東方祝福録   作:祝いたい

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「この本によれば、博麗神社に住まう巫女、博麗霊夢。彼女は異変を解決し、博麗大結界を維持する博麗の巫女の任に就いていた。ある日、幻想郷を覆い尽くす紅い霧の異変を解決するため、紅い霧の出自を調査する我が主の前に異変の元凶が立ち塞がる。その名は…………おっと、皆様には未来のお話、でしたね」


EP02

神社を勢いよく飛び出した霊夢は、持ち前の直感を頼りに霧の発生源とおぼしき場所へ飛ぶ。

 

「お~い!霊夢!」

 

途中で襲いかかってきた妖精やら妖怪やらを容赦なく叩き潰しながら進んでいると、少女が声をかけてきた。

 

「魔理沙じゃないの。何か用?」

「何か用って、今は一つしかないだろ。異変を解決しに来たんだ」

 

声をかけてきたのは金髪の少女だった。白黒の服に魔女のような帽子を被った彼女は霧雨魔理沙という。人でありながら魔法使いを自称する彼女はどうやら霊夢と同じく、異変を解決するためにここへやって来たらしい。

 

「とにかく、異変の元凶は霧の湖で確定だぜ」

 

彼女の話によると、異変解決のために聞き込みに次ぐ聞き込みの末に、最初に霧が発生した場所を特定したようだ。

ちなみに、霊夢が直感に頼ってやって来たことを告げると、魔理沙はどことなくやるせない表情をした。何とも言えない敗北感があったらしい。

 

ともかく、こうして紅い空を全力で飛翔する二人の目に紅い屋敷が映った。湖に建つ屋敷の門の前に着地すると内部へ入るべく進む。その際、中華服を着た、紅美鈴と名乗る女の妖怪に阻まれ、戦闘になったが、幻想郷における決闘ルールである【弾幕ごっこ】に不馴れであったことが災いし、霊夢と魔理沙に一蹴されていた。

 

「邪魔するわよー」

「邪魔するぜ。って思ったより広いな、どうする霊夢」

 

こうして侵入した屋敷の中は、二人が想定したものより広く、また薄暗かった。

 

「どうするって、勘を頼りに行くしかないでしょ」

「だよなぁ、んじゃ、手分けしようぜ」

「わかったわよ。私はこっち行くから」

「おう!」

 

魔理沙の提案に乗った霊夢は、魔理沙と別れ、一人探索に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様の前に少しでも……!」

 

探索に入ってすぐ、霊夢は屋敷のメイドに幾度も強襲を仕掛けられていた。

一度目の強襲では梃子ずらされたものの、流石に三度目ともなると多少手間が増える程度というレベルだが、それでもよく食い下がって来るものだと霊夢を思った。それが忠誠心故かどうかは知らないが。

 

「まったく。そろそろ出てきたら?」

「気づいてたの?」

 

ようやく意識を失ったメイドを一瞥し、いつの間にかたどり着いていた玉座を見やりながら問うと、声と共に玉座に霧が集まり人の形を取った。

一瞬の後に現れたのは少女だった。銀の髪と赤い瞳を持つ彼女は一見人間の少女のようだが、その背から生えるコウモリの翼が彼女が人外の者であることを如実に表していた。

 

「私は紅魔館の主にして、誇り高き吸血鬼。レミリア・スカーレットよ」

 

窓から覗く紅い月をバックにレミリアは微笑む。

 

「私は博麗霊夢。一応訊くけど、外の霧。迷惑だからやめてくれる?」

「嫌よ。だって日光が鬱陶しいもの」

 

その答えに、霊夢はさほど驚きもせず嘆息すると無言でお払い棒を構えた。

 

「少し待ってもらえるかな?レミリア・スカーレット。私には一つ、どうしてもやらなければならないことがある」

 

一触即発。今にも激戦が始まろうと言うとき、男の声が響いた。

 

「あんた。いつの間にここに」

「あら?私がここまで気づかないなんて」

 

霊夢とレミリア。驚いたのか二人揃って男を見つめる。霊夢の隣にいつの間にかたっていた男は何時ものようにマフラーをたなびかせ、巨大な本を片手に飄々と立っていた。

 

「突然すまないが、どうしてもやらねばならないことがあるのでね。十数秒ほどいただけるかな?」

「……まあ、いいでしょう」

いざ決闘!という。ところを邪魔されてレミリアは多少不機嫌だったが自分に気づかれずにやって来たこと、この場で声をかける勇気に免じて許すことにした。王は寛大なのだ。カリスマを感じる。

 

「では、いこう」

 

男は、手元の本を開くと意気揚々と口を開き、不思議とよく通る声で言葉を発した。

 

「祝え!」 

 

「博麗の名を受け継ぎ、人妖を超え、人と幻想を守護する博麗の巫女。その名も博麗霊夢。今まさに、その歴史が幕開ける瞬間である」

 

空気が凍った。

霊夢は、言葉を発することができなかった。この男、誰からも望まれていない祝福をわざわざ流れを中断してまでやったのだ。どこからか、カマシスギィ!と幻聴すら聞こえた気がした。

 

レミリアは、言葉を発することができなかった。この男、レミリアに殺される危険を侵してまで、心の底から博麗の巫女を祝福するためだけに現れたのだ。なんというか、イカす。うちにもそういう奴が欲しいと思った。

 

 

 

 

 

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