エヴァーラスティング 作:狐姫
4人で食べたクレープ。そしてセラと結衣との恥ずかしいアクシデント。毎日が退屈しない楽しい日々。
しかし、その日々は唐突に終わりを迎えた。
そしてセラの正体とは?
「セラっ! 何処にいるんだ」
燃え上がる炎のなか、晴斗はセラを探していた。
周りには、崩れた瓦礫、燃え続ける机。
そし…倒れている生徒たち…。
倒れている生徒の中には、傷を負って呻く者もいれば、恐怖に怯えている者もいる。
そして、命を失った者も…。
「くっ…。何処にいるんだよ…」
「セラあああぁぁぁっ」
*******************
「んっ。」
いつもは朝に弱い晴斗だが、鳥のさえずりで目を覚ました。
昨日の事を思い出すと、笑みが漏れてしまう。
後夜祭で、4人で花火を見た後、夜遅くまでバカ話していたこと。途中で結衣が寝てしまい、晴斗が背負って部屋まで送って行ったこと。
つい昨日の事なのだが、懐かしい気がしていた。
「また、来年だな…」
昨日終わったばかりだが、来年の桜祭が待ち遠しいように感じられた。
(おきるかっ)
やはり朝に慣れていないためか、重い体を起こした。腕を組むような格好で伸びをし、朝食の支度を始めた。
「んっ。」
「おっ夏目。起きたか? 」
いつもは晴斗が起こされる側なので、鼻を高くするように夏目へ朝の一言を言ってやった。
しかし、夏目が体を起こしたのはいものの、心ここに在らずのような顔をしている夏目が、いきなり頬を赤く染めたのだ。
「…? めし出来てr…
「ば、ばかっ。晴斗! そこは…」
「!!!」
いきなりの夏目の不審な言葉に耳を疑った。
「もう少し…優しく…。———あっ。そこ良いっ。」
夏目の寝言であろう言葉に、晴斗の体はものすごい数の鳥肌がたった。晴斗は体ををわなわなと震わせ、夏目の寝ているすぐ隣に立ち拳を強く握り腰を低くした。相手を殴る時は、腰を低くし、体幹をできる限り捻る。そして、その捻りを戻す勢いに乗せて拳を突き出す。晴斗は、いつか本を読んだ時に書いてあったことを思い出したのだ。晴斗は、その通り体幹を捻り、戻す勢いに拳を乗せた。
「どんな夢みてんだあああぁぁぁ」
晴斗は、頬を赤く染めて悪夢であろう夢を見ている夏目の腹部に今出せる100%の力で拳を食い込ませた。
「うぅっ。ぐはぁぁぁ」
夏目には、さぞ目覚めの悪い朝になっただろう。
しかし、晴斗は何もなかったかのように朝食を食べ始めたのであった。
「なっ、何しやがる」
夏目は、殴られた腹を抱えて起き上がった。
「いや。身の危険を感じたんでな。まぁ、自己防衛の一環だ!」
「???」
夏目は晴斗が何の事を言っているのかが全く理解できない様子だった。
まぁ、確かにあのまま放っておけば、夏目は新たな性癖を獲得してしまっていただろう。
「いいから飯食えよ」
あまり深く掘り返したくもないのでこれまでにしておこう。夏目は納得していない様子だったが、時間にそこまで猶予がなかったためか晴斗の言う通りに朝食を食べ始めた。そして、またいつもと変わらない1日が始まったのであった。
「ねぇ! 放課後クレープ屋いかない?」
1時間目の休み時間に結衣が唐突に言い出した。
結衣は昔から甘いものが大好物であり、特にクレープはその中でも一番の好物であった。
「前から行きたかったんだけどさ。少し高くてねー。でも、今日だけ半額なのよ!」
結衣は、大仏のように、親指と人差し指で円を作りながらいたずらっぽく笑った。
「僕も行きたいなー」
目を輝かせながら、手を挙げるセラ。
(セラも甘いものすきなんだなー)
晴斗はセラの知らなかった一面に少し驚くも、まぁ女子なんだからあたりまえかと、納得した。
夏目も結衣の案に賛成らしく、うんうんと首をふっている。残るは1人。その1人も3人の鋭い目線によって同意を余儀無くさせられてしまった。
「まぁ、たまにはみんなでクレープってのもいいかもな」
晴斗の言葉をまってました! とでも言うように結衣は、ぱぁっと顔を輝かせたのだった。
「はいっ。ハルと口開けて!」
セラは頼んだブルーベリーのクレープを晴斗に分けてあげていた。その姿に結衣はセラを睨みつけて、
「晴斗!私のもおいしーから食べて見なよ」
結衣は、無理やりに晴斗への口にクレープを持って行き、晴斗の顔に生クリームがくっついてしまった。
「結衣!なにやってんだよー」
「ご、ごっめーん」
「「「あははははは」」」
結衣、セラ、夏目は晴斗の顔を見て笑ってしまった。
「なんだよ。結衣せいじゃんかよ」
晴斗も結衣に言ったが晴斗自身も面白おかしく、笑っていた。
「結構、でかかったな。腹いっぱいだよ」
「ぼくももう食べれない…」
「お、俺も。やばっ。吐きそう」
夏目の言葉に、結衣は苦い顔をしてお腹にパンチをし、夏目は、その後本当にやばい状態で解散した。
その夜、結衣からメールが来たのだった。
『晴斗へ。明日なんだけどさ、暇だったら買い物に付き合ってくれない?』
普段は、結衣からの誘いメールは来ないのでそれもいいか!と了解と変身したのだった。
そして、次の日は待ち合わせしていた駅で、晴斗は結衣を待ってい。
「晴斗ぉぉ。ごっめーん。遅れちゃった」
「大丈夫だって。俺も今来たとこだし。いこーぜ」
「うん!」
結衣の私服姿は始めてだったが、制服姿より、スタイルがもっとよく見えて歩きながら見つめてしまった。
「はっ、晴斗。その…今日の服。似合ってる…かな?」
「ああ。ずっごく綺麗だよ」
晴斗の褒め言葉に結衣の顔はボッと赤くなった。
(き、綺麗って…)
「?結衣。どうしたの」
ぼうっとしていた結衣を晴斗は心配したのだった。
「なっ、なっ。なんでもないよ」
「ほらっ早く行こう!」
結衣の歩幅が少し早くなり、晴斗は疑問を感じながらも結衣について行った。
「そーいえば。結衣。何を買うつもりなんだ?」
買い物に付き合ってくれと言われただけだったので、晴斗は、結衣の目的地まで知らなかった。
「下着を買いによ!」
「しっ、下着⁉︎」
結衣の返答は、晴斗の考えていたものとは、大きくかけ離れていた。まさか、下着とは思ってもいなかったのである。
「ここよっ」
結衣に連れてやって来られた場所は下着(女性用)専門店だった。晴斗は固まりつつ、結衣をみた。
「お、俺は外で待ってるよ」
流石に男の俺が入るのはまずいと思ったのだが、結衣は、
「ダメっ。晴斗も一緒に来るの」
と怒られてしまい、どうすることもできず結衣の言葉に従うしかなかった。
その頃、セラは久しぶりの学校の休みに、買い物をするために街を回っていた。
(んー?下着売り場ってどこだろう)
あまり売り場に詳しくないセラは街を迷うように探していたが、大きい下着売り場の店舗をとうとう見つけることができたのだった。
(ここか!)
その店の中にはいると、目的の品種類の多さに少し興奮気味になっていた。目的の品はブラジャー。最近、胸のあたりが少し苦しくなってきてしまっていたのだ。
様々な種類を検討した中から、好みのブラジャーを選び試着をするため、ブラジャーを数個のブラジャーを持って試着室に向かった。
「セっ、セラ!!」
しかし、試着室に向かう途中、何故か男子である晴斗と出会ってしまったのだ。
「ハっ、ハル!なっなんでこんなところにいるのさ」
晴斗が、下着売り場にいることに、驚くも今の現状の危機さを感じ取った。セラは試着をするために、ブラジャーを数個の持っているのだ。そして、晴斗の目線がセラの持っているものへ向けられた瞬間セラは顔を真っ赤にした。
「み、見るなああぁぁ」
セラの右手での平手打ちを頬にくらった晴斗は、誤解を解くために結衣の付き合いできたことを伝えようとしたその時。
「はっ、晴斗。これ似合う…かな?」
試着をした姿の結衣が、試着室から出てきたのだ。
「結衣!」
「セラさん!」
2人は同時に相手に気づき、声を合わせた。結衣は自分が何をしているのかに気づき顔を真っ赤に染めた。それとは逆にセラは、晴斗を冷ややかな目で見ていた。
「ねぇ。ハルトくん。これはどーゆーことかな?」
鬼のような顔で晴斗を睨みつけるセラに晴斗はただ怯え、どうにか今の現状を脱する策を必死に考えていた。
「いやっ、これは、そのー」
「かくかくしかじかでして…」
「この、変態!!」
「バシィィィィン」
店に響くような音を鳴らしながら再びセラの平手打ちをくらった晴斗の頬は真っ赤に腫れ上がってしまっていた。
「す、すいませんでした」
その後、晴斗は結衣の付き添いで下着売り場へ来たことを伝え、少しはセラの怒りを和らげることに成功したのだった。
次の夜に花火をする約束をし解散となった。
もちろん、明日の花火は夏目も参加することにしてやった。
次の日の放課後、晴斗は屋上にいた。太陽が沈んで行くのをただじっと見つめていた。すると、ドアのほうから足音が聞こえた。
「ハール。なにしてんの?」
その足音の持ち主はセラだった。セラは晴斗の隣へ立ち晴斗の眺めている景色をみた。
「綺麗だねー」
「ああ。こうしていると、心が落ち着くっていうか、気持ちいいんだよ。」
「そうだねぇ。ぼくもハルと一緒にいると心が落ち着くよ」
「ふふっ。いきなりどうしたんだ?」
セラの言葉に晴斗は照れ隠しをするように笑った。
しかし、セラはそのまま言葉を続けた。
「ぼくは、またハルと会えてすっごく嬉しい」
「ね、ねぇ…ハル。あのね…ぼくは…」
その時だった!地面が強く揺れた。
「「「ドオオオォォォン」」」
そして爆発音。
学院あちこちから緊急のブザー、生徒の悲鳴がきこえてきた。
「はやく逃げなさい。はやくっ」
教師が生徒を避難させるべく声を張り上げて誘導している。それに従い避難を始める生徒達。
「なっ。何がおきてるんだ…」
突然の出来事に晴斗は身動きができないでいたが、セラは唇を噛み怒りの表情をしていた。「(こんなところに……)」
「ハルっ。早くこの学院から離れて!」
セラは、爆発音のした方向へと向かい始めた。晴斗は、状況を理解することができなかった。そして、セラのする行動の意図をも。
「おい。セラ!どこに行くんだよ」
正気を取り戻した晴斗は、爆発音のする元へと向かうセラを呼び止めた。しかし、セラは
「いいからはやくいって!ぼくはすぐ逃げるから」
セラの初めて見る真剣な顔に晴斗は、頷いて学院の外へと目指した。
「(ハル。君とはもうお別れだ。———ありがとう——)」
セラは晴斗の背中を見つめていた。そして、決心したように、爆発音の元へかけて行った。
———20分前——
「ここだな」
黒い服を身に纏った2人は建物に足を踏み入れた。異彩を放つ2人は、一目見ただけで普通の人間ではないことが分かった。そして、そのもの達に恐怖感を覚えないものはいないだろうという程凄まじいもだった。
「な、なんだ。君たちは」
1人の警備員が2人を止めようと足を踏み出したその時。
「天災より出でし鋼の刀、破せし魂を持って千…」
黒服の纏う2人の片方が何かを呟き始めると、2人の周りに紅く染まった文字列が出現したのだ。それはまたたくまに
広がり2人を包んだ。
「———悪しき心に邪をもって滅びゆかん」
次の瞬間2人を包んでいた文字列が消え、姿を現したのは大剣と太刀を持つ2人だった。その刃物からは、紅い靄が途切れることなく漏れている。
「なっ!」
それは現世には存在しないとされている、魔術と呼ばれるべき存在。人間を超越させるもの。それが、今この地に現れたのだった。
何が起きたのかが分かり得ない警備員は気がつくと地面に倒れていた。自分の下半身がそのまま立っているのを見た。そして命が絶えた。
「行くぞっ。彼奴を殺す」
「他の奴らは?」
「邪魔な奴は———殺せ——」
そして、2人は桜聖学院に向かったのであった。
*******************
「ここにまでくるなんて…」
セラは爆発を起す者たちを探していた。
「くっ。」
いきなりの爆発にセラの体は横へ飛んだ。とっさにかばい、致命傷まではいかないが、出血が多く見られる。
「おっ!いたいた。」
黒服を纏う2人はセラを見つけるなりニヤニヤしている。
獲物を見つけたような狼の目をしていた。セラは、2人を見るなり歯ぎしりをした。
「貴様ら。なぜここに」
睨みつけるような鋭い目で2人を見ている。
「そんな、怖い顔するなって。まぁ、ここに来たのはお前を殺すためだ。『双銃の雷光』をなぁ」
2人は武器を手にセラに突っ込んできた。紅い靄を纏う大剣、太刀を手に。
セラは2人を上手く躱したが、2人の持つ武器に驚きを隠せないでいた。
「なっ、なぜ貴様らがそれを」
そう。2人が持っているのは普通の刀などではない。人の心の負の感情を具現化した存在。負の感情が強ければ強いほどその威力は強力になる。しかし、それは極一部の人間。いや、本当の絶望、憎しみを知る者が境地に立たされる時に使役できるものである。故に、それは公になっていない。
「驚くのも無理はねぇよなぁ。俺らはそれを強制的に使役させてもらったんだよ」
「あの方になぁ」
2人の言葉にセラは耳を疑った。『あの方』とは一体。そして、武器を強制的に使役させることが可能なのかと。だが、その疑念は、吹っ飛んだのだった。2人が攻撃をしかけてきたのだ。
(くっ。これ以上は好きにはさせない)
「悪しきものに神より鉄槌を下す、天を元にし雷光を威とする、邪を撃ち抜き正を示せ」
セラを紅く染まった文字列が包み、セラ双銃を手にしていた。
「面白くなってきたじゃねーか」
黒服の1人はニヤリと笑う。そして、再び1人の少女と黒服を纏う2人のとの戦闘が開始された。セラは向かってくる1人に照射を合わせた。双銃からは敵に向かって光が放たれる。そこで、2人目の斬撃を体をひねって躱した。
2人の視界を奪うために閃光弾を。そして、1人の目、喉、心臓に2発ずつ撃ち込む。そして、2人目を確実に仕留める。はずだった。しかし、セラの体は地面に横たわったのだ。
「なっ。な…ぜ…。」
体の自由がきかなく、声を出すことさえままならない。その間も、敵はセラに近づいている。しかし、何をしても体は動かなかった。
「くはっ。動けないだろーな。お前が最初に爆発で受けた傷。そこには、神経を麻痺させる粒子が含まれてたんだよなー」
2人のあざ笑う声がセラの頭を駆け抜ける。
(ぼくは、ここ死ぬのか?)
「結構、強力な神経毒だったんだがなぁ。やっときいてきたか!」
(ハル。君にぼくの気持ち伝えたかったな)
「じっくり、苦しみを味わって死ぬか?まぁ、俺はスーパー優しいからすぐ殺してやるよ」
(ハル。———ごめんね———)
「じゃあなぁ。『双銃の雷光』さまよぉー」
「グサッ」
紅い刀身の太刀はセラの体を深々と貫いた。そして、刀はセラの体から引き抜かれた。血しぶきをかぶりながら。
「うっひ」
「うっひ」
「ひゃっはあああぁぁぁ」
1人の声が響く。そばにいるもう1人は、無表情のままだ。
「んじゃ。帰りますかっ」
セラに背中を向け、歩き出す2人。1人は口笛を拭きながら。もう1人は刀を手入れしながら。
「…ラ。セラああぁぁ」
2人がその声に気づいた。だんだんとちかくなる声を。
1人の少年が横たわる少女の元へかけて行く。
「セラ!どうしたんだよ」
「おいっ。セラ!」
「なんでっ」
血に染まった体の少女を抱え名前を呼び続けている。
「ハ…。ハ…ル…」
「…ごめん…ね。君との約束…守れな…かったね」
「セラっ。もう喋っちゃダメだ。もう…」
「あーあ…。ハルとまた…一緒に…遊べるって…おもったのになぁ」
「しゃべんなよっ。もういいから。しゃべんないで•••くれよ」
「ここに来て…ハルを見つけた時は…すごくうれしかった」
「また、いっしょに…話したり遊んだり…」
「夏目くんと、結衣とも…もっといっしょに…」
「ああ。これからだって。まだやってないことたくさんあるだろ。花火だってまだやってないじゃないか」
「ふふっ。そうだね。まだやりたいこと…たくさん…」
「なっ。だから、まだ死ぬなよ。またみんはでバカやったりさ。だから…」
「もっと…みんなと一緒にいたいよ」
「お別れって…やっぱり嫌だな…。ねぇ、ハル。君に、伝えたい…ぼくの気持ち…」
「—————大好きだよ————」
セラは、静かに目を閉じた。笑うような顔で…。
晴斗の目からは大粒の涙が垂れた。
「なんでっ。なんでだよ。くっそおおおぉぉお」
晴斗地面に拳をぶつけた。血が出てもそれをやめようとはしない。
「やっと、死んだか。しつけー女だったな」
晴斗は、声のする方を見た。目に光がなくなっている状態で。
そこには、刀を持った2人がいた。そして、その刀からは、血がした立っていた。
その瞬間、晴斗は全身が鋭くいたんだ。何かがこみ上げてくる。悲しみ。いや、もっと邪悪な何かが。
「…。」
「…す」
「…ろす」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
それは憎しみ。大切な人を奪った者への憎しみ。怨み。何もかもが自分の感情で支配される。
そして、晴斗は叫んだ。喉からではない。心の声を
『『『ああああああああああああああああああああああああああああ』』』