BAKATEST_DANCE   作:不知火新夜

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第1章 第一次試召戦争!
主席と帰国子女と令嬢


それは春、僕がこの文月学園の校門前に長々と続く桜並木に辿り着いた所から始まる。

僕の、僕達2学年の波乱に満ちた青春の日々が。

 

「お早う、吉井」

「お早うございます、西村先生」

 

その桜並木を抜けて校門前に辿り着いた僕に声を掛けたのは、この学校で生活指導を担当する西村(にしむら)宗一(そういち)先生。

そのグレーのスーツの上からでも丸分かりな程に鍛え上げられた体躯と、数々のトライアスロンの大会に出場して結構な成績を上げている事から『鉄人』と呼ばれたり、その重みある声が某世界最高のスパイそっくりな事から『スネーク』と呼ばれたりと、渾名がやたらと多い先生だ。

そしてそういった渾名に違わぬ校内での仕事振りから、一部の生徒達からは恐怖の象徴とも言わんばかりに恐れられているが…僕にとっても、別の意味ではあるが頭の上がらない存在ではある。

 

「随分と早い登校だな、お前が最初だぞ、試験結果を渡すのは」

「そうでしたか。何分、早く目覚めてしまいまして」

 

試験結果…それは春休み中に2学年以上の生徒全員を対象に行われた『クラス振り分け試験』の事だろう。

この文月学園の特徴の1つとして、2学年以上のクラスの設備が上げられ、その所属クラスを決めるのがクラス振り分け試験、という訳だ。

この試験で学年上位に食い込む成績を叩き込めばその生徒は、最高の設備が用意されたAクラスに入り、逆に最下位から数えた方が圧倒的に早い程度の生徒は、最悪な設備しかないFクラスに、となる。

その設備の格差たるや、上は超高級ホテルのスイートルーム、下は単なる廃屋、という表現がピッタリ嵌ってしまう程らしいのだから恐ろしい。

尚、交通機関の麻痺といった不測の事態で無い限りは再試験が認められず、その為欠席や早退は強制的に0点扱いとなり、結果としてFクラスへの所属を強いられる事となる。

大学入試や資格試験等でも同じ制度なのだし、体調管理も実力の1つという事を物語っている。

…こう言うと僕がその決まり事の割を食った様に受け止められかねないが決してそんな事は無い。

何故なら、

 

「ほら、お前の結果だ。まあお前なら当然の結果だな」

「有難う御座います」

 

吉井(よしい)佐介(さすけ) 貴殿をAクラス代表に任ずる

 

と、あったからだ…そうか、僕がAクラスの代表となった訳か…

 

「ん?どうした、何か浮かない顔だが…」

「あ、いえ。結果を残せたのは喜ばしいのですが、何か違和感が…」

「違和感、か…まあいい、ともかくお前が成績で2年を代表する存在になったという事でもある。これまで以上に勉強は勿論、良い学生生活を送れるよう励めよ」

「はい!頑張ります!」

 

先生の激励に答え、僕は新たなる教室が待つ、校舎へと向かう。

その後ろで、

 

「心意気は十分だ。後はそれが…刑事事件クラスの騒動を起こすために使われなければ良いのだがな…」

 

僅かに歪んだ(・・・)右顎を引きつらせつつ苦笑いを浮かべる先生が独り言を言っていたとは知らず。

 

------------

 

僕が1年間所属する事になった2年Aクラス、その教室がある新校舎の3階に辿り着き、入り口を探す…が、

 

「な…何なんだこれは…これが本当に教室なのか…?」

 

僕の眼に入って来たその光景は、凡そ僕が想像していた物とは余りにもかけ離れていた。

超が付く位の大型電子黒板…これは問題ない、サイズはともかくとしても無駄なく情報を掲載出来るこれなら授業もスムーズに進むだろう。

個人の机として使われているシステムデスク…これも良い、高校生、それも受験生となるとその教材の量は凄まじいと言うしかない事を思えば有難い。

そしてその卓上に鎮座するノートパソコン…これは…まあ良いだろう、IT機器に触れる機会はもう日常的なこの時代、その予行練習になるし、上手く活用すれば勉強も効率良く進む。

だが…

個人の机に併設されたエアコン…生徒のコンディションの為の前に地球のコンディションを考えるべきだと僕は思うが。

システムデスクを区切る透明なパーティション…エアコンの効率を上げる為だろうが、まるでネットカフェだ。

椅子として使われているリクライニングシート…駄目だ、僕の親友が寛いでいる姿しか浮かばない、そしてこれでは完全にネットカフェだ。

通常の5倍以上はある教室の広さ…設備面を考えれば致し方ないのだろうが、これでは後ろの面々の授業に支障が出るだろう…それを考慮しての電子黒板とノートパソコンと思うが。

そして、教室の後ろに設置された個人用ロッカーに大型冷蔵庫にドリンクバー、そして壁に掛けられた有名な画家の絵…これを教室と呼んで良いのだろうか?

先輩から聞いた話は比喩では無く本当の事だった…今更ながら恐ろしいな、この学校は…

 

「ま…まあ良い、決まったからには1年間お世話になる教室だ、入ろう」

 

さて、僕の机は…前列の中央…成る程、周りの視線をほぼ一身に浴びるポジションに学年首席を置く事でその重さを理解させてより精進させると共に、周囲がその姿を見て刺激を受けるという相乗効果を期待してのあの席、という訳か。

そう1人で納得し、席に着いた所でさっきの違和感の意味を考える。

…そういえば僕の彼女や親友達のクラス振り分け試験の結果はどうなったかな…。

と、考えを巡らせつつ着席し、荷物を整理していると、

 

「サスケ!サスケもAクラスになったのね!」

 

教室の外から僕の良く知る存在の声が聞こえたのでそっちに振り向くと、案の定だった。

 

「美波!その口振りからして、君もか?」

「うん!サスケ達のお蔭よ!」

 

窓越しに、右手をブンブンと振る、赤毛でモデル体型、活発そうな印象を与える少女…彼女の名は島田(しまだ)美波(みなみ)

彼女の両親は共に日本人ながら高校入学前迄ドイツで暮らしていた所謂『帰国子女』で、その為か入学当初は日本語が上手く話せず、それが原因で当初は周囲と孤立していた。

が、両親更に姉も医者という家系の都合で普段からドイツ語に慣れ親しんでいた僕が仲介(と言う名の通訳)に入ってからは周囲とも打ち解けられる様になり、持ち前の明るさと面倒見の良さを存分に発揮し、クラスのまとめ役となっていった。

そんな経緯もあってか僕は彼女に想いを寄せられる様になり、今では僕の彼女…って言った方が良いのか?その様な関係となったが、そこに至るまでに話し出すと1日掛かる程の紆余曲折があった…まあその話はまたの機会で。

 

「良く、頑張ったな。このAクラスで、また同じクラスで過ごせると思うと嬉しい限りだ」

「サスケって相変わらず言い回しが固いわね…でもサスケと一緒のクラスでウチも嬉しい!」

 

済まない、もう身に染みついてしまった物だ、変えようが無い。

そんな僕の言い回しに突っ込みを入れられつつもAクラスで一緒になれた事を喜びつつ、他のクラスメートが来るのを待つ…さて、美波の他に見知った顔は…

 

------------

 

…おかしいな、もうそろそろ来る時間帯だが…

 

「美波…あいつら来ないな…」

「そうね…瑞希はもうそろそろだから良いとして…あの3人、特にあのカップルが来ないのは変ね…」

 

あれから数十分、僕達2人は続々と入って来るクラスメートを出迎えつつ、良く見知った顔がいないか探していたが、あれから、美波が来てから1人も入って来ないのだ。

それなりに知っている顔ならいる…性的に奔放な言動をしつつも面倒見が良い水泳部のキャプテン、某幕末のサムライ漫画に影響され過ぎた赤毛の剣道部主将、如何にも優等生な感じだが何処か影のある長髪を纏めていない女子生徒…だがもう一度言う、僕の言う『良く見知った顔』はまだ1人も来ていない、これはおかしいな…

という異常を訝しんでいると、

 

ザワ…ザワ…

 

『な、なんだあの車!?』

『あ、あれがリムジンって奴か!?』

『あんな車で通学しているのかよ、何者だ!?』

「どうやら来たみたいだ」

「そうね」

 

外が何やら騒がしくなって来た。

どうやら(リムジン)での送迎で来たという事実に騒然となっている様だ。

 

が、実を言うとこの光景はこの文月学園では日常である。

実際このAクラスで、その様子を窓から見ようとしているのは僕と美波しかおらず、その例外である僕達の目に映る光景は、その車の周囲で驚愕している数十人の生徒の外は誰も気にする事無く校舎へと足を運んでいるというカオスとしか言い様の無い物だった…騒いでいるのは新入生だろうか、彼らにすればそんな事は知らない筈、驚愕するのも無理はないな。

そして、そんな型破りな通学をしてくる存在は唯1人、そして『彼女』こそが僕の『良く見知った顔』である。

 

「あっ、佐介君に美波ちゃん!御二人もAクラスに入れたのですね!」

「瑞希、君も入れた様だな!良かった!」

「瑞希!さあ早く入って!」

 

数分後、最早日常の光景となったリムジン送迎を経てAクラスへと入って来た、ピンク髪で小柄ながら出る所は出ている体型、ほんわかした印象を与える、その少女の名は姫路(ひめじ)瑞希(みずき)

実は彼女、京単位もの資産を保有しているとも噂されている大財閥『姫路グループ』のお嬢様である。

送迎に使われていたリムジンも彼女の家の凄さを考えれば当然ではあるが、そんな彼女が何故文月学園に在籍しているのかと言うと、それは姫路グループが此処のオーナーの一角となっており、その『他校には無い特徴』を、身近で感じる為に来たのだそうだ。

…そんな裏事情はともかく、彼女が僕とどんな『良く見知った』関係かと言うと…彼女も美波と同じく彼女?の様な関係なのだ。

彼女との出会いは『神在月大学付属小学校』時代まで遡る…つまり彼女とは幼馴染である。

幼馴染、といっても当時の僕は彼女の事を仲の良い異性友達としか思っていなかったのだが、彼女の方は少しずつ僕への想いを募らせていたらしく、そして今では美波というライバルがいながらもその想いを通じ合えたのだが…そこに至るまでには美波の時以上に話が長くなるからまたの機会に。

と、僕の2人の恋人のAクラス入りに沸き立ちつつ、ふと周囲を見回してみると、

 

「む?…もう席が全て埋まっている…だと!?」

「「え!?」」

 

あの2人…何処のクラスに行ったんだ!?

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