二話 「立つ鳥足濁さず」→「立つ鳥跡を濁さず」
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1/28 誤字訂正
突然だが、須賀京太郎の三大モットーは、
媚びない
逃げない
逆らわない
である。
媚びないの意味はそのまんまで、相手が誰であろうと媚を売らないという意味である。
京太郎曰く、
「たとえ自分の実況プレイを批判する他の有名な実況者さんが現れても、媚びないことが大事。媚びたら負けを認めることになる。」
らしい。残念な知識である。
逃げないもその通り、途中までやり終えた何かを放り投げないことだ。
京太郎曰く、
「たとえ自分の実況しているゲームがどんなにキツイ内容でも、最後まで諦めずにプレイしてアップロードすることが大事なんですよ。」
と、またもや残念な感じになっている。
最後の逆らわないは、流れに身を任せて、大本の流れには逆らわないという意味である。
京太郎曰く、
「物事はある一定の所まで来るともう引き返せないんですよ。実況プレイも同じで、少し進むと後には戻れません。なら逆らわずに進んだ方が得策じゃないですか?」
である。何故全部実況プレイ基準についてになっているのかは分からない。
もう以前の京太郎は帰って来ないという事なのか。
とにかく、その三つが京太郎のモットーな訳で、今までそれらを心に留めて生きてきた訳である。そして、それを今まで一回も破ったことはない。
しかし、今は目の前の状況に京太郎は逃げるを選択する五秒前だった。
「京ちゃん、挨拶は大事だよ?」
「ああ、まあ今日の間はよろしくお願いします。須賀京太郎です。
……それではありがとうございました!!」
すかさず京太郎は逃げるを選択した。身を捻り、体力測定ランクBの力を放出する。
五十メートルは6.9秒。その速度は平均よりは少し早い。
そうして反転して徐々にスピードをもって行って、校門まで一気にかけて行こうと………。
「あ、待って京ちゃん」
すかさず京太郎の右手を咲は掴む。握力は32kgと京太郎よりは劣ってしまうが、やはりそこそこの物。
不意を疲れた京太郎を止めるには十分な力だった。
「……須賀京太郎?」
何やら先程部長と名乗った人物からは京太郎の名前が聞いたことのあるかの様に京太郎の容姿をジロジロ見ている。
「…もう、やだこの部」
事の発端は、HRが終わった後の放課後からだった。
「で、俺を何処へ連れて行くんだよ?」
「京ちゃんなら頭も良いし、良いところまで行けるって」
おかしい、答えになっていない。
先程から京太郎は、嫌な気配をビリビリと感じていた。
「まさかお前、パンフレットに有った人体実験探求部とかむっちゃオカルトな部活に見学する訳じゃないよな?」
「……京ちゃん、私の事どう思っているの?」
「時々ティラノサウルスに細胞変化する小動物」
「…どう反応すればいいのか分からないよ京ちゃん」
「じゃあまずその手を離して帰らせてくれ」
「やだ」
「…即答ですかー、やだー」
そんな感じで京太郎は無理やり引っ張られて、咲の方向音痴に約一時間程付き合わされる。
時には生徒会室的な場所を通りすぎ、その際に、
今日早速新入生見学来るかもだからお先!
あ、ちょっと議長!
という会話を咲と京太郎の2人は聞いた。その議長に部活の活動場所聞けばよかったとは後の京太郎談。
時には京太郎と咲は学食を通った際に、タコス美味いじぇー‼︎と叫んでいた少女を目撃、生温かい目線を向けつつ無言立ち去るという一幕もあった。
そうして辿り着いた場所は、文化棟の一つに数えられる校舎の中にあった。
「…ここで合ってんだよな、咲。また校長室に間違えて入るみたいな失敗はしないよな?」
「………大丈夫。私を信じて京ちゃん」
「その無言の空白がより俺を不安にされるということに頼むから気付いてくれ」
2人はこの部屋の前に来るまでに中々のハードな道のりを描いてきたようだった。
さらに言えば京太郎はここが何の部室だかも咲から聴かされてない。
「じゃあ、開けるぞ」
京太郎はその大きな扉を開くために、精一杯力を入れた。
…しかし、ギギギという音を立てるばかりで一向に扉は開かない。
京太郎は咲の方を振り返り、
「どうなってんだ?」
と言った。
「私も全く分からないよ……」
シュンとした表女で答える咲に、何も文句を言うことが出来ずに、これからどうするか考え始める京太郎。
しかし、突如扉が内側から開かれた。今度はギギギという音は立たなかった。
「このドア、外から開けるには引いて開けるしかないんだよね」
ドアの向こうから出て来たのは茶髪のロング、少し小悪魔敵な笑みを浮かべた女子生徒だった。
「それで、あなた達はカップル?それとも今年初の我が部の体験入部者かしら」
咲は、緊張を浮かべるのを全く隠さない笑みでそれに答えた。
「は、はい!カップルです!」
「違うわい!それを言うなら幼馴染だ!」
「ごめんなさいね?この部活はカップルで来るようなところじゃないの」
「あなたも乗らないで下さい!」
…何で見知らぬ他人にこんなツッコミしなきゃいけないんだろう。
そう京太郎は思いつつ、部屋の中を見渡す。
どうにもこの部活は文化系の中ではかなりの部室の広さを持っているらしく、1クラス分なら問題なく入りそうだ。
更に、パソコンに冷蔵庫、魔法瓶完備の、スーパー部室と言ってもいい位の充実っぷりだった。
「見学者を外に置いておくのも心苦しいから、さあさあ中に入ったはいった!」
中に踏み入れると、やはり予想通りにこの空間は広かった。
更に、外からでは分からなかったが、ベランダがある。しかもそれすら大きい。
……本当にここ公立高校の部室か?
京太郎は不覚にもそう思った。
京太郎は更に、もう一つあるものを見つけた。
卓である。しかし、ただの卓ではない。
中央にはサイコロが入ったケースのようなものが取り付けられており、その上、台の至る所に長方形の切り目がある。
ふと、中学の時の思い出が蘇る。
麻雀教室の悪友と日々練習を重ね、麻雀に希望を見出していた時の記憶だ。
しかし、今はもう、麻雀から離れて3年が経ってしまった。
あいつも多分遥か高みに登っているだろう。
…ああ、あの時は楽しかったな。
…、いいや、今はもう俺は引退した身だ。
それに、思い出は思い出そのままが一番綺麗に思えるんだ。
ならもういいじゃないか。
そう京太郎は思い直し、この部活の部員と思われる女子生徒と咲との会話に耳を傾ける。
「へぇ、咲ちゃんは麻雀が好きなんだね」
「はい、そうなんですよ。それで、そこにいる京ちゃんも麻雀が出来るので付き合ってもらったんです」
俺、そんな乗り気でここに来たわけじゃないけどな。
そう思って京太郎は溜息をつく。
京太郎が咲と女子生徒の会話に突っ込めないでいると、ひとしきり会話が終わったようで、突然京太郎の方に向いた。
「私はこの麻雀部の部長である竹井久って言うの。今日はよろしくね」
ある意味最悪の予想通りだった。
昔、京太郎の敬愛する老師は京太郎にこう言った。
【自分の良かれと思ったことを選ぶのじゃ。即断即決、麻雀でも人生でもとても重要な事じゃ。】
自分、逃げます。
この部活から、逃げます。
京太郎はそう決断した。
「京ちゃん、挨拶は大事だよ?」
こうして、時は現在に至る。
逃げようとする京太郎を必死に捕まえる咲。
それを切り抜けようとする京太郎。
それを傍目に、京太郎…?、と呟いている久。
とても、この場がカオスである。
「咲、ほら、お前が好きなアイス明日買ってやるからな?だからその手を離すんだ」
「京ちゃんこそ、いつまでも麻雀から逃げてちゃダメだよ?少し荒療治になっちゃうけど、私、諦めない!」
「何なに⁉︎別に俺、麻雀から逃げてないって!」
「嘘だッッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
「そんな少し古いネタ使わなくてもいいから!つか咲お前!何でそれ知ってんだよ!」
「人間賛歌は勇気の賛歌‼︎‼︎‼︎」
「お願いだ咲!コッチへ来るんじゃない!!」
「…へっ?何が?ただお父さんが、友達が困ってたらこう言えば良いって……」
「…咲の父上〜〜っ!!、」
そんな京太郎と咲の漫才のようなやり取りをしている間に、久が閃いた顔をする。
「あの、須賀君?一つ聴きたいことがあるなだけれど、いいかしら?」
咲と会話をしていた京太郎は、久の声に反応して咲との会話を無理矢理打ち切る。
「あ、はい。何でしょう?」
そこはかとなく京太郎は嫌な予感がしていた。それも仕方ないだろう。
なぜか、久はすごく輝いた目をしているのだから。
「貴方、須賀京太郎君でいいわよね?」
京太郎が、名前ならそうですけど?と反応を返す前に久は言葉を続ける。
「全中大会(全国中学麻雀大会)で中学一年生にして長野県代表を勝ち取り、その後全国大会でも優勝。特に決勝戦では東場二局目で奇跡的な和了を見せた、あの須賀京太郎で合ってるわよね?」
京太郎の目線が途端に冷たくなった。
須賀京太郎、この名前は中学からそれなりに麻雀で大会に出ていた人なら殆ど誰もが知っている。
ただ全国制覇しただけではなく、最後まで跳満オンリーだとか、ラストでトリプル役満だとか、要するにやり過ぎたのだ。
それに京太郎は溜息をつく。
京太郎は別に、特別目立ちたい訳ではない。寧ろあまり目立ちたくない。
京太郎の髪染めをした理由の一因実はここにもあったのだ。
京太郎は今日何度目かの溜息をついて、久に向かって返答した。
「……はい、そうですよ。確かに跳満オンリーで大会を勝ち上がったのは俺ですし、最後にトリプル役満で全員飛ばしたのも俺です。
それで、麻雀部の部長さんは俺をどうする気なんですか?」
京ちゃん、と咲が呼ぶ声が聞こえるが、敢えて京太郎は無視する。
「そうわね、この部入る気はないしら?」
「無いですね。俺は麻雀をする気はありませんし、そもそもする資格もありません」
「そんな事はないよ!」
突然の咲の叱正に驚く京太郎にに久。
何より京太郎は、咲が叫んだことに驚いた。普段から大人しい咲が声を率先して上げる事はあまりない。
何より、咲は優しいのだ。だから、滅多なことでは怒ることは無い。
その咲が、怒る訳でも無く叫び声を上げたのに驚いた。
「京ちゃんは麻雀をもっと知るべきだと思う!そんな全部を知ったような顔をして、本当に麻雀をしていたの⁉︎」
「…いや、俺は或る時から麻雀に打たされていたんだ。だから、楽しいと思わない。感覚が麻痺してるんだ。
…そんな奴と打っても楽しくないだろ?」
「…でも、京ちゃん、毎回麻雀卓見る度に寂しげな顔してるよ?」
「!!」
京太郎は確かに、この三年間麻雀をやりたいと思った事は一度も無い訳ではない。
実際、一回大手の麻雀サイトにアカウント登録しようとしたことがある。
その時は自制して諦めたが、確かに京太郎は麻雀をやりたかったのかもしれない。
しかし、京太郎は思い出す。
もう全中大会に中1で出場して優勝した後に、引退を両親にも、お参りに行った老師にも告げているのだ。
もう、自分は本格的にやってはいけない。
そう決断し、京太郎が反論の言葉を口にするより、咲の言葉が先だった。
「京ちゃん、3年ぶりに麻雀やろうよ?部長も一緒に」
「いや、俺は…」
「まあまあ、そう言わずやりましょうよ。さぁ〜て、元男子全中大会覇者の実力、見せてもらうわよ?」
京太郎はなし崩れに、二人に麻雀卓の席につかされてしまうのだった。
後もう一つ、京太郎の中学時の麻雀大会ですが、重ね役満はありとさせていただいております。
ご了承ください。
…さて、京太郎と咲と照の話も書かなくては。
そして英検2級という強大な壁を壊すための勉強しなくては。
英検2級「無駄無駄無駄無駄無駄ーッ!」
俺 「死ぬしかないじゃない!」
↑※調子乗りましたすいません