもりなんだろうか。痴女かな?

 

 それとも、不倫になるけど実はガイゼルさん狙い?

 

「……リーシャ様がそういうなら、まぁ」 

「そもそも寝ないでくださいよ」

「ゾラ様に報告しますよ」

「うるさいな! ちゃんと割り振られた分の仕事を終わらせれば文句無いだろう!」

 

 まぁ、確かに。他の人より少ない時間できっちり仕事は済ませるあたり、彼女の能力は高い。これでいて武官としても優秀らしいから、リーシャは間違いなく傑物と言える。

 

「はぁ……時間もないし出会いもない。寂しきかなわが青春、くすん」

 

 傍から見てると、単なる非モテ女子にしか見えないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、僕の近況かな」

「ポートも大変なのね」

 

 そして、その夜。僕は久方ぶりに幼馴染3人と揃って夕食を取っていた。

 

「……やっぱり、国勤めは大変。早く村に帰りたいね」

「だなぁ。都って華やかだけど、余裕がねぇって言うか」

 

 みんな忙しくて各自で食事をとることが多かった中、珍しく4人が家に揃ったので近況報告会を行う事になったのだ。

 

 みんなの顔を見たのは随分久しぶりな気がする。

 

「俺は、親父の紹介で都の鍛冶屋に邪魔することになった。こっちの鍛冶は農具より武具に特化してる印象だ。都で農具なんか作っても売れるわけないからしょうがないんだろうけど」

「へぇ」

「せっかくだから都の武具づくりを学んで帰って、村の連中の武器を強化してやろうと思う。防具系統をちゃんとすれば、仲間が獣や盗賊に殺される可能性も減る筈だ」

「それは良いわね! あと、矢が作れるなら矢が欲しいわ!! そう簡単に叩き落されないようなやつ!」

「あー。よし、聞いてくる。俺が作れるようになったら、リーゼに流してやるよ。素材は持ってきてもらうけどな」

 

 ラルフも、自分の夢をかなえるべく前に進んでいるらしい。是非ともランボさんの後を継いで、立派な鍛冶になって欲しい。

 

「ラルフにはもう話したけど、私は女冒険者だけのパーティに入ったわ。後衛として、弓使いの役割を任されることになった」

「冒険者って何してるの? 危なくないかい?」

「基本は都の外の安全地帯での活動ね。調査や素材収集が主で、戦闘はあんまりしないわ。戦闘があるならわざわざ私達に依頼しないと思うし」

「俺らみたいな生産職が素材を仕入れたいときにリーゼのパーティに依頼してるらしい。定期的に可愛い女の子が素材届けに来てくれるって人気なんだそうだ。ウチの鍛冶は自分で素材集めに行けってスタンスだから、依頼して無いけど」

「……成程。考えてる」

「リーダーが『女冒険者は基本パーティで舐められるしセクハラされるから、女冒険者だけでパーティ組んでやれ』って考えで組織したの。それが当たってか今はもう10人近い仲間がいて、結構な大手グループになってるわ」

「へぇ。面白い人もいるもんだね」

 

 そういう所なら、リーゼを預けても安全か。そもそもリーゼは人の善悪を本能で察知してるっぽいし、あんまり心配はしていないけど。

 

「また今度、リーゼやラルフのところに顔を出してもいいかな。友人が世話になっている人に挨拶しておきたい。コネになるかもしれないし」

「あー。俺んところは難しいかもな、凄い気難しいんだ鍛冶職人って」

「私のところは大丈夫。リーダーは気さくだし、普通にメンバー以外の女性と一緒に飲んでることあるし。私のパーティはすり寄ってくる男に当たり強いけど、ポートが来る分には間違いなく歓迎されると思うわ!!」

「……ふむ、興味がある。我も追従し、超魔術で連中の度肝を抜いてやろうか」

「絶対ウケるから良いわよ!」

 

 それはよかった。なら今度、休みをもらって冒険者ギルドに顔を出してみるか。

 

 鍛冶屋さんに関しては、きっと企業秘密とかもあるのだろう、見学は出来なさそうだ。今度、ラルフに挨拶の手紙でも持たしておくだけにしよう。

 

「アセリオは、ずっと厨房にいるの?」

「……夕食の時は、派遣されてきた料理人さんから教えて貰ってる……。朝昼は、路上で超魔術を披露してる」

「へぇ、どっちもやってるんだ?」

「……最近、我が超魔術の恐ろしさが周知されてきた。今度、貴族の狂宴に呼ばれる手筈……。ひと稼ぎしてくる」

 

 アセリオはアセリオで、順調に都に適応していってるらしい。

 

 今後は僕も文官として、貴族付き合いもしないといけなくなる。アセリオの芸は凄まじいし、今度誰かの接待の時に呼んでみてもいいかもしれない。

 

「みんな順調に行っているみたいで何よりだね」

「そうね。村に帰るまでに、全員一回りはおっきくなってそう!」

「その前に、戦争どうにかしないとな。せっかく村に戻れても、前みたいに侵略されちまったらどうしようもない」

「その辺は僕の領分だね。うん、今は右も左も分からないけど、僕も何とかイヴの力になって戦争を早く終わらせて見せる」

 

 そうだ。僕が都に来た理由は、戦争を何とかするため。

 

 きっと、まもなく戦争が始まる。僕達の住処とは遠く離れた北の地で、帝国軍は虎視眈々と僕達の国を伺っている。

 

「僕なんかに出来る事なんて限られている。でも、今はイヴを信じて協力することが戦争を終わらせる早道だと思う」

「……そうね」

「みんなも、いざとなったら力を貸してほしい。僕一人に出来る事なんて限られているけれど、ここにいるみんなの力があればどんなことでも乗り切れると思うから」

「当り前。……みんな、ポートの力になるために此処にいる」

 

 そうだ。だけど、今世の僕にはみんながいる。

 

 前世では頼ることをせず、最後に自ら殺すこととなった大事な幼馴染が、笑顔で僕の背中を支えてくれている。

 

 この世の中に、彼女たちほど心強い人間がいるだろうか。

 

「ポートは朴念仁だし、ラルフはエロバカだし、私もそんなに頭良くないし、アセリオはちょっとアレだけど。でも、4人そろえば無敵よね!!」

「ふふ、期待してるよ」

「……え。ちょっとアレって何? あたしは一番常識人のつもり……」

「えっ」

 

 ……えっ。アセリオが常識人?

 

 侯爵(イヴ)がライブしている真っただ中に乱入して、一緒に踊り始めるアセリオが、常識的……? そんな馬鹿な。

 

「何言ってんの、この中で一番普通なのは私よ! アセリオな訳ないじゃない」

「……えっ?」

 

 リーゼが普通?

 

 宿のオジサンからおつかいを頼まれパンを買ったのに、それを忘れてパンを完食して昼寝した挙句、パンを買ったことすら忘れて「寝てる間にお金が無くなった! 泥棒よ!」と大騒ぎしたリーゼが、普通?

 

「お前らがまともな訳あるか。俺だろ、一番まともな────」

「黙れエロバカ……」

「それはない、かな」

 

 ラルフは論外だろ。全てにおいて論外だろ。

 

「え、僕でしょ。僕が一番常識的で────」

「「「それは一番ない」」」

 

 ……!?

 

「ちょ、それどういうことさ。僕はラルフより論外とでも言いたいのかい!」

「ラルフ関連で一番奇行に走ってたのはポートじゃない。好きでもない相手にあんな行動取ってる時点で変人筆頭よ」

「馬鹿、な……」

 

 嘘だろ。まさか僕は、3人の中で奇人枠に入ってしまっているのか……?

 

「……やっぱり、あたしでしょ」

「私よ!!」

「男がエロいのは仕方ない。俺がエロいんじゃない、男がエロいんだ。つまり俺はまともなんだ」

「でもでもだって! 僕のラルフ関連の行動は、全て村長を押し付けたかっただけであって!! エロバカ釣るならアレが最適だっただろう!?」

「今釣りって言った?」

 

 しまった、口が滑った。

 

「まぁ、釣りは狩りの基本よね」

「……でも、釣りが分かりやすすぎ。真の賢者は狙いを隠すべく陽動を混ぜる」

「そっかぁ。気を付けるよ」

「女って怖い!! 恋を平然と釣り扱いするこいつらが怖い!!」

 

 恋愛において男は積極的に攻めたほうが強いけど、女は待つ方が強いんだよね。男の方がプライド高いから、上手く立てて自尊心をくすぐってあげた方が上手くいきやすい。

 

 ……どっちの性別も経験してるからこそ言える話だが。

 

「でも、結局ポートの釣りが一番上手かったって話よね。ラルフ一本釣り」

「上手かったのかなぁ? むしろあの釣りは逆効果だったと、後でラルフに言われたよ」

「……ソレ。うっすら察してたけど、幼少期からラルフってポートが好きだった。ポートから攻めたせいでラルフが逃げて、拗れてただけ」

「え、そうなの!?」

 

 え。結局ラルフって、本当に昔から僕好きだったの?

 

「そうなの、ラルフ?」

「……黙秘する」

「ポートへの態度、あたし達と全然違ってたし。気やすいというか、露骨にボディタッチが多かったというか」

「……昔からエロかったんだね、ラルフ」

「違う! そんな、そんなハズはない!!」

「エロというより、昔のラルフは甘えてた感じ……。ポートが気にしなかったから、べたべた引っ付いてた。ちょうど、好きな子の気を引こうとちょっかいかけてる感じのお馬鹿さん」

 

 ああそっか、成程。さすがに子供時代のラルフはエロくないよな。

 

 子供らしい恋愛感情で、引っ付いてきてただけなのか。アレは、男友達枠の気やすさだと思っていたけど。

 

「それは気付かなかったわね。よく見てたわね、アセリオ」

「だって、恋敵だし……。今だから白状するけど、ラルフが自分の気持ちに気付かないよう裏でこそこそ暗躍もしてた」

「何やってんだアセリオてめぇ!!」

「ポート、取られたくなかったんだもん……」

「暗躍って何さ」

 

 思ったよりアセリオって僕の邪魔をしていたのか。全然気づかなかったぞ。

 

「……まさかあの時とか、珍しくアセリオが優しい言葉を掛けてきた時とか全部……」

「観客の思考を誘導してこその、超魔術師……」

「う、うわあああぁぁ!?」

 

 ……。ラルフにはいくつか思い当たる節があったらしい。

 

 流石は僕達の最高戦力、絶対に敵に回さないようにしよう。リーゼの狩りの腕も凄いけど、単純にアセリオは勝てるヴィジョンが浮かばない。

 

「まぁ、結局ラルフは自分の気持ちに気づいちゃったし。後はポート側の問題だけね」

「そうだね。頑張ってラルフを受け入れてみるよ」

「その間に私もラルフを落としてみるわ!! 愛人ね!!」

「ラルフが愛人を作ったら、ポートも愛人を作る権利があることになる。そうなれば、ポートはあたしが戴く……」

 

 おお、それが一番丸く収まるよねやっぱり。ぼく的にはどちらでも構わない、それを選ぶのはラルフだ。

 

 夜のお相手は僕では厳しそうだし、ぜひとも二人には頑張ってもらいたい。

 

「なぁ、親父。本当に俺が羨ましいか? 同世代に女の子が固まってる俺が、本当に幸せだと思うか? 味方が存在しない戦場での四面楚歌にしか見えねえんだけど」

「ラルフ! 黄昏てるとこ悪いけど、今度デートでも行きましょう!!」

「……ポート。こっちは、久々に一緒にお風呂行こう」

「そうだね」

 

 こうして、僕は久々に幼馴染たちとゆったりした時間を過ごせたのだった。

 

 日常の中での安らぎを得てこそ、また明日から頑張ろうと言う気になれる。

 

「……新婚夫婦って、こんなもんなの? もっとイチャイチャするもんじゃないの?」

「ごめんねラルフ、しばらくは本当に忙しいんだ。いつか時間をちゃんと作るから」

「……不幸だ」

 

 ラルフはハーレム状態なんだから贅沢言うな。

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