数多の星は蒼穹にて輝く   作:姉川春翠

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第三節 笑顔をかき消す忌まわしき記憶 2

 ドゥエセの兵舎には集会を開くための部屋があった。有事の際はこの部屋に集まり、隊長他各位が対応のために会議を開くことになっている。

 この部屋に隊長であるアルガスト。小隊を率いるゼルレシアスとロトゥス他三名が険しい顔つきで立っている。

 ソラとトゥネリも彼らに同席し、どちらも表情を見せないように俯いていた。

 

「まずは状況を確認する」

 

 中央の卓に集まった者たちを見渡しながら、アルガストは言う。

 

「子供の大半がこの街から消えた。間違いないな?」

 

 今からほんの数刻前、一人の少女が突如行方不明になった。どこを探しても見当たらず、街に住む誰一人としてその姿を見た者はいなかった。

 だが事態はそれだけに止まらず、より深刻なものになっていた。

 その少女以外にも行方不明になった者が現れたのだ。それも一人や二人ではない。この街に住んでいる子供の大半が行方知れずとなったのだ。

 当然街は騒然となった。嘆く者や恐怖する者。中にはヘルディロ人の多くが信奉している賢者イヴェルテーラの名を口にして祈る者もいた。

 その中でも多くの者が口々にこう言った。まるで六年前の事件の再現のようだと。

 

「はい。間違いありません」

 

 集まった小隊長を代表して、ロトゥスが一歩前に出て報告する。

 

「消えた子供の数は六名。そして――」

 

 何かを言いかけて、ロトゥスの視線が一瞬ソラとトゥネリに向けられた。どちらもまだ俯いたまま、顔を上げようとする気配もない。

 

「そして彼らの過去を調べた結果、その全員が六年前の事件を経験していました」

 

 やはりか、とアルガストは軽く舌打ちを鳴らす。報告を受ける前から薄々予想はできていたことだ。

 殺害被害にあった夫婦は六年前の事件で愛する子供を失っていた。

 その夫婦が暮らす隣に住んでいた少女も、六年前の事件で被害を受けた者であり、突然姿を消した。

 そして消えた他の子供も当時の被害にあった者たちだった。

 ここまで出揃えば、もはや今回の事件はあの日の延長線上にあると言っても過言ではないだろう。

 

「六年前……ねぇ……」

 

 腕を組みながらゼルレシアスが呟く。

 

「事件当時被害を受けた子供の記録は残されています。そのため先ほど王都に伝令を飛ばし、移住者の中で他に行方不明になった者がいないか至急調査するように嘆願しました」

「確かにそれがいいだろうな。国外までとなると時間がかかるだろうが、王都内であればすぐに分かるはずだ」

「それと一緒にいた親御さんたちの証言ですが、どうやら彼らは目を離した一瞬の時間に消えてしまったようです」

 

 アルガストは口元に手を添えて思考を巡らせた。

 まず誰にも悟られずに一瞬にして人を消す方法となると限られてくる。

 最も有力なのは転移魔法だ。標的としている人物を魔法陣に乗せてしまえば容易い。

 だが現場にはその痕跡が何も残されていなかった。転移魔法の陣は発動した直後もその場に残される。また魔法の性質上必ず起こる現象〝強い発光〟もなかったという証言もあった。

 他にも方法は挙げられるが、そのどれもが転移魔法以上に手間や規模が大きい。近くに他の人間がいる以上、考えから除外されて然るべきものばかりだ。

 

「これまで見えていたのは幻影か何かで、最初から姿を消して――」

「それは……違うと思います」

 

 アルガストの考察を遮るように、ソラは口を開いた。

 

「ボクはあの子に触れられました。実体はあった。だから」

「幻影という線もない……か……」

 

 アルガストの言葉にソラは小さく頷く。

 ソラも出来る限り方法を考えていた。アルガスト同様持っている知識で紐解いて行こうとするが、彼の蓄えられた知識を以てしても答えは見つからない。

 アルガストの言う様に最初から幻影だったという線も考えた。

 幻影魔法にもいくつか種類がある。人に蜃気楼のような形で見せるものや、自分の影の一部を切り取って人の形と成すもの。だがどの幻影魔法も実体が存在しないため、触れれば正体が分かってしまう。

 少女に服を掴まれたときに確かな感触があった。ともなれば実体のある人間であったことに間違いはない。

 では他に何か可能性はないかと考えた時、不意にソラの脳裏に少女の証言が過った。

 自分は犯人と思しき少女と目があった。そう彼女は言ったのだ。

 

(もしかしたら……あの子以外が連れ去られていた可能性も――)

 

 少女に実体があったのは、犯人がまだ利用できると踏んで見逃していたからではないか。そんな考えをソラは浮かべる。

 あの少女以外が幻影であったならば、他の者も忽然と消えることに納得ができる。同時に全員を移動させる必要はなく、少女だけをなんらかの方法で連れ去ればいい。

 ソラが考えあぐねていた時、腕を組んで静かに佇んでいたゼルレシアスが口を開いた。

 

「犯人がどうやって連れ去ったかなんて今はどうでもいいでしょう? そんなことよりも消えた子たちが今どこでどうしているかが重要よ」

 

 彼女の指摘は最もだ。どんな手段であれ既に実行されてしまっては、足取りを掴むことなど困難。今は一刻も早く見つけ出し、救出する方法を探さなければならない。

 

「だが、犯人は一体なんのために連れ去る必要があったんだ?」

 

 兵士の一人が疑問を投げかける。

 

「そんなの決まってるじゃない」

 

 疑問に対し、ゼルレシアスは鼻で笑って答えた。

 

「見せしめのためよ」

「見せしめ? まさか後手に回っている我々に対して――」

「いいえ違うわ」

 

 嫌な笑みを浮かべて、ゼルレシアスは鋭い視線を目の前の一点に向ける。それに釣られて他の兵士たちも視線の後を追う。

 誰に向けての発言か察したアルガストとロトゥスも同じ方向に顔を向けた。

 

「ねぇ? そこでずっと下を向いているお嬢さん?」

 

 ゼルレシアスの言葉にトゥネリの肩が微かに震える。

 声と視線を一身に受けて、トゥネリはゆっくりと顔を上げた。

 

「六年前と言い、今回の事件も全部あなたが絡んでるんじゃないの?」

「それは――」

 

 否定できないトゥネリ。隣に立つソラもどう切り返せばいいのか分からなかった。

 黙り込む二人に対し、アルガストが助け舟を出そうと口を開く。

 

「おいゼルレシアス。根拠もないことを言うな」

「根拠ならあるわよ。そもそもどうして街を出て行ったはずのこの子が今この街にいるわけ?」

「言ったはずだ。王が直々に彼らに命令を出して派遣されたのだと」

「そこよ。そこがおかしいのよ」

 

 そう言ってゼルレシアスは二人に歩み寄る。

 

「そもそも事件があったことはまだ報告していない段階だったのに、王からの勅令が届いた。これって普通に考えておかしなことじゃない?」

 

 そこを指摘されれば返す言葉もない。アルガストは軽い舌打ちの後に口を噤んだ。

 その様子を見てゼルレシアスは笑みを浮かべながら言葉の圧に拍車をかけていく。

 

「これって要は、この子達がなんらかの方法で事件があったことを知っていなければならないじゃない?」

「確かに……そうだな……」

 

 兵士の一人が賛同を呟く。

 

「ねえお嬢さん? そろそろ教えてくれてもいいんじゃないかしら? あなたがここへ来た目的を……」

 

 追求の手を緩めることなく、ゼルレシアスはトゥネリの方へと歩み出す。

 まるでトゥネリが犯人であるかのような物言いに、ソラの眉が微かに動いた。

 そこへロトゥスが宥めようと行く手を阻む。

 

「今は彼女を責め立てる時ではないはずです。落ち着いてくださいゼルレシアスさん」

 

 しかしゼルレシアスが止まることはなく、ロトゥスを押し退けた。

 

「残念だけどこれは大事なことなのよ。犯人の目的を見つけるためにもね」

「犯人の目的? 彼女を責め立てればそれが分かるっていうんですか?」

「ええそうよ」

 

 ロトゥスが訝しむのに対して、ゼルレシアスはあたかも確信しているかのように断言する。

 トゥネリは一体彼女が何を聞こうとしているのか察していた。ソラにさえまだ口に出していないこと。老夫婦を装って送られてきた手紙のことだ。

 

「ねぇお嬢さん? 隣にいる子にもまだ話していないようなことがあるのでしょう?」

「どうして……それを……?」

 

 なぜまだ出会って間もないはずのゼルレシアスが知っているのか理解できず、トゥネリは声を震わせる。

 

「そんなの考えれば分かることよ。あなた達が王に願い出たことで派遣されたって話を聞いた。てことはなんらかの方法で事件のことを知らなければ、そんな行動は起こせないわよね?」

 

 トゥネリの目の前まで顔を接近させて、ゼルレシアスは瞳の中を覗き込むようにして見つめた。

 まるですべてを見透かすかのような目に、トゥネリは思わず顔を逸らす。

 

「答えなさい。あなたがどうやって今回の事件のことを知ることができたのか?」

「それは――」

 

 トゥネリは生唾を飲み込み、隠しきれない動揺から声を震わせた。

 

「さあ、早く」

 

 異様な緊迫感が部屋中を包み込む。トゥネリに視線が集まり、彼女の答えを待つかのような状況だ。

 トゥネリは俯く。そもそも隠そうとすること自体が愚かな行為だった。隠したところで事態が良くなることもない。むしろ悪化を辿っているばかりだ。

 

「そうやって俯いても何も始まらないわよ?」

 

 ソラを不安にさせないために、そして何よりこれは自分の責任なのだからと黙っていた。

 否、本当は違う。自分の責任だと言って黙り込む一方で、周囲から責められるのを怖がっただけだ。本来背負うべき責任から目を背けただけだ。

 トゥネリの揺らいでいた決心が固くなる。震える手を握り締めて面を上げる。

 

「わかりました。話します。どうしてわたしたちが今回の事件のためにこの街を訪れたのかを」

「トゥネリ……いいの? 辛いなら、代わりにボクが話すよ?」

 

 心配した表情でソラが覗き込む。するとトゥネリは笑って「大丈夫」と答えた。

 

「心配してくれてありがと。でもこれはわたしが負うべき責任だから」

 

 辛い気持ちはある。だがそれ以上にトゥネリは、目の前のことから目を逸らそうとする自分の弱さが何よりも嫌だった。

 

「今日の朝のことです。わたしの下に一通の手紙が届きました。差出人はこの街に住んでいる、わたしがよくお世話になっていた老夫婦からでした。内容は今回亡くなった夫婦が殺害されたというもの」

「待ってください。事件現場が発見されたのも今朝のことです。住民が知ったのはその後です。それだとあまりにも早すぎます」

 

 トゥネリの説明を聞き、あり得ないとロトゥスが口を挟む。

 

「はい。わたしも現場発見の時刻を聞いて同じことを思いました。そしてもう一つあることが分かったんです」

「へぇ、何が分かったのかしら?」

 

 ゼルレシアスは腕を組み、口元を歪ませる。おおよその見当がついていた彼女も、その先を本人の口から聞きたかったのだ。

 

「どうやらわたしに送られてきた手紙は、別の人間が書いたものだったみたいなんです」

 

 トゥネリの一言に一部がざわつく中、アルガストは「やはりか」と肩を竦める。

 

「わたしは……この手紙は今回の事件を巻き起こした犯人が送り付けたものだと思っています」

「ですがなんのために?」

「先ほどゼルレシアスさんが言いました。見せつけのためだと。この中にはもうすでに知っている人もいますが、わたしは六年前に起こった魔物事件を引き起こした男――その娘です」

 

 一拍置いてトゥネリは周囲を見渡す。そこでようやく気付いたことだが、集まった小隊長の中に先刻言い争った兵士のうちの一人がいた。

 彼も事情を多少知っているが故に、苦虫を噛み潰すような表情でトゥネリのことを見ている。

 

「犯人はわたしへの復讐のために今回の事件を起こした。そうわたしは考えています」

「けどあの事件は君が悪いわけでは……」

「そうとも限らないわ。中にはこの子に強い恨みを持った人間だっているはずよ」

 

 ロトゥスの擁護を遮り、ゼルレシアスはトゥネリを見下ろす。蔑みの眼差しが彼女を突き刺している。

 しかし臆することなくトゥネリは見上げたまま真っすぐにゼルレシアスを捉えていた。彼女の思いを受け入れるために。

 

「けどこれではっきりとしたわ。今回の事件を解決する鍵はこの子が握っているってことがね」

「一体なにを考えてるんですか、あなたは……?」

「決まってるじゃない。この子を囮にするのよ」

 

 ロトゥスの問いかけに、ゼルレシアスは平然とした表情で言う。

 

「ちょっと待ってください! 彼女はただ――」

 

 これには流石のソラも黙っていられず、目を剥いて抗議しようとする。が、これをトゥネリが目配せで制止した。

 

「わたしもゼルレシアスさんの意見に賛成です」

 

 もうこれ以上事件を悪化させるわけにはいかない。すべて後手に回っているのであれば、次の一手はこちらから打って出る他に方法などない。

 そうトゥネリは考えていた。今の状況を変えるだけでなく、己の責任を果たすために必要なことだと。

 その考えをソラも理解していた。現状では何も変わらない。それどころかこのままではいつまで経っても犯人にたどり着くことはないと。

 

「そうは言うが、何か策でもあるのか? 考えなしに実行できるものでもないだろう?」

 

 アルガストの問いに対し、真っ先に答えたのはゼルレシアスだった。

 

「考えなら私にあるわ。この子を囮にすることで初めて成り立つ、とっておきの方法がね」

 

 そう言ってゼルレシアスは自分が考えた方法を話し始める。

 その内容を聞いて、アルガストは軽く舌打ちを鳴らした。

 

「確かにそれなら一つの手段として成り立つかもしれんが……」

「ですがそれはあまりに危険すぎます!」

 

 ロトゥスが大声で警鐘を鳴らす。が、ゼルレシアスは澄ました顔で問いかけた。

 

「じゃあ他にいい方法があるのかしら?」

「それは……けど……そんな方法を取らなくても何か他にあるはずです」

「確かにそうね。時間があるなら私もその意見に賛成するわ。でも今は悠長に構えていられる状況じゃない。今日中にでも犯人を捕まえられなかったらまた犠牲者が出るわ。それでもいいのかしら?」

 

 返す言葉が浮かばず、ロトゥスは口を噤む。

 その様子を見て満足したように鼻を鳴らすと、ゼルレシアスはトゥネリの方に視線を移した。

 

「あなたはどうかしら?」

「わたしはこの方法で大丈夫です」

 

 トゥネリは頷いて答える。

 

「そう。じゃあ、あなたはどうかしら?」

 

 今度はソラに視線を移して問いかける。

 

「ボクは――」

 

 確かにゼルレシアスが考えた方法は、現状最も効果的と言える。しかしその反面トゥネリに多くの危険が及んでしまうものだ。

 彼女は思っている。自分のせいでここまでの大事になっているのであれば、この身を犠牲にしてでも解決する責任があるのだと。

 その考えを理解できているからこそ、ソラは複雑な思いを抱いていた。彼女はまた負う必要のない責任まで一人で背負おうとしている。そんな彼女に対して自分はどうするべきかと。

 

「ソラお願い。やらせて」

 

 不意に声を掛けられて、ソラはトゥネリの顔を見つめる。

 ついこの間も彼女は同じ表情を見せていた。自分を信じてほしいという一心で、真っ直ぐに相手の目を見る様を。

 

「わかった。何かあったらすぐに駆け付けるから」

 

 ならばとソラは静かに決意する。

 何があっても必ず守る。それはトゥネリの命だけではない。ここにいる者たちの命も、消えてしまった子供たちの命も、これから出会うであろう犯人の命さえも。そして失われた笑顔を取り戻すのだと。

 

「こう言っているけど、アルガストはいいかしら?」

「仕方ない。現状他に打つ手はないからな」

 

 アルガストは半ば諦めたように答える。事実他に方法といえるほどのものは思い浮かばない。事が大きく動いてしまった以上、ゼルレシアスの言う通り呑気にしている場合ではない。

 

「それじゃあ決まりね。号令よろしく。隊長さん?」

 

 少し嫌味な口調で言うと、ゼルレシアスはその場を離れる。

 それを見てアルガストは肩を竦めると、周囲を見渡して言った。

 

「作戦の決行は今夜だ。ロトゥス、お前は他の小隊と分担して街の中を巡回、ならびに住民たちに今一度外出しないよう伝達してくれ。巡回しながら引き続き消えた子供たちの捜索をするんだ」

「……わかりました」

 

 まだ何か言いたげな表情を見せながらも、ロトゥスは軽く頷いてから部屋を出ていく。その後に続いて他の小隊長たちも部屋を出て行った。

 

「ゼルレシアス、そしてトゥネリ。お前たちは今回の作戦の要だ。決行の時間まで休息をとっておけ」

「言われなくてもそのつもりよ。なにがあるか分からないものね」

 

 ゼルレシアスはそう答えると、胸元に手を当てて強く握りしめる。

 今にして気がついたことだが、彼女は本来兵士が身に纏うはずの甲冑を着ていなかった。アルガストやロトゥス、ほかの兵士たちは今も纏っている防具を身に着けていないのだ。それを見てソラは、飄々としている彼女の裏に隠された何かを見たような気がしていた。

 そうとは気が付くことなく、ゼルレシアスは胸元に手を当てたまま部屋を出ていく。

 まるで孤独を背負っているような背中を見て、トゥネリは目を細める。

 

「ねえ、ソラ。今からわたしの家に行かない?」

「トゥネリの家に?」

「うん。気にしてるんでしょ? わたしの家が……あの家にあった地下が今どうなっているのか」

 

 問われてソラは微かに頷く。

 犯人の潜伏先として真っ先に浮かんだのが、あの事件の際に使われたトゥネリの家にあった地下の部屋だった。しかしそれは当事者であったトゥネリも同じようにたどり着くこと。話題に上がらなかったことと彼女の心の傷に触れないよう、敢えて聞かないようにしていた。

 それを突然どうして。今のソラにはトゥネリが考えていることが分からなかった。

 

「じゃあ行きましょ」

 

 そそくさとその場から逃げるような足取りでトゥネリは部屋を出ていく。

 その後を追いかけるように、ソラも部屋から出て行った。

 二人の様子を静かに見守っていたアルガストは、部屋に一人残されると深いため息を吐く。

 部屋に設けられた椅子のうちのひとつに腰かけると、背もたれに背中を預けながら天井を見上げた。

 

「なあ、俺はどうしたらいいと思う?」

 

 アルガストは虚空に問いかける。

 ゼルレシアスが胸元に手を当てた際、誰にも聞こえないような微かな声を発したのを彼は聞き逃さなかった。「これでようやく……」と呟いていたことを。

 その意と今回の作戦の真の目的を理解して、アルガストは自分がどう立ち回るべきか考えていた。

 幼き頃、三人で楽しくはしゃいでいた時の記憶がアルガストの脳裏に呼び起こされる。

 

「兄貴のくせに……お前がいないと何もできないなんて情けないよな」

 

 アルガストはそう物憂げに言うと、ゆっくりと瞼を閉ざした。

 

 

 

 

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