無詠唱が基本の現代であえて長ったらしい呪文を唱えてみる   作:アサヒbb8

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いつも読んでいただきありがとうございます!


衝突の前に

「犯人もそう思ってるって......じゃあどこに隠れてるっていうんだ!」

 

 山城は矢月を問い詰める。

 

「誰も見ていない、足跡も消えてるなんて、どう考えたって術師が絡んでるだろう!」

 

 問い詰めてはいるが、矢月が話す間は与えない山城。

 

「さあ今から山を探そう! 俺は東、西は......」

 

「山城くん!」

 

 話し続けるどころか、指示まで出し始めた山城を止めたのは、柚子葉だった。

 

「リーダーはやづでしょ! そう決めたじゃない!」

 

「いや......俺は個人としての意見を言ってるだけで......」

 

「その範疇はとうに超えてる。指示出しはやづの仕事」

 

 柚子葉の強い語気に、山城はしゅんとする。

 

「ゆず、ありがとう」

 

 彼女に礼を言い、矢月は話し始める。

 

「山城の言うように、犯人はいる。ただし、それは村の住人だ」

 

「「えっ!?」」

 

 これには、榊と山城は声を上げた。柚子葉はすでに勘づいていたのか、特に驚きはない。

 

「村の住人って......あ、あのクソニートだろ!」

 

「榊くん......さすがにそれは早計...」

 

「いや、多分あってるよ」

 

「「えぇ!?」」

 

 こんどは柚子葉と山城が驚く。

 

「少なくとも、村田成明は犯人の1人だ。主犯かは分からないが」

 

「それって、成明...の感情を読んでそう思ったの?」

 

 柚子葉が年上を呼び捨てにするのは珍しい。相当嫌っているのだろうか。

 

「それもある。だが他にも、奴の部屋に奇妙な魔法陣を書いた魔道具がいくつかあった。専門じゃないから、どんな術式なのかまでは分からなかったけどな」

 

「いつの間に部屋を漁ったの?」

 

「て言うか、感情を読むってどう言う事なんだ?」

 

 柚子葉と山城が、それぞれ疑問を口にする。もはや榊は目を点にしている。

 

「部屋を漁ったのは俺じゃない、俺の式神だ」

 

 そう言うと矢月は一枚の長方形の紙の札を取り出した。札には魔法陣とは違う、特殊な文字と記号が描かれている。そしてその札は、まるで手品のようにたちまち白いネズミに姿を変えた。チーチーと鳴くそのネズミは、本物と見分けがつかない。

 

 お〜、っと大道芸を見ているかのように感心する柚子葉。

 

「式神って、召喚獣と何が違うんだ?」

 

「まあ、式神にもいくつか種類があるら難しい所だが、最も違う点は主人と霊的に繋がっていると言う点だな。それによって感覚を共有したり、自分の魔力を分け与えたり出来る」

 

 山城の質問に矢月は丁寧に答える。実は召喚獣と大きく違う点はもう1つあるのだが、それは話さない方が都合がいい。柚子葉もそれを察し黙ってくれている。

 

「そして感情を読む、と言う意味だが、これは人の霊力......魔力の流れの変化を視て、大体の感情を予測しているだけだ」

 

「そ、そんな事が出来るのか?」

 

 ここは素直に驚く山城。

 

「魔力を感じ取りやすい体質の人がいるのは知っているけど、そこまでの事が出来るなんて聞いた事ない」

 

「ま、うちの親が術師否定派だったんでな。隠れてできたのは魔力感知の訓練ぐらいだ。小さい頃からそればっかりやってれば、この位はできるようになる」

 

 と言っても、読めるのは本当に感情くらいで、心が読めるとかそんな便利なもんじゃないんだけどな......と矢月は付け加える。

 

 この特技が無ければ、草刈島で戦い抜く事は出来なかっただろう。

 

「そういやこいつ、中学の時から隠れるのだけは美味かったけど、そんな陰キャムーブかましてたのかよ」

 

 榊が納得したように手を打つ。

 

「でも、それだけで成明を犯人として挙げるのは難しいんじゃない?」

 

「ゆずの意見は最もだよ。まぁ、現行犯として捉えるのが1番手取り早いだろうな」

 

 柚子葉の意見に賛同する矢月。

 

「じゃあ、具体的にどうするのか教えてよ」

 

 明らかに不機嫌そうに聞く山城。自分以外の人間が指示を出すのが本能的に許せないのだろう。だが柚子葉に言われた手前、今は我慢しているようだ。

 

「とりあえず昼間は、泳がされている振りをして山中を探す」

 

 そう言って矢月はほくそ笑む。

 

「本番は.....夜だ」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はっ! あの半人前ども、本当に馬鹿ばっかりだな!」

 

 成明は自室でヘッドフォンをつけ、声を出さないようバカ笑いをしていた。

 

 矢月たち4人は、村田の家に戻って作戦会議をしていた。文明からも、ここを拠点にするよう言われていたからだ。

 

 だがその作戦会議の内容は、ヘッドフォンを通して成明の耳に筒抜けだった。もともとは村の住人たちの会議を盗み聞きする為に設置した盗聴器だったのだが......

 

「ほんっと間抜けったらねえなあ。おかげで盗聴器を仕掛け直す手間が省けたぜ。俺が怪しいってとこまでは気づいてるみてえだがな」

 

 聞こえてくる会話に、ニヤニヤが止まらない成明。

 

「なになに? 夜中に全員で待ち伏せ...ね。()()()()()って奴の感知能力を使って奇襲するつもりなのか。 はっ! 無駄無駄......そもそもおめぇらが来た時点で、こそこそ隠れて襲わせるのは終わりなんだからな!」

 

 そう、今までの田畑荒らしは、矢月たち学生を呼び寄せる為の、ただの餌だった。

 

「俺様の召喚獣は最強だ。半人前が何人束になっても、惨めに死ぬだけだぜ」




式神...ロマンですよねぇ。

式神の解釈には人それぞれありますが、僕なりの考えも今後作中で描いていけたらと思っています。
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