結論から言うと最悪の事態はかなり深刻な形で訪れた。
ヘリアン曰く、件の潜入任務を主導していたペルシカリアことペルシカという16Labの主任研究員とAR小隊の通信が目的の物を発見したという報告後に途絶えたとのこと。
恐らく鉄血との接敵で機密保持の目的で通信に割り込まれる形での漏洩を防ぐために、AR小隊とペルシカの通信が強制遮断されたと見て間違いないだろう。
もはや悠長にしている暇はないとヘリアンからの要請で頼まれた支援部隊の派遣を実行。
リーダーのウェルロッドとVectorの二人が率いる部隊と前線指揮官のナオキを中心にAR小隊の救援へと向かうことになった。
既に戦闘準備完了の状態で待機していた支援部隊は命令されてすぐにヘリで飛び立っていき、AR小隊との通信が途切れた第三セーフハウス付近を目的地に向かう。
「……今回の任務は単純明快。
鉄血と接敵したと考えられてるAR小隊の救援と彼女たちが手に入れた鉄血の研究データの回収」
二機の輸送ヘリにそれぞれ一部隊ずつ搭乗しているウェルロッド、Vectorの部隊に通信プロトコルで今回の作戦の概要と最優先目的の確認を全員に向けて行うナオキ。
今作戦の指揮を全面的に任されてるナオキはあくまで鉄血の殲滅が目的ではなく情報を手に入れたAR小隊の戦場からの離脱を最優先に考えた作戦行動を執ることを第一に考え、リーダーの二人とも情報を共有する。
「恐らくだけど相手側にハイエンドタイプがいるのは、ほぼ確実と考えた方がいいと思う」
鉄血のテリトリーに潜入してでも手に入れようとした研究データの内容によっては黙って手渡すとは思えない。
もし件のデータが鉄血にとって致命的な損害を与えるものなら尚更に見過ごすという愚行は起こさない。
その為にはハイエンドタイプが出張ってくる可能性も大いにあり得る。
「敵の規模はまだ不明。
でも、ハイエンドタイプが指揮してるならこちらの倍はいることを想定しておいて」
ヘリ内でのブリーフィングを一通り終えたナオキは最後に敵の規模はこちらの倍以上はいると付け足して通信を終える。
既にAR小隊との通信が遮断してから数時間が経っていた。
徒労に終わることが内容にとAR小隊の健闘を期待しつつ、目的地へと急行する。
「無駄足にならないといいけどね」
「たぶん大丈夫だと思う」
一緒に搭乗している今作戦の第二部隊のリーダー、Vectorが期待していない声音でそう呟くとナオキはそれは大丈夫だろうと返す。
「へぇ? 何の根拠があってそう言えるのかしら」
「AR小隊の隊長、M4A1っていう戦術人形が他にはないモノをもってるから」
「……? その他の人形にはないモノって?」
AR小隊の隊長、M4A1という戦術人形が持つ他の人形にはないモノ。
出発直前にハヅキに聞かされた内容は本来であれば人間である自分たちにのみ持ちうる戦術人形の指揮システムを有しているということ。
「人形が人形を指揮できる能力、ねぇ。それで状況が好転するとは思えないけど」
「周辺には他所の基地から見捨てられた支援部隊がいるみたいだから、もし機転を利かせられる子なら有効活用できるはず。
逆にできてなければVectorの言う通り、無駄足になってるかもね」
「なら、そのAR小隊の隊長さまが自身の強みを活かしてくれるのを祈るしかないわね」
自身の強みを活かしていればこちらが救援に行くまでの時間を稼げるはず。
会ったことのない戦術人形のM4A1が率いるAR小隊が周辺の支援部隊を指揮して生き残っていることを祈りつつ、各々の手持ちの銃器の手入れを完璧にして激戦の地へと赴いていく。
作戦目的は鉄血工造の研究員『リコ』の経歴、研究データの回収。
その為にS09地区の鉄血勢力圏内へと潜入し、数々のこんなんをどうにか乗り越えて目的の研究データが保存されてる情報端末がある第三セーフハウスにたどり着いた。
目的のデータが保存されてるOSの認証システムを解除する為にペルシカから指示されたパスワードを入力し、データベースに接続してデータをメモリにコピーする作業に移そうとすると、
『ごきげんよう、グリフィンの人形の皆さま方』
鉄血のハイエンドタイプでトップクラスの実力を有する人形、
それと同時に鉄血人形の信号が多数出現して第三セーフハウスが包囲されてしまう。
『貴女方の尽力のおかげで『ご主人さま』が欲しがっている『宝』が得られます。感謝しますよ』
ポートのOSが古い所為で鉄血にも解除が不可能だったため、別の手の者に解除してもらう必要があった。
故に、第三セーフハウスまでの道のりに対した鉄血による障害もなかった。
AR小隊がパスワードを解読して認証システムを解除するのを待って、手に入れた研究データを奪い取る。
それが鉄血の描いた構図だった。
もはや猶予無しと判断したAR小隊はデータのコピーをM4A1がしている間、道中に見かけた支援部隊を利用するためにAR15とSOPMODⅡらに小隊近距離ネットワークを利用した強制アクセスによる信号の書き換えを任せて、残ったM16A1に後ろを任せてデータのコピーと指揮を同時に行いつつ防衛を行う。
「コピー完了しました、M16姉さん! 後は撤退するだけ――、」
『逃がしませんよ』
どうにか支援部隊の指揮権を得たM4は彼女らの助力を得て第一波の攻撃を凌ぐことに成功し、情報のコピーを終えた。
あとは支援部隊に援護してもらいつつ撤退するだけ。
そう思っていた矢先に第三セーフハウスに榴弾砲が降り注がれ、爆破に吹き飛ばされたM4の首を
「私を見なさいM4A1。絶望を貴女に届けに来ましたよ」
「ぐっ、が……。え、
「ご主人様の物を盗んでおいて逃げられるとでも思いましたか? 浅はかですね」
「安心しなさい。貴女をバラバラに破壊した後に他の仲間も後を追わせます」
だから、貴女はここで朽ち果てろ。
M4の首を握り潰すつもりで止めを刺そうとする家
「……いや、終わるのはお前の方だ。
横からアサルトライフルの銃弾の雨が
銃弾をお見舞いしたM16を睨みつけるが、
「
M4に意識が向いていたのが災いし。
「大丈夫か、M4?」
「ゲホッ! うっ、はい。ありがとうM16姉さん」
「構わんさ。お前を守るのが私たちの使命だからな」
崩壊しかけているセーフハウスを見回しながらM4は支援部隊を連れてきたAR15とSOPMODⅡが戻ってくるの待つ。
後はコピーし終わったデータをペルシカに渡すために脱出するのみ。
未だに鉄血の包囲網がある中をどう脱出するべきか?
その答えはM16の「支援部隊に脱出の援護をさせよう」という支援部隊に殿を任せる形での脱出方法が提案され、最初は迷っていたM4だったがAR小隊の隊長として全員で脱出するという目的を果たすために、苦渋の決断を下した。
状況は刻々と動き出しつつあった。