Monster FrontLine   作:ストレート

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Day3. 私は、あんたの敵を殺す為に生まれてきた

 基地司令部での業務は対鉄血作戦行動だけではなく。

軍や他所の基地司令部所属の戦術人形部隊への友軍支援、未確認地域への偵察、物資輸送の護衛などの後方支援任務を行っている。

 

姉妹たちが管理する基地司令部では対鉄血作戦行動には第一、第二、第三、第四部隊が割り当てられ。

残りの部隊が後方支援任務へ赴く形で運用されている。

部隊編成もそれぞれ適任だとハヅキが判断した人形たち選抜して部隊に振り分けており、固定したメンバーでの出撃はあまりない。

 

だが、部隊リーダーに関してはほぼ固定しており。

ハヅキに使えると判断された人形たちが部隊リーダーを務めることが多く、もし実力さえ認められればリーダーとして抜擢されることもある。

 

エリート人形のWA2000も最初は適任と判断されて選ばれなければ、作戦行動部隊の一員になれるかどうか分らないポジションだったが、献身的な行動のおかげでハヅキからの信頼を得て部隊リーダーとして抜擢された経緯がある。

だが、リーダーとして抜擢される前はエリート人形として造られた自分の実力を理解していないような扱いに憤慨する場面もあり、戦術人形の性能よりも実力と経験を重視するハヅキの方針に怒りを抱いていた。

 

その怒りは人間でありながら、前線指揮官として部隊に同行するナオキにぶつけられた。

そして、その怒りをぶつけられたナオキは白黒を付けるためにハヅキの許可を得て一対一の模擬戦を行い、WA2000を徹底的に叩きのめした。

 

「……口だけなら達者に言える。認めて欲しいなら実力で示しなさい」

 

「……ッ!!!!」

 

敗北したWA2000を冷めた目で見下し、口を動かすより態度で示せと言われたWA2000は己の不甲斐なさに拳を叩きつけるしかなかった。

傭兵家業を生業にしていた割にか弱そうな見た目をした少女にあっさりと敗北した自分が情けない。

手痛い敗北を味わったWA2000はその経験を胸の中に刻み込み、ハヅキが求めている実力と経験で自身が優れていると証明する為に下された命令に忠実に従う様になり。

前線指揮官として帯同するナオキと競う様に功績を貪欲に求め続けた。

 

対するナオキも敗北を経験して変わったWA2000に意外だなと感心し、前線で活躍する彼女に目をかけ始め。

ハヅキもナオキとの模擬戦で敗北を学んだWA2000の前線での活躍に実力を認め始め、部隊リーダーとして抜擢するようになった。

ようやく実力が認められて部隊リーダーの地位を得た彼女はそれで満足せず、自身が受け持つ部隊で更なる功績を求め続けた。

 

しかし、功績を求め続けるあまり盲目になっていまい。

とある対鉄血作戦で目標を深追いしすぎて包囲されて窮地に陥ってしまう。

孤立無援となってしまったWA2000の部隊は身動きが取れず弾薬とダミー人形を消費していき、このままでは全滅は免れなかった。

 

自身のミスで部隊を危険に晒した事を激しく後悔するWA2000。

ようやく実力が認められて部隊リーダーの地位を手に入れたのに、こんなところで終わってしまうのか。

実力と経験という自身の物差しで人形たちを見るハヅキを見返し、人間であるナオキに敗北したリベンジをせずに終えてしまうのか。

 

否、諦めてなるものか。

たかが鉄クズ人形相手にやられてやるものか。こんな窮地、自身を犠牲にしてでも部隊メンバーを生還させて見せる。

それが、部隊リーダーとして優秀な人形たちを生かすためにやるべきことだ。

 

「指揮官、聞こえる?」

 

『ええ、まだ元気そうでよかったわWA2000。

すぐに救援を向かわせるからそこで、』

 

「聞いて。私たちはここで何が何でも敵を釘付けにするから、前線司令部の制圧を優先して」

 

救援を向かわせるというハヅキの提案を退け、自身たちで囮役をするという提案をする。

 

『なに馬鹿言ってるのよ。

どれだけの数の鉄血があんた達を包囲しているか分かっている?』

 

「いいの、これは深追いし過ぎた私のミスよ。

このミスは囮という形で挽回させてもらうわ」

 

『……消耗が激しいのにどうやって時間を稼ぐ気?』

 

既に包囲されてから弾薬とダミー人形の数が心許ないのを把握している上で、どうするのかと問う。

 

「私たちを包囲している鉄血のどの側面でもいいから部隊で攻撃させて、攻撃の手を少しでも緩めてもらえれば時間は稼げる。

その間に……ナオキに部隊を預けて前線司令部を制圧させて。目標の座標を送るわ」

 

『それでも長くは持たないし、前線司令部にたどり着くのに時間が掛かるわ』

 

幾ら側面から攻撃させたとしても包囲の中にいるWA2000の部隊に掛かる負担は少ししか減らせない。

それでも彼女は持たせてみると宣言し、

 

「大丈夫よ。ナオキなら、やってくれるわ」

 

『随分とナオキを信頼しているのね。意外だわ』

 

いままでは人間の癖に前線に出るなんて危険すぎると言っていたWA2000から出たナオキへの信頼の言葉。

それは幾度もナオキと共に前線で戦い、その実力と異常性による力を目の当たりにしたからこそ出てくるものだった。

 

『ハヅキ。ワルサーの提案に乗ろう』

 

そしてナオキもWA2000の成長を間近で見ているからこそ、彼女の言葉に嘘偽りはないと信じることできた。

 

『……いいわ、WA2000。

ナオキが前線司令部を制圧するまで耐えきることが出来れば、包囲している鉄血人形を無力化できる。

それまで何が何でも生き抜きなさい。すぐにトンプソンの第一部隊に側面を攻撃させるわ』

 

「了解っ! ナオキ、頼んだわよ!」

 

『んっ。精々、わーちゃんも死なない様に頑張って』

 

「わーちゃん言うなっ!!」

 

こうしてWA2000の第二部隊を囮とする形で手薄になった前線司令部の制圧に乗り出したナオキ率いる第三、第四部隊は遠回りする形で前線司令部へ向かう。

それと同時に第一部隊による側面攻撃が始まり。

包囲している一部の敵がそちらに意識が向き、第二部隊への攻撃が若干だが少なくなる。

 

「皆、聞いて。私たちはこのまま包囲している敵を釘付けにするわ」

 

消耗しきって限界が近い部隊メンバーに向かって作戦の継続を宣言する。

WA2000とハヅキのやり取りを聞いていたメンバーはやることは理解しているものの、この状況で戦いを続けるのは不可能に近かった為か、メンバーの面々には不安の表情が浮かんでいる。

 

「限界なのはわかってる。

私の所為でこんな状況に陥って、まだ戦わせるのかって思うのも仕方ないわ。

でも、生き残るために。生きて帰るためにもうひと踏ん張り頑張ってほしい」

 

生きるため。戦うために造られた戦術人形である自分たちが生きる為に戦う。

WA2000の生きる為に戦えという言葉に感化され、このままただ鉄血にやられるより一矢報いてやろうと奮起し始める。

 

「いい? あいつなら……ナオキなら絶対成功させてくれるわ。

あいつを信じて。さぁ、奴らに目に物を見せてやりましょう!!」

 

彼女の言葉を皮切りに残りの弾丸を全て包囲している鉄血の脳天にぶつけるように、銃を構えて引き金を引き始める。

包囲されて弱っているはずの第二部隊からの思わぬ反撃に鉄血は驚き、勢いに飲まれて包囲網が若干だが乱れ始めた。

その隙を見逃さず乱れた場所を重点的に攻撃を集中させ、包囲網の一部を破ることに成功した。

 

「よし! このまま敵の目をこっちに―――ッ!!」

 

このまま包囲を突き崩すつもりで攻勢に打って出ようとするが、敵から放たれた弾丸がWA2000の脚部に直撃し、体制を崩してしまう。

 

「ワルサーッ!!」

 

部隊メンバーのスプリングフィールドが撃たれたWA2000のもとへ駆け寄ろうとするが、それを手で制して、

 

「大丈夫よッ!! そのまま攻撃を続けて!!」

 

「ッ! ですが!!」

 

「この程度、どうってことはないわ!!」

 

撃たれた脚部を無理やり動かして体制を立て直して射撃を再開する。

 

『WA2000、ナオキから前線司令部に到着したと連絡が入ったわ。あと少しの辛抱よ』

 

「了解! 皆、あと少しだけ頑張って!!」

 

ナオキたちが前線司令部に到着したとの知らせを聞いた第二部隊はあと少しで勝利できると確信し、攻勢に転じようとするが、

 

「リーダー! 弾薬が持ちません!!」

 

「くっ! こっちも弾薬がもうないわ!」

 

消耗しきっていた所為もあってか既に弾薬が底をつき始めていた。

 

「あと少し、あと少しで勝てるわ!!」

 

それでも諦めない、諦めてなるものか。

勝利が目の前にあるというのにこんな所で終わるわけにはいかない。

最後の気力を振り絞って一発一発の弾丸を鉄血人形の眉間へと確実に仕留めていく。

しかし、

 

「ッ! 弾が……!!」

 

あと少しだというのに最後の一発まで打ち尽くしてしまい、弾切れになった愛銃。

もはや、抗う手段のないWA2000にはどうしようもなかった。

仲間たちも弾薬が切れ始めて応戦できなくなったのを皮切りに、包囲している鉄血部隊がなだれ込んでくる。

ここまでか、と瞑目してその場に膝をつく。

 

「ッ!? ワルサー!!」

 

迫る鉄血人形。悲痛な声音でWA2000を呼ぶスプリングフィールド。

自分にできることはすべてやり切った、あとは部隊メンバーの皆が生き残れればそれでいい。

自身の招いた失態は自身の手で挽回する。その為に、自分にできることはもう、ない。

 

「―――諦めるのはまだ早いよ、ワルサー」

 

「えっ?」

 

死を覚悟した彼女の耳に聞こえるはずのない声が聞こえ、目を見開く。

そこには迫りくる鉄血人形を変異した左腕の刃でまとめて切り裂きながら、鉄血前線司令部攻略の指揮を執っているはずのナオキが上空から滑空して舞い降りてきた。

 

「な、んで……?」

 

「あとは全部、ナガンたちに任せておいたから大丈夫。

さぁ、こんな所で座って休んでる暇はないでしょ。ワルサー?」

 

そう頼もしい声音で言いながら、背中に背負ってるバックパックから弾薬を取り出してWA2000に差し出す。

まだ、戦えるはず。そう目で語るナオキをしばらく見つめていたWA2000だったが、

 

「ふっ、諦めるのはまだ早い、ね。……その通りだわッ!!」

 

差し出された弾薬を受け取るとすぐさまリロードし、押し寄せる鉄血人形に向かって撃ち始める。

 

「さぁ、皆! 調子に乗って攻めてくる奴らに目にもの見せてやりなさい!!」

 

ナオキからもたらされた弾薬補給で息を吹き返した第二部隊は勢いを取り戻し。

勢いづいて攻め寄せて無防備な姿を晒している鉄血に弾丸をお見舞いする。

勝利の女神(ナオキ)という増援を得た第二部隊にもはや負けるという考えはもはやない。

 

『……全部隊に通達。敵、前線司令部の制圧が完了したわ』

 

故に、勝利するのは必然的な事となるのだった。

 

「了解。こちらも鉄クズどもの機能停止を確認したわ」

 

前線司令部を失い指揮系統が失われた鉄血部隊は完全停止した。

 

『よくやったわ、WA2000。

あんた達が敵の目を釘付けにしてくれたおかげで勝利できたわ』

 

勝利。確かに結果的にはこの地域の鉄血勢力を全滅することができたが、その為に犠牲を強いられた第二部隊メンバーを窮地に立たせた責任は重かった。

 

「いいえ、結果的には勝ったけど。

私が部隊を危険に晒した事は拭えない。……処分はキッチリ受けさせてもらうわ」

 

だからこそ、WA2000はハヅキに処分を申し出た。

 

「功を焦って部隊を危険に晒す部隊リーダーはリーダー失格よ

だから、リーダーの役目を降ろさせてもらうわ」

 

自身にリーダーを名乗る資格はもはやない。

メンバーを窮地に立たせておきながら、囮として敵の目を引き付けさせる作戦を行う自分には向かない役目だと思ったWA2000は自らリーダーを降りるという提案をする。

 

『確かに、あんたが功を焦って前に出過ぎたのは不味いわね』

 

「だから、」

 

私にはリーダーは相応しくない。そう言おうとしたが、

 

「でも、ワルサーが諦めてたら第二部隊は全滅してた。

諦めずに敵を釘付けにして前線司令部を手薄にできたからこそ攻略ができた」

 

ナオキがWA2000が諦めずに最後まで敵を引き付けて前線司令部の攻略を支えた実績は変えようがない事実だと発言して擁護する。

 

『確かに、彼女の提案のおかげで比較的抵抗を受けることなく前線司令部は制圧できたわね』

 

「部隊を危険に晒したのは許されない。

けど、ワルサーはその失態を囮という形で挽回して、かつ部隊メンバーを最後まで守った実績もある」

 

『だから、今回の失態は帳消しにしろと?』

 

「そうは言わない。

けど、リーダーとして最後まで諦めず最善を尽くしたのは評価すべきだと思う」

 

ふむ、とナオキの進言を受けたハヅキは思考する。

功績を得る為に焦って深追いし過ぎたのはリーダーとしては判断ミスだ。

しかし、そのミスを逆手に取って囮として敵を引き付けるという提案をして実行に移して、見事に成功させた功績は大きい。

 

「いいのよ、ナオキ。私は部隊の皆を危険に晒した。それは揺るぎようのない事実よ」

 

『そうね。あんた一人だけじゃなく部隊の皆を危険に晒したのはよくないわ』

 

でも、とハヅキはWA2000を通信越しに見つめながら、

 

『でも、最後まで部隊の皆を見捨てずに、作戦の成功に貢献した実績は大きい。

故に、今回は不問に処すということでいいわ。わかった、WA2000?』

 

「っ! でも!」

 

それでも納得のいかないWA2000だが、ハヅキは有無を言わさぬ態度で話は終わりだと言うように通信を一方的に切ってしまう。

そんな責任の念に押しつぶされているWA2000にナオキは優しい声音で、

 

「わーちゃん。もし責任をすごく感じてるなら逃げずにリーダーを続けて欲しい。

今の貴女は部隊リーダーとして失敗を経験して学んだ。その経験を活かして次は頑張ろう?」

 

「……ナオキ」

 

WA2000の肩に優しく手を添えながら大丈夫と断言してくれるナオキに目頭が熱くなる想いだった。

 

「ワルサー。貴女が最後まで諦めずに私たちを導いてくれたから戦えた。

貴女のおかげで、私たちは最後まで戦い抜こうと思えたんですよ? だから、リーダーを続けてください」

 

スプリングフィールドや他のメンバーたちの優しい言葉や視線に涙が止まらなかった。

 

「あ、ありがとう。みんな、ありがとう……!」

 

こうして最大のミスを犯しながらもナオキや部隊メンバーの皆の支えもあって部隊リーダーとしての信頼をハヅキから得られたWA2000は、以降も部隊リーダーとしてハヅキの指令に忠実に答えるようになり。

仲間の皆にも部隊リーダーとしてたくさん頼られるようになり。

そして、自身を最後まで信じてくれたナオキの為にできる事はなんでもするようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、ナオキの為になんでもする。

ナオキの為ならたとえ火の中水の中でも駆け付ける所存だった。

だから、その為ならナオキを狙う敵を殺すことは厭わなかった。

自身を信じて守ってくれた彼女に仇なす敵は全員、自分の殺すべき敵だと確信して。

 

「むぅー! むぅー!!」

 

「ギャーギャーうるさいわね。少しは観念して黙りなさいよッ!!」

 

とある廃墟ビルの一室にて、猿轡をされて床に拘束されて喚いている男の脇腹を踏みつける。

踏みつけられて苦痛にもがく男を見下しながら、今回の任務の内容を再確認する。

ナオキの異常性を研究目的に利用しようとしている組織の一員たちの一人だけを捕縛して残り全員は皆殺しにする。

床に寝そべっているこの男以外の奴らは全員、すでに始末を終えている。

 

『まだ殺しちゃ駄目よ、WA2000』

 

今作戦の指揮を執っているハヅキから殺すなと念を押され、床で傷みに悶えて這いつくばる敵を嘲笑うように、

 

「わかってるわよ、指揮官。喋れる程度には手加減してるわ」

 

躊躇なく反対側の脇腹を蹴りつけた。

 

『よろしい。トンプソンと他のメンバーたちで残りの奴らの始末は終えたわ。

そこで合流してそいつを連れて帰ってきなさい』

 

「そう、残念ねぇあんた? 仲間はみーんな死んだらしいわよ?」

 

「むぐー!」

 

冷めた目で仲間は全員死んだと聞かされた男は命乞いをするかのようにのた打ち回る。

この後、拘束されてる男に起こることを理解しているWA2000は今さら命乞いしたところで死は免れないのにと、男の最後の抵抗を滑稽だと嘲笑う。

 

「おいおい、あんまり虐めてやるなよ。WA2000?」

 

そんな嘲笑う彼女を形だけで嗜めながら、全身が返り血に染まっているトンプソンが部屋に入ってくる。

 

「あら、別に虐めてなんかいないわよ。

この後、無様に命乞いして死ぬ奴を虐めても何も楽しくないわ」

 

「こいつを殺すのはボスが聞きたいことを喋らした後だ」

 

「ええ、いっそ今ここで死んだ方が楽だと思うくらいの拷問を受けながらね。

ねぇ、知ってる? あんたはこれから指揮官のえげつない拷問を受けるのよ」

 

「ああ、うちのボスはお嬢の敵に対しては容赦がないからな。

今のうちに知ってることをまとめて話せるようにしておくのが賢明だぞ?」

 

「まぁ、正直に話したからといって楽に死ねるわけじゃないけどね」

 

目の前でこの先自分に引き起こる出来事をペラペラと楽しそうに話す人形たちに男は恐怖した。

 

「ていうか、随分とご機嫌そうねトンプソン。なにか良いことでもあった?」

 

「ああ、お嬢が宿舎で晩酌の準備をして待ってると聞いてね。

早く仕事を済まして帰りたくてウズウズしてるのさ」

 

「へぇ、羨ましいわね。私もナオキに何かしてもらおうかしら」

 

「言っておくが、先にお嬢を独占する予定を入れてるのは私だからな」

 

「はいはい、わかってるわよ」

 

もはや男など眼中にあらず。

この後の予定を楽しそうに話す二人に男は考えるのをやめて意識を手放した。

男が起きる頃には防音対策がしっかりと完備された専用の個室にて、満面の笑みを浮かべて拷問道具を一通り揃えて待っているハヅキが目の前にいるとは露知らず。

 

『今回はごくろうさま、みんな。おかげで新たな情報源が手に入ったわ』

 

「はっ、こいつがその新たな情報源に値すればいいがな」

 

『ふふ、それはその男次第ね。ともかく、二人ともありがとう』

 

「別にお礼なんていらないわよ、指揮官」

 

ハヅキの労いの言葉に当然のことだと言いながら、

 

「私は、殺しの為だけに生まれてきたの」

 

それが戦術人形『WA2000』として存在する意義だと宣言する。

すべてはナオキを仇なす敵を殺すために、自分は存在する。

殺しの為に生まれた自分が愛しい人のために戦える喜びを噛み締めて、いつも通りの日々へと戻っていく。

 

 

 

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