無詠唱が基本の現代であえて長ったらしい呪文を唱えてみる   作:アサヒbb8

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今回は柚子葉メインです!


イカズチの少女

 場所が変わって模擬戦ルーム。アニメなどでよく見るような真っ白で巨大な立方体の部屋で、模擬戦の第1戦目が行われようとしていた。

 

 戦うのは、柚子葉と武田(たけだ) 隼人(はやと)

 

 先ほどの自己紹介からすると、武田は3級術師。このチームでは柚子葉に次ぐ実力者だ。茶髪を綺麗に上げてセットし、深緑のボストンパンツに白シャツと言う様相。

 

 秀島はこの対戦カードにひどく執心しており、矢月とやらせろと意気込む榊を押さえつけ1戦目に組み込ませた。

 

 先程とは違い、2人は武器を携帯していた。柚子葉は背中に大太刀を、武田は腰に日本刀を。

 刀は男子に非常に人気の高い武器だ。

 

『これより模擬戦第一試合を始める。準備はいいな』

 

 放送を通して模擬戦ルームに秀島の声が響く。柚子葉と武田以外はモニタールームにて観戦となる。

 

 緊張が走るなか、スピーカーを通して秀島の声が室内に響いた。

 

「模擬戦、開始!」

 

 刹那、武田の背後に幾何学模様の光の魔法陣が出現し、そこから無数の火球が放たれ一斉に柚子葉に降りかかる。

『ソドムの天火てんか』。高難度高火力で有名なキリスト教由来の術だ。

 

 これに対して柚子葉は微動だにせず、不敵な微笑を浮かべこれを受けた。

 直後、火球が直撃し爆煙が吹き上がる。

 

 得意技を奇襲で当てたとは言え、案外あっけなかったな......と武田はほくそ笑む。だがその笑みはすぐに苦渋の色に染まった

 

 爆煙が失せ、視界が晴れる。

 そこには無傷の柚子葉が立っていた。先程と全く同じ微笑をたたえたまま。

 

 みると彼女の周囲には、閃光のような光がドーム状に広がっていた。

『電磁バリア』。何のことはない極めてポピュラーな術。だが柚子葉のそれは強度が桁違いだった。通常電磁バリアに天火を防ぐほどの性能はないことからもその凄さが伺える。

 

「さすが加古さん...」

 

 武田は悔しそうに唇を引き結ぶ。

 今のは武田の使えるものの中で最も火力の高い術だ。それをこうもあっさり防がれたとあっては、正直もう打つ手が無い。

 

 武田の顔に若干の諦めの色が滲んだのを柚子葉は見逃さなかった。

 

「じゃあ今度はこっちの番」

 

 柚子葉は不敵に告げ、右手を上にかかげる。

 

 すると柚子葉を守っていた電撃の壁が部屋を埋めつくさんばかりに増長し始めた。しかもそれは、広げたからと言って威力を損なうわけでもなく、むしろ強大になっているように見える。

 

 絶望。この状況を表すにはぴったりの言葉だ。

 

「うっ!」

 

 次第に近づいてくる電撃にひるむ武田は、急いで背後の壁際に後退し、形ばかりの防御術を展開する。だがそれはいとも簡単に押しつぶされ、そのまま武田を焼き尽くす。

 

 秀島が模擬戦終了を告げる声が響いた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「加古さんすごーい!」

「噂に聞いてた以上だ!」

「ねね! LIME交換しない?」

 

 観戦ルームに戻って来るなり、柚子葉は熱烈な歓声に包まれた。その隣には武田もいる。

 

「武田も惜しかったなあ。俺だったら絶対やられてた」

 

 背の高い男子学生ー広瀬ひろせ 進しんーが気を使って武田にも声をかける。ただ、武田の表情は浮かない。

 

「にしても本当に傷一つ無いんだな。痛くは無かったのか?」

 

 広瀬はまじまじと武田を見つめる。確かにその体は、先程強烈な電撃に丸焼きにされたとは思えないほど綺麗なものだった。

 

「痛くは無かった。すごいよあの結界」

「そりゃあ我が校の誇る不死結界だからな! 国立大のみに許された特権、見に染みたか?」

 

 武田がしみじみと答えているところに、食い気味に秀島が割って入る。

 

 模擬戦の直前。学生たちは秀島からこの模擬戦ルームに張られている結界についての説明を受けていた。何でもその結界内であれば、どんな傷を負おうが死のうが無かったことにでき、しかも痛覚なども無効化できるらしい。ただしその結界の展開には高位の術師が必要で、部屋自体にも大規模な魔法陣を仕込む必要があるらしく、その扱いは国が管理している。使用を許可されているのは一部の国立機関のみで、全国八カ所の国立術師大学もその権利を有している。

 

「にしてもあの力を使わずに圧勝とは、さすがだなぁ加古」

 

 嬉々とした顔で秀島は手放しに褒めるが、当の柚子葉は特に何の感慨も無さそうな無表情。わいわい盛り上がっているのは周りだけだ。

 

 そのほとぼりも冷め始めた頃、秀島が手をパンパンと叩き声を上げる。

 

「さて、時間にも限りがある。 そろそろ次行くぞ」

「先生、次は俺にやらせてくれ! 相手はこいつだ!」

 

 その声に反応したのは当然榊。矢月を指差し模擬戦を要求する。

 これに対し......

 

「あぁ、別にいいぞ」

 

 

 

 

 快諾された。




次回矢月メインです!
ワクワク!
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