自分でも何を言ってるのか理解が追いついていないがこれだけは言える。
ええやん……(喜)
養護施設の皮をかぶったマッドサイエンティストの実験施設から協力者の助力を得て妹を連れ出し。
どうにか命からがら逃げのびた姉は握ったことのない銃を片手に迫りくる脅威に立ち向かい続けた。
片腕が実験の影響で人ならざるモノに変わって激しく錯乱する妹を支え続け、盗みや殺しで得た僅かな食べ物で日々の飢えを凌ぎ続けた。
姉の献身的な支えのおかげでどうにか立ちあがった妹も役に立ちたいという気持ちから、左腕をボロ布で包むようにして隠して右手だけで使える武器を取って戦うことを誓い。
姉妹二人だけでこの残酷な世界を生き抜くことを決意した。
妹の腕の事もあり人気の多い町は極力さけて廃墟の建物に拠点を転々と移しながらE.R.I.Dとの戦闘で死んだ兵士から銃器や弾丸、金目の物を漁り。
時には町に赴いて店かを盗みを働くなどの行為をしてでも食料を調達する日も多々あった。
盗みや殺しを何度も積み重ねていく内に最初の頃に抱いていた罪悪感もすっかり消え去った。
残酷な世界が悪い。人を騙す事しか考えない奴らがいるから悪い。親切なんて言葉はこの世にはありはしない。
だから、襲い掛かる脅威に銃でやり返すのも当然。飢えを凌ぐために盗むのも仕方がないこと。
そう言う風に割り切って今日も生きる為に手を汚す。
「―――ほぅ、死体を食い荒らす鬼がいると聞いて来てみたら、こんな幼い子供だとはな」
いつものように死んだ兵士たちの所持品を漁っていると姉妹の後ろから興味深そうな声音でそう呟く声が聞こえ、反射的に呟かれた声がした方から飛び退き各々の銃を取り出して構える。
構えた先には背中にライフルを背負った、ブッシュハットをかぶり髭をたくわえた中年らしき男が立っていた。
「ふっ、子供のくせに鋭い目をしているな。安心しろ何もしやしない」
男が鼻で笑いながら両手を軽く上げて何もしないと言うが、姉妹はそんな言葉を信じることなく銃を向け続ける。
荒廃しきった世界で誰の親切も得られずに二人だけで生きてきた姉妹に他人を信じるという考えは既にないに等しかった。
姉妹の目を見て感じ取った男はなにを考えたのか背負っているライフルを手に取って、姉妹たちに向かっ
て放り投げた。
急に放り投げられたライフルにビックリしながらもどうにか姉が両手で掴み取る。
「こんなものでいいなら欲しければくれてやる。そこら辺で拾った銃なんぞよりかは良い物だぞ。
もし、そいつを使って生き残る術を学びたいなら着いてこい。歓迎してやる」
自身の武器であるライフルを見ず知らずの子供に「くれてやる」と言って与えた男は、そのまま無防備な後姿を晒して来た道を戻っていく。
男から放り与えられたライフルを使えるかどうか確認した姉はそれを男の背中に向けて構える。
撃とうと思えばいつでも撃てる。他人に上から目線で「教えてやる」などと言われて信じるはずはない。
「……」
しかし、姉は撃たなかった。妹も姉が撃たないことに目を丸くする。
今まで出会って来た優しい表情の皮を被った悪人の大人たちとは違い、気配を悟らせずに近づいたのに襲うことなく声をかけてきて。
あまつさえ背負ってたライフルを捨てるような真似までして自分たちに与えた男に目が離せずにいた。
このまま自分たちだけで生きていけるかと言われれば不安な部分が多々ある。
銃を撃ったことはある。それで人を殺したこともある。だが、自分たちよりも強い相手とは正面切って戦うことはできなかった。
戦うには自分たちはまだ子供で正直、ハンドガンを撃つだけでも反動で腕をかなり痛めることがある。
生き残るにしても盗みを働いて得た食料も缶詰などの既製品ばかりで作ったことは一度もない。
妹も左腕が自由に使えない状態で戦い続けるのは難しいだろう。
男が言った生きる術を教えてやると言う言葉。
本来ならば他人の言うことは信じない姉だったが、持っていたライフルを与えて無防備に後姿を晒す男に少しだけだが希望を見出した姉は妹の手を引いて一定の距離を保ちながら男の後ろを着いて行った。
姉の思いもしない行動に驚く妹はやめたほうがいいと引っ張り返すが、大丈夫と言い聞かせるように言って着いていくのをやめなかった。
もし罠であればその時は男だけでも道ずれにすればいい。
今さらこんな世界には妹以外の未練など既にない。そんな決意を表すかのようにライフルのトリガーに掛け、いつでも男に向かって撃てるように引き金を引けるようにする。
そんな姉の警戒を知ってか知らずか男は鼻歌をリズムよく刻みながら悠長に歩いていた。
数十分程度歩いたところでようやく木で建てられた家が見えてくる。
恐らくそこが男の家なのだろうと思った姉は妹の腕を引っ張る手に力が入る。
何があってもいいように妹にも銃に手を置いておけと耳打ちしつつ、男の出方をうかがう。
「着いたぞ。ここが俺の第二の
家の前まで付いた男はここが我が家だと後ろから一定の距離を保つ姉妹の方に振り返って言う。
ここまで着いてきておいて警戒を緩めない姉妹に「良い判断だ。少し待っていろ」と言い残して家の中に入っていく。
数分たって家から出てきた男の手には姉に与えたライフルと同じライフルとライフルスコープらしきものを片手に持っていた。
武器を手に取って出てきた男に姉はライフルを構えようとすると男は片手に持っていたライフルスコープを彼女に向かって放り投げて渡してくる。
「そいつを取り付けてみろ」
男に投げ渡したライフルスコープをライフルに取り付けてみろと言われ、少し戸惑った様子を見せる。
少し考えて男の言ったとおりにライフルスコープを取り付けようとするが、いかんせん取り付け方の知識もなしにつけるのは難しい。
それを理解していない姉は頑張って取り付けようとするがうまくいかない。
取り付けに苦戦する様子を見た男は姉に見えるように片膝をついて持ってきたライフルに同じライフルスコープを使って取り付け方を実践して見せる。
一通りの付け方を見せた男は同じようにやってみろと姉に促し、男の行った手順を辿ってどうにか取り付けることに成功する。
「よし、スコープを覗いてみろ。覗いた先は綺麗に映っているか?
もし一部が欠けて見えるようなら少しずらして見える位置に調整しろ。
あと
男に言われたとおりにライフルスコープの位置の調整とピントを合わせ、自身の目に合わせた調整に仕上げる。
「
スコープの他にもアクセサリーを取り付けて自分好みの銃ができれば戦い方の幅が広がる。覚えておけ」
ライフルスコープの取り付けられたライフルを見て顔には出さなかったが満足気になった姉は妹に完成した物を見せる。
姉妹たちの警戒心が薄れて子供らしい表情を見た男は微笑を浮かべて頷き、
「俺はアレックス。アレックス・プライス。お嬢さん方のお名前を聞いても?」
英国紳士なふるまいで膝をついたまま姉妹に自己紹介をして名前を尋ねる。
尋ねられた姉妹は少し迷いを見せたが、
「ハヅキ」
「……な、ナオキ」
恐る恐るだが自身の名前を口にした。
「ハヅキとナオキか。いい名前だな。
それで、ここで生き残る術を学ぶ決意はしてくれたか?」
再び、ここで銃の扱いを含めた生き残る術を学ぶ気はあるかと問いかけられ。
姉妹は互いに目を合わせて少し思考した後に頷き、
「……私たちに銃の使い方とクソみたいな世界で生き残る方法を教えて」
「いいだろう。だが、まずは腹ごしらえからだ。
ライフルを扱うにはまだ小さすぎる。もう少し大きくなってから銃は覚えていこう」
これが姉妹ことハヅキとナオキの恩人、アレックス・プライスとの最初の出会いだった。
「……AR小隊?」
指令室にてハヅキとナオキの上司にあたる女性。
グリフィン上級代行官のヘリアントスことヘリアンから、とある小隊への支援任務をモニター越しに依頼される。
件のAR小隊とはなんぞや? と疑問を浮かべるハヅキにヘリアンは淡々した様子で話を続ける。
「AR小隊はI.O.P社の16Labで製造された人形で結成された小隊だ。
この小隊にはS09地区の鉄血勢力圏にある鉄血工造の今後の対鉄血に有益な重要な情報を確保するために潜入任務を帯びている」
「ははーん、なるほどね。
危険を冒して周りが鉄血だらけの地域に行ったAR小隊にもしもの事があった時の保険として、S09で近場にいるこの基地から支援部隊を派遣する準備をしておけって言いたいのね、ヘリアン?」
ヘリアンの言わんとしている任務の概要を見事読み取った事に話が早くて助かると頷き、
「話が早くて助かるぞ、プライス指揮官。
そちらから幾つか支援部隊を派遣する準備をして、不測の事態に備えて欲しい」
「まぁ、言いたいことは分かるけど。
こっちも別件の対応で忙しいし、あまり支援任務に出せる戦力はないわよ?」
「構わない。AR小隊の撤退を支援してもらえればそれでいいからな」
「はーい。じゃあ、支援部隊に派遣する子たちを見繕っておくから。
よほどの事態がこっちで起きない限りはちゃーんと要請通りにAR小隊に支援部隊を迅速に派遣してあげるわ」
「ああ、助かる。
しつこく念を押すようで悪いが、AR小隊が帯びている任務は今後の対鉄血への重要な布石となる情報の確保だ。
できることならAR小隊全員の生還、もしくは小隊が潜入任務で得た情報を最優先に頼む」
あくまでも優先なのはAR小隊が情報を確保しての撤退。
もし不測の事態に陥った場合は情報の持ち帰りを優先とする事を念押しされて、ヘリアンとの通信を切る。
「さて、カリーナ。支援任務に最適かつ暇を持て余してる子たちはどれくらいいる?」
同じようにヘリアンとの通信をハヅキの後ろで内容をメモしながら聞いていた後方幕僚のカリーナに現状、どの人形が任務に最適かつ手空きかどうかを問いかける。問いかけられたカリーナは情報端末を操作しながら、
「えーと、現状で手空きなのはこの子たちですね」
「どれどれ……。うーん、リーダーにはウェルロッドとVectorが適任かしらねぇ」
情報端末に表示されたリストをハヅキに見えるように差し出し、リストアップされた人形たちを一通り目を通したハヅキはその中から二つの支援部隊を編成することを決め、リーダーとしてウェルロッドとVectorの二人を選出した。
「OK。残りの編成はリーダーの二人と相談して決めるわ。
カリーナ、すぐに二人をここに呼び出しておいて」
「了解いたしました。指揮官さま!」
今後の編成はウェルロッドとVectorの二人を交えて決めることにしたハヅキはカリーナに二人を呼び出すように指示を出し、
「あと、ナオキも呼んでおいて」
「えっ、前線指揮官さまもですか?」
「うん。もしかしたら状況によってはハイエンドタイプが出張ってくる可能性もあるからね」
件のAR小隊が敵地に潜入してまで得ようとしている情報。
それは今後の対鉄血に有益なものだと聞いていたハヅキはその情報を鉄血が黙って見過ごすとは思えなかった。
故に、その情報の価値によってはハイエンドタイプが出張ってくる可能性も否めなかったため、ハイエンド対策の切り札としてナオキも呼ぶことにした。
何もなければそれでいい。だが、用心するに越したことは無い。
もしAR小隊が探している情報が鉄血にとっても重要なものであれば一筋縄ではいかない。
ヘリアンから不測の事態が起きたという連絡が来ないことを祈りながらも、支援部隊の編成を急いだ。
そして。その不測の事態はかなり近くまで迫りつつあった。