…FクラスがDクラスに宣戦布告?まさか…いや、あり得ない話では無いな。
「今の高橋先生の話にもあった通り、早速試験召喚戦争が勃発する様だ。今このクラスからビッグ3が2人も抜けていて、且つどのクラスにいるかがハッキリしない状況を考えると、こちらとしては決して好ましく無い事態だ。何れその2人を有しているであろうクラスが宣戦して来るやも知れん。だが皆は、予習復習という努力の末に、Aクラスという名の50の椅子を掴んだ精鋭揃いだと僕は思っている。そんな君達がある時は切磋琢磨し合い、ある時は支え合う限り、他のどのクラスにも負けないと僕は信じている!共に戦い、そして勝ちを掴もう!
良いか、僕達は最強のクラスだ!選ばれし50人が集まった、最強のクラスなんだ!」
『おぉぉぉぉ!』
僕の決起の声に応じ、地鳴りの様な声が響き渡るAクラス…行ける、これならどんな存在が立ちはだかろうとも、突破し続けるだろう…!
…さて、皆のこの試召戦争への思いを1つにした後は、
「前置きが長くなったな。これから皆に自己紹介をして貰う。これから1年間、クラスメートとして共に歩むであろう存在だ。大いにアピールし、自らがどの様な存在かを皆に伝え合ってくれ」
情報も1つにまとめ上げないとな、孫子兵法にも「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」とある、まずは戦力把握に努めなければ、勝てる戦いも勝てない。
「…
…何か面倒そうな奴が来たぁぁぁ!?
…確かアイツは軽音楽部の部長で、ビジュアル系バンド『Chaliace』のボーカルである麻倉竜胆だったな。
その見た目と話し方に反して学力は相当だと聞くし、特にバンドの作詞作曲も手がけているとの事だったから国語や英語、音楽が得意だそうだ、付き合いやすさはともかく、かなりの戦力だな。
「
…確か彼女の弟は木下秀吉だったな、一時期はかなりの不良として生徒会や職員の間でも問題視されていたが、佑助達スケット団によって更生したと聞く…しかしこの棘のある自己紹介からして家族、特に姉との仲はまだ改善したとは言えない様だ…
「
…つい突っ込んでしまった。
こんな際どい自己紹介をした工藤、面倒見の良い性格で部員やクラスメートの相談に乗る事が多く、その縁で佑助達スケット団や僕達生徒会との関わり合いも結構長い。
…こうした性的に奔放な言動に突っ込むのも、お約束になってしまう程に。
「拙者、
…時代劇の見過ぎと突っ込みたくなるこの久保という男子、実際『るろうに剣心』の主人公、緋村剣心に憧れて剣道を始めたらしく、その赤毛(これは地毛らしい)のポニーテールといいござる口調といい、そしてその神憑りとも言わんばかりの剣道の腕前といい、まさに剣心である…今誰だ、中の人ネタ等とメタ発言を言い放った愚か者は?
そしてその実、総合Bでは常に瑞希と第4位の座を争った秀才でもある…僕達ビッグ3に埋もれがちであったり、総合Aの方が比較的宜しく無かった(あくまで比較的で、苦手な英語の比重が大きかった影響らしい)り、そもそも外見と剣道での実績が目立ちすぎたりと、大きく取り上げられにくくはあるが、それでも重大戦力なのは変わりない。
「島田美波です。生徒会で会計長をやっています。中学までドイツにいましたが日本語の方は、会話なら問題なく出来ます。ですが、漢字の読み書きは未だに苦手です。だから一部科目で足を引っ張るかもしれません。良ければ休み時間とかに、分からない部分を教えてくれると助かります。趣味は…」
お、美波の番か。
まあ元々彼女は有名大学にも手が届きそうな程の才女で、唯一にして最大のネックが日本語の読み書きや会話だったのだが、こうしてAクラス入りしたのも彼女の、日本語を習得しようという努力の賜物だと思っている、何れ今言った苦手科目も埋まるだろう。
…と、一旦紹介を打ち切ったかと思えば、視線を何処かに向け…って、
「
僕か!?そして何で急にカミングアウト!?
…いやいや、嬉しくない訳では無いのだが、色ボケ発言はTPOを弁えてくれ…
「羨ましいな吉井…」
「流石はビッグ3、成績もリア充振りも見せつけてくれる…」
「末永く爆発しろ」
…おい真ん中の発言、それは(佑助と翔子の2人に)失礼だろう、あっちは真っ当なカップル、こっちは…済まない、全面的に僕が悪かった。
「姫路瑞希です。生徒会で書記長を務めさせていただいています。どうか宜しくお願いします。あ、そうそう、」
暫くして瑞希の番が来た。
彼女も埋もれがちではあるがその実、総合Bで常に第4位の座を久保と争い、総合Aに至っては常に4位の座を独占していた程の実力の持ち主で、佑助と翔子がいない今、このクラスのナンバー2と言っても過言では無い(ナンバー3は久保)。
…む、まさか瑞希も…?
「私達の結婚式に出席される方はなるべくお早目にお申し出ください、キャッ」
いやまだ早すぎるだろうその話はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「よりにもよって二股かよ」
「その一方が姫路グループのお嬢様…これぞ逆玉って奴か」
「むしろ交際関係が原因で観察処分者に指名されたで良いんじゃね?」
…何だか、今から不安だな…2人共頼むから、TPOを弁えて惚気てくれ…折角1つになろうとしていたクラスの心が乱れ始め…僕の優柔不断さが原因だったな、本当に済まなかった。
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何とも微妙な雰囲気に不安になりつつも、これから起こり得る試験召喚戦争の対策を僕は考え始める事にした。
…あの時は何処にいるか分からない、と言ったが、佑助も翔子も何処にいるかは既に見当がついている。
どう対処すべきか、思案を巡らそうとすると、
「吉井殿、しばし宜しいでござるか?」
「どうしたの久保君、あ、やっぱりFクラスが宣戦した事かな?」
「左様でござる。その様子では工藤殿もでござるか?」
「うん、そだよ」
「久保に工藤、丁度良かった」
「サスケ、ウチも混ぜて」
「私も入って良いですか?」
「私も気になるわ」
「
久保が声を掛けたのを切っ掛けに、工藤、美波、瑞希、木下、麻倉…と、Aクラスの主要メンバーが集まって来た…1人で考えるより皆で議論した方が方策は早く浮かびそうだな。
「さて…皆はこの戦争、どちらが勝つと思う?」
「拙者はDクラスでござる」
「うーん、ボクもDクラスかな」
「私もDクラスね、第一ありえないわよ、最低ランクのFクラスがDクラスに勝つなんて」
「
「ウチは分からないわね」
「私も…どちらに転ぶか」
「おろ?何故でござるか、島田殿に姫路殿?」
「まずあの2人がどのクラスに行ったか分からない事が最大ね…アクシデントでFクラスに行った可能性も無い訳じゃないし。居たとなれば…参戦が間に合うかが焦点ね」
「それに仮にあの2人が居なかったとしても、Fクラスには土屋君がいます。普段からスケット団の依頼で召喚獣を使い込んでいましたから操作技能は高いですし…佐介君、確か土屋君って一部科目が担当の先生並でしたよね?」
「ああ。保健体育と技術と情報、これだけは僕すら歯が立たない程だ。他は壊滅的だからか総合的にFクラスレベルだが、それらもDクラス相手ならば操作技能によって霞む程度だ」
「へぇー、確かにスイッチ君って己の欲望のままに努力をしているって感じだもんね。ボクも保健体育には自信があるけど、スイッチ君には及ばないからね」
「でもそれも、歯車が上手くかみ合えばの話でしょ?他に脅威がいない限り、Dクラスの勝利は揺るがないんじゃないかしら?」
「
「僕か?僕は、」
各々の意見が出そろう中、麻倉に意見を求められた(と思う…麻倉の話し方は分かりにくいな)僕は一呼吸置き、
「Fクラスだ」
そう言い放った。
「な、何で?」
「あの場では、確たる証拠も無かったからはっきりしないとは言ったが…あの2人はFクラスに行った。そう断言できるからだ」
「え、Fクラスに!?嘘でしょ!?」
余りにも唐突な結論、木下みたいな反応は予想していた…だがそう考えたのは理由がある。
「第一に、あの2人が入ったので無ければ、FクラスがEクラスを飛び越えてDクラスに、2学年に上がって直ぐに戦争を仕掛ける訳が無いという事。どんなにバカでも素人がプロボクサーに挑むとどうなるか分かる様に、Dクラスにいきなり挑んでも勝てる訳無いと判断するのが普通だからだ。だがあの2人が入ったとなれば状況は大きく違う。教師にすら勝る学力と、スケット団の依頼で鍛えられた操作技能を、どうやって活かそうかと考えるのは必然だ。そうなると今の時期というのは最も活かしやすくもあれば、逆に活かしにくいとも言える。まだ各クラスの面子が決まったばかりで他クラスの情報が集まっていないこの時期、僕達はともかく他のクラスは絶対にあの2人がAクラスにいると思っている分、2人が参戦する事の意味は大きいが、一方でクラス振り分け試験の結果が今の学力なのだから、あの2人とて相応の点数しか有していない。となれば選択肢は2つ。直ぐに補充試験を受けさせるか、操作技能に賭けて戦争するか。だが前者を選べば他のクラスに存在をアピールするのと同じだ。ならばその操作技能と潜在的な成績に賭け、直ぐ様宣戦するという策にでたと僕は思う」
「ふむ…考えられなくは無いでござるな。しかし、仮にそうならばEクラスに挑む方が現実的ではござらぬか?あの2人が本気を出せる状況を作り出す為にも、時間を稼ぎ易いと思うのでござるが…」
「Dクラスを選んだ理由は康太の存在もそうだが、2人のうちのどちらか、或いは両方ともある程度は点数を取っていたからだと思う。そうなればDクラスであれど止めるのは厳しく、そしてEクラスよりも勝った時のインパクトは大きいからな」
「でもそれらは、いなければおかしいって理由でしか無いわ。あの2人が何故Fクラスに行くのを選んだか、その方向の理由も知りたいわ」
「それもそうだな。第二に、Fクラスには康太に木下秀吉と、佑助達にとって気心知れた存在が来るのはほぼ確実だからだ。何らかの行動を起こそうと思った時、気心知れた仲が多ければ多い程実行力が増す物だからな」
「ああ、秀吉ね…確かにアイツ、最近坂本君達と良く関わっているし…」
僕もそれは最近、佑助を通じて知った事だ…文月学園入学以前から相当の不良だった木下秀吉、此処でもその振る舞いはかなりの問題になったが、ある日を境にそれはパタリと静まった…佑助達は、どうやって彼を更生させたのだろう…教師でも僕ら生徒会でも手を焼いた、あの木下秀吉をスケット団はどうやって…まだまだ僕では、遠く及ばないのだな、佑助という存在は…
「ともかく、今年の2年Fクラスは一筋縄ではいかないという事だ。皆、心して掛かってくれ」
「うん、サスケ」
「わかりました」
「委細承知!」
「オッケー」
「分かったわ」
「
Fクラス、及びそこにいるであろう佑助と翔子への警戒を皆に呼びかけつつ、話し合いの場は解散となった…佑助、何時になるかは分からないが、僕は絶対君に並び立つ存在になって見せる!