今日の魔女の仕事~魔女達が照らす明日~   作:ジョン5

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魔女と職人1

この日、ウォルタとフレイの二人は、ポカの森に魔物退治に来ていた。

 

「これで、残り一匹!」

 

フレイの振った炎の剣が、魔物の群れの最後の二匹の内の一匹を切り裂いた。

 

「最後の一匹、ウォルタ頼めるか?」

 

フレイが後方で魔法銃を構えたウォルタに尋ねた。

 

「ええ、任せなさい!」

 

ウォルタは魔物に狙いを定め、銃の引き金を引いた。しかし、本来、銃口から放たれるはずである魔法弾が、この時は放たれなかった。

 

「……あれ? おかしいわね」

 

ウォルタは何度も引き金を引いたが、銃から弾が放たれることはなかった。

 

「どうした、ウォルタ?」

 

フレイが尋ねた。

 

「どうやら銃の故障みたい。悪いけど、フレイお願い!」

 

「分かった!」

 

そう言うとフレイは魔物に近づくと、魔物を剣で切り付け、光の粒子へと変えた。

 

「ありがとう、助かったわ……にしても、困ったわね」

 

ウォルタは頬を手で押さえて言った。

 

「魔導具の故障か、どうすんだ?」

 

剣を鞘に収めたフレイが尋ねた。

 

「……職人の所に行って、見てもらうしかないわね……あまり気は進まないけど」

 

ウォルタは顔を曇らせた。

 

「ん? 何かあるのか?」

 

「ちょっと、色々あってね。まあ、魔導具は魔女の生命線、背に腹は代えられないわ。帰り道、その職人の所によってもいいかしら?」

 

「ああ! ウチもその職人ってのに会ってみたいしな」

 

「会ってもいいことなんかないけど。まあ行くしかないわね」

 

二人はポカの森を後にし、都市へと向かった。

 

 

 

 

ウォルタとフレイの二人は都市にある、魔導具の職人が集う職人街へとやって来た。

 

「ここよ」

 

ウォルタがある店の前で足を止めた。

 

「……想像してたより、小さい店だな」

 

そう言うとフレイは店の中へと足を踏み入れた。狭い店内に配置された棚には、いくつもの魔法銃がびっしりと並べられていた。

 

「うお、すげぇ! ウォルタが使ってるものみたいのがいっぱいだ!」

 

フレイは棚の魔法銃を見て目を輝かさせた。

 

「勝手に触ると、汚したってことで買い取れって言われるから、気を付けて」

 

ウォルタが棚の魔法銃に手を伸ばしたフレイに言った。

 

「……人聞きの悪い、それらはサンプルだから触って汚しても金はとらないよ」

 

店のカウンターの奥から声が聞こえた。

 

「……あら、お久しぶり、職人さん」

 

ウォルタは嫌そうな顔つきで、カウンターの奥の声に言った。

 

「……相変わらずの態度だな、ウォルタ」

 

そう言ってカウンターに現れたのは、白髪でショートカットの小柄な女性だった。

 

「フレイ、一応、紹介しておくわ。この人がこの都市一の魔法銃開発の腕をもち、私の魔法銃を作った、カンカよ」

 

ウォルタはいやいやフレイに彼女の紹介をした。

 

「都市一だって⁉ なあ、もしかしてここに置いてある銃、全部カンカが作ったのか?」

 

フレイがカウンターに身を乗り出して尋ねた。

 

「……そうだけど」

 

カンカは眉をひそめながら答えた。

 

「へぇ、ウチより年下なのに、すごいな」

 

フレイはそう言いながら彼女の頭を撫でた。

 

「……失礼なお連れさんだ、この私をガキ扱いとは」

 

カンカはフレイの手を振り払って言った。

 

「フレイ、カンカはこう見えて私たちより年上よ」

 

ウォルタがため息混じりにそう言った。

 

「え、そうなのか……ご、ごめんなさい」

 

そう言うとフレイは後ずさりした。

 

「まったく……で、今日は何の用で参ったんだい?」

 

カンカがウォルタに尋ねた。

 

「魔法銃の調子がどうも悪くてね、引き金を引いても弾が出ないのよ。ちょっと見てもらえる」

 

そう言うとウォルタはカンカに魔法銃を渡した。

 

「……弾が出ないねぇ、ちょっと待ってな」

 

そう言うとカンカは一旦、カウンターの奥に行き、しばらくして二人の前に戻ってきた。

 

「こりゃダメだ、魔法銃の魔力を吸収する核の部分が壊れちまってる。原因は魔導具への魔力の過剰な供給だろうな」

 

カンカが手元のウォルタの魔法銃を見ながら言った。

 

「魔力の過剰供給?」

 

ウォルタは首を傾げた。

「ああ、よくあるのは魔導石を使って魔導具の形状や性質に変化を及ぼした時だ。変化後の魔導具は変化前よりも多くの魔力を使用することになる。だが魔導具が吸収できる魔力の容量はその核に依存する。もし変化後に必要な魔力がその核の容量をオーバーしてしまったら、その核に負担をかけることになり、やがて核は壊れ、魔導具は使えなくなる。」

 

「へぇ~」

 

フレイが相槌を打った。

 

「……ウォルタ、お前さん最近、魔導石を使わなかったか? 特に、二重使用なんかやった日には一発でアウトだぞ」

 

カンカの言葉によってウォルタの頭の中に、トト遺跡での記憶が蘇った。ウォルタはあそこで戦ったシャットゴーレム相手に魔導石の二重使用を使った攻撃をしたのだった。

 

「……まいったわね、あれが原因だなんて」

 

ウォルタは顔に冷や汗を浮かべた。

 

「まったく何をやったかしらんが、この銃の核は魔導石の二重使用に耐えられるものじゃない。どうだ、修理のついでに核もアップグレードしてみては?」

 

カンカがウォルタに尋ねた。

 

「……値段は?」

 

ウォルタが眉をひそめながら尋ねた。

 

「10万ゴールド」

 

カンカは笑顔で答えた。

 

「高い! 相場の五倍じゃない! 相変わらずね、ホント!」

 

ウォルタはカウンターに身を乗り出して言った。

 

「しょうがないだろう、核をさらに上級の者にするんだから」

 

カンカは口を尖らせて言った。

 

「はぁ、じゃあ修理だけでいいわ、核は同じものと交換で……」

 

ウォルタがそう言いかけたとき、フレイが割って入った。

 

「ちょっと待ってよ、これからに備えてその核ってやつも、すごいのにしてもらった方がいいんじゃないか?」

 

「……私もそうしたいのは山々だけど、お金が……」

 

ウォルタが眉間にしわを寄せて唸っていると、カンカが口を開いた。

 

「ならこうしよう。お前さん達自らで核の材料となる鉱石を取ってくるんだ。そうしたら、核の分の値段はチャラにしよう」

 

「おお! いいなそれ、なあウォルタ?」

 

フレイがウォルタの方を振り向いて言った。

 

「……また、面倒そうな…………でも、それしかなさそうね」

 

ウォルタは観念し、納得した。

 

「決まりだな。地図と道具はこちらで用意しよう、もちろんそれらは……」

 

カンカがそう言いかけたとき、ウォルタが口を挟んだ。

 

「無料でね」

 

「やれやれ、仕方ないな」

 

カンカはそう言って肩を落とすと、ウォルタと交渉成立の握手をした。

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