今日の魔女の仕事~魔女達が照らす明日~   作:ジョン5

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魔女と謎の少女2

「ここが遺跡の中か……」

 

遺跡の内部に設置された階段を下りながら、フレイがつぶやいた。

 

「外とは違って、結構しっかりしてるわね」

 

ウォルタも辺りに気を配りながら階段を下った。すると、突如、足元の方から獣の咆哮らしき物が響いた。

 

「……この下みたいね」

 

二人は足早に階段を下りると、開けた場所に出た。すると、そこには岩石からできた巨大な人型の化け物と、紫色のサイドテールの髪をした、一人の少女が立っていた。

 

「あ、あなたは!」

 

ウォルタは少女を見ると叫んだ。

 

「……久し振り……って程でもないわね、ウォルタさん」

 

少女は不敵な笑みを浮かべながら言った。

 

「何だ、ウォルタの知り合いか?」

 

フレイがウォルタに尋ねた。

 

「……昨日の朝会った少女よ、私にこの依頼を頼んだ張本人。一体、どういうつもりかしら?」

 

ウォルタは顔に冷や汗を浮かべながら尋ねた。

 

「……深い理由はないです。ただ、私はウォルタさん、そしてフレイさん。あなた方二人を始末するためにここで待っていただけです」

そう言うと、少女はどこからともなく一本の剣を取り出した。

 

「……どうやら、フレイ、あなたの予想が当たったみたいね」

 

ウォルタは銃を取り出すと言った。

 

「全然、うれしくないけど」

 

フレイも剣を取り出して言った。

 

「……おっと、あなた方の相手は私ではない。このシャットゴーレムです」

 

そう言うと、少女は隣に並び立った、シャットゴーレムにの背中に、取り出した剣を突き刺した。すると、シャットゴーレムは咆哮を上げると共に、その体に目に見える電流の様なものをまとった。

 

「……今のって!」

 

ウォルタの脳内にかつての記憶が蘇った。フレイと出会った日に戦ったポカツリー、そしてルリの捜索で戦った火の玉の魔物のことを。

 

「……なるほど、人様の魔導具を盗んで、魔物に突き刺していた犯人……あなただったてわけね」

 

ウォルタは少女をにらみつけてそう言った。

 

「……ええ、その通りです。もっともどちらもあなた方に倒されてしまいましたけど」

 

少女をは口元に笑みを浮かべてそう言った。

 

「……つまり、お前がウチの剣を盗んだ犯人だったてことか。無事戻ってきたからいいものを、盗むなんてひどいじゃないか!」

 

フレイは少女に向かって言った。

 

「……眠れる森の美女から、剣一本をせしめるなんて簡単なことです」

 

少女はフレイの言葉をさらっと流した。

 

「色々と聞きたいことはあるけど、なぜ、わざわざ他人の魔導具を使う訳、あなたも魔女ならそこにこだわる理由はないんじゃなくて?」

 

ウォルタが少女に尋ねた。

 

「……いいえ、私は魔女ではないので、魔法は使えません。ただ、魔導具に僅かに残った、持ち主の魔力を活性化させる能力を持っています。そして、魔物に魔導具を入れ込むことによって、その活性化させた魔力を魔物に注入し、魔物に魔導具の持ち主の魔法を付加することができるんです」

 

「……丁寧なご回答どうも。でもそんなこと、私たちに話してしまっていいのかしら?」

 

ウォルタが口元に笑みを浮かべながら言った。

 

「……構いません。私との約束通りここに来て下さったお礼です。もっとも、あなた方はここで消えること

 

になるのですから、無意味な情報ですけどね」

 

少女はそう言うと、踵を返して歩き出した。

 

「待ちなさい! 簡単に逃がすと思ってんの!」

 

ウォルタは少女の元へ駆け寄ろうとした。

 

「……私の名はニール。もし生きていたらまた会いましょう、ウォルタさん、フレイさん」

 

そう言い残すと、少女は突然その場から姿を消した。

 

「消えた?!」

 

そう言うウォルタの頭上にシャットゴーレムの巨大な拳が迫っていた。

 

「ウォルタ! 上!」

 

フレイがウォルタに向かって叫んだ。

 

「ああ、もう!」

 

ウォルタは振り降ろされたシャットゴーレムの拳をかわすと、フレイのいる位置まで後退した。しかし、そのシャットゴーレムの攻撃の衝撃によって、二人が下って来た階段への道が、崩れ落ちた瓦礫によって封鎖された。

 

「……まったく、こんな罠にかかるなんて、私も案外お人好しだったてことね。行くわよフレイ!」

 

「ああ!」

 

二人は魔導具を構えた。すると次の瞬間、シャットゴーレムは両腕を振り上げ、その腕を足元の地面目掛けて叩きつけた。その衝撃によって、床から剝がれたプレートが飛び、二人を襲った。

 

「このくらい!」

 

フレイは飛んできたプレートを軽くかわした。そして、同じくプレートをかわしたウォルタが辺りを見回して異変に気づいた。今のシャットゴーレムの攻撃の衝撃によって、遺跡内が大きく揺れ、天井が僅かに崩れたのだった。

 

「どうやら、あんまりもたもたしてると、魔物と仲良く生き埋めね」

 

ウォルタは顔に冷や汗を浮かべた。

 

「そいつはごめんだね!」

 

そう言いうとフレイはバッグから魔導石を取り出し、自らが握る魔法剣にスキャンした。

 

『デュアル』

 

魔導石から音声が鳴り、もう一本の魔法剣が出現した。フレイは二本の剣に炎を灯すと、魔物との距離を詰めた。

 

「一気に決めてやる!」

 

フレイが魔物の直前まで来たとき、突如、魔物は全身から電撃を発し、向かい来るフレイを吹き飛ばした。

 

「うわっ! 電気⁉」

 

受け身を取ったフレイが言った。

 

「……どうやら、あれがニールが新たに加えた魔法らしいわね」

 

そう言うと、ウォルタはバッグから魔導石を取り出し、握った魔法銃にスキャンした。

 

『ラピッド』

 

魔導石から音声が鳴り、魔法銃がガトリング型へと変化した。

 

「これなら、どう!」

 

ウォルタが引き金を引いた銃からシャットゴーレムに向けて、何発もの魔法弾が放たれた。しかし、それらは命中したものの、魔物の強固な体によってはじかれた。

 

「……いつぞやの山で戦った奴より硬いわね」

 

魔導石を使った攻撃にも耐える魔物の強固さに、ウォルタはたじろいた。すると、シャットゴーレムは電気を操り、近くの、瓦礫を一ヶ所に集め、大きな瓦礫の玉を生み出し、それを二人目掛けて投げつけた。

 

「ウォルタ、下がって!」

 

そう言って、ウォルタの前に出たフレイは、一旦、魔法剣を一本に戻すと、その一本を力強く握った。

 

(魔力の一点集中!)

 

フレイは魔力を込めた剣の刃で、飛んできた瓦礫の玉を受け止めた。そして、そのまま、その玉を真っ二つに切り裂いた。

 

「へへん、こんなもの、師匠との特訓で使った鉄の塊に比べればどうってことないね!」

 

フレイは口元に笑みを浮かべて言った。

 

「いいじゃない、フレイ! その技ならあいつも切れそうね」

 

ウォルタも笑みを浮かべながら、フレイに言った。

 

「うーん、でもあの周りの電気をどうにかしないと、本体まで近づけないよ」

 

フレイは顔を曇らせた。

 

「……その電気の鎧を剝がす必要があるわね」

 

ウォルタがそう言った次の瞬間、シャットゴーレムは再び足元を拳で殴り、プレートを二人に向けて吹き飛ばした。

 

(……サナとの特訓で身につけた魔力のコントロール、それを応用すれば!)

 

ウォルタは飛んできたプレートをかわすと、フレイに向かって叫んだ。

 

「フレイ、私に考えがある! デュアルの魔導石を貸して!」

 

「分かった! 受け取れウォルタ!」

 

フレイはそう言うと、魔導石をウォルタに投げ渡した。そして、それを受け取ったウォルタは、魔法銃に二つの魔導石をそれぞれ立て続けにスキャンした。

 

『ラピッド』

 

『デュアル』

 

それぞれの魔導石から音声が鳴り、魔法銃が光に包まれた後、ウォルタの手元に、二丁のガトリング型の魔法銃が現れた。

 

「魔導石をいっぺんに二つ⁉」

 

フレイが驚いた。

 

「ええ、今までの私では魔導石の二重使用は、その消費魔力が多すぎてできなかった。でも、今は違う。サナとの特訓で魔力のコントロールを身につけた私なら、最低限の魔力でその魔導具をあつかえるわ!」

 

そう言うと、ウォルタはシャットゴーレムに向けて二丁の魔法銃を構え、それらの引き金を引いた。それぞれの銃口から無数の水魔法の弾丸が放たれ、シャットゴーレムの体に命中した。しかし、その弾丸たちが、シャットゴーレムの体に傷をつけることはなかった。

 

「……おい、効いてないみたいだぞ」

 

フレイがウォルタの方を向いて尋ねた。

 

「構わないわ、ダメージを与えることが目的じゃないから。まあ見てなさい」

 

ウォルタはフレイにシャットゴーレムを見る様に促した。すると、シャットゴーレムが体にまとっていた電流がどんどんと消えかけていった。

 

「電気が消えた、どうなってんだ?」

 

フレイがウォルタに尋ねた。

 

「私が何発もの水魔法の弾丸を浴びせたのは、あいつの体を水浸しにするためよ。それによって、あいつの体の周りの電気が水を伝って漏電し、厄介な鎧が剥がれるってわけ」

 

ウォルタはふふんと鼻を鳴らしながら言った。

 

「なるほど、それなら後はウチの剣で!」

 

「ええ、頼むわ、フレイ」

 

フレイは剣に魔力を込めると、シャットゴーレムとの距離を一気に詰め、その剣で魔物の体を真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

 

「ふう、まったくひどい目にあったわね」

 

フレイと共に遺跡内から脱出したウォルタが言った。

 

「まったくだ。けど、ウチらを始末するだなんて、何か恨まれるようなことしたかな」

 

フレイが首を傾げた。

 

「……私たちが彼女の作り出した特殊な魔物を二度も倒したせいかしら? まあ、どっちみちいい迷惑ね」

 

「……また、あいつはウチらの前に現れるのかな」

 

「さあね、出来れば、こんなことはもう勘弁願いたいけど。さて、もう帰りましょう。フレイ、巻き込んで悪かったわね」

 

ウォルタはフレイの方を振り返って言った。

 

「別にいいよ」

 

フレイは笑顔でそう言った。二人はトト遺跡を後にした。

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